2011年に16年ぶりの歌舞伎公演が行われてから、毎年恒例となった
「明治座花形歌舞伎」。今年も、今をときめく若手歌舞伎俳優のみなさまが伝統の舞台でカブキます!
座頭をつとめる
片岡愛之助さんが、合同取材会にて各演目の見どころや、歌舞伎をあまり観たことのない方へのおすすめポイントなどを、語ってくださいました!
制作発表会見レポートに続き、お楽しみください。
まずはそれぞれの演目の愛之助さん的オススメポイント&鑑賞のコツから…
【夜の部『南総里見八犬伝』】
おけぴ観劇会開催も決定している【夜の部】の演目は、仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌…不思議な文字が浮かび上がる8つの玉を持つ犬士たちが明治座に集結する『南総里見八犬伝』。設定を大胆に書き換えた『新八犬伝』にも出演されていた愛之助さんですが、今回はオーソドックスな古典歌舞伎としての八犬伝に挑みます。
普段あまり上演されない場面も加わっての通し狂言。「歌舞伎をあまりご覧になったことがない方にもわかりやすい、親しみやすい作品になっている」とのことですが…
「歌舞伎って難しい」「観たけどよくわからない」とおっしゃる方がいますが、それはきっと長いお話の途中の数場面だけをご覧になることが多いためです。たとえば十巻ある小説の七冊目だけを読んでも、ストーリーの前後関係や登場人物の人間関係がわからないので、楽しめませんよね。ですが歌舞伎は、たとえば忠臣蔵なら大序から討ち入りまで十一段あるところの、七段目だけを上演したりするんですよ。昔は忠臣蔵のストーリーを誰もが知っていましたが、いまの若い方は忠臣蔵といってもご存じない方も多い。ですから、いきなり途中の場面だけをご覧になって、「よくわからなかった」とおっしゃるのは無理もないと思うんです。今回の『南総里見八犬伝』は通し狂言。お話の最初から最後までやりますから、初めてご覧になる方にもわかりやすいはずです。「『新八犬伝』では四役早替りで出ずっぱりでしたが、今回は犬山道節の一役。初役です。妖術を使うお役ですが、古典歌舞伎的な見せ方になります」
(どんな仕掛けになるかは劇場でのお楽しみに♪)
【昼の部『月形半平太』】
「春雨じゃ。濡れてまいろう」の名台詞でおなじみの“月形半平太”が初めて歌舞伎になります。女性にモテモテで、義に厚い、幕末の男・半平太。愛之助さんの魅力をたっぷりと楽しめる演目になりそうです!
100年、150年後にはこの作品が古典歌舞伎と言われるようになっているかもしれません。そのはじめの一歩をぜひご覧いただきたいですね。初めて、というのは一回しかありませんから、ぜひ歴史の瞬間を見届けていただきたい。
新国劇がもとになっていますからセリフもとてもわかりやすいです。初めて歌舞伎をご覧になる方は「テレビの時代劇と一緒!」と驚かれると思います(笑)。
月形半平太はすごく女性にモテるお役で、舞妓さんや芸姑さんとの色っぽい場面もありますし、男として義を通すところもある。幕末のお話ですので皆さんご存知の坂本龍馬や新撰組も登場します。最後には大立ち回りもあり、大スペクタクルな時代劇を楽しんでいただけると思います。愛之助さん自身が一番楽しみにしているのは、やはり「春雨じゃ~」のセリフだそうです。
「早く言ってみたい」とのこと♪
【昼の部『3人連獅子』】
あの赤と白の毛振りは、歌舞伎をご覧になったことのない方でもきっとご存知ですよね。今回上演するのは上方の楳茂都(うめもと)流※『連獅子』。別名“楳茂都連獅子”とも呼ばれています。お父さん(親獅子)、お母さん(母獅子)、子ども(子獅子)が出てくるのが特徴です。内容は、子獅子を千尋の谷に突き落として、這い上がってきたのを親獅子と母獅子が「よしよし」としてあげる、というお話ですね。
舞踊というと「意味がわかるかな?」と心配される方も多いと思いますが、実は舞踊こそわかりやすいんです。僕らが踊っている後ろで長唄さんがうたっていますが、ぜひその歌詞を聞いてみてください。舞踊の振りは実はパントマイムに近いんですよ。たとえば“川が…”という歌詞なら、踊っている方は川を眺める動きですとか、「おっと水がかかった危ない」というような動きをしていると思います。“山が…”とうたっていたら、だいたい役者はこうやって…(遠くを見る仕草)、山を見ていますね。
一般的な連獅子は松羽目物(まつばめもの)といって、大きな松の木が書かれた背景の前で踊りますが、楳茂都流では石橋(しゃっきょう)、石の橋が背景にあります。もともとの能の要素が色濃いんですね。石橋も立体的に作られていて、それが回ったり、上がったり下がったりしますので、視覚的にも楽しんでいただけると思います。※楳茂都流…上方舞の四大流派のひとつ。愛之助さんは2008年に四世家元を継承、三代目楳茂都扇性(うめもと・せんしょう)を襲名されました。昼の部は、目新しい新作の誕生と、歌舞伎味溢れる舞踊で二度オイシイ!
歌舞伎鑑賞初心者の方にもオススメです。
【歌舞伎を観てみたい、でも最初の一歩が踏み出せない…という方にアドバイスを!】
2020年に東京でオリンピックが開催されますね。海外からいらした方に「歌舞伎ってなに?」と聞かれて答えられるようになるといいと思いませんか? せっかく日本に生まれたのですから、まず自分の国の文化を知って、学んで、そして海外の方に「歌舞伎ってこんなにおもしろいんだよ」と自慢してほしいですね。
一度でも歌舞伎をご覧になったら「こんなにわかりやすくて、おもしろいもの、なんでもっと早く観なかったんだろう」という方が多いんです。なんでもご縁だと思いますから、この記事をご覧になった方はぜひ劇場に出かけていただきたいですね。よく「どんな格好で行ったらいいのかわからない」という方がいらっしゃいますが、普段着でいいんです! もちろんちょっとおしゃれしたり、着物を着たりしてもいいですよ。それで帰り道にいつもより少し高級なお店でご飯を食べるのも楽しいかもしれません。ですが普段着で気軽にいらっしゃるのもいいと思うんです。
4月から新生活を送っているみなさんもぜひ歌舞伎を好きになって、たとえば会社の上司に自慢してあげてください。会話の糸口になります。出世の近道です(笑)。【あらためて公演のオススメポイントを】
これはですね…なんといっても「イヤホンガイドを借りてほしい!」ということですね。おすすめポイントってそこ?と思ったでしょう。ですがこれはぜひ体験していただきたいんです。イヤホンガイドを借りるのは恥ずかしい、という方もいらっしゃるかもしれませんが、歌舞伎を見慣れた方でも初めての演目をご覧になるときはイヤホンガイドを聞いたほうがより楽しめると思います。かつらや衣裳のちょっとしたポイント、意味、そのお役の行動の意図、歌舞伎の専門用語など、すごくわかりやすく、いいタイミングで説明してくれるんですよ。歌舞伎ならではのちょっとした約束事がわかるだけで観劇の楽しみが広がりますから、ぜひ聞いてみてください。
極端な話、私のことをテレビでしか知らないというお客さまは、白塗りの化粧を見て「愛之助、どれだかわからなかった」ということもあるかもしれません。それじゃあんまり悲しいじゃないですか(笑)。八犬伝だったら「犬山とか、犬…なんとかってたくさんでてくるけど、どれが誰?」とか。そんなときイヤホンガイドがあれば、私が登場したタイミングでそっと「…愛之助」と教えてくれます。
それから今回の『明治座 五月花形歌舞伎』のイヤホンガイドには、私が特別出演しております! インタビューを受けたり、私の声で演目を説明していますので、ぜひ幕間もイヤホンガイドを聞いて楽しんでいただければと思います。「白塗りだと、どれが私だかわからないかもしれないでしょ」
(チラシ掲載の3役はすべて愛之助さんです!)
「八犬伝では“犬山”とか“犬塚”とか、いっぱい“犬◯”がいますから…どれが愛之助? となるかもしれません」
でも、イヤホンガイドがあれば安心♪ 「…愛之助」と教えてくれます!
歌舞伎鑑賞の楽しみが一気に広がるイヤホンガイド。おけぴ管理人&スタッフもいつも借りています。オススメ!
◆ 制作発表会見レポートでもお伝えしたとおり、
「初めてづくし」! の『明治座花形歌舞伎』。
中村萬太郎さん、坂東新悟さん、中村壱太郎さん、中村米吉さん、中村隼人さん、中村橋之助さん、中村福之助さん、中村種之助さん…と、次世代を担う花形8人に加え、国立劇場での正月公演“Wピコ太郎”で話題になった片岡亀蔵さん、そして中村雁治郎さんもご出演です。
5月6日午後の部(16時開演)おけぴ観劇会も開催決定です!
【おまけ♪】劇場までの道のりにもたくさんのお店があって楽しめる明治座。
愛之助さんのオススメは…?
「私はやはり玉ひでさんが好きですね。夜はにくがとうという焼肉屋さんにも行きました。“がとう”はうちのおじ(片岡我當)と同じ名前だなと思いながら。おいしかったです! それからもちろん人形焼もありますし、歩いているだけでも楽しいですよ」
【出演者関連レポ♪】
『明治座五月花形歌舞伎』5月6日夜の部は「おけぴ観劇会」開催!
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おけぴ取材班:ayano、おけぴ管理人(撮影)、mamiko(文) 監修:おけぴ管理人