現在、帝国劇場にて上演中のミュージカル『ビューティフル』にご出演の
山田元さんにお話をうかがいました。劇中では、ニール・セダカ、ライチャス・ブラザーズ、そしてキャロルに自分自身で歌うことを提案するニックなど、キラリと光る存在感で作品を盛り上げます!おけぴレポには今年1月の
Adam's(アダムス)座談会に続いての登場です。
【あの時代の音楽】
──1989年生まれの山田さんにとって、本作の60-70年代アメリカのヒットチャートをにぎわした音楽はどのような印象ですか。 僕の父親がまさにあの時代の人で、ミュージシャン、サックスを吹いているんです。
──あれ?どこかで聞いたような。平原綾香さんもお父様とご本人がサックスを…。 そうなんです(笑)。実は僕もサックスを吹いていて、でもそこまで得意ではないのであまり大きな声では言っていないのですが。
──そして、武田真治さんも! 昨日、あーやさん(平原さん)にはお話したんですけど、武田さんにはまだお伝え出来ていなくて。
──ぜひ公演中にカミングアウトを。
お話を戻すと、お父様の影響もあり子供のころから音楽に親しんでいらしたのですね。 はい。地元の藤沢界隈にある60-70年代のレコードがたくさん並んでいるようなカフェやバーによく行っていました。父は今でもロックバンドを組んでいるんですよ。ですので、
キャロル・キングもあの時代の音楽も僕にとってはすごく近い存在です。
僕自身が好きな音楽というと、そのあとの70-80年代に活躍したポリスやダリル・ホール&ジョン・オーツになるのですが、そのホール&オーツは1981年に劇中で僕らライチャス・ブラザーズが歌う♪You've Lost That Lovin' Feelingをカバーしているんですよ。
──そのように、その後の音楽にも大きな影響を与えた時代なんですね。【ライチャス・ブラザーズの山野くんは、なんでも相談し合える相方】
──ここからは『ビューティフル』について。さまざまな役で登場されますが、まず初めはとても強烈な(笑)。 ♪Oh! Carolのニール・セダカですね。トリッキーな動きの(笑)。
ニール・セダカ役と言われたときに、すぐに調べたんです。そうしたらまさにあのような動きをしている映像が出てきて、その瞬間は「無理」って。実際は振付(リステージ)のジョイス・チッティックさんが現代風の振りに変え、さらにシンプルにしたいということで、肩の動きが印象的なあの形になりました。それでも十分に舞台のアクセントになりうるんですね。でも、本当に難しいんですよ、あの動きをしながら歌うの(笑)。
──しかも、2回も出てきますよね。「また出た!」ですよね(笑)。僕自身そんなに面白いことをやっているという意識はないのですが、お客様のリアクションもよくて。
舞台の作りとしてすごく面白くできているんです。

♪Oh! Carolの“Carol”はキャロル・キングのこと!
──舞台袖にはけていくところもいいですよね。 あそこは「See you!」でやってとリクエストがありました(笑)。
──さらにライチャス・ブラザーズ、ニックと個性的な役が続きます。山田さんというと“王子”なイメージでしたがどれも新境地ですね。 三者三様の役をやらせていただいてとてもうれしいです。確かにこれまでにはなかったタイプのキャラクターですよね。コミカルな芝居は、僕自身そういう面も見てもらいたいなと常に思っていたんです。やはりいろんなタイプのキャラクターができるというのは役者冥利に尽きます。特に1幕は山野(靖博)くんと僕はずっと白人コンビでお笑い要素を担っていて、そこからライチャス・ブラザーズではビシッとスーツで決めるというギャップもよく計算されていて、本当によくできた構造です。
──ライチャス・ブラザーズのコンビ感、素晴らしいですよね。楽曲も佇まいもインパクトあります。おっしゃる通りにガラリと雰囲気も変わり、まるであれが初登場シーンのような。
ライチャス・ブラザーズの山野靖博さん、山田さん
靖とは初共演ですがすごく気が合うんです。彼は藝大(東京藝術大学)出身で歌に秀でているのですが、同時に芝居にも造詣が深く、仕事でもプライベートでもなんでも相談し合える仲です。それがライチャス・ブラザーズとしての二人のグルーヴ感に表れているのかな。
──お二人の並び、山田さんがご自身より背の高い方と並ぶのも珍しいのでは。 そうなんですよ。僕が181cm、彼が184cmですからね。そして靖の歌声、いいですよね。一緒に歌っていてもいいなと思います。いつか二人でライブとかできたらいいですよね!
──ほかにもたくさんのキャラクターを演じられていますが、もしかしたら同じ俳優さんが演じていると気づいていない方もいらっしゃるかもしれません。カーテンコールでメインキャスト以外は男女6人ずつしかいなかったことに驚いたという感想もあるので。ちなみにはじめにニールで出てから…。 ♪Oh! Carolはニールで出て、早替えして
♪1650 Broadway Medleyでは作曲家としてピアノを弾いています。その後はジェリーとキャロルの出会いの
カレッジのシーンでは学生で出て、
♪Be-Bop-A-Lulaがあって、
♪Some kind of Wonderfulでは1650のときと同じ人で出て、またまた早替えしてニール再び。そして
♪You've Lost That Lovin' Feelingでライチャス・ブラザーズになって、
♪One Fine Dayではカメラマンもやり、
スタジオやクラブ“ビター・エンド”でニック、最後に
ロサンゼルスのほうのバンドマンで出て…、結構出ずっぱりですね。
でも、
だからこそ同じ人には見えたくない。衣裳や髪型を替えるだけでなく、体重の乗せ方とかちょっとした癖とかにも変化をつけるという意識は常に持っています。
ニックはキャロルに彼女自身で歌うことを提案
【『ビューティフル』山田元的みどころ】
──改めて『ビューティフル』という作品の魅力は。 いわゆる王道ミュージカルとちがい、ショー部分と芝居部分が分かれていますよね。でも全く不自然でなく物語としてしっかりと繋がっていて、最後はキャロル自身がアーティストとなって歌って終わるという。バランスのよい作品だなと感じます。笑いもあって、泣けて、ショーで盛り上がれて、さらにカーテンコールではさらに劇場が一体となって立ち上がって歌って踊って終わる。お客さまは、
悩みや嫌なことがあっても観劇後には少し前に進める、そんなハッピーなエネルギーのある作品です。──好きなシーンは。 僕が個人的に好きなのはジェリー(作詞家、キャロルの夫、演じるのは伊礼彼方さん)からドリフターズに歌い繋ぐ
♪Up on the Roofのシーンです。あの曲自体は軽快で「みんなでパラダイスに行こうよ」というものですが、それを作ったジェリーの内面はダークで幼少期から抱えているトラウマに縛れた心情が詞に表れています。そこに深さを感じるんです。ジェリーって悪者に捉えられがちですが、彼の繊細さや“ああなってしまった理由”があのシーンに集約されているんです。じっくりと聴いてほしい曲ですね。
──華やかさも奥深さもある素敵な作品です。そして素晴らしいカンパニーですね。 実力、芝居や歌のスキルだけでなく、キャストのみんながとてもチャーミングな人というのも大きいと思います。メインの方はもちろん、アンサンブルのみんなも。
──今、お話に出た“アンサンブル”という言葉、この作品ではそうお呼びするのをためらいます。 来日したプロデューサー、演出家もそう言っていました。
もはやアンサンブルではないと。みんな名前がある、それぞれあの時代の人を生きてほしいと言われました。──そして、山田さんにとって初帝劇でもあります。 (ライチャス・ブラザーズのシーンのように)帝劇の舞台で二人だけで歌うことなんて、なかなかできない経験ですよね。とても光栄に思います。緊張は…あまり感じなかった気がします。なんといっても最初がニール・セダカですので「僕を見て!」と弾けないといけないキャラクター、まずそこで自分の中で大きくジャンプしないといけないのでそれどころではなかったのかな。全く自分にないものなので毎日頑張っています(笑)。
ただ、開幕してから、日々こうして帝劇のビルの中でアップして、舞台に出て、お客様に見ていただいてと公演を重ねるにしたがってうれしさや感慨深さがわいてきます。
──残りの公演も素敵なニール、ライチャス・ブラザーズ、ニック…を、期待しています。素敵なお話をありがとうございました。
おけぴ観劇会でお待ちしています♪
山田さんには前回に引き続き、バージョンアップした観劇会マップにもご登場いただきます!
手にされている観劇会ミニのぼりにサインもいただきました、当日劇場で!山田さんのサインには“とある楽器”のモチーフが…記事をご覧になった方はもう、お分かりですね♪
【インフォメーション】
山田元さんが所属するAdam'sの次回ライブ決定!
上原理生 leading 4Men「Adam's First Live –Encore-」日程:2017年12月14日(木) 18:00 開場/18:30 開演
会場:渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
出演:Adam's(上原理生・山田元・大田翔・木暮真一郎)
舞台写真提供:東宝演劇部
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文) おけぴ管理人(撮影)