褐色の大地を若きエネルギーが駆け抜ける!! 石丸さち子さん脚本・作詞・演出、和田俊輔さん音楽の
オリジナル・ロック・ミュージカル『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』がKAAT神奈川芸術劇場 中スタジオで元気いっぱいの産声をあげた!スタッフキャストによって産み落とされた本作が、ここからは観客の力も得て、どう育まれていくのか楽しみになる開幕です!!
シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』をベースに、舞台を現代に移し再構築した物語。そこで描かれるのは、今日性と普遍性を併せ持つ若者の姿。愛を知り、その輝きを知ることで自らに芽生える変化に喜び、戸惑いながら成長するのはハワル(東啓介さん)とリェータ(豊原江理佳さん)。二人を軸にハワルの友人、ポドフ(柳下大さん)、ナウチ(中山義紘さん)やリェータの兄シーラ(大山真志さん)、隔たった2つの地域の“ライン”上に暮らす女・ドゥーシャ(マルシアさん)らを巻き込みながら、若者たちが駆け抜けた5日間をノンストップで舞台上に立ち上げる本作。
6人のキャストが織りなすドラマは、疾走感、キラメキ、切なさ…魅力盛りだくさんで、心をタテヨコナナメに揺さぶられまくりの2時間です。【感想ご紹介】
(←4/9追記)【開幕レポ】【初日コメントが届きました】3パートで構成のおけぴレポ、スタートです。
【感想ご紹介】
写真左より)柳下 大さん、大山真志さん、豊原江理佳さん、マルシアさん、東 啓介さん、中山義紘さん
♪若者達の熱すぎる程の情熱を感じる作品でした。少人数で構成された舞台は時にストレートプレイのようで、役者の動きなど、空間の使い方も美しい。「マタ・ハリ」で圧倒的な存在感を発揮した東くん、さらにパワーアップしていました。これからが益々楽しみです。
♪東啓介さんと豊原江理佳さんの恋する喜びが炸裂していて、とても可愛かった!6人の役者さんの生きるパワーが炸裂していました!同じく石丸さち子さん演出のミュージカル「マタ・ハリ」も、辛い話だけど、生きる力をもらえる作品でしたが、今作も辛いばかりじゃない、素敵な作品でした。
♪現代版ロミジュリのミュージカルという前情報だけで観劇しました。
予想をはるかに超える主役2人の恋愛模様とその周りの人との人間関係、その中にさまざまなテーマが散りばめられていてとても素晴らしい作品です。是非観て欲しい作品。
光と影の演出も見事!!
♪こんなに瑞々しくて輝いているヒロインを今まで観たことがありません。
恋に落ちた二人の感情の爆発がたまらなくかわいくって、思い返すだけでとても幸せな気持ちになります。小劇場規模の濃密な空間で迫力ある歌とお芝居に酔いしれました。恋の喜び、切なさ、怒り、裏切り、誰かを守ろうとする強い思いが交錯して物語は転がっていきます。物語が進むにつれ深刻な状況が訪れるわけですが、ぎっしり詰まった感情の中でおぼれそうになりながらいろんなことを感じています。楽曲もすばらしくて皆さん声が本当にステキ、何度でも観たい舞台です。
♪愛、嫉妬、差別、報復など、目をそらしたくなるほどの現実がそこにありました。6人全員が自分のように思えるし、台詞の一つ一つが痛いくらい胸に刺さりました。終盤、(東さん演じる)ハワルの苦しむ姿が凄絶で涙が止まりませんでした。ぜひ、たくさんの方に観ていただきたいです。
♪大山さんの歌の迫力に圧倒されました。ゆがんだ愛情のエネルギーにシーラ自身が飲みこまれたようで、強靭なシーラゆえに悲劇性をより強く感じました。
♪豊原江理佳さんのリェータ可愛い!恋する女の子そのものでした。
柳下大さんのポドフは本当に切なくて、魚と小鳥の歌は胸がギュッと痛くなりました。その他のキャストの方も全員ハマり役で、すごく熱量にあるお芝居を見せて貰いました。
♪中山さんのナウチの人懐っこい笑顔が、物語が進むごとに悲しく映る。物語の中に身を置くリアリティを感じさせながらも、俯瞰で見つめるキャラクターでもあるナウチに心惹きつけられました。そして、マルシアさんがとても妖艶だったり、母性的だったり、いろんな面を歌や芝居で堪能。
♪ロックミュージカルといっても、ノリノリの曲もあれば心境を切々と歌う歌やバラードもあり、曲のバリエーションは豊富でした。劇場が小さいので舞台が近く、客席通路での演技もあるので、文字通り体当たりの演技を間近で感じることができます。
「ロミオとジュリエット」を下敷きにしたミュージカルとのことでしたが、脚本・演出の石丸さち子さんの思いがあってのラストなんだなと感じました!
♪メッセージ性の強いテーマなのに、登場人物がみな綺麗事だけではなく人としてリアルな感情を併せ持っていて、押し付けがましさがなく素直に泣けました。柳下大さんのポドフに感情移入しすぎて、中盤以降は泣きっぱなしでした。彼の過去について、そうだったのか…!と驚いたので、パンフレットは後で見るのをお勧めします!
ここからは開幕レポートをお届け、お写真もガッツリ掲載なのでご観劇前の方はご注意ください!
【開幕レポート】
若者たちの前に立ちはだかり、彼らの運命を飲みこむ“社会”を象徴するのは、見えない“線=ライン”(=血縁、国境、性別、人種、宗教)。それを乗り越えるエネルギーを象徴するかのように、全身全霊の力を込めて歌い、踊り、駆け回る若きキャストたち。その全力の姿に嘘がないので、架空の土地の物語ながらとても高いリアリティを伴って届けられます。
さらに上演される空間もコンパクトなため、そこにいる人間から発せられるエネルギーもダイレクトにビシビシ胸を打つ!これはミュージカルファンにとっても、初めて舞台を観る人にも忘れられない観劇体験となるのではないでしょうか。
オリジナル楽曲も、キャラクターの心に寄り添うような美しいナンバーから、狂信的に突き進むパワー系ナンバー、民族音楽のような魂を揺さぶるナンバーなどなど実に多彩。リプライズ効果が「あの時の…」という記憶を呼び起こし、5日間の中での、愛し合う二人を取り巻く状況の変化をより一層強く印象付けます。
ハワルとリェータのお二人、東さんの恋に目覚めて天にも昇る心地から、一転、終盤にかけての精神、肉体のすべてをかけた苦悩と葛藤の表現、豊原さんの大地に根差した強さを持つ存在感と声に圧倒されます。そして、本能に導かれるように求めあう二人のラブシーンが美しい!この美しさだけでも(だけじゃないのですが)見る価値あり!!
5日間で少女から大人へ、まさに劇的な変化を遂げるリェータ。変えたのはあなただと告げられるハワル。本当に別人?!というくらいに二人から発せられるものが変わるのです。それは5日間、2時間、その時間の中で、こんなにも!!と驚くほどです。
マルシアさん演じるドゥーシャは、舞台サイドにある椅子に座り舞台上で起こっていることを見守ります。その眼差しは優しく、あたたかい。すべてを知る預言者のように登場したドゥーシャが、なんとか二人を助けようと奔走する姿に自らを重ねる大人は多いかもしれません。
ハワルの友人、ポドフ、ナウチもそれぞれに背負っているものが大きい。聖職者であるナウチは止まらぬ諍い、命が奪われることに悩み戸惑う。でも、絶望の中で、中山さんの透明感のある歌声を聴いたとき、希望を感じました。ポドフは、アメリカ留学から帰ってきた青年。軽妙に振る舞うポドフですが、外の世界を知ったことで、自分にとって大切なものが明確になった。その内面には重いものを秘めているのです。彼が抱える“ボーダー”とは…。柳下さんが時折見せる悲しげな瞳が胸を打ちます。
ゼムリャ側の男、シーラを演じる大山真志さんは一人敵役ともとれるポジション。ただ若く一本気な彼のエネルギーをあの方向に向かわせたのは、果たして彼自身だけの問題なのだろうか。もちろん彼の方法は間違っている。でも、前の世代への苛立ち、世界を変えようとする思い、その熱は本物。だからこそツラくなります。
対立する勢力、諍いの果てには尊い命が奪われる…テーマは奥深くシリアスです。台詞も詩的で、そのボリュームもなかなかのもの。それをときに軽やかに、美しく、力強く、そして優しく観客に受け渡すことができるのはミュージカルだからこそかもしれない。そんなミュージカルの可能性を感じることのできるオリジナルミュージカルの誕生、ぜひ劇場で体感してください。
そして、劇中を全力疾走する人々との出会い、作品との出会いをお楽しみください。
リェータの言葉に「ゼムリャでもデルヒでも、ハワルだったらなんでもいい、あの人でさえあれば、ハワルって名前じゃなくてもいい。ただ、あの人に会いたい」とあります。「あの人でさえあれば」、素敵な言葉ですね。
【初日コメントが届きました】
◆石丸さち子さん(演出家)
一生に匹敵する5日間を2時間で描きます。駆け抜ける愛、転落する愛を、俳優たちは、16m×10mの舞台をまさに走りつづけて、小高い丘からまさに転がり続けて、全身で物語ります。愛という感情が、人と世界にもたらす力を体感してください。
◆東啓介さん
この作品を全員で1から作りあげてきました。現代における様々な境界線、それぞれの愛を感じて頂き、観終わった後、皆様に温かい気持ちになってもらえたら幸いです。劇場でお待ちしております。
◆豊原 江理佳さん
ロックミュージカル「5DAYS」。ついに初日を迎えます。純粋に人を愛する、ということをこのミュージカルを観て下さる全ての方に伝えたいです。劇場でお待ちしております!
◆柳下大
熱い厚い稽古を経て、いよいよ本番の幕を開けます。石丸さんの手により新しく生まれ変わったロミジュリ、「5DAYS」。6人が繰り出す魂の5日間。体感しにいらして下さい。
◆中山義紘さん
オリジナル作品が産まれる瞬間を目の当たりにしていただきたいです。この作品は中山義紘自身にとっても大きな挑戦です。お客様1人1人の想像力をお借りして「5DAYS」を一緒に創り上げたいと思います。KAATでお待ちしております。
◆大山真志さん
長い時間をかけてこの「5DAYS」を皆で創り上げてきました。この作品を観劇した後、お客様に人を愛すること、生きていることの素晴らしさを感じ、温かい気持ちになって頂けたら嬉しいです。
◆マルシアさん
初日はやっと役がおりて来る日。楽しみと緊張が混ざり合い、そしてお客様がそこにいることで作品のラストピースがハマるのだ。「5DAYS」をしっかり生きます。
<あらすじ>
2018年、辺境のための経済復興特別区【グラント】に“ライン”が引かれた。
【デルヒ】と【ゼムリャ】に分かれた二つの街の対立は、驚くべき速さで激化していく。
【デルヒ】のハワル(東啓介)はある日、友人のポドフ(柳下大)、ナウチ(中山義紘)らと、ゼムリャの祭りにもぐり込めることになった。“ライン”上に暮らす女・ドゥーシャ(マルシア)の導きで。
そこで、リェータ(豊原江理佳)とハワルは瞬く間に恋に落ちる。しかし、リェータの兄シーラ(大山真志)は、ゼムリャの血と種を守る民族運動の若きリーダーだった。
転がるように恋しあうハワルとリェータであったが、血気にはやるシーラとポドフが衝突し、二人は引き裂かれていく。街の争い、人々の争いの中、愛を知った二つの命が選ぶ道は……。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人