ミュージカル『手紙』観劇レポート【舞台写真&感想コメントあり】

「日本のオリジナル・ミュージカルとして傑作だと思います」

「音楽がこれほどまでに、人の気持ちをリアルに伝えるのか。
響き渡るピアノの旋律にも、心の奥底から呻いている人の思いが感じられる舞台です」

(おけぴに寄せられた感想より)



「再演ではなく、再挑戦」。
ぜひこの言葉の真実を劇場で確かめてきてください!


 2016年1月にオリジナルミュージカルとして誕生。上演中から静かな感動を呼びクチコミで人気が広がったミュージカル『手紙』

 原作、脚本、音楽、歌詞、演出、そして出演者。すべてが「日本発」の意欲的なミュージカルが、新たに2人の“直貴”を得て2017年版として上演中です。おけぴに寄せられた会員の皆様からの感想コメントとともに観劇レポートをお届けいたします!
◆以下、青字はすべておけぴに寄せられた感想(一部、編集・抜粋)




「人殺しの弟」となったことでさまざまな差別、偏見にさらされる弟・直貴。
直貴役(ダブルキャスト)の柳下大さん、繊細で緻密な演技が光ります!


もうひとりの直貴役は太田基裕さん。
「瑞々しい存在感と伸びやかな歌声が素晴しい」(おけぴに寄せられた感想より)


 原作は東野圭吾さんの大ベストセラーで映画化もされた小説『手紙』。弟の学費のために窃盗、そして思いがけず殺人の罪まで犯してしまった兄・剛志と、「人殺しの弟」となったことでさまざまな差別、偏見にさらされる弟・直貴。

 現実から切り離された刑務所から兄が送り続ける手紙と、社会の中で生き続ける弟の人生。「罪を償う」とはどういうことか。舞台上からは常にこの問いが突きつけられ続けます…。


◆犯罪者の家族というだけで受ける迫害。
あまりにも理不尽で、でも誰にでも起こり得る状況に、自分なら何が出来るのだろうと考えさせられました。


◆映画版を見たことがあり、これはストレートプレイ向けの戯曲じゃないかなと思っていました。
実際に観劇してみると、ミュージカルだからこそ、登場人物たちの心情が浮き彫りになり、作品の伝えたいことがストレートに伝わってきました。
普段ミュージカルを観ない人にこそお勧めな作品です。

◆ぜひ海外進出を! 脚本、楽曲、演出、出演者、どれも素晴らしかったです。
関わっている皆さんが作品を愛していることが伝わってきました。
テーマは重いですが、そこから逃げずに立ち向かった関係者の皆さんに大きな拍手をおくりたいです。
大劇場でのダイナミックなミュージカルもいいですが、小さくてもキラキラしたものがたくさん詰まった宝箱のような作品もいいですよ。




初演から引き続き罪を犯した兄を演じるのは吉原光夫さん。
罪と償い、家族、愛…。
『レ・ミゼラブル』ジャン・バルジャン役とも通じるテーマ、役柄。時と国を超えて、“現代日本発”の本作との比較も興味深いのです。


◆とにかく圧倒的な歌の力に加えて、舞台上のすべての俳優さんの演技が真っ直ぐで堅実。
吉原さんの歌声には苦悩も後悔も見え隠れするのに透明な感じがするから不思議。
初めてみた柳下さんはとても感情豊かな方。ボロボロに泣いている姿が印象的。

◆主演の柳下さんの繊細なお芝居、吉原さんの安定の演技はもちろんのこと、この作品の希望の光のような小此木まりさん、要所要所でいいこと言って唸らせてくれる川口竜也さんが印象に残りました。

◆犯罪者とその家族という重いテーマを扱い、前半は胸を締め付けられるような思いで見ていました。
川口さん演じる社長の厳しいけれど、直貴のことを真剣に思う言葉から、自分自身の感情がどっと溢れ出しました。
正解があるわけではなく、救いがあるとも言えない。けれど、兄弟、そして被害者家族、直貴の家族がこれから歩む道をそれぞれが見つけ出す姿が印象的です。

◆出演キャストの皆さん歌が上手で、特に兄役の吉原さん(とてもハマり役)、複数の役を演じられている川口さんは、さすがレミゼの現役キャスト! 聞き惚れました!

◆原作や映画版とはまた違う、カタルシスに溢れた素晴らしいミュージカルになっていると思います。
主演の太田さんをはじめ、キャスト全員の熱が伝わって、気がつくと涙が溢れていました。

◆太田くんは素直な歌い方と少年期と青年期の演じ分けが良かった。

◆吉原さん、小此木さんの圧巻の歌声。特に小此木さんには役柄も相まって何度も泣かされました。




「川口さんの声がとても良くて、また社長の紡ぐ言葉にいちいち納得しては考えさせられました!」
「川口さんがよかったです。特に社長の役。言葉が胸に刺さりました」
(おけぴに寄せられた感想より)


重く、過酷な展開の物語ですが、やはりミュージカル。
「音楽の力」が兄弟の運命を照らす救いの光のように輝きます!
(写真左から:GOH IRIS WATANABEさん、藤田玲さん、加藤良輔さん)


「苦しい時、絶望したときに、自然体でそばに居てくれる人の存在がどれだけ心強いか。直貴にとってもそうでしょうし、観ているこちらもその存在に救われました」(寄せられた感想より)
小此木まりさん演じるヒロインの明るい笑顔、歌声が直貴の心と舞台に明るさを与えます。


 重く、過酷な展開の物語ですが、“ミュージカル”として柔かな雰囲気で成立しているのもこの作品の大きな魅力のひとつです。

 蜷川幸雄さんの薫陶を受け、『The Beautiful Game』『ジャージー・ボーイズ』など次々に話題作を手がける藤田俊太郎さん(祝♪第24回読売演劇大賞 演出家賞ノミネート)による、ミュージカルならではの仕掛けや演劇的面白さに溢れた演出にもぜひぜひご注目ください!
 
◆『ジャージー・ボーイズ』から藤田さんの演出に惚れました。セットの使い方が立体的で空間を余すことなく使い切る手法は目が飽きる事なく楽しめました。
涙が止まらずエンディングも受け手に託された様な、その後を想像する事が出来る懐の深さでした。
藤田さんの今後の演出も楽しみです。

◆感情を歌に乗せるような、ミュージカルというのが良かったと思います。
一人で複数の役をこなす中で、舞台上で準備を整え別な役へと切り替わっていく演出が面白かったです。

◆映画の『手紙』を観ていたのでミュージカルでどのようになるのか興味深かったのですが、音楽によってさらに切なく心情が歌詞にのせてより深く心に突き刺さりました。
場面転換が無駄なく次々変わり、物語の展開に見入ってしまいました。

◆「もしあなただったら」と問いかけてきた初演とはすこし異なり、今回、演出家が見せたかったのは「音楽の力」なのではないか。
その意味では、重いリアリティを持って迫ってくるこの物語もある種のファンタジーなのだ。
絶望のなかで生きる直貴に差す音楽の光。無邪気ともいえる幼さで罪をおかした剛志に「償い」を自覚させる音楽の存在。
安易に「名曲」で泣かせるのではなく、セットや照明、役者の立ち位置をうまくつかって表現したところに演出家の心意気を感じた。





 新曲も加わった音楽を手がけたのは深沢桂子さん(「I Got Merman」、「手紙」初演で第24回読売演劇大賞スタッフ賞ノミネート!)。作詞、脚本は映画『アナと雪の女王』や劇団四季『アラジン』などのディズニー作品訳詞を手がける高橋知伽江さん。

 日本語で作られたからこそ、胸にストレートに届く歌詞、セリフ。音楽とともに言葉の持つ力にも圧倒されます。


◆生オケ、舞台セットなど全ての要素が混ぜあってあの独特の空気が出来上がるのだと思います。
休憩含めて約2時間半ですがすごく長く感じたし、あっという間にも感じました。
初めての不思議な感覚でした。

◆初演からかなり改訂されていて、見やすく聞き取りやすくなっていました。
日本語オリジナルミュージカルなので歌詞に無理がなく、とても素直に入ってくるところが良かったです。

◆小劇場のミュージカルがこんなに迫力のあるものだと知りませんでした。
過酷な状況に苦しむ主人公の兄弟ですが、最後には希望の光が差すような終わりかた。
この清々しさを増幅しているのは音楽の力だと思いました。

◆「手紙を出さなければ良かった」と言う兄と、「手紙があったから生きて来られた」と言う弟に泣けてきます。
差別や偏見による「社会的な死」からは生還出来る。その道は自分で拓く。心に響きました。
あー観られてよかった! 全てがよかった! 特に曲がよかった! ミュージカル、だからよかった!




加害者と被害者。
もし自分がそのどちらかになってしまったら?
そしてもし反対の立場だったら? 
物語はふたりの兄弟(と、観客)に容赦ない現実を突きつけます…
(写真右は染谷洸太さん)


◆犯罪加害者(周囲も含む)目線での話は好まないので100%同情は出来なかったですが、それでも考えさせられました。
うーん…でもやっぱり自分が遺族だったら加害者側の人間は当事者以外も許せなくなりそうなので被害者の息子さんのあの最後の一言はズシッときました…

◆同じ時を経ているのに、罪を犯して刑務所にいる兄の変化と、外の世界で生きる弟の変化は、全く違うもの。
その空間を埋める「手紙」が時に辛辣で痛々しいものにも、光が見えるような存在にもなる。
問いかけられているものに答えは出せないけど、ずっと考えてしまう。思考がぐるぐるぐるぐるしてしまう。
でも、心地がいい。不思議な後味が味わえる。

◆「犯した罪は消せない、一生背負って生きていかねばならない」。
そう言葉にするのは簡単だけど、実際に罪を背負うということがどれだけ過酷で大変なことか、考えさせられる作品でした。
ラストシーンは演者も客席も、涙で顔がグシャグシャ。

◆重い内容だからと敬遠してる方にぜひ観てほしい。

◆ミュージカルなのに重たくて暗そう、と身構えて観に行ったら裏切られました。
最後は観客一人一人が希望を見つけようとする物語。
物語だけれど、誰にでも起こりうる日常の続きにあるのだと、圧倒的な歌唱力が教えてくれました。
確かにつらいところたくさんあります。だからこそ観ておくべき「MADE IN JAPAN」のミュージカルです。





ミュージカル『手紙』2017は2月5日(日)まで東京・新国立劇場小劇場にて上演中。2月11日(土祝)・12日(日)には新神戸オリエンタル劇場にて上演されます。


「日本発のオリジナルミュージカル」

 その言葉が重く、誇りを持って響く作品です。観劇後にはきっとさまざまな思いが胸の中に交錯するはず。そしてそれこそが観劇体験の醍醐味のひとつなのでは、と思います。ぜひ劇場で作り手の思いを受け止めていらしてください。



初演おけぴ観劇レポはこちら



【公演情報】
ミュージカル『手紙』
2017年1月20日(金)-2月5日(日)
新国立劇場 小劇場 おけぴ劇場map

2月11日(土祝)・12日(日)
新神戸オリエンタル劇場 おけぴ劇場map


<出演>
柳下大・太田基裕(Wキャスト)
吉原光夫

藤田玲/加藤良輔/川口竜也/染谷洸太
GOH IRIS WATANABE/五十嵐可絵/和田清香/小此木まり/山本紗也加

<ミュージシャン>
村井一帆(ピアノ)
井上"KB"幸法(ギター)
関谷友貴(ベース)
土屋玲子(ヴァイオリン)

<スタッフ>
原作:東野圭吾(「手紙」文春文庫刊)
脚本・作詞:高橋知伽江
演出:藤田俊太郎
作曲/音楽監督/作詞:深沢桂子

<あらすじ>
人殺しの弟を世間は許さない──
両親を亡くしてから、直貴にとって兄の剛志が親代わりだった。
剛志は弟の学費ほしさに空き巣に入り、現場を見つかったために殺人まで犯してしまう。
貧しくても平和だった生活が一瞬にして暗転する。
直貴は「人殺しの弟」という烙印を押されさまざまな差別に遭う。
そんな彼にとって音楽との出会いが唯一の救いになった。
バンド仲間との友情、初恋―だが、それさえも無残に打ち砕いたのは兄の存在だった。
一方、服役中の剛志は弟への純粋な想いを手紙につづり続ける。
その手紙が直貴をどこまでも追いつめてゆき、ついに―。
運命の荒波にもまれる兄弟の十年間をたどり、日常のもろさ、差別、償い、家族の絆―現代社会のかかえる問題をあぶりだす。
ミュージカルだからこそ描ける深い感動をお届けします。

公演公式サイト
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おけぴ取材班:mamiko 、おけぴ管理人  撮影:おけぴ管理人
写真提供:ミュージカル『手紙』製作委員会

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