劇団青年座 宮田慶子さん 前編| おけぴ管理人インタビュー#8 | チケット救済 | 公演紹介 | 観劇ノススメ | 検索 | 使い方(FAQ) | サイトマップ | トップ |



舞台を作り上げている人たちにお話を聞くおけぴ管理人インタビューシリーズも 第9弾となりました。
今回の管理人インタビューは、

劇団青年座の演出家 宮田慶子さん。

10月10日から18日まで紀伊國屋ホールで上演される 千里眼の女の稽古場にお伺いして、さらに宮田慶子さんに インタビューさせていただくことができました! 演出のお話から、劇場や客席の空気感・波動まで、 興味深いお話をたくさんお伺いできました! かなりたっぷりお話をお聞きしたので、 今回はその前編としてお届けします!

管理人: 演出家のお仕事について教えて下さい

ざっくりいえば(笑
”台本に基づいて、スタッフと役者をまとめあげて、一つの舞台を作り上げるまでの司令塔”。

ありとあらゆる注文を、スタッフや役者にします。
それと、あがってきたものに対する判断、ジャッジですね。
”常に無数のジャッジを重ねる担当”と言ってるんですけど、
AとBどっちがいい?→A!
赤と白、大きいのと小さいの、どっち?
それこそ細かいジャッジをいれたら毎日何百という
素早くジャッジをしながら作業を進めていく仕事です。

また、ジャッジするには、演出家には
自分がどうやりたいんだという「演出プラン」が必要です。
最終的にどんな形で舞台にのって、お客様に観ていただけたらいいな
という絵があるか無いかにかかっていて、絵さえあれば判断が速いです。

管理人: その絵はどのように描かれるのでしょう?

とにかくひたすら台本を読みます。

皆さんが小説を読む時に、ありとあらゆる想像力を駆使して
創造の世界を広げていくのとまったく同じで、
演出家も、台本を何度も何度もよみながら、
リアルなライブの舞台をイメージしていくわけです。
その時に、例えばスーパーマリオというゲームを知らない人間が
ワープした世界を創造できないのと同じように
演出家も、そのことを映像化していくために、山のような知識が必要なんです。

若い頃に、先輩達から、新聞と週刊誌はすみからすみまで読めっていわれましたね。

管理人: 今でも?

習慣になっちゃってるから、愛読書っていったら”新聞”っていうくらいです。
隅から隅まで、アフリカで何が起きてるかとか、選挙がどうなったとかも読んでいます。

管理人: メモは?

ぜんぜん。忘れてっちゃうことも多いですけれど、
印象が残ったものは、思いがけないところで、
舞台のビジュアルをクリアに明確にしてくところで役に立っています。

管理人: 一例とかありますか?

おととい出張で長野と岐阜の県境のたんぼの中の劇場に行ったんです。 ほんとに漆黒の闇で、そこにいると、流れ星がしょっちゅう流れるのが見えたんですね。

そしてちょうど昨日、お稽古してるお芝居でヒロインが
「あ、流れ星」っていうシーンがあって、流れ星って実は見えてる
時間はすごく短くてスピードが速いからこそ儚い感じがする、と伝えたりできるわけです。
そういう経験したこととか、知っていることって
より具体的に指示が出していけるんですよね。

流れ星ひとつそうだし、真っ赤な夕焼けにしてもそう、
情景だけじゃなくて、人をだますとか、
自分が追い詰められて嘘をいった経験がある人ない人とかもそうですね。
演出家は、そのことを想像できるだけの知識はもっていたいですね。

それからやはり、いろんな国の情勢とかを知ってるといいと思います。
戦争がある国の人たちの足元がふらつく不安感や、
必死にしがみついて立っていないといけないという根性、
それは新聞読んでたりしていてもわかってくる。
そんな意味で一杯知っておくといいかな。



管理人: 指示は言葉で?

絵はスタッフには描くけど、役者にはなるべく言葉で伝えています。
やって見せるということも、なるべくしない方がいい。
どうしてもわからないときは、
"例えばこんな風にってやりますけど、例えばでやるからなぞらないでね"
と言ってます。
例えば、お茶を丁寧に置いて、といっても、
日本の礼儀作法としての丁寧がわからなかったりすると、
やってみせないとわからない時もありますよね。そんな時はやってみせますけどね。

演出家はボキャブラリーの勝負だともよく言うんですけど、
なるべくたくさんの言葉をなげかけながら、何にひっかかってくれるだろう。
何がその人の感性をインスパイアするだろうというのをずっと探っています。

管理人: 人によって違うわけですよね?

全然違う。めんどくさい(笑)。ほんとに。
この言葉にこいつは響かないんだーって思う(笑

また、(青年座でない)外のお仕事だと、
プライベートに仲良くなる前に仕事をしなくちゃならない。
すると、お稽古で注文の言葉を投げながら、その反応でどういう人かを探っています。

管理人: すると青年座公演の場合は言葉の投げかけ方もかわってきますね

劇団に帰ってくると、みんながどうして(宮田さんが)
そんなきついこというんだって言うけど、
探りがない分、歯に絹着せなくなっちゃうんですよね。
直接スパーンっていっちゃうんです。ごめんごめんとかいいながら(笑

管理人: 昔と今で演出のやりかたは変わりましたか?

自分自身は変わりましたね。
若い頃っていうのは、相手のことが待てなかった。
役者が悩んでる時間を待てない。
なんでできないんだよーガツガツガツってやってた(笑
今の方が、”ん、わかった。二日くらい寝かせようか”
っていえるようになりました。

管理人: 寝かせた方がいい?

役者もできないできないって思ってる時は
余計なプレッシャーを感じてるから、
開放されてないからうまくできるわけがない。

でもなんとかそこも根性でのりきれるんじゃないかって
若いうちは思うんです。自分が体力あるから。
こいつだってのりきれるはずだって思うから(笑


管理人: ミュージカルの演出もされていますが、演出面で大きな違いはありますか?

ミュージカルは音楽に縛られてることは大きいと思うけど、
最終的には、人間がみえることが一番面白いとは思うんです。

人間っていっても、生身の役者をみせるんじゃなくて、
あくまでも舞台上に作る人物の面白さ。
歌がうまいっていうことじゃなくて、
その歌がうたえる人間の面白さだよね。

幅がある人間をみせるっていうことについては、
演劇もミュージカルもどっちも同じと思いますね。

あとは舞台の大きさをいつも楽しみたいなと思っています。

劇場にも特性があって、日生劇場は日生劇場の面白さがあり、
紀伊國屋ホールは紀伊國屋ホールの面白さがあるんです。

大きな舞台の時はお客様にどーんと大きく投げかけられる楽しさがあるし、 小さな舞台の時は、こーんなことをこちょこちょしてみたり、 ピクってのをひとつ投げることができるんですね。

例えば、ふっとみあげる目線の動きひとつにしても、
新橋演舞場の場合は、役者が顔の向きまで変えないと、
客席からは気づかなかったりするんですよね。
それが紀伊國屋ホールになると目線の動きがわかるんです。
さらにスズナリだと、目玉の動きだけでわかって、
おおいに活きるんです。それがメインの芝居になってきたりして。

ただオーバーにやると気持ち悪いし、
いかにさりげなくやっていうかってのが
大劇場の役者の技術だったりしますね。
(ガブリエルシャネルの主演の)大地真央さんをみてると、
わざとっぽい動きを楽しんでますね。
こんくらいやってると楽しい?みたいな感じで(笑

管理人: 演出をされる時に心がけているところは?

最終的に、演出家は橋を架ける役割と思うんです。
ものを作ってるときというのは主観でしか作れないんですけど、
演出家は、主観で作ってて最後に客観にひける唯一の存在なんですね。

管理人: 最後に観客の視点で観るわけですね?

そう、最後の最後に、お客さんの都合でみるとどんな感じなのかなと。
観客代表ですね。

管理人: どんな気分でご覧になってるのでしょう?

超のんきなおばちゃんという気分でみるの(笑
ロビーの売店で飴買って、あー大変だ、間に合わないーって入ってきて
さぁどんな芝居だろうっ!ていう気分(笑

管理人: そうやってみると変えたくなる点が

出てきますね。
お客様には伝わらないなという部分もみえてきます。

管理人: 初日あけてからどのくらいご覧になってますか?

たいて初日翌日は見ますね。
3日目までなるべくみて、芝居がおさまったらぷらっと離れたりもしますけど。

管理人: 初日観てから変えたりもしますか?

新たなことっていうよりも、よりやろうとしてたことで
ちょっとうまくいき損ねていた事とかはね。

最終的にはお客の空気なんですよ。すごい影響を受けて芝居しています。
笑いとかがなくても、空気が動いてるとか、凍り付いてるとかがすぐわかるんです。

管理人: なんでわかるんでしょうね。

なんでわかるんだろうねー。

役者が投げかけて、客席がサワサワーってなってる時とか、
役者がふっと緊張すると客席がフッッて止まったり。
すると、よっしゃOKって演出家は思うんです。
お、みんなで聞き耳たててる!って。
そして役者がしゃべりはじめていくと、うねりはじめるんです。

管理人: しかも毎公演ごとに違うわけですよね。

そうなんです。
同じ内容なのに、お客さんの空気が毎日違うんです。
例えば、せっかく客席がすごーくあつーくなってたのに、
携帯がプルルプルルって鳴るとヒューっと温度がさがりますよね。

現実に引き戻されるんだけど、
明らかにまわりも引き戻されたのがわかりますよね?
”お互い、引き戻されましたよね?”って。
互いに言ってないのに気配でわかるんですよね。

あれが感じ取れるということは、
人間の中に確実に第六感とか波動を感じる力があるんだと思います。

管理人: 役者さんもそれを感じ取っているんでしょうね

役者が空気を変えていきますね。
どうやってもひっかかんないからひっかけちゃったよとか。
板にのってる役者がプロフェッショナルなので。

芝居が観客に受け入れられてるか、受け入れられてないかは
役者自身はものすごいわかるんです。
客席にいても何かが違うんですよね。

管理人: 何が違うんでしょうねー(興味津々)

十数年前にある劇場がした面白い試みがあって、
緞帳があがった時の気圧を均一にする仕組みを作ったんですよ。

管理人: 計測できる気圧という意味でですか?

そうそう。開演前、緞帳降ろしておくと、
舞台の温度と客席の温度に温度差と気圧差が発生するんですよ。

緞帳の内側は、狭かったり、照明が照らされていたりして、
一方で客席の方は空調がまわってるし、両者に微妙な気温差気圧差があるんです。

そして緞帳がグーっと上がった時に、
舞台側の空気がブワーって客席の方に流れる場合と、
客席の空気が舞台側に流れる場合があるんです。

多くの場合、舞台の方が熱くなっていて、
客席はいかんせんまだ開場してから30分くらいだし、
上の方の空気が冷たくなってるので、
そうなると客席の空気がいっせいに舞台に流れ込んで滞留しちゃうんですよ。

そうすると、役者がどんなに声出しても
向かい風にむかって声出してる状態になってしまうんです。
あたま10分ってのは台詞聴こえないってのはそれなの。

管理人: へーーーー!!

昔の歌舞伎とかは、最初の5分くらいは主役出てこないじゃないですか。
あれって劇場の気圧がおさまってから出るようになってるんでしょね。

見えないから、気がつかないんですが、
でも実は音響さんと演出家は知ってるんですよ。

だから空調のことを気にしたり、聴こえないねー、
頭だけマイクひろおうか、空気収まってきたら抑えようみたいな話をよくしますね。

管理人: 集中力の問題だけじゃないんですね

違うんですよ。
また、客席は、お客様が入ってらして、音はしてないけど、
目にみえない日常の波動がぐわんぐわんしちゃってるから、
空気がぐっちゃぐちゃしてるわけですね。
そういう状態で幕が開くから、最初の方は通らない通らない。

じゃぁそれに対してどういうふうに仕掛けていくか。

オープニングをダーンと始める場合と、
きゅっと無理やりお客に集中させちゃえという場合とかもあります。
幕が開いてみたら、一本のろうそくだけが揺れていたり。
そういう集中する場所を作っちゃうと比較的調整が早いんです。
そんなことにだんだんみんな気がついてきたりしてますね。

そういうみえないものまで相手に仕事をしています。
最終的な演出家の仕事って、空気が作れたら一番なんです。
いろんなコンディションを含め、
役者の集中でくっと空気が止まるとか、そういうの全て空気ですね。

管理人: ところで今その気圧を調整する仕組みってのは使われているんでしょうかね?

客席と舞台を均一にするよう、
技術屋さんが一生懸命されてましたが、
それ以上に客席の空気がぐちゃぐちゃなので、
今使われているかどうかはわからないですね。


なんとも面白いお話満載の宮田慶子さんのインタビュー前編でした。
続きは後編として、近日公開予定です。どうぞお楽しみに!



そして今紀伊國屋ホールで上演中の、宮田慶子さん演出の千里眼の女。
こちらをご紹介しておきます!

管理人: 千里眼の女の見所を

キャッチーなので、開き直って言ってますけど

「(映画)リングの貞子の母親とされる人物のお話」です。

その彼女(透視能力を持つといわれていた御船千鶴子)を取り巻いていた
男達が敗北していく美学のお話です。
男達が、目には見えないのを信じて科学的に解明しようとしたけど、
世間に負けていくんです。目にみえないものは信じられないっていって。
そして、とってもロマンチックなラブストーリー!純愛です。

その千里眼の女は、2009年10月10日から18日まで。
紀伊國屋ホールにて。稽古場レポもこちらでご覧いただけます♪
詳細・チケットのお求めは青年座の公演HPから






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