田尾下哲さん| おけぴ管理人インタビュー#14 | チケット救済 | 公演紹介 | 観劇ノススメ | 検索 | 使い方(FAQ) | サイトマップ | トップ |


2012年1月に上演されるミュージカル「BONNIE&CLYDE」。 このミュージカルの上演台本と演出を担当されるのが、 田尾下哲さん。経歴を拝見するととってもユニーク! ミュージカル演出へのこだわりポイントなどたっぷりと お伺いしてきました!


<舞台人 田尾下哲 誕生まで>
(舞台の力、音楽の力を信じ)全ては舞台に向かっていた

まず経歴を拝見しとてもユニーク、異色な印象を受けたのですが…(経歴参照

もともとは医師を目指していたんです。

中学・高校時代はハードロックのバンド活動に夢中でした。
1日12時間くらい練習したり、
授業中もずっとギターのネックを持っていたり、
指の間を切ったり(すると半音広がる)していました。
それくらい音楽が好きだったんです。

そんな中、高校二年生のときに友人が亡くなりました。
音楽をやってることと、友達が亡くなるというギャップを考えた時に、
このままでいいのか、自分に何かできないかと考えたんです。

このことをきっかけに“命”について考えるようになり
医者になろうと思いました。

バンド漬けだった日々から一転、医学部を目指されたんですね

仮面浪人をしながらも医学部を目指していたんですが、
学科で受かってもその先のハードルが高く、断念しました。
そこで、命に携わる仕事として、他に何ができるだろうかと考えた時に、
愛や命の大切さを圧倒的な音楽の力で伝えることの出来る
”オペラ”を仕事にしようと思ったんです。

そして建築学科へ!?

はい、当時通っていた大学を中退して建築学科に進みました。
オペラで何が出来るかな、と考えた時に、
ずっと絵画をやっていたので、舞台美術を学びたいと思ったんです。
当時は、舞台美術を専門に学べる大学を知りませんでしたので建築だろうと。
ですから、建築学科での卒業設計も一人だけ“舞台美術”。
これは未だにいないでしょう(笑)。
論文もオペラ蝶々夫人の舞台美術について書きました。
日本家屋を外国人が設計しているようなことって他にないんです。

その後、大学院では心理学を専攻したのですが、
これは演出家として人間心理を学ぶために行ったんです。
新国立でオペラの仕事を始めたのは、その頃からですね。

そこから本格的に舞台・オペラの世界での活動を始めるに至ったわけですが、
医師を目指していた頃と“志”は変わっていないのですね!

はい、僕の中ではなんら変わっていません。
時として舞台がみなさまに与える力は薬や外科的手術より大きなこともあると思うんです
そういった舞台の力、音楽の力を信じ、全ては舞台に向かっていました


<ミュージカルの世界へ>
音楽の力は大前提、その上で言葉・芝居を大切にし、ドラマを描きたい

今回ミュージカルを演出されるに至ったきっかけがあれば教えて下さい

言葉です。
2007年にオペラ「カプレーティ家とモンテッキ家」という作品で
高校生のための鑑賞教室を原語で上演したときに
“言葉が遠いな”と感じたんです。
原語上演が当たり前のオペラの世界で、
日本語でないことがこんなに遠いんだと。

ミュージカルでは日本語でダイレクトに伝わりますよね。
ですので、音楽の力は大前提で、
その上で言葉、芝居を大切にし、
ドラマを描きたいと思っています


ミュージカルを音楽劇としてもっと面白いものにしていきたいと思ったのが5年前。
ようやくその思いが実現するのが今回の「BONNIE&CLYDE」です。
初めてなので、色々とトライさせてもらっています。


<BONNIE&CLYDEキャストについて>
アンサンブルはいないんです。キャスト全員彼らじゃないとダメな役になっています

BONNIE&CLYDEカンパニー、いかがですか?

ワークショップもオーディションを兼ねていたころも含め、
かれこれ50回ほど重ねていますが(8月22日現在)、
大変個性的なキャストです(笑)
役の上でも、一人ひとりの個性があり、アンサンブルはいないんです
全員彼らでないとダメな役になっています。
誰一人欠けても大変です、代われないですから誰も(笑)。

ワークショップでは具体的にはどのようなことをされているのですか?

まず、稽古中はファーストネームでお互いを呼んでいます。

そして、バブルガムを配って、どんな状況、
深刻な話をしていても5分間に一回は膨らませるとか、
膨らませたガムを割るパンパンパンというリズムで
音楽を作って遊んだりもしました。
まぁ、ガムが鼻に張り付いてしまって
失敗に終わりましたが…(笑)

というのも、まずは、オープンマインドになってもらわないと
本人達がもっているものも出にくいですし、
この作品はアメリカ、テキサスが舞台なので、
行儀正しくない人達が欲しいんです(笑)。


<BONNIE&CLYDE スタッフワークについて>
舞台の人にこだわらず時代のモードを表すのにイイと思った人を起用

上演台本も手がけられていますが、翻訳だけでなく潤色などもされているのでしょうか。

はい、今回は日本版と言っていいと思います。
オリジナル脚本家のアイヴァン氏にスカイプで相談しながら、シーンの順番を入れ替えたり、
逆にブロードウェイ版では使われない曲を復活させたりしています。
日本のお客さまに伝わり易いよう意識していますね。

それは僕一人ではなく、長屋晃一さんというドラマツルグとの作業になります。

ドラマツルグ、ミュージカルでは聞きなれない言葉ですが。

そうですね、珍しいのかもしれません。
でも、僕には当たり前の様に必要で、時代考証を始め、
作品のテンポ感、音楽を入れるタイミングなど彼と話し合っています。
演出家が一人で“思い”だけで進めるのではなく、
音楽面でもドラマ面でも彼の学術的で、冷静な目は絶対に必要です。
今まで、やって来た方法のいいところは残して、やっていきたいなと思っています。

ほかのスタッフも強力ですね、出来立てのポスターもカッコイイです!

舞台の人にこだわらず時代のモードを表すのに
ファッション界から島津由行さんにビジュアル・スーパーバイザーをお願いし
“1930年代のカッコよさ”を大切にしています。
公演チラシでも30年代の本物のアンティークの
衣装や当時のメイクなど
リアルに当時のスタイルを追求しました。
ポスターだけでなく舞台でもこのクオリティでいきます!

他にもコリオグラファーのキミホ・ハルバートさんに
身体のコーディネートをお願いし、
シームレスな時間・空間の変化を目指していますし、
演劇界を代表する装置・堀尾幸男さん、
照明・原田保さん、音響・山本浩一さんと
相談していますが、 とても面白いものになりそうです。


<BONNIE&CLYDE 音楽について>

音楽に対する比重はとても大きいわけですよね。
フランク(※作曲のフランクワイルドホーンさん)も
これは「ミュージカルコメディじゃない、ミュージカルドラマだ」
と言っている通り、
「ミュージカルドラマ」であることを意識して書いてくれているので、
今回は、ブロードウェイ版でカットされたものを復活させたりしています。
アメリカでは分かりきっていることかもしれないけれど、
日本のお客様だったら、もう一回聴かせて欲しい歌とか
繰り返した方がいいものとか、あるんですよね。

ジャズ、カントリー、ロカビリーもあり、とてもバラエティに富んでいる、
彼のミュージカル作品の中でも特殊な作品だと思います。

音楽は生演奏ですか?

はい、バンド形式になると思いますが、生演奏です。
音楽監督の前嶋康明さんが稽古から参加し、本番も弾いてくださいますので、
この上ない条件で、作品のクオリティを高めていけます。


<BONNIE&CLYDE作品解釈と演出について>

今回のBONNIE&CLYDE演出にあたり、こだわった点があれば教えて下さい

ミュージカルなので音楽の比重は大きいんですが、
ドラマ、芝居と思っています。
ミュージカルナンバーもあくまでドラマの中の芝居の一部です。
そこだけ照明を変えたりはしない予定です。

ただ、こうして芝居、芝居と言えるのは、
前提としてキャストのみんな、
ソロがない人でさえ“歌える”方々だからなんです。
そこはこだわらせて頂きました。

彼らの実話をみると、正当化できないことも多いですし、最期は…。どう描かれますか?

もちろん、(殺人を)描きますけど、
殺人だけを描くのは違うと思っています。
僕はただ、人を殺してイエイ!というものを描くつもりはないです。
彼女達が死んでしまうにしても、何か残すもの…名前とかじゃなくて
メッセージというのが欲しいと思うんです。

大恐慌の最中で希望を持てない、夢を抱きにくい時代、
これは現在の日本にリンクすると思うんです。

今、日本では夢を描きにくい。
だからこそ、逆境の中で”夢を貫く力””追い続けるパワー”が
現代の私たちに元気を与えるミュージカルを作りたいと思っています。

ありがとうございました!

田尾下哲さんが上演台本&演出をされるミュージカル「BONNIE & CLYDE」は
2012年1月8日〜22日まで、青山劇場での上演です。公演HPはこちら
そしておけぴ管理人の製作発表レポはこちら

最後に、田尾下さんから動画メッセージをいただきました!



【おけぴ管理人の編集後記】
田尾下さんの経歴を最初拝見して、
建築?絵画?心理学?とつながりにとても興味があったのですが、
今回、お話をお伺いして、実は全て舞台に繋がっていたと知り、
その一貫した志にとても感銘を受けました。
そんな田尾下さんの原点でもある”音楽”はフランクワイルドホーン作曲、
そして田尾下さんのこだわりポイント”言葉、芝居を大切にしたドラマ”、
この二つの要素が”歌えるキャスト”で実現する今回のミュージカル「BONNIE & CLYDE」は、
ミュージカルファンならずとも2012年、まずおさえておきたいミュージカルであることは間違いないです!


<田尾下哲さん 経歴>
慶應義塾大学理工学部計測工学科中退。
東京大学工学部建築学科卒業。
同大学院学際情報学府修士課程終了、同博士課程単位所得満期退学。
2000年から演出家として活動開始。2003年から新国立劇場に所属し、
2009年までオペラ・チーフ演出スタッフを務めた。
2009年チューリヒ歌劇場《カヴァレリア/道化師》(クーラ、マーロッ ク、
チェドリンス他)で共同演出・振付としてヨーロッパデビュー。
以後、コーミッシェオパー・ベルリン《ボエーム》(アンドレアス・ホモキ演出)や
リンカーンセンターの新作ミュージカル《神経症ギリギリの女 たち》
(バートレット・シャー演出)などに参加。
平成21年度五島記念文化賞 新人賞受賞。


アメリカでもほぼ同時期に上演されるMusical「BONNIE&CLYDE」。
両方観比べてみるのもおもしろそうです♪
そして!
主演の濱田めぐみさんとワイルドホーンさんへのインタビューはこちら







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