こまつ座第118回公演『イヌの仇討』彩吹真央さんインタビュー&立ち稽古ミニレポ

★ 7月13日(木)は米沢Day★
『イヌの仇討』ご来場スペシャルプレゼントがございます

詳細はレポ後半をご覧ください!




吉良邸の隠し部屋から見た、「忠臣蔵」の真実
死を目前に吉良上野介は何を思ったか…。



 井上ひさしさんが描く「忠臣蔵」の真実。舞台となるのは吉良邸の炭置き部屋(ワンシチュエーション)、赤穂浪士の討ち入りからの2時間をほぼリアルタイムで描く『イヌの仇討』にて吉良上野介の側女(そばめ)お吟を演じる彩吹真央さんにお話をうかがいました。
 第1弾 演出の東憲司さんインタビューはこちらから!



彩吹真央さん


──こまつ座作品への初出演となりますが、井上戯曲の魅力をどのように感じていますか。

 井上先生に直接お目にかかったことはないのですが、これまでも作品を通してものごとへの好奇心がとっても旺盛で、大変な勉強家、そして創作に対して決して妥協されない方なんだろうなと思っていました。それが綴る言葉の美しさや、その時代の情勢、世情をとても身近に感じられる戯曲の素晴らしさに表れているんですよね。(井上)麻矢さんから本当に本がお好きで、たくさんの時間やお金(笑)を本に費やしていらしたとお聞きして、すごく納得しました。役者として、先生が書かれた台詞を発し、愛情をもって生み出された登場人物を演じられることは憧れで、以前からこまつ座の作品に出たいと思っておりましたので、出演することができて本当にうれしいです!

──念願叶ってというところですね!初出演となる作品が、29年ぶりの上演となる『イヌの仇討』です。

 お話をいただいてすぐに戯曲を読みましたが、先生の想像上の世界でありながら、これこそが忠臣蔵の真実なのではと思えてきました。ちょっと変な表現かもしれませんが、なんだか魔法にかけられたように、作品の世界に引き込まれたんです。そして、お吟だったらいいなと思いながら読んでいたので、お吟役に決まったときはうれしかったですね。

 ただ、決まった途端、うれしさと同時に準備しなくてはならないことがたくさんあるという現実も。時代物は宝塚(歌劇団)退団後は初めてになりますので、まずは所作。そして、忠臣蔵の背景、当時の政治情勢など吉良上野介という立派な方の側女として身につけておくべき知識や才も必要ですよね。さらにお茶のお点前の場面もあるので、そちらも…と本当にやることがいっぱい!新しい経験というのはとてもうれしいことでもあるのですが、日舞もお茶も…女優としても一個人としてもやっておかなくてはならいことだったと反省もしました。それがあれば、役を演じる上での第一段階が変わってきますからね。これを機会に、しっかりと学びたいなという気持ちも芽生えました。

──その向上心、見習いたいです。彩吹さんが演じるお吟さんという女性をどのようにとらえていますか。

 戯曲を読んでいる段階ではおっとりした女性という印象でした。それが、お稽古に入ってからはまた違うとらえ方になってきたんです。あの状況、板壁一枚を隔てた向こうには敵がいて、殺されるかもしれないという中、なにがなんでもご隠居様をお守りしたいという強さってなんだろうと。あとは、最初はお三さまには負けるまい!という気持ちでやっていたのですが、それもちょっと違うのかもしれない。それを気づかせてくださったのは、ご隠居様役の大谷(亮介)さんの「そのままでいいんじゃないかな」という言葉です。大谷さんとお話をする中で、ニュージェネレーションでいいのかなと思えたんです。お屋敷で、吉良家に代々ずっと仕えてきたお三さまと側女でやってきた若造(お吟さん)ですから、意見はぶつかりますよね。そのギャップが浮き彫りになったらお芝居として面白くなるのではないか。若さゆえのドンとした図太さというか、そういうところをもう少し出していこうと思っています。

──稽古場でも頼りになるご隠居様(大谷さん)ですね。



前方)三田和代さん、木村靖司さん
後方)大谷亮介さん、彩吹真央さん、加治将樹さん、久保酎吉さん、大手忍さん、尾美美詞さん、植本潤さん改め純米さん


 はい。最初にお会いしたときから気さくに声をかけてくださるやさしいご隠居様です。オチャメで男らしくて、吉良さんってこういう方だったのだろうと思えるところがたくさんあるので、ご隠居様のやさしさに包まれているお吟という関係性にすんなりと入れました。
 そして、もうおひとり、お三さまを演じる三田和代さんにもたくさん助けていただいています。ご隠居様とお吟の関係のように、ご隠居様とお三さまにも長い間に培われた信頼関係がありますよね。その上で、お吟とお三の人間関係もしっかりと構築したい。そこで悩んだときは、三田さんがすぐにアドバイスをくださいます。そしてそれを実行していくことでお吟という人物が作られているような感じです。

──お稽古を拝見し、お吟さんは自分の気持ちに素直という印象を受けました。でもワガママとは違うので、最後の最後のお吟さんの思いもわかるんです。

 そう、そこもね。しきたりや家の誉れ、伝統、格式…それが重んじられる時代における“若さ”が出ればいいなと思いながら、お吟のキャラクターを掘り下げている真っ最中です。実際に立ち稽古が始まると、「ここでお吟の気持ちが変わるのかな」、「ここでお三さまの気持ちがわかるんだ」そんなことを、ふと感じるんです。それって、彼女の中での成長ですよね。この作品の魅力は、人がどう変わっていくのかというところにもあります。それは吉良さまも(盗人の)新助さんもそうであるように、お吟にとっても人生で一番の転換期、彼女自身がこの2時間で大きく変化するんです。彼女の成長ポイントを明確に見つけたいなと思っています。

──充実したお稽古が行われているんですね。

 演出の東さんは、誰よりもこの作品を深く深く掘り下げて読みこまれているので、役者として自分の色を出しつつも、まずは東さんがイメージする世界を体現したいと思えるんです。そして、とても熱い方でもあるので、本当に毎日が濃いです。
 お稽古は、今日、2幕ラストまで進みました。演じることで改めて作品全体のうねりなどがわかってきた気がしています。とてもやりがいのある作品だと今の時点で感じているので、全幕を通したらと思うと…さらに楽しみです。心身ともにくたくたになるでしょうけど(笑)。

──大きなうねりのなかにちりばめられた喜劇性というのも魅力です。極限状態のシリアスな中でも思わず笑いが起きるんですよね。



 涙があっても笑いも忘れない、井上先生の戯曲の素敵なところがこの作品にもしっかりと書き込まれています。実際、吉良さんが炭置き部屋に隠れていたときはこんなににぎやかではなかったと思うのですが(笑)、お芝居の世界で私たちがこうやって演じて、それをみなさまに見ていただくこと、吉良さんも喜んでくださるのかななんてことを、勝手に思っています(笑)。

──観客として一緒に炭置き部屋での2時間(上演もほぼそのくらいの時間)を過ごせることを楽しみにしています。


【立ち稽古ミニレポ】



舞台中央)石原由宇さん

 2幕終盤の立ち稽古に潜入!立ち稽古、その名の通り稽古場に組まれたセットの中で実際に役者さんが立って(当たり前?!)芝居をしながら進むわけです。この日は殺陣指導の亀山ゆうみ先生、所作指導の花柳けい先生も立ち合いのもと、舞台上での動きが固められていきます。人間関係や感情にリアルな芝居(動き)を大切にしつつ、なにせ炭置き部屋という狭い空間に10人の大人と一匹のお犬様がいるので、お客様から見たときの「見え方」というのも非常に重要になってきます。舞台正面に座り込んで全体を見て、気になったところでは舞台上へ走り動きをつける、そしてまた舞台正面に戻る…それを繰り返す、誰よりも運動量が多かったのが演出の東さん。この日のアグレッシブ大賞です(笑)。

 そして、彩吹さんもおっしゃっていたように、まるでそれが真実のように見える井上作品の魅力。その一因となるのは、細部にわたる検証。あるシーンでお吟さんが「懐剣を引き抜き咽喉に当て」自らの命を断とうとするのですが、その所作について休憩中に彩吹さんが所作、殺陣の先生方やスタッフの方に指導を受けていらっしゃいました。その様子は、「日本の刃物は引いたときに切れるんだよね」「当時の(武家の)女性は首を切った後で血が飛び散らないようにグッと押さえた。そうするときれいに死ぬことができた」など、ただああするこうするという動きを真似るだけでなく、その裏にある習慣や精神もしっかりと理解した上での動きなのです。ほんの一瞬の動きでもそこに嘘がないのはこうしたお稽古の積み重ねがあってこそですね。

 こうして作り上げられた終盤のワンシーン、舞台中央にご隠居様とお吟さん、それを取り囲むように立つ吉良側の面々という景色が本当に美しいのです。それは、そこまでの2時間、生と死の間という極限状態で、悲劇と喜劇、ピンチとチャンス、どんでん返しの連続で、ついには夢と現実をも行き来するような濃密な時間を共有してきた人々がたどり着いた境地。劇場で見るその場面はどう映るのだろうか、どんな感情がわき起こるのだろうか。それは見てのお楽しみですね。


<面白エピソード>

 大須賀治部右衛門役の加治将樹さんの動きがちょっと大き過ぎるとの指摘があったとき。「すみません、僕を見て!の気持ちが出ちゃいました(笑)」という加治さんの言葉に、「もう十分見えてるから!」「ここまで2時間出ずっぱりだよ!」とあちこちからツッコミが(笑)。
 稽古場にも笑いがいっぱいです。


【耳より情報】


★米沢Day★『イヌの仇討』 7月13日(木) ご来場スペシャルプレゼント

 山形県米沢市のご厚意により、7月13日(木)1:30公演にご来場の皆様全員に、【米沢牛入りさらみ】をプレゼントいただけることになりました。さらに、当日同封のアンケートにご回答の方の中から抽選で5名様に【米沢牛 500g】のプレゼントも!

当日終演後には、米沢市上杉博物館 学芸主査・角屋由美子さんの
アフタートークショーもございます。米沢Dayをぜひお楽しみください!


★スペシャルトークショー開催★

7月7日(金)13:30公演後 演出家トーク(東憲司)
7月9日(日)13:30公演後 キャストトーク(大谷亮介、彩吹真央、加治将樹、植本潤、久保酎吉)
7月13日(木)13:30公演後 ゲストトーク(米沢市上杉博物館学芸主査 角屋由美子 -「忠臣蔵」異聞?...吉良家の言い分-)
7月16日(日)13:30公演後 キャストトーク(大谷亮介、彩吹真央、植本潤、木村靖司、三田和代)
7月17日(月・祝)13:30公演後 ゲストトーク(精神科医 名越康文 -「殿、ご乱心」は本当か-)

※アフタートークショーは、開催日以外の「イヌの仇討」のチケットをお持ちの方でもご入場いただけます。
ただし、満席になり次第、ご入場を締め切らせて頂くことがございます。
※出演者は都合により変更の可能性がございます。





【公演概要】
こまつ座第118回公演
『イヌの仇討』

作:井上ひさし
演出:東 憲司
出演:大谷亮介、彩吹真央、久保酎吉、植本 潤、加治将樹、
石原由宇、大手 忍、尾身美詞、木村靖司、三田和代

劇場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA
公演日程:2017年7月5日(水)~23日(日)

公演HPはこちらから


稽古場写真提供:こまつ座
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・取材・撮影) 監修:おけぴ管理人

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