ミュージカル『グレート・ギャツビー』稽古場レポート



 アメリカ文学界に燦然と輝くF・スコット・フィッツジェラルド作『グレート・ギャツビー』。1991年、宝塚歌劇団にて、この作品の世界初ミュージカル化を成功に導いたのは小池修一郎さん。2017年5月、その小池さんの手で、新たなるミュージカル『グレート・ギャツビー』が誕生します!

 全曲新曲書き下ろし、新演出、そして、ギャツビー役には、舞台、映像の垣根を越えて活躍する井上芳雄さんという、どこを切り取っても話題!の稽古場の様子をレポートいたします。
 
『グレート・ギャツビー』製作発表記者会見レポート


【稽古場動画も素敵】




ジェイ・ギャツビー:井上芳雄さん、デイジー・ブキャナン:夢咲ねねさん


 稽古場取材を終えて…、“時代を凝縮したギャツビーの世界”にすっかり魅了されました。
 
 まず、稽古場では、ステージングの詰めの作業が行われていました。舞台上に多くのキャストが居るシーンでは、その動線や小道具の受け渡しなどをひとつひとつ確認していきます。たとえば、次のダンスシーンへ移行する中での「帽子の受け渡し」についての丁寧なやり取りなど。「帽子を受け取る」、その動きだけをとっても、小池さんの提案はとてもエレガント。そこには確固たる美学があります。そして、そうやって作られた完璧なまでの流れが、日常であって日常でない、作品に描かれた時代に入り込んだ観客を決して現実に戻さない、小池作品の引力の源なのかもしれません。

 続いて、少しの休憩をはさんで第一幕の通し稽古へ。まだ、稽古に入ってから間もないとのことでしたが、めくるめく狂騒の世界と、そこで翻弄される人々を芝居、歌、ダンスで魅せる!新たな王道ミュージカルの誕生を予感させるに十分な魅力にあふれています。

 物語はひとりの男、ニックの目線で語られます。ニックは隣人の謎の大富豪ジェイ・ギャツビーのパーティーに招かれ…。



ニック:田代万里生さん


 闇の世界とは無縁の知性的な好人物。そして積極的な女性にたじたじ…そんな「ぼくちゃん」なニックを絶妙のさじ加減で演じる田代さん。劇中の“良心”。


【華麗なるギャツビーの世界】


 ある日、ニックが招かれたギャツビーの豪邸で繰り広げられるのは、1920年代、狂騒のジャズ・エイジと呼ばれた時代を象徴するような豪華絢爛なパーティー。




迫力のアンサンブルが時代のエネルギーを放つ!



 人々はダンスに興じ、禁酒法の時代にもかかわらず酒をあおる。あまりの熱狂に虚しさすら漂う…このシーンだけで一気に20年代に誘われます。

 そんな熱狂と虚無が同居する世界を生きる人々は…。

 ギャツビーやニックが暮らすウエスト・エッグの対岸、イースト・エッグにあるブキャナン邸に暮らすのは、ニックのイェール大学での級友、学生時代は名フットボール選手として活躍した大金持ちトム・ブキャナンとその妻デイジー・ブキャナン。デイジーとニックは親せき。



トム:広瀬友祐さん、デイジー:夢咲ねねさん
デイジーは夫に愛人がいることに気づいているが見て見ぬふり。
価値観も合わず、冷めきった夫婦関係。


 親の資産で裕福な生活を送るトム、欲しいものはなんでも手に入れてきた、選民意識の強い男を広瀬さんが傲慢に演じます。製作発表で広瀬さんが仰っていたトムの人物像=「イヤな奴」、かなりの完成度です(笑)。
 一方で、トムの妻の座に収まり「女は綺麗なおバカさんでいたほうが幸せ」と口にする美貌のデイジー。でも、その裏には、彼女なりの葛藤と生き抜くための割り切り、そんな陰のあるヒロイン像を見せる夢咲さん。

 こちらは、デイジーの親友でプロゴルファーのジョーダン・ベイカー。進歩的な考えの持ち主。



ジョーダン・ベイカー:AKANE LIVさんとニック:田代万里生さん


 活発な女性ジョーダンを美しくカッコよく演じるAKANE LIVさん!デイジーの影とジョーダンのもつ明るさは好対照でどちらも魅力的。そして、ブキャナン邸で出会ったニックとジョーダン、ニックは彼女からギャツビーとデイジーの過去の話を聞くのです。


 こちらはトムの愛人マートル・ウィルソンと夫のジョージ・ウィルソン。ジョージは自動車修理工で、トムはその顧客でもある。



マートル(蒼乃夕妃さん)はトムに夢中


ジョージ:畠中洋さん


 上昇志向の塊のようなマートルは夫の目を盗んでトムとの密会を楽しむフラッパー。そんな妻を愛するジョージ。



ジョージが暮らすエリアは労働者たちの街、20年代アメリカのもうひとつの世界です。


 上流階級の優雅な浮かれた世界と労働者たちの荒っぽい世界の対比もダンス、芝居、音楽で表現されています。決して長いシーンではないのですが、しっかりとそのコントラストが印象付けられます。



女性たちも時代の犠牲者だと…かなり辛辣な主張
この時代、フラッパーの衣裳も楽しみですね

 そして、お待たせいたしました。続いては、謎の富豪ジェイ・ギャツビーです。

 夜ごと豪華絢爛なパーティーを開き、闇の世界にも顔のきく切れ者ギャツビー。しかし、パーティーを開く理由、そこに住む理由が、対岸に住む想い人との偶然の再会を夢見て…という驚きのロマンチストな一面も。
 ニックとは住む世界が違う人物ですが、その想い人がデイジーだったことでニックはギャツビーからある依頼をされる。



自然に周りに人が集まる魅力的なギャツビー
でも、孤独感が漂う…。


ニックはギャツビーの頼みを受け入れる


 こうしてそれぞれの想い、運命の糸が錯綜を始める…ところで一幕終了。

 井上さんが演じるギャツビー、男っぷりが半端ありません。裏社会でのし上がった危険な香り、そこでの仕事でも決して越えてはならない一線を譲らない強さ、そしてただひとりの女性を想う純粋さ。デイジーのこととなるとまるで少年のような純情を見せ、いわゆる歯の浮くようなことを言うのですが、恥ずかしくなってしまいそうなキザな台詞を、こんなにも自然に受け入れられるのは、井上さんの演じるギャツビーの真っ直ぐな想いに嘘がないからでしょう。 




デイジーとの過去も回想シーンで描かれます。
そこには居るのは、恋をしたひとりの青年。


 みなさんが気になるのは、もうひとつ、オール新曲書下ろし、ブロードウェイの若き才能リチャード・オベラッカーさんによる音楽ですよね。製作発表で披露された♪夜明けの約束(劇中で歌われるとさらにさらにイイ!) のような、壮大なザッツ ミュージカルな曲から、時代を反映したジャズはもちろん、ブルースやタンゴなど多彩です。もちろんダンスナンバーも!
 そして、井上さんの中低音の深みのある豊かな歌声は大人の魅力たっぷり。そこから想いを爆発させる♪夜明けの約束での伸びやかな高音!稽古場で、すでに感動してしまいました。




【ダンスシーンも華やかです】




 物語を彩る登場人物はほかにも…


闇の世界のドン、マイヤー・ウルフシャイム(本間ひとしさん)


デイジーの母エリザベス・フェイ(渚あきさん)
娘のしあわせを願ってのことなのですが…


マートルの妹キャサリン(音花ゆりさん)はニックに猛アプローチ、ニックはたじたじ!


 人間関係はシンプルなのですが、観る者をグイグイ惹きつける物語の展開。光と影のコントラストは、光の部分が華やかであればあるほど影が濃くなる。そんな狂騒の時代、ひとりの女性を愛し抜いた男の生き様は、いつの世もドラマティックに映ります。さらに本番では、衣裳、舞台美術、照明、オーケストラなどが加わり、さらに絢爛豪華な世界が現れることでしょう。

 開幕は5月8日、新生『グレート・ギャツビー』にご期待ください!



【公演情報】
ミュージカル『グレート・ギャツビー』
2017年5月8日(月)~29日(月)@日生劇場(map)
2017年6月3日(土)~15日(木)@中日劇場 ( map )
2017年7月4日(火)~16日(日)@梅田芸術劇場メインホール( map )
2017年7月20日(木)~25日(火)@博多座 ( map )

<スタッフ>
原作:F・スコット・フィッツジェラルド
音楽:リチャード・オベラッカー
脚本/演出:小池修一郎

<キャスト>
ジェイ・ギャツビー:井上芳雄
デイジー・ブキャナン:夢咲ねね
トム・ブキャナン:広瀬友祐
ジョージ・ウィルソン:畠中洋
マートル・ウィルソン:蒼乃夕妃
ジョーダン・ベイカー:AKANE LIV
ニック・キャラウェイ:田代万里生

マイヤー・ウルフシャイム役(暗黒街を取り仕切る男):本間ひとし
エリザベス・フェイ役(デイジーの母):渚あき
ヘンリー・C・ギャッツ役(ギャツビーの父):イ・ギトン
キャサリン役(マートルの妹):音花ゆり

朝隈濯朗/安倍康律/荒田至法/石川新太/石川剛/乾直樹
榎本成志/川口大地/木内健人/後藤晋彦/田中秀哉/宮河愛一郎
池谷祐子/井出恵理子/岩﨑亜希子/碓井菜央/内田このみ
樺島麻美/七瀬りりこ/花岡麻里名/松島蘭/山田裕美子
※一部キャストのお名前に誤りがありました。お詫びいたします。

<ストーリー>
作家志望のニックがニューヨークで居を構えたのは、毎夜のように豪華絢爛なパーティーを開く謎の大富豪ジェイ・ギャツビーの豪邸の隣。
ニックはある夜、ひとり佇み湾の向こう岸の灯りを見つめるギャツビーの姿を目にする。
そこにあるのはニックのいとこデイジーとその夫トムの邸宅。
ニックは、ギャツビーに興味を抱き始める。
そして遂にギャツビーのパーティーに足を踏み入れたニックは、デイジーの友人ジョーダンとの出会いを通じ、ギャツビーの過去を知る…。
やがて、ギャツビー、デイジー、トム、そしてトムの愛人マートルとその夫のジョージ、それぞれの想いが交錯していき、物語は悲劇へと進んでいく――

公演HPはこちらから

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人

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