演劇やミュージカルをこよなく愛するみなさんに、
「オペラ」の魅力も知っていただきたい!
そんな思いから始まった
【おけぴオペラ鑑賞応援企画!!】今回は少し趣向を変えて、ヨハン・シュトラウス二世によるオペレッタの名作『こうもり』を取り上げます。
2015年の幕開けにふさわしい
愉快で楽しいオペレッタ!
オペレッタは、言葉通りに訳せば
「小さなオペラ」。軽妙なストーリーと親しみやすい歌をもった娯楽的な作品が多く、日本では
「喜歌劇」「軽歌劇」などと訳されます。
つまり、
お客さんに“喜”んでもらうための“軽”ーい作品というわけです。洒落のきいた台詞に、思わず踊りだしてしまいそうな愉快な音楽。そして、あちこちに仕込まれた笑いの仕掛けの数々。ときには客席で爆笑が起こることも……。
でもオペレッタならいいんです!! 貴族や上流階級の娯楽だったオペラに対して、こちらはなんといっても
庶民のためのエンタテイメント。肩の力を抜いて、気軽に楽しもうじゃありませんか!
もちろんオペラと同様、うっとりするような
美しいアリアも満載。オペラデビューにもオススメです。
粋で軽快、そして優雅
ウィーンの薫り漂う音楽を堪能♪
そんなオペレッタの最高傑作とも称されるのが、この「こうもり」。
大晦日から1月1日にかけての物語なので、ドイツやオーストリアの劇場では、年末の風物詩にもなっているのだとか。
作曲したヨハン・シュトラウス二世は、19世紀ウィーンの超売れっ子作曲家。ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートでもおなじみの伝統的な
「ウィンナワルツ」や
「ポルカ」を数多く作曲し、聴衆の喝采を浴びていました。
この作品にも、
優雅なウィンナワルツの旋律が随所に登場します!
まずはあらすじをどうぞ。
公務執行妨害のかどで禁固刑を受けた主人公・アイゼンシュタインは、「収監前の気晴らしに」と友人のファルケ博士からオルロフスキー公爵邸の夜会へ誘われる。大晦日の晩、妻ロザリンデに内緒でいそいそと出かけるアイゼンシュタイン。姉イーダから同じ夜会に誘われた小間使いのアデーレも、「重病の叔母を見舞いに」とひと芝居打つ。
一方ロザリンデは、夫の不在の間に、かつて憧れたテノール歌手アルフレードと情事を楽しもうと企んでいる。が、夫の外出後、さっそくアルフレードと楽しもうとしたところで刑務所長フランクが登場。人違いでアルフレードを収監してしまう。
そして夜会。オルロフスキー公爵邸で鉢合わせするアイゼンシュタインとアデーレ。そしてフランクの姿も。身分を偽っている彼らはなんとかその場を取り繕おうとするも、嘘は次々とほころびそうになる。そして、そこにハンガリーの伯爵夫人になりすましたロザリンデまでもがやってきて……!
かいつまんでいえば、浮気と嘘、そして酒にまつわるドタバタ喜劇といったところでしょうか(笑)。
たくさんの客が集まる優雅な夜会の裏で、ウソを取り繕うため手に汗握る綱わたりを続ける登場人物たち。そのドタバタぶりが一番の見どころです。
本場のソリストたちの
“芸達者ぶり”に注目!
今回稽古場を訪問した新国立劇場公演は、2006年6月に上演された、ハインツ・ツェドニクさん演出によるプロダクションの再演。
このオペレッタの魅力がギュッと詰まった第2幕(夜会シーン)の稽古にお邪魔しました。
各所で指示や打ち合わせが同時進行。スタッフの皆さんも大忙しです
*オルロフスキー公爵邸で、ファルケ博士から勝手にフランス人の「ルナール伯爵」ということにされてしまったアイゼンシュタイン。そしてフランスの騎士「シャグラン」と偽って夜会に来た刑務所長フランク。
「お互いフランス人だから」と引き合わされても、話が通じるわけもなく……。
おお、友よ!!
アイゼンシュタイン(アドリアン・エレートさん:左)と
フランク(ホルスト・ラムネクさん:右)
アイゼンシュタイン役のアドリアン・エレートさんとフランク役のホルスト・ラムネクさん、芸達者なお二人が、思いついたフランスの単語を並べてしどろもどろの会話をするシーンに爆笑!
この場面はぜひ、
字幕よりもお二人の演技とコトバにご注目ください!!エレートさんは昨年の「ドン・ジョヴァンニ」タイトルロールに続いてのご登場です。
*女優オルガと身分を偽り、ロザリンデのドレスを勝手に拝借して夜会に来たアデーレは、会場で主人アイゼンシュタインとばったり。
「うちの女中が!?」と驚くアイゼンシュタインに、アデーレは
「こんなに手の綺麗な女中がいるかしら?」とシラを切ります。
アデーレ(ジェニファー・オローリンさん)
アデーレ役のジェニファー・オローリンさん。
「女優のフリをする女中」というなんとも複雑な役どころを、クルクルと変化していく表情で表現する様はお見事の一言! このシーンで歌われるアデーレのアリアは聴きどころの一つです。
そしてアデーレの姉・イーダ役には新国立劇場オペラ研修所出身の鷲尾麻衣さん。
新国立劇場が育んだ若い才能にも期待です!(同研修所出身の村上公太さんもアルフレード役でご登場です)
アデーレ(ジェニファー・オローリンさん:左)と
イーダ(鷲尾麻衣さん:右)
*2幕最大の見どころ聴きどころ!!
ハンガリーの伯爵夫人として登場するロザリンデを、妻とは知らずに口説いてしまう夫(笑)。
そして「本当にハンガリーの伯爵夫人?」と疑われたロザリンデが、その証拠にと歌うのが
ハンガリーの酒場音楽「チャールダーシュ」です。チャールダーシュは当時のウィーンで爆発的ブームだったのだとか。
ロザリンデ(アレクサンドラ・ラインプレヒトさん)
ダンスも織り交ぜ、なめらかな声で甘くせつなくチャールダーシュを歌い上げるロザリンデ。なんとも色っぽいシーンです!
この役をもっとも得意としているアレクサンドラ・ラインプレヒトさんは、新国立劇場初登場。
*不敵な笑み!?夜会の主催者・オルロフスキー公爵を演じるマヌエラ・レオンハルツベルガーさんと、ファルケ博士役のクレメンス・ザンダーさん。裏で何かを企んでいそうな予感……。
オルロフスキー公爵は男性ですが、通称メゾ・ソプラノが演じます。男装の女性歌手、いわゆる
「ズボン役」ですね。
ファルケ博士(クレメンス・ザンダーさん:左)と
オルロフスキー公爵(マヌエラ・レオンハルツベルガーさん:右)
そして、新国立劇場に5年ぶりに登場となる、ウィーン出身のヴェテラン職人指揮者アルフレート・エシュヴェさん。
ヨハン・シュトラウスの優れた解釈者としても知られ、2012年のウィーン・フォルクスオーパー日本公演でも『こうもり』を指揮しました。
稽古の合間に談笑中。指揮者のアルフレート・エシュヴェさん(右)
*夜会の客たちを演じるのは、新国立劇場合唱団の皆さん。華麗で愉快な夜会の雰囲気を演出する、陰の立役者です。
1ショットでは撮り切れない!!合唱団の皆さんの奮闘にも要注目です!
稽古場という狭い空間で初めて合唱を聴いた取材班は、全員の声が一つになったときのパワーと迫力にびっくり!
みなさん笑顔^^
*いよいよ刑務所に出頭するアイゼンシュタイン。ところが最後にアッと驚く展開が!
結末を知ったら、きっともう一度観たくなるはずですよ!
(事前に全編の内容を予習してから観るのも大いにアリ!だと思います。きっと物語の随所に仕込まれた洒落た仕掛けや小芝居に気づくはず。ご希望の方は
「こうもり あらすじ」でLet’s検索♪)
愉快で楽しいドタバタ喜劇に、華やかな舞台、そして軽妙酒脱なウィーン音楽。
会場がドッと笑いに包まれる!? 新年にふさわしく、ひたすら楽しい作品です。
稽古中、ソリストや合唱団の皆さんも終始笑顔♪ 演じることを心から楽しんでいるご様子でした。
客席でも、どうぞたくさん笑ってください!
そして今年も楽しい観劇Lifeを送っていきましょう♪
おけぴ取材班:hase(文/写真) 監修:おけぴ管理人