日比谷シアタークリエの10周年記念公演『TENTH』もいよいよ最終週に入りました。熱狂の第1週、感動の第2週に続く、癒しの第3週ともいうべきラインアップ。第1部は『この森で、天使はバスを降りた』ダイジェストバージョン、第2部ではシアタークリエを代表する作品2008年、10年、12年、15年、17年に上演された『RENT』も登場!
【『この森で、天使はバスを降りた』ダイジェストバージョン】
2009年に上演された『この森で、天使はバスを降りた』は緑豊かな田舎町ギリアドに降り立った女性と町の人々の再生の物語。演出は小林香さん。
舞台上には田舎町の小さな食堂、そして森が出現!3週にわたり全く異なる世界を生み出す美術スタッフの皆さんの素晴らしさにも改めて拍手です。
小さな町ゆえの閉塞感、当たり前になっている豊かな自然、それぞれが負っている傷……一人の女性の出現によって浮き彫りにされる真実。
仮釈放されたパーシー(坂本真綾さん)は写真で見た美しい景色に惹かれギリアドという田舎町へ降り立つ。
パーシーは、ハンナ(剣幸さん)が営むスピットファイヤー食堂での住み込みの仕事に就き、ハンナの甥の妻シェルビー(土居裕子さん)とともに食堂を切り盛りしていく。
ハンナが食堂を手放そうとしていることを知ったパーシーはエッセイコンテンストを提案する。それは譲渡希望者の想いとともに参加費を募り、一番ステキなエッセイの筆者に食堂を譲るというもの。
ハンナの甥ケイレブ(坂元健児さん)は妻が外で働くことにいい顔をしない昔気質な男。シェルビーはパーシーとの出会いをきっかけに変わっていく。
町にやってきた外の人パーシーの存在をよく思わないケイレブ。一見すると憎まれ役のようだけれど、彼にも彼なりの葛藤があるのです。
かつては採石場として活気にあふれたギリアドも、採石場の閉鎖によって今はすっかり様変わり。町の人気者的存在だった今は亡きいとこのイーライ(ハンナの息子)だったらこの閉塞感を打開できたかも……そんな劣等感もケイレブをいら立たせているのです。
保安官ジョー(平方元基さん)もまた、パーシーによって故郷の豊さに気づく。
次第に集まるエッセイ。町のみんなにも選考を手伝ってもらうことになります。そして各地から寄せられたエッセイが人々を癒し、輝かせていくのです。
噂好きのエフィ(田中利花さん)も決して悪い人ではない!
フォーク調のナンバーで彩られたこの作品、なかでも自らの秘密を打ち明けたパーシーを勇気づけるようにシェルビーが歌う♪ワイルド・バードは感動的。パーシーの深い傷、シェルビーの強さを感じる名シーン!
パーシーは森に住む謎の男(Spiさん)と出会う。
それぞれに葛藤を抱えながらも互いに支え合うことで変わっていくパーシーとシェルビー、ハンナやジョー、ケイレブにも変化のときが近づく。その変化には、ときに大きな痛みを伴うこともありますが、それをも包み込む人のあたたかさ、森のやさしさに心癒される素敵な作品です。
【ガラコンサート】
この日は、『RENT』『ZANNA~a musical fairy tale~』が登場!どちらもテーマは「愛」。
プッチーニのオペラ『ラ・ボエム』をベースに、20世紀末のNYCに舞台を移しHIV、貧困、ドラッグ、LGBTなど若者たちの夢と愛を描いたミュージカル『RENT』。先述の通り、シアタークリエで幾度も上演されてきました。歴代キャストミックス、初顔合わせもアリなのはガラコンサートならでは!……ああ、やっぱり『RENT』はいいっ!
♪Seasons of Love
♪What you own(マーク役:村井良大さん、ロジャー役:ユナクさん)
♪Finale 新旧キャストが揃うレアな顔ぶれ!
上段:ソニンさん、ユナクさん
中段:上木彩矢さん、宮本美季さん、村井良大さん、Spiさん、光永泰一朗さん、平間壮一さん
下段:田中ロウマさん
そして、ガラリとカラーは変わってこちらは『ZANNA~a musical fairy tale~』!そのサブタイトル通りおとぎ話のような作品。男の子同士、女の子同士の恋愛が当たり前、男女の恋はマイノリティというあべこべの世界を舞台にした愛と尊厳のミュージカル。ほかにもミロが超ハードな大人の飲み物だったり(売店チェックもお忘れなく)と面白い仕掛けがいっぱいの作品です。タイトルロールZANNA(田中ロウマさん)はみんなの恋のキューピット。
♪Extra love + Finale
岡田亮輔さん、渡部豪太さん、田中ロウマさん、上木彩矢さん、東山光明さん、高垣彩陽さん、Spiさん
そしてコンサートを締めくくるのは『RENT』の生みの親ジョナサン・ラーソンのこの楽曲です。
ジョナサン・ラーソン作曲 Love Heals
第3週は日替わりでほかにも『ダディ・ロング・レッグズ』や『ハムレット』などなどが登場予定!祝祭の公演、今週も盛り上がっています!
舞台写真提供:東宝演劇
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人