2013/06/19 ミュージカル『Count Down My Life』作曲家・小澤時史さんインタビュー

2011年10月にワークショップ公演という形で上演され、
2012年2月に二週間の本公演として好評を博し、
さらに同年8月には中野ザ・ポケットにて再演された
TipTap のオリジナルミュージカル「Count Down My Life」。

私おけぴ管理人もワークショップと本公演両方観てきたのですが、
全編ほぼ歌で綴られたミュージカルで、
耳馴染みのいい楽曲(21曲!)がバンド生演奏で奏でられ、
さらに舞台セットや照明などにも趣向が凝らされていて
小劇場ならではの臨場感をたっぷりと味わえるミュージカルなのです!

作・演出は、気鋭の若手・上田一豪さん
(早大ミュージカル研究会出身で現在は東宝演劇部に所属)。
作曲を手掛けたのは、才能溢れる当時現役音大生だった小澤時史さん。
今回、ニューヨーク国際フリンジフェスティバルの招聘作品に
選ばれたということで、この機会にぜひお話を伺いたい!と思い、
小澤さんに直撃インタビューしてまいりました♪



おけぴ)
まずはニューヨーク国際フリンジフェスティバルの招聘作品での公演決定、
おめでとうございます!


小澤)
ありがとうございます。
この作品で、NYで公演し、日本にも素晴らしいミュージカル作品があること、
それを作り上げるクリエイターや役者、演奏者がいる!ということを
アピールできることを、本当にうれしく思っています。

さらに、NYで日本語で上演(英語字幕)できることもとてもうれしいです。
僕らは日本でオリジナルミュージカルを一から作っています。
そのときに、大切にしているのはやはり“言葉”です。
僕が作曲をするときも、日本語の台詞・歌詞、
そしてその語感を大事にしています。
なので、あちらの演劇祭の方に理解していただき、
日本語上演が決まったときはすごくいいことだなと感じました。

おけぴ)
メロディにぴったりと合った原語(=日本語)の歌詞でやはり聴いてほしいですよね!
それでは、今回上演される『Count Down My Life』のタイトル曲、
まずこの曲の誕生について教えていただけますでしょうか?


小澤)
作・演出の上田一豪さんが作品を通して言いたいことが詰まっている曲なので、
実は最初に書きました。
でも、その後、上田さんともあれでいいのだろうか・・・と話し合いを重ねて、
“正解”が見えないままでけっこう悩みましたね。
そこで一度、歌詞を離れて、まず僕なりの解釈でメロディを書き、
それに歌詞をつけてもらうことを提案し、あの曲ができあがったんです。

おけぴ)
あの曲はメロディが先に生まれたんですね!


ちなみにそのタイトル曲「Count Down My Life」がこちら↓

おけぴ)
そのメロディが生まれた瞬間ってどんな感じでしたか?


小澤)
急に降ってきた感じです(笑)
あんまりないんですけどね、そういうことって。
でも、このときは「あ、これだ」という感じで出てきました!

おけぴ)
この作品では全部で21曲ですが、制作活動は順調に?


小澤)
けっこう本番ギリギリまで書いていましたね(笑)

おけぴ)
ということは、お稽古が始まったときには、まだすべての曲はできていなかった?


小澤)
全然ですね(笑)。
結果的に稽古をやりながら曲を作れてよかったかなと、いや、よくはないんですけど(笑)

おけぴ)
よかった点といいますと?


小澤)
出演者がABCDの4チームあったのですが、
それぞれ高音が魅力の方がいたり、そうでない方もいる。
稽古をしながら、それぞれの役者さんにあわせてキーを変えたり、
音形を変えたりしていったんです。
(おけぴ注:初演のワークショップ公演は、稽古期間2週間、
 出演者5人、4組での上演でした)


おけぴ)
なんと、“あてフレーズ”ですね!!
稽古場には頻繁に顔を出されていたのですか。


小澤)
はい、稽古ピアノも担当していたので、
ほぼ毎日12時から21時くらいまで参加してたんです。曲ができていないのに(笑)!!

いやぁ、本当に辛かったですよ、「どんな顔して行ったらいいんだろう」って。
でもキャスト・スタッフのみなさんが「よく来たね」って励ましてくれて(笑)。
何より、稽古場には「2週間でやる!」というエネルギーがありました。
キャストは4チームに分かれていたのですが、
それを超えた『Count Down My Life』を創り上げるぞ!という
チームワークがあったんです。

それでも、家に帰るとやっぱり疲れているんですよね。眠くなるんですよ。
でも、みなさんの顔が浮かんでくるんです。期待されているのもわかりましたし。
そしてそれには応えたい!いい意味でプレッシャーを感じながら、
たくさんの人に後押しされて書き上げることができました。

おけぴ)
ちなみに、「失敗したなー」というエピソードはあったりしますか?


小澤)
ありますあります!
曲を書いて、「できました!」と稽古場にもっていって、
実際にシーンに入れてみると・・・「あれ、これ違うね」って(笑)
そういうときは、次の日に別の曲を持っていくんです。
これはもう、作曲家としていちばん恥ずかしいですね。
「みなさんの記憶から最初の曲を消し去ってーーー!!」って感じです(笑)


おけぴ)
そんな小澤さんが作曲家を志し、ミュージカル音楽を手掛けるようになるまでの
お話を聞かせてください。“音楽”を始められたのは?


小澤)
4歳ぐらいからピアノを習っていました。
曲も小さいころから即興で作っていましたね。
もちろん好きに勝手にやっていただけで、趣味みたいなものですけど(笑)

本格的に学ぶきっかけになったのは、高校です(音楽高校)。
いろいろなものを学ぶコースに入り、いくつかの選択肢がある中で、
2つ選ばなくてはいけなかったのですが、
そうなると“ピアノ”と“何か”ですよね。
僕は歌を取りたかったのですが、
なぜか両親に「向いていないからやめなさい」と言われ……(笑)
作曲にしたんです。

※ちなみにご両親は音楽関係のお仕事ではないそうです……。


おけぴ)
ご両親が歌の道に反対した理由も気になるところですが……。
こうして、作曲活動が本格的にスタートしたわけですね。


小澤)
まずはアレンジ、編曲からはじめました。
音楽高校だったので、演奏者の友人はたくさんいました。その中で
“あの子は作曲を習っているから曲書いてもらおうよ”
という具合に、ちょくちょく作曲を頼まれるようになったんです。
今思うと、まだまだ勉強が足りなかったので、ひどかったですけど(笑)
でも、演奏会の最後に紹介されるのがもう気持ちよくて。
「これはいいなあ」って感じでした!

おけぴ)
それはミュージカル楽曲だったんですか?


小澤)
まだ、関係ないですね。
ミュージカル作品を手掛けるきっかけになったのは、
2010年のTipTap公演『宇宙ダイヤモンド』です。
まず僕の友人に作曲依頼がきて、
曲数が多いので半分ずつやらない?と誘われたんです。
それが初めてのミュージカル作品でした。


おけぴ)
手掛けてみて、いかがでしたか?


小澤)
大学では映画やポップスなどを学ぶコースだったので、
最初は勝手がわからず苦労しましたね。
ただ、そんな中でも “こうかなぁ”と少しずつ掴んでいって、
だんだん面白いと思うようになりました。
稽古場にも何度か行って、役者さんともいろいろと話し合えたこと、
そして作・演出の上田一豪さんが好きな曲調と
僕の好みが近いことも大きかったです。
ロックとかポップスみたいな、馴染みのあるわかりやすい曲が好きなんです。

おけぴ)
その上田さんから、音楽を重視したミュージカル『Count Down My Life』を作りたいという話が来たわけですね。


小澤)
はじめに台本を読んで、「いい作品だな!」と、そのよさがすぐにわかりました。
実は、作曲家ってあまり本を読むのが得意ではないんですよ。
すぐに疲れちゃうというか、僕だけかな(笑)。
でも『Count Down My Life』の台本はすぐに読めたんです!
音楽に関しても、「こういうテイストで」という曲を数曲いただいたものから
自然にイメージが湧いてきて、仕事としてというより、
まず、自分自身やりたい!という気持ちが強かったですね。

おけぴ)
こうして誕生した『Count Down My Life』ですが、再演時には変更点もあったんですか?


小澤)
再演はブラッシュアップすることが目的でしたので、当然いろいろと変えました。
まず、初演時はバンドの編成がピアノ、ギター、ベース、ドラムでしたが、
これだと男臭い感じで(笑)。
単純に高い音域が出ないというのもあるのですが、
そこにヴァイオリンを入れることで女性的な視点というか、音楽的な幅を持たせました。
あと、再演では私自身がバンドメンバーとして公演に参加したので、
演奏面でもブラッシュアップできたと思います。
芝居の面でも、
上田さんが見せ方や立ち位置などをいろいろな角度から修正していましたね。


おけぴ)
再演を経て、いよいよ完成形となったのですね。


小澤)
そうですね。ただ、完成しても、弾いていて決して退屈にならない作品です。
最近、ライブの準備で練習しているのですが、
今の僕にはこんな曲は書けないと思うんです。
1年半しか経っていないんですけどね(笑)

おけぴ)
どんなところが?


小澤)
余計なことを考えず、真っ直ぐに、飾らないで書いているところですね。
ひと言で表すと“シンプル”。
今弾くと、ちょっと恥ずかしくなるくらいです(笑)
ただ、シンプルだからこそ演奏に気持ちを込められる。
それによってバンドの中でも、バンドと役者の間でも、
毎回新鮮な反応を確かめ合えるんです。
それが見ている方に届いて、心が動くのかなと思っています。

おけぴ)
思いの詰まった楽曲たちなのですね。


小澤)
もう、思いしかない! 情熱そのものです。

おけぴ)
最後に、小澤さんにとって上田一豪さんってどんな人ですか?


まず、ミュージカル作品に携わるきっかけをくれた方ですし、
一緒に『Count Down My Life』を作れたこと、感謝しています。
自分の思いをお客さんに伝わるように表現することって、とても難しいですよね。
それを、脚本にしていることがまずすごい!
さらに劇場入りしてセットなどを見ると、ハッとさせられます。
思いもかけない発想があって、いい意味で裏切られるんです!

そして、稽古場が楽しい!
僕は作品を作り上げる過程で思い切り煮詰める作業が好きなんですが、
上田さんは自分がやりたいことを丁寧に説明し、
その上で役者さんの質問や意見を聞く。
モノを作る人間の熱い思いを理解してもらおうとする姿に共感します。


おけぴ)
来月にはいよいよニューヨークでの上演ですね!
今回のNY公演では、応援してくれるサポーターの方も募集されていますが、
そこで小澤さんのオリジナルCDがあるということを知ったのですが。


小澤)
このCDは、僕の名刺代わりというか、
こんなことができますよ!というプロモーションも兼ねた一枚です。
歌もあれば、オーケストラのために作った曲もあります。
演奏者もドラムやベースは
『Count Down My Life』にも参加してくれているメンバーなんですよ!

今回の演劇祭参加にあたっては、
本当にたくさんの方のサポートをいただきましたし、
これをきっかけに『Count Down My Life』を知ってくださった方も
いらっしゃるかと思います。
みなさんへのお礼も込めて、NY公演の様子を報告したり、
日本で凱旋公演もできたらと思っています!!

おけぴ)
ご報告、そして凱旋公演!!楽しみにしています!
ありがとうございました!!!



<プロフィール>
作曲家 小澤時史
1989年生まれ。東京音楽大学付属高校から東京音楽大学作曲科(映画放送音楽コース)に入学し、2012年卒業。
これまで作曲を三枝成彰、服部克久、千住明、小六禮次郎の各氏に師事。
大学在学中からミュージカルなどの作曲を行い、NHKミュージックライブラリーへの楽曲提供や、アーティスト、ミュージカル俳優とのライブ活動など、幅広く活動している。

小澤時史さんのブログ
TipTapのホームページ (ニューヨーク公演情報や小澤さんの次回参加作品情報も!)


おけぴ取材班:おけぴ管理人(文),chiaki(文/撮影)

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