来年2015年に結成20周年を迎える
“熱き泣かせ屋” “神戸から飛び出したホットぷれぜんたーず” こと【
劇団赤鬼】。
年末恒例となった劇団本公演『最果てクロニクル』が、いよいよ12月26日大阪ABCホールにて初日を迎えます!
物語の舞台は、最果ての地にある、最果ての駅。
駅へと続く線路を走り続けてきた汽車の運行が廃止され、最果ての町に住む人たちが迎える「最後の日」…。
あれ? このお話、
どこかで聞いたことがあるような??
「駅が廃止され、町が孤立する。そこで人々は何を思うのか…。と、ここまで設定を考えて、あれ? この話、去年やらんかった? となりました(笑)」
笑って明かしてくれたのは、演出を手がける
川浪ナミヲさん。
「でも、これまでの赤鬼作品が “少年ジャンプ” なら、今回はもうちょっと “ヤンジャン(ヤングジャンプ)” 寄り、青年コミックです」
“人が人を想う気持ち”、“大切な人とのつながり” というテーマ、そして“楽しく笑って観てもらいたい” という、いつもの赤鬼らしさはそのままに、少しだけ大人の雰囲気をまとった新作『最果てクロニクル』について、お話をうかがってまいりました!
演出中の川浪ナミヲさん。
最果ての町で「なにか」を待っている人たちと、町に迷い込んだひとりの少女。
駅があって、人々が集う食堂があって…一見どこにでもある普通の町。
けれども実は…。
―― この「実は…」の部分は、物語が進むにつれ少しずつ明かされていくとのことですが、もう少しだけ詳しく教えていただけますか?
川浪:この町にいるのは、ある理由があって集められている人たちです。何かしら背負っているものがある人たち。権力を持つ者にとって邪魔な存在というか…必ずしも悪人というわけではないんですけれど。
そのことを知らずに、ある少女が父親を探して迷い込んでくるところから始まる物語です。
町に迷い込む少女を演じるのは橋爪未萠里さん。
(写真右は竹田聡支さん)
川浪:稽古はなかなかに苦戦中ですね。
今回のテーマはいつもとちょっと違っていて大人な感じというか、普通にやると舞台の上からいろいろ説明したくなるところなんですけれど、そんなの芝居で見せてもおもしろくないですから、必要な情報は出しつつも、いかに芝居を楽しんでいただくか。そのあたり、今回は特に悩んでいます。
芝居を見てもらって、最後に残る余韻が赤鬼らしくなるように、ということはいつも以上に大事にしているんです。クリスマス、年末の雰囲気にふさわしい、心が温かくなるようなテーマは外さずに作っているつもりです。
町の人々に話を聞いてまわる記者(?)を演じる岡本拓朗さんと、
食堂の女主人役の山口尋美さん。
田川徳子さん演じるシスターなど個性豊かなキャラクターがずらり。
テーマはちょっぴり“大人”でも、はじけるところは思いっきり!
座長・行澤孝さんも、体を張って模範演技を。
!
(※行澤さんが実際に演じる役ではないそうです!)
―― 昨年公演
『拝啓 ライトフライヤー号!』でお話を聞いた時に「うちの芝居は誰が観てもおもしろい、わかりやすい “週刊少年ジャンプ” 的芝居」とおっしゃっていましたね。
川浪:誰が観てもスカッとして帰れる芝居を目指していることは変わりません。
でも今回は「少年ジャンプ」というよりも、もうちょっと「ヤンジャン」よりかな(笑)。ちょっと大人なテーマ、青年コミック的な。
…大人って「黙ってなアカンとき」があるじゃないですか。良かれと思って黙るというか。子どもたちには理解ができない沈黙。
じっと黙っていることが、なにかの正義を守っていることもあるんですよね。本当のことを言うだけでは世の中うまくいかないというか。
会社で上司に本当のことを言えないときってありますよね? 僕だって芝居の稽古をしながらいろいろ思っているとき、あります(笑)!
言いたいことはあるけれど、思ったことをなんでも言ってしまう世の中がはたして本当にいいものなのか? 今回の芝居には、そのへんの微妙な、大人な感じを織り込みたいんですよ。そういう意味で「ヤンジャン」なんですね。
物語の後半で、ある登場人物が裁かれる展開があるんです。それも悪人を裁くんじゃなくて本当のことを明らかにするための展開で…。
「大事なこと」と「本当のこと」って、近いようで、ぜんぜん違うときがある。そのへんの微妙な、ちょっとほろ苦い大人の事情というか。
年末のこの時期、忙しくしている大人の人たちに「ああ、わかるわかる!」と思ってもらえればいいな、と。
「ほんまはこうしたいけど、そんなことしてたら子ども食わせていかれへんもん!」という人たちにも(笑)。
「ちょっぴり大人なテーマ」でも、
笑いやワクワクするような赤鬼作品の空気感はいっぱいです♪
セリフや動き、細かいところまでこだわって作りこんでいく赤鬼スタイル!
――川浪さんは外部での演出のお仕事もとても多いですが、1年ぶりの劇団本公演の稽古場はどんな雰囲気ですか?
川浪:うーん…一番楽しみだけど、一番しんどいのが赤鬼の稽古場ですね。
これ、なんでやろうなあ。赤鬼の芝居の作り方が一番わからへん。僕が演出に関わるようになってから10年経つけど…まだわからないですね。
外部での演出のお仕事は、目指すゴールがちゃんと見えるんです。成功の形が見えるから、そこを目差していけるんですよ。
でも自分の劇団だとそれが見えない。人間、生きていて「自分の人生ここがゴールやな」なんて思うことないですよね。「もうこれで満足や」とか思わないでしょ。
それと同じで劇団の稽古だと「まだいける」「もっとできるはずや!」って。だから今回もまだ(台本を)書き直しているんです。
役者の演技も、そこそこベテランもいますから達者にやってくれているんですけど「いや、まだまだや!」とか(笑)。
赤鬼の稽古場では、僕も演出家としてわがままになるんやと思いますわ。
今回もまだまだ悩んでいますけど、「いいお話」であることは間違いありません。
いつもよりちょっと大人なテーマを忍ばせていますけど、それをいかに楽しんでもらえるかを大事にしています。
ちっちゃい子どもが観ても「このお話、おもしろかったね!」と言ってもらえるようなものになっているはずです。
自分と家族のこととか、自分が周りの人の中でどう生かされているのかとか。
そんなことをしっとりと、ほっこりと、考えられるようなお芝居になっています。
人間誰もひとりでは生きていけないですから。「なんのために生きているのか」とか考えだすと難しいですけど、なんとなく「自分」というものを考える機会になってくれればなあ、と思っております。
出演は劇団赤鬼メンバーに加え、演劇ユニットQue の皆さま。
さらに
『のらん』出演の若手3人も参加です!
(下村和寿さん、原敏一さんはこの日お稽古お休みでした…)
「いつか書きたい」と思いながら温め続けてきたモチーフだという、今回の「大人なテーマ」。
ネタばれにならないよう、このレポではその内容を詳しくは語れません、が!
きっちりと笑わせて、泣かせてくれる「赤鬼クオリティ」はそのままに、結成20周年に向けてさらに一歩進んだ印象の劇団赤鬼2014年冬公演『最果てクロニクル』。
寒い季節にほっこり温まる、「人と人との気持ちのつながり」を描いた物語です。
ぜひ劇場で、最果ての町に住む人々の「想い」を感じていらしてくださいね!
おけぴ取材班:mamiko 監修:おけぴ管理人