演出家・蜷川幸雄さんが「最高のキャスト」を待ち続け、そして満を持して上演されている二人の天才詩人ランボーとヴェルレーヌの物語『皆既食(かいきしょく)-Total Eclipse-』の舞台写真が届きました!
【みなさまから寄せられた感想を追記いたしました!!】(11/22)
蜷川さんの演出ということでもっと難しい芝居かと思っていましたが、わかりやすく、美術も舞台の転換もあざやかで長時間、まったく飽きることがありませんでした。
生瀬さんはもちろん、岡田くんの熱演にも感動いたしました。
これ、おすすめです。
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岡田将生さんが美しい。このビジュアルあってこその、哀しさ。苦しさ。
はまっています。初舞台とは思えないクリアなセリフ、驚きでした。
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過度に演じたり、淡白も演じられるであろうヴェルレーヌを今、
目の前にいる男として演じる生瀬さんの底知れぬ演技力に感服しました。
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前作のスペクタクルな「ジュリアスシーザー」から、一転、
アナログな舞台転換と台詞だけで構成される濃密なプロダクション。
蜷川先生の演出が素晴らしいです。
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これほど小道具を移動させる舞台を観た事がありませんが、
特に幕の最初にぐるぐると回って思いも寄らないような形に納まるのが不思議で素晴らしかった。
本当の愛なのか判らないけど、登場人物の愛は全て求める愛で与える愛では無かったような気がします。
求めすぎると傷つけ合う関係になってしまうように感じます。
求めるばかりではなく無償で与える(愛する)が本当の愛のように思います。
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さすがの生瀬さんと五分で渡り合えている岡田さん。息苦しいほどの濃密なやり取り、
蜷川さんらしい舞台装置展開。とても見ごたえがありました。
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舞台版なので、表現に制限はあるもののランボーとヴェルレーヌの狂おしい愛と憎しみを描いた佳作です。
初舞台の岡田将生が生瀬勝久に食いついての力演!心に余韻の残る上質な作品でした観ることが出来て、嬉しい
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生瀬勝久さんはさすがの演技、ラストシーンのモノローグ良かったです。
これが、初舞台の岡田将生さん、声もききとりやすく落ち着いた演技に感動!
演劇界に新たなスター誕生ですね。
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【ゲネプロレポート】
美しき問題作!
舞台上で綴られるのは、映画『太陽と月に背いて』(脚本:クリストファー・ハンプトン、主演:レオナルド・ディカプリオ、1995年)でも有名な19世紀を代表する二人の天才詩人の愛と背徳の物語。
少年の無邪気さと影を併せ持つランボー:岡田将生さん
長身、長い手足も舞台映えします!
早熟の天才と呼ばれたアルチュール・ランボーにはこれが初舞台となる岡田将生さん。
本当に初舞台なのだろうか。と疑問を抱くほどの堂々たる芝居です。発声も非常にクリア!
舞台上に登場した瞬間の浮世離れしたともいえるほどの透明感と美しさ。
それだけでなく無邪気さと激しさ、狂気を併せ持つランボーの内面の表現でもぐいぐい惹きつけられます。まさに舞台上でランボーの人生を生きています!
また、ちょっと難しそうな舞台かなと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、たとえばそのセリフ回し。これは翻訳を手掛けた小田島恒志さんの手腕に因るところも多いかと思いますが、非常にナチュラル。それによっていわゆる天才詩人を描いた作品ながら、芸術性にだけ走ることなく、ヒリヒリするような人間ドラマになっています。
そして初舞台の岡田さんが思いっきりお芝居をできるのは、相手役ポール・ヴェルレーヌを演じる生瀬勝久さんの揺るぎない芝居力があってこそ。
同じく天才的な詩人でありながら、ランボーとの対比ではどうしても地に足がついているようなヴェルレーヌ。それだけに妻への暴力やのちの破滅、そんな人間臭さに胸をえぐられる思いです。
ヴェルレーヌ:生瀬勝久さん、ランボー:岡田将生さん
生瀬さんの低音の響き、岡田さんの軽やかな声、音としてもハーモニーが絶妙!と思っていたら、さらに来ました!
圧倒的な力で彼らをねじ伏せようとするヴェルレーヌの義父は辻萬長さんです。
さらなる声の深さ、響きが加わって演劇ファンにとって極上の時間です。
(そんなに幸せを感じるシーンではないのですが・・・)
さらにはヴェルレーヌの妻、いろんな意味で“女だなぁ”と感じさせる若妻マチルドに中越典子さん。その母に気品あふれる加茂さくらさん、そしてヴェルレーヌの孤独な晩年に寄り添う娼婦に立石涼子さん。
みなさん決して出番が多いとは言えないのですが、その存在感、インパクトたるや桁違い。“蜷川さんが満を持して”に納得のキャスティングです。
天才と天才の愛と破滅、身近なストーリーとは言い難い作品ですが、いつの間にか舞台上の世界に引き込まれていたのでしょう。
ラスト近くのヴェルレーヌの独白からのあるシーンでは突然胸がギュッと締め付けられ自分の中で何かが堰を切ったように溢れ出してきました。美しいことがこんなにも哀しいなんて、そして気が付くと涙が。
また、演者の力量や相性だけでなく、開場時のどこか歪んだ一室に始まり、まるで生きているかのようにうごめき変化していく舞台セット、ハッとさせられる照明効果など映画やドラマではなく舞台だからこその魅力いっぱいの作品。
この秋の話題作『皆既食』、そのタイトルの神秘的な響きにふさわしい美しい舞台です。
お見逃しなく!
舞台写真提供:文化村
おけぴ取材班:chiaki(取材・文)