<舞台写真掲載につき、ご観劇前のみなさまはご注意ください>容疑者、その男の名は小林一茶。
井上ひさしさんが描く江戸を代表する俳人、小林一茶の評伝劇が鵜山仁さんによる新演出で待望の10年ぶりの上演です!!とある事件から、平成の世にまで名を残した一茶という人物をあぶり出す、評伝劇でありながら推理劇の要素も持ち合わせたエンターテインメント性に溢れた作品です。
写真左より)荘田由紀さん、和田正人さん、石井一孝さん
あらすじ
蔵前札差井筒屋八郎右衛門の寮から四百八十両の大金が盗まれた・容疑者は食い詰め者の俳諧師、小林一茶!
見廻り同心見習いの五十嵐俊介(和田正人さん/二役)はお吟味(捜査)のために芝居を仕立て、自身が一茶を演じながら彼をよく知る元鳥越町の住人たちの証言をつなぎ合わせていく。そこに浮かび上がってきたのは、俳諧を極めようともがき、ひとりの女性およね(荘田由紀さん)を命がけで奪い合った一茶と宿敵・竹里(ちくり/石井一孝さん)壮絶な生き様と事件の真相だった。
お吟味芝居、つまり事件を彩るのは劇中劇!迷句珍句の言葉遊びにドンデン返し!歌や踊りを交えながらテンポよく進む捜査=芝居に引き込まれ、巻き込まれる幸せを堪能されたみなさまの感想を舞台写真を交えながらご紹介いたします!!
レポ後半には初日前会見レポも!!写真右)弥太郎(のちの一茶:和田正人さん)は懸賞句会で勝ちを確信!
劇中劇の形で半分ミステリー仕立てになっていてラストではあっそういうことかー!
とカタルシスが味わえました。ライバル同士の不思議な友情、男女の不思議な関係性、抑圧される者の悲憤など、生々しい人間関係が生き生きとした日本語で描き出されていて、井上ひさしワールドを存分に堪能しました。
劇中たくさん登場する俳句的台詞はどこまでが一茶の作でどこからが井上氏の作なのか?検証したくなります。懸賞句会、わずかな差で勝ったのは…竹里(写真左:石井一孝さん)
弥太郎ショック!!
いやぁ、おもしろかった!井上戯曲は繰り返される言葉のリズムとぴったりな音楽、
楽しいダンスが随所にちりばめられていて、いつも見ごたえ十分です。
最初はひとり何役もやるのでちょっとわかりにくかったけれど、二幕は妖艶な恋愛模様とどんでん返しの謎解きであっという間です。
初めてストレートプレイを拝見しましたが竹里の石井一孝さんと一茶の和田正人さんがすばらしい。「(賞金なしでは)家に帰れない~」すがる弥太郎
上演3時間のどこを切り取っても楽しめる舞台でした。小林一茶とそのライバル竹里が物語の軸ではありますが、他のキャラクターも個性的で人を惹きつける魅力がありました。
日本文化が意識されているのだなと感じる場面もあり、「一茶」を題材に俳諧の面白さや日本的価値観を振り返る機会にもなりました。
興味深い題材・脚本を、何役も演じ分ける芸達者なキャストで観る、これほど贅沢なことはないと思います。
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石井一孝さんの演技、ミュージュカル以外で初めて観ました。うまいですね。ちょんまげが凄く似合っていて、更にイケメン度アップでした。
荘田由紀さんはついこの間『さくら色オカンの嫁入り』で初めて観させていただいたのですが、本当にきれいで声もよく通るし、お上手です。出演者がみなさんお上手で時間があっという間でした。懸賞句会の賭けが知られ、岡っ引が乱入し?!
瞬時に何役も演じ分ける芸達者な役者さん達と、テンポある展開に魅せられ、とても面白かったです。小林一茶という人物に改めて興味が湧きました。
そして個人的には竹里の人間臭さに惹かれ、一茶には竹里という良いライバルがいたからこそ大成したのではないかと思いました。
窃盗犯の正体を探る目的で、周囲の人物から一茶像を浮かび上がらせ、竹里という目線で本物の一茶像を導きだす。井上さんの脚本は本当に素晴らしいなぁ。と感動しました。
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国語の教科書での俳人の小林一茶でしか知らなかったイメージが、
この舞台でイメージがガラリと変わりました。ライバル竹理との関係も最後まで目が話せませんでした。♪江戸 江戸 江戸、江戸は良(え)いど~ 一茶のリードで歌う船客
和田さんはセリフもリズミカル、喜びも嘆きも表情豊か、身体全体を使って一茶を演じ目が離せません!!一方ライバルの竹里を演じる石井一孝さんは一茶を、和田さんをドンと受け止めるスケール大きさがとっても素敵です。
さぁ、事件の真相はいかに?!
犯人は一茶なのか、それとも…
【初日前会見】
劇中さながらにテンポよい掛け合いの妙が炸裂した会見の様子をレポートいたします!!
--いよいよ明日は初日、今の心境は和田)幕が開いたらやるしかない!その緊張感でいっぱいです。
石井)長く舞台俳優をやっていますが、井上ひさし先生の作品は独特の緊張感がありますね。
言葉が美しくてよどみなく、つまり流麗なんです。ですからちょっと流れに乗り損ねるとフォローできないような、美しいがゆえの危険を伴うんですよね。
そこに負けないように、美しいものを美しいままにみなさまにお届けできるように、自分を信じて、そして仲間を信じて頑張ろうと思います。
荘田)本当にドキドキで緊張しかありません。とにかく明日、幕が開けば何か見えてくるものがあるだろうと期待しながら挑みます。
石井)客席のお客さまが渡してくれるものって確かにありますからね。幕が開いたら、それが命綱です。
--初共演となる和田さんの印象は荘田)頼りがいがあってみんなを引っ張ってくれる、すごく素敵な方です。
石井)正人君には何か天から降ってくるものがあるんですよね。芝居をしていてもキラキラと後光が差し込んでいるような。
和田)いや、みなさん、あまりハードルは上げないで…
石井)そう?(笑)。
つまりなんというか、頭がいい、切れ味鋭い役者さんです。
和田)もう!!
--では、和田さんから見たお二人の印象は和田)キタ!
カズさん(石井さん)は初対面からお兄さんだなという感じでした。
最初から「正人君」と呼びかけてくださり、僕が呼ぶのも「カズでいいから」って。
この距離の縮め方スゴイですよね、稽古場でも初めての感じがないままここまで来ました。
その「お兄さん感」、「いつも見守られている感」が竹里と一茶の関係性に近いなということが後々気づきました。最初からその雰囲気を作っていただいていたんだなと今更ながら気がつきました。
由紀さんは、今回紅一点で非常にやりづらいこともあっただろうと思います。周りが野郎ばっかりですし(笑)。
でも、女性一人なのにもかかわらず発するパワーエネルギーがスゴイんです。
「負けねーぞ!」というね、男勝りの気迫というか…、それでいて舞台の上では女性としての所作やたおやかさがあるんですよね。
--最後に和田さんからみなさんにメッセージを和田)井上先生の数ある戯曲の中でも俳諧を題材にしていることにとっつきにくさを感じる方もいらっしゃるかもしれません。でも、実はとてもシンプルで、小林一茶が四百八十両という大金を盗んだ疑いで捕まってしまった。
一茶が犯人かどうなのか、どんな驚きが待っているのか!その推理劇だけでも十分に楽しめます。
そして、そこを楽しんでいる間に、ほかにも仕掛けられた井上先生ならではの面白さが見えてくる!なんなら俳諧について、俳句について勉強にもなる!
とってもお得な作品ですので、ぜひ、劇場へお運びください。
二人のライバル関係、一人の女性をめぐる三角関係もみどころ♪
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人