ミュージカル『にんじん』製作発表記者会見レポート



 還暦を迎えるにあたって、「もう一度やりたい役は?」と聞かれ、ぱっと浮かんだのが『にんじん』でした。(大竹しのぶさん)


 そばかすだらけの顔に、真っ赤な髪。家族のなかでひとり孤独感をかかえる少年“にんじん”の物語。大竹しのぶさんが38年ぶりに同役に挑むことでも話題のミュージカル『にんじん』(演出は栗山民也さん)が、8月新橋演舞場・9月大阪松竹座にて上演されます。



 「38年たって、もう一度“にんじん”をやった意味がわかるような芝居にしたい」と意気込む大竹しのぶさんほか、共演者が集まった製作発表記者会見の模様をレポートいたします。



写真左から:宇梶剛士さん、大竹しのぶさん、キムラ緑子さん
(※会見には中山優馬さんも登壇されました)


 フランスの作家ジュール・ルナールによる同名小説を、世界初の試みの“音楽劇”として上演してから38年。
 
 今年還暦を迎える大竹しのぶさんが、22歳で演じた“にんじん”役にふたたび挑戦します!

 家族から愛されたいと願いながら、不器用にしか生きられない“にんじん”。子供のころに原作小説を読んで、あまりにも悲惨な彼の境遇にショックを受けた方もいるかもしれません。

 現代では確実に「問題作」と呼ばれるであろうこの作品(!)。ですが、1979年に日生劇場で上演された際は、山本直純さんのオリジナル音楽の優しさもあいまって心温まる舞台となり、子どもたちの心に届いたようです。


大竹さん)
 カーテンコールで子どもたちが舞台に駆け寄って「にんじん、がんばれ!」と言ってくれたことを覚えています。帰り道の電車のなかで子どもたちが「にんじん、これから大丈夫かな」と心配してくれていたという(感想の)葉書をいただいたりもしました。それだけ大勢の人の心に住んでいた作品にもう一度トライできることが幸せだなと思います。



しのぶさん、歌も全部覚えていたとか!


大竹さん)
 家族や友人に「また『にんじん』をやることになったんだ」と伝えたら、みんな「“♪真っ赤な髪で、そばかすだらけ”…あの歌、覚えてる!」と歌っていました。何回も舞台で演じている私が覚えているのは当然として、一度しか見ていない彼らが覚えている。そのくらい音楽と芝居が人の心に残るものなんだとあらためて知りました」





 “にんじん”を愛したい、けれどもうまく愛せない。にんじんの父・ルピック氏役の宇梶剛士さん、母・ルピック夫人役のキムラ緑子さん、そして兄・フェリックス役の中山優馬さんも作品への思いを語りました。


中山さん)
 大竹さんと共演させていただけると聞いて喜んでいたら、役どころが「大竹さんの兄」と言われて…「なにかの間違いでは」と思いました(笑)。フェリックスは甘やかされて育ってちょっと意地悪なところがあるお兄ちゃん。大竹さんの一番近くで勉強させていただけることが本当に嬉しいです。同じ事務所のメンバーが大竹さんと共演しているのを見て歯ぎしりしていたので、今回は「やったー!」という感じ。全く違和感なく“にんじん”として存在している大竹さんの“兄”としてしっかりと生きようと意気込んでいます。 





初ミュージカルという宇梶剛士さん。
「でかい僕が父親役ということで、しのぶさんが、やや子供らしく小さく見えるのではないかと(笑)。大きくて良かったと喜びを噛み締めている宇梶です」(宇梶さん)

宇梶さん)
 原作を読みましたところ、あまり“いい人”が出てこないんですね(笑)。なぜ“いい人”ではないか。それは個人個人が悪い人だからではなく、閉塞した状況のなかで、もがきながら生きているからではないかと思いました。その葛藤をみなさまに我がことのように感じていただければいいなと思っております。




38年前は高校生で、芝居を始めてもいなかったというキムラ緑子さん

キムラさん)
 しのぶさんが演じる“にんじん”の横にずっといられることがすごく幸せです。といっても私が演じるのは“にんじん”を厳しくいじめ抜く母親役。実はこのお話を頂いたときに、自分が演じるのは“にんじん”のことが大好きな女の子の役だと思い込んでいて、「10代の女の子役をやれる」と喜んでいました。でも蓋をあけてみると、しのぶさんの母親役(笑)。一応、私のほうが4つ年下であることはお伝えしておきたいなと思います(笑)。









 演劇ファンが見逃せないポイントのひとつは『フェードル』に続いて大竹さんとタッグを組む、栗山民也さんによる新演出! 大竹さん、キムラさんによると『フェードル』の稽古場でも『にんじん』の話題は出ていたようで…(唯一“にんじん”と心を通わせる“名づけ親”役の今井清隆さんも『フェードル』組でした♪)。


大竹さん)
 『フェードル』では古典の喜び、セリフ劇の喜びを毎日味わっていました。『にんじん』ではまた全くちがう世界にいけることを喜んでいます。『にんじん』に出演する3人(大竹さん、キムラさん、今井さん)と栗山さんとで話していたのは「子供向けというだけの作品にはしたくないね」ということ。甘いだけでなく本当に深い作品なので、子どもにわかるように、なおかつ大人が楽しめる芝居にしたいね、と。

キムラさん)
 栗山さんは『フェードル』の稽古場でも、とても楽しそうに「舞台装置のイメージはもうできてるんだよ」と『にんじん』の話をしていました。『にんじん』は子供向けのようでいて、いろいろな事情を抱えた人間たちが「愛したいけれど愛せない」「この苦しみから逃れるためにはどうしたいいのか」と悩む難しい作品。不安もありますが、たくさんのアイデアを持っていて、的確に指示をくださる栗山さんに委ねて、一緒に楽しんで作っていきたいと思います。



『フェードル』に続いての共演となる大竹さんとキムラさん。
重厚な古典劇と、大竹さんが少年役を演じるミュージカル。あまりにもイメージがちがう二作品、やっぱり見比べてみたくなります!

 


 「再演を重ねて深まっていくのがお芝居。『にんじん』も、もっと深めてみたかった」という大竹さん。22歳で“にんじん”役を演じていたときは「ひとりぼっちでもがんばって生きていく! という“にんじん”の清々しい思いに毎日浄化されて」1日2回公演では演じ足りなく、帰宅してから友人を呼んで『にんじん』の歌を歌い、演じていたとか(!)。


 「毎日、愛を叫んで愛を求めていた“にんじん”の心を、今ならもっともっと理解できるような気がします。38年前と変わらず愛を叫びたいと思います」
(大竹さん)




 ミュージカル『にんじん』は、8月1日(火)から27日(日)まで新橋演舞場、9月1日(金)から10日(日)まで大阪松竹座にて上演されます。

 出演はこのほか、“にんじん”のことを嫌いではないけれど自分の結婚のことで頭がいっぱいの姉エルネスティーヌ役の秋元才加さん、その婚約者役マルソー役の中山義紘さん、“にんじん”に心を寄せる“名づけ親”役の今井清隆さん、ルピック家にやってくる女中アネット役の真琴つばささんなど。

 公演詳細はこちらをご参照ください。



<こぼれ話♪>
 「60歳を過ぎてピーター・パン役を演じている人もいるんだから(1974年からピーター・パンを演じ続けているアメリカの女優キャシー・リグビーのこと)」と、“にんじん”役にふたたび挑む気持ちになったという大竹さん。篠山紀信さん撮影のポスタービジュアルについての質問には…

大竹さん)
 撮影しながら篠山さんに「あなた、今でも(少年役)できるじゃない」と言っていただき嬉しかったんですけど…できあがりを見て、自分に対して「ふざけるな!」と思いました(笑)。(少年らしく見えるという記者に)えー、らしくないですよ! おばさんががんばっちゃってどうしたの? って感じ。おばさんなにか楽しいことでもあったのかな? って(笑)。あ、あそこの店が三割引だ! とかかな。これで本当に子どもたちの心をつかめるのだろうか、と正直不安です。友達にも「なに考えてるの?」って言われてます…(笑)。

いえいえ「少年感」出ています! 気になるチラシ画像はこちらをチェック
こちらでは他キャストの扮装写真も♪




公演詳細 8月新橋演舞場
公演詳細 9月大阪松竹座
おけぴ取材班:hase(取材/撮影) mamiko(文)  監修:おけぴ管理人

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