ミュージカル『ビューティフル』(2017) 開幕レポート!

♪Special

『ビューティフル』 関連記事を一挙ご紹介!

女性シンガーソングライターの草分け的存在として今も輝くキャロル・キング。その半生を、珠玉のアメリカンポップスとともに描くミュージカル『ビューティフル』を総力特集!


 アメリカのシンガーソングライター、キャロル・キングの半生を数々のヒット曲とともに描いたミュージカル『ビューティフル』、日本初演が開幕いたしました。

 “A NATURAL WOMAN”、“YOU’VE GOT A FRIEND”など彼女の音楽になじみのあるみなさまは懐かしさとともに新鮮なアレンジでよみがえる音楽に身を委ねるひとときを、あまり知らないの…というみなさまにはキャッチーでノリのいい音楽との幸せな出会いに心高ぶるひとときをお届け。帝劇がとってもBeautifulな空間になっています。
 描かれる物語も、ヒット曲を生み出すことへのプレッシャーや思うようにならない夫婦(恋愛)関係などすべてがハッピーというわけではないのですが、どこかカラリとした明るさのある作品。展開のテンポの良さもおススメポイント!生き方、価値観や音楽業界が大きく変革する時代の流れも感じられます。



水樹奈々さん、平原綾香さん


 そして、英語圏以外では初めて上演されるという本作。演出も装置もブロードウェイ版を踏襲、シンプルながらとても洗練されています。60年代のファッションも要チェック(とくにソニンさん演じるシンシア!!)。この“懐かしさと新しさの同居”は本作のさまざまな箇所で感じます。

 ミュージカルとしての構造もユニーク。物語は、ともにヒットチャートを賑わしたヒットメーカーのキャロル・キングと夫のジェリー・ゴフィン、バリー・マンとシンシア・ワイルという2組のヒットメーカーカップルの関係と創作活動を軸に展開。そして、そのドラマの中に彼らが生み出したヒット曲がちりばめられているスタイルのミュージカルなのです。彼らの人生と切っても入れない音楽。この密接な関係、クセになります。ドラマを踏まえて、それぞれの曲を聞くと、それまでとまた違う思いがわき上がるんですよね。


 ここからはそんな彼らの曲をヒットさせたスターのみなさんをご紹介♪

 1961年のヒット曲♪Some Kind Of Wonderfulを歌うのはザ・ドリフターズ。伊藤広祥さん、神田恭兵さん、長谷川開さん、東山光明さんの4人です。ザ・ドリフターズはその後もキャロル&ジェリーの♪Up on the Roof(1962年)、バリー&シンシアの♪On Broadway(1963年) など2組のヒットメーカーの曲を歌います!作り手魂を触発する魅力あふれるドリフターズ!



コーラスも振りも“あの時代”を感じさせながら、現代のカッコイイも!


♪On Broadway
バリー&シンシア渾身の1曲!彼らが目指す音楽性を色濃く反映した曲です


 公開稽古でも披露された女性4人のグループシュレルズによる♪Will You Love Me Tomorrow(1960年)はキャロル&ジェリーにとって初めてのヒット曲。リードボーカルは高城奈月子さん、菅谷真理恵さん、エリアンナさん、MARIA-Eさんの4人が歌いあげます。
 曲完成から、シュレルズに歌ってもらうまでの流れなど、ほほぅ!なシーンです。



♪Will You Love Me Tomorrow
高城さんのしっとりとした歌声がロマンティックな気分にさせてくれるシュレルズです♪


 そして、(正直申し上げると)ほとんどの曲がはじめましてだったおけぴスタッフもこの曲は知ってる!となったのが♪The Locomotion!歌うのはリトル・エヴァ。曲は知っていましたが、ここで描かれるエピソードは知らなかった…。サプライズ!!



♪The Locomotion
小柄なMARIA-Eさんがポップに弾けます!



シフォンズ(エリアンナさん、菅谷真理恵さん、高城奈月子さん、MARIA-Eさん)による♪One Fine Day。エリアンナさん演じるリードボーカルのジャネールはドラマの中でもキーパーソン。パワフルな歌唱が炸裂します。



ライチャス・ブラザーズ♪You've Lost That Lovin' Feelingはバリー&シンシア作
山野靖博さんは低音の魅力を響かせ、山田元さん(ニールもニックも個性的!)とともに大人のナンバーに!


 
 もちろん主要キャストのみなさんも芝居も歌も、魅せます、聴かせます。キャロルは観ているといつのまにか友達のような気持ちになってくる女性。数々のヒット曲を生み出した作曲家でありながら、劇中でのセリフにもありますが、普通の女の子なのです。

 ダブルキャストの妙も触れずにはいられません。水樹キャロルは、少女のような健気さから、ぐんと強くなる決意の瞬間の変化に心揺さぶられるキャロル!1幕ラストの歌声も、心に刺さります。周りが自然と味方になっていることに納得、人を強く惹きつけるのです。そして、平原キャロルは包み込むような大きな愛のパワーを持つ女性。2幕ラストは、本当に自分もひとりのキャロル・キングファンとしてコンサート会場にいるような感覚でした。お二人とも初帝劇ということですが、ディーバたちですから、それはもう堂々たるものです。お芝居もとてもナチュラルで、初日からすでにそれぞれのキャロルの魅力を放っています。



(手前から)平原綾香さん、伊礼彼方さん

 キャロルの夫ジェリーを演じる伊礼彼方さんは出てきた瞬間“素?!”と思ってしまうほど“そのままジェリー”という感じ(いや、それだけ自然に見えるという意味で…笑)。ヒット曲を生み出し続けることへの苦悩を感じさせるあたりは、ギュッと胸を締めつけられるようで、ちょっとワルなんだけど放っておけないタイプの色男っているよね~なんて思ったり思わなかったり。そして、歌声には青春のキラメキと繊細さがあり、とくに♪Up on the Roofでは、あの瞬間に、彼の中からポツリポツリと心情がこぼれ落ちているような歌唱(というよりもはや芝居)で、寄り添いたくなる素敵な歌声です。



(左から)中川晃教さん、ソニンさん

 そして、中川晃教さん&ソニンさんのバリー&シンシア!シンシアは初登場シーンから持っていきますね~。ソニンさんのキュートでおしゃれなシンシアは目が離せないですし、歌ったらキャーカッコイイ!中川バリーはですね…ひと言でいうと鬼才!とにもかくにもワンフレーズ歌うと、ああ、至福…です。ちょっと(かなり?!)風変わりだけど、才能豊かなバリー、愛すべきキャラクターです。
 そんな二人の恋の行く末も、いい感じ♪公開稽古の際にソニンさんが仰っていたように、夫婦漫才のようなやり取りをする似た者同士の二人、大好きです!素直に笑える!!

 キャロルの母ジニーの剣幸さんは堅実な道を歩んでほしいと願うがゆえに口うるさくなってしまう、根底には母の愛を感じます。そこからの変貌もふふふ(笑)。武田真治さん演じるプロデューサーのドニー・カーシュナーはインパクト大!ピリッときくスパイスのように強烈な印象です。でも、もちろん音楽を愛する心で人とつながる名プロデューサーの説得力もバッチリあります!

 なんだか熱く語ってしまいましたが、でも、きっときっともっとそれ以上の“美しいもの”が帝国劇場にあります。“YOU’VE GOT A FRIEND”の心意気で、いつでもそこにいる、何かあったらいつでもおいでと大きな愛で包み込んでくれるようなミュージカル『ビューティフル』、8月26日まで、帝国劇場にて上演です。 
 


【公演情報】
ミュージカル『ビューティフル』
2017年7月26日(水)~8月26日(土)@帝国劇場
<おけぴ観劇会>
8月6日(日)17:30(水樹奈々)
8月19日(土)12:30(平原綾香)
おけぴ観劇会の詳細はこちら

出演:
キャロル・キング(※ダブルキャスト):水樹奈々/平原綾香
バリー・マン(作曲家/キャロルのライバルであり良き友人):中川晃教
ジェリー・ゴフィン(キャロルの夫/作詞家で音楽パートナー):伊礼彼方
シンシア・ワイル(作詞家/バリーのパートナー):ソニン
ドニー・カーシュナー(音楽プロデューサー):武田真治
ジニー・クライン(キャロルの母):剣幸

伊藤広祥/神田恭兵/長谷川開/東山光明/山田元/山野靖博/清水泰雄(SWING)
エリアンナ/菅谷真理恵/高城奈月子/MARIA-E/ラリソン彩華/綿引さやか/原田真絢(SWING)

<ストーリー>
 ニューヨークに住む16歳のキャロル・キング(水樹奈々/平原綾香)は、教師になるように勧める母親(剣幸)を振り切って、名プロデューサーのドニー・カーシュナー(武田真治)に曲を売り込み、作曲家への一歩を踏み出す。やがて同じ高校に通うジェリー・ゴフィン(伊礼彼方)と出会い、恋に落ちた二人はパートナーを組み、キャロルが作曲、ジェリーが作詞を担当するようになる。二人は結婚し、キャロルは必死で子育てと仕事に邁進する。
 その頃二人は、ドニーがプロデュースする新進作曲家と作詞家のコンビ、バリー・マン(中川晃教)とシンシア・ワイル(ソニン)と知り合い、良き友人となり、互いにしのぎを削り、ヒットチャートの首位を争うようになる。
 数々のヒットを放ち、全てが順調に進んでいるかのように思われたが、ヒット曲を書き続けなければならないという焦燥感から、ジェリーは精神的に追い詰められるようになり、奇怪な行動や浮気を繰り返すようになる。キャロルはやり直そうと必死になるが、すでに手遅れだった。
28才で二人の子持ちのシングルマザーとなってしまったキャロル。しかし、彼女はくじけることなく人生を切り拓いて行く。ロサンジェルスへ移住した彼女を待ち受けていたのは、まったく新しい門出だった――。
 数々の困難をくぐり抜けた、知られざるキャロル・キングの半生を描く、誰しもが共感する感動の物語。

公演公式サイト

写真提供:東宝演劇部
おけぴ取材班:chiaki(文) 監修:おけぴ管理人

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