鄭義信さんの日本初演作『赤道の下のマクベス』がいよいよ開幕! 戦後の影の日本史を描いた三部作『たとえば野に咲く花のように』『パーマ屋スミレ』『焼肉ドラゴン』、そこに新たに加わるのが本作。
1950~1970年代を舞台にした三作より時代をさかのぼること数年、今回の舞台は1947年夏、シンガポールのチャンギ刑務所。そこにいるのは第二次大戦のBC級戦犯として収容され、死刑判決を受けた男たち。日本人と元日本人だった朝鮮人たちの物語です。
おけぴ稽古場レポートはこちらから鄭義信さん&池内博之さんインタビューはこちらから 庶民の側から描く戦争とは、国家とは……死を目の間にして葛藤し、もがき苦しみながらも生きる人々をやさしく力強い眼差しで見つめる鄭義信さんの「記録する演劇」をお見逃しなく!初日を前に行われたフォトコールと囲み取材の様子をレポートいたします。
ご登壇されたのは、演劇にあこがれ、ぼろぼろになるまでシェイクスピアの『マクベス』を読んでいた朴南星(パク・ナムソン)役の
池内博之さん、元日本軍人でナムソンと丁々発止のやり取りをする黒田役の
平田満さん、そして、作演出の
鄭義信さんです。
照り付ける日差し、ジリジリと肌を焼く暑さ
チャンギ刑務所、死刑囚が収容される監獄・Pホール
「今回はBC級戦犯という厳しい話。戦争というものを背景にしていますが、その中にも友情や愛、人と人との深いつながりというのはある。そこを観ていただければありがたいです」(鄭義信さん)
「戦犯を扱った話ですが、死刑宣告受けたすごい状況の中でも
みんながイキイキと生きて、輝いています。本を読んだときはカフェで涙が止まらずに先を読めなかった。いい話というと語弊があるかもしれないけれど、やっぱりいい話。演じる上では全身全霊、精一杯この役を演じることが第一。ナムソンとして死に向かって行くその瞬間瞬間を、どうポジティブに生きていくかを大事にしながら稽古しました」(池内博之さん)
泣き虫ムンピョンを演じるのは尾上寛之さん
「実際にあった事柄をもとに書かれた話、自分なんかがやっていいのかと思ったんです。僕は、偉い人や観念的なことを言うような役は苦手ですし。でも、この話は庶民の視点に立ったお話、それだったらやってもいいのかなって。登場人物たちは個性的ですが本当に
普通の人たち。そんな人たちが、もだえ苦しんだり笑ったりバカなことをやったり。そこにとても魅力を感じています」(平田満さん)
「池内君はカッコいい役、ヒーロー。僕はそこにくっついている汚いジジイをやっています(笑)。二人がいいコンビに見えたらいいな。やっぱり男ばかりの良さもあるんじゃないかな。バカな奴らばかり。男子中学生みたいな。そこがかわいく、魅力的に見えたらいいな。
そこに人間が生きている、その実感が出せたなら最高」(平田満さん)
一度は釈放されたものの、再び捕まり二度目の死刑判決を受けるはめになった金春吉(キム・チュンギル)役:丸山厚人さん(写真右)
二人の確執……
壁には戦争中に日本軍が建設した泰緬(たいめん)鉄道の駅名。
「戦犯の話、難しい話ではありますが、その中に友情や笑い、涙がある。いろんな要素が詰まっていて、
観たら絶対に楽しんでいただける作品。そこから何かメッセージを持って帰っていただけたらと思います。ぜひ、ご覧ください!」(池内博之さん)
元大尉の山形役:浅野雅博さん(右)と同郷の山形を慕う小西役:木津誠之さんチョウ ヨンホさん、岩男海史さん、中西良介さんは見張りの英兵
あらすじ
1947年夏、シンガポール、チャンギ刑務所。
死刑囚が収容される監獄・Pホールは、演劇にあこがれ、ぼろぼろになるまでシェイクスピアの『マクベス』を読んでいた朴南星(パク・ナムソン)、戦犯となった自分の身を嘆いてはめそめそ泣く李文平(イ・ムンピョン)、一度無罪で釈放されたにも関わらず、再び捕まり二度目の死刑判決を受けるはめになった金春吉(キム・チュンギル)など朝鮮人の元捕虜監視員と、元日本軍人の山形や黒田、小西など、複雑なメンバーで構成されていた。
BC級戦犯である彼らは、わずかばかりの食料に腹をすかし、時には看守からのリンチを受け、肉体的にも精神的にも熾烈極まる日々を送っていた。
ただただ死刑執行を待つ日々......そして、ついにその日が訪れた時......。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人