8月に大阪&東京にて上演される劇団鹿殺し『俺の骨をあげる』ご出演の相葉裕樹さんにお話をうかがいました。数多くのミュージカル作品で活躍される相葉さんが挑む“ストロングスタイル歌劇”とは?!暑い夏にピッタリの、熱く、魂を揺さぶる作品の稽古場の様子とともにレポートいたします。
音楽劇『赤とうがらし帝国』(2009年上演)のリメイクとして、2013年に上演された、劇団鹿殺しの代名詞ともいえる
音楽劇『BONE SONGS』。1人の女と、その骨となって生きた5人の男たちの人生を力強い歌と音楽で描いた人気作が、
ストロングスタイル歌劇『俺の骨をあげる』として生まれ変わる!物語を構成するのは、プロレス、ロック、卓球、デスメタル、そしてプロレス!どこからどう見ても熱い作品の稽古も……やはり熱かった!
【豪華客演キャストと鹿殺しメンバーの夢の顔合わせ】
何度打ちのめされても、立ち上がる!辛島タエという不屈の女性と、彼女の“骨”となった5人の男たち……。
タエの父、都落ちした覆面プロレスラー辛島右近に髙嶋政宏さん、タエの初恋の男・心太に丸尾丸一郎さん、タエの夫で心太の弟でもある秀二に相葉裕樹さん、メキシコ人プロレスラーホセにオレノグラフィティさん、タエの息子の歩に伊万里有さんという、豪華客演キャストと鹿殺しメンバーの夢の顔合わせが実現!まずそれだけで異種格闘技戦が繰り広げられそうでテンションが上がります!
ヒロイン・タエの父親、右近を演じるのは髙嶋政宏さん
髙嶋さんが鹿殺し!覆面レスラー!見逃せません!
そして、この日のお稽古では、誰よりも汗をかかれていた気が……。出番でないときも、ひとり黙々と自主トレしている姿が印象的でした
写真右は相葉裕樹さん
この日は秀二として出演するシーンのお稽古はなかったのですが、タエの骨になった男の1人として歌唱&ダンスシーンに登場。(詳しくはインタビューにて!)
♪チャンピオンになれ~、名曲「チャンピオン」のシーンです
タエの息子・歩を演じる伊万里有さん
このシーンは無邪気で虚弱な子どもの歩。はしゃいでいるけれど病弱、やられていても笑顔、とーっても長身だけど子供。振り幅のある歩です!
写真左より)鷺沼恵美子さん、峰ゆとりさん、伊万里有さん
プロレスごっこでジャレあう子どもたちですが、結構本格的な技が決まっているような……(笑)
オレノグラフィティさん、突如マイクを持ってプロレス実況?!
このときの役はホセではなく……見てのお楽しみです
こちらは心太役でもあり、物語の作者でもある丸尾丸一郎さん
タエと右近
タエを演じるのはもちろん菜月チョビさん。タエの台詞を発するチョビさんの声を聴いた瞬間、「これ、この力強さ!」ビビビと電気が走ったような『BONE SONGS』の衝撃がよみがえりました。
妥協は一切なし!演出家として、的確な指示がビシビシと飛びます
劇団員のみなさんも大活躍!
稽古場からバンドも入って迫力満点です♪
こうしてお稽古を少し見学した中でも、プロレスあり、ダンスあり、歌あり……と盛りだくさん。さらりとあらすじを書くことが難しい作品ではありますが、かといって難解な物語でもありませんのでご心配なく!生きる、愛するエネルギーにあふれたストロングスタイル歌劇『俺の骨をあげる』。開幕に期待が高まります!
続いては……秀二役でご出演、鹿殺し初参戦の相葉裕樹さんのインタビューをお届けします。
相葉裕樹さんインタビュー【“劇団鹿殺しの空気感”がある】
──劇団鹿殺し初参戦とのこと、まずはご出演のきっかけから。 きっかけは、ミュージカル『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』で、劇団員のオレノグラフィティさんと共演したことです。そこで仲良くなって、今年2月のOFFICE SHIKA PRODUCE『おたまじゃくし』を観劇して、ストレートに楽しいなと思いました。そのときの「参加してみたいな」から、トントン拍子に話が進んで、今こうして稽古場にいます(笑)。
※「相葉さんが『鹿殺しさん、イイですね』とおっしゃった、その次の日には出演依頼を出しました!こんなチャンス、逃しちゃいけないと思って(笑)」(劇団鹿殺しスタッフ談)──そして、実際に参加されていかがですか。 劇団の公演に出演すること自体はじめてなので、毎日とても新鮮です。作品をつくるということは同じなのですが、稽古場に“劇団鹿殺しの空気感”があります。
──具体的には。 感覚的なことなのでうまく言えないのですが、“泥臭さ”と“熱量”って言うのかな。そして劇団特有の“厳しさ”もありますね。若手の劇団員の方へのアドバイスも、作品を作りながら育てていくような。そうやって妥協することなく一つひとつ積み上げてきたものが劇団鹿殺しなんだなと感じています。
『ヘッズ・アップ』の稽古場や本番とはまた違うオレノさんの一面が垣間見えるのも新鮮。現場での居方も、物腰柔らかで優しいお兄さんという印象でしたが、それに加えて責任ある立場の人の厳しさを感じます。この作品は“歌劇”とあるように、音楽が大きな役割を担う作品、その音楽面を引っ張っていく立場ですから。
──さきほどお稽古の様子でも、その厳しさの一端は感じました。アクションを芝居にしていく過程を、演出の菜月チョビさんが、かなり綿密に指導されていました。稽古場にて
僕は客演なので、手加減してくださっているのかな……というところもありますが、ここから稽古終盤にかけてはそうも言っていられなくなる。僕も、客演としての役割を果たしながら、劇団の一員になったような気持ちで稽古をしていきます。最終的には、誰もが汗かいてナンボな芝居になってくるんじゃないかな。
【秀二の心情の変化を表現したい】
──「戦う女と五人の骨」、相葉さんが演じる骨の1人である“秀二”については、どのようにとらえていますか。ヒロインのタエと卓球の試合で出会う“卓球の王子様”ということですが。 秀二はスポーツヒーローですが、データ収集・分析に固執するという若干気持ち悪い要素も持った人物です(笑)。結果、タエと結婚するのですが、そこに至る過程では結構非道なこともします。さらにそれによって良心の呵責にさいなまれるという複雑な心情の変化をします。怒涛のように展開する物語の中で、しっかりとお客様に秀二の心情の変化を届けたいと思います。
タエと5人の男の物語が2時間に凝縮されているので、物語の中での秀二のパートは短いといえば短いです。でも、それ以外にも、時間を行ったり来たりしながら“骨”としてタエの周囲に存在します。こうしてお話しても「いったいどういうこと?」と思われるかもしれませんが(笑)、ご覧いただければわかると思うので、そこは本番を楽しみにしていてください。
──“骨として存在する”、この感覚は体感していただくのが一番ですね。 ダンスシーン!
ミュージカル作品が続いていたので、それ以外の舞台で僕を観てくださるのがはじめてという方もいらっしゃるかもしれません。そもそも“ストロングスタイル歌劇”ってなんだろうってね。生バンドで、急にマイクを出して歌いだしたりもする。ある種“力技”でもっていくところもありますが、観る側は身を委ねてもらえればあっという間に物語の世界に没頭できると思います。みなさんについてきてもらえるように、もっともっとストロングになります。
──秀二が惹かれるタエという女性の魅力は。 秀二を、あそこまで駆り立てたタエって……。そこには「何か」があったんだと思います。タエの芯の強さ、生命力みたいなものかもしれないし、夢を追いかけるひたむきな姿かもしれない。でも、1つじゃなくて、いろんな要素が相まってそうなったのかな。人に惹かれる瞬間って理屈じゃない部分がありますよね。そんな感覚です。
──タエを演じ、演出家でもあるチョビさんの印象は。 とても小柄な女性ですが、タエに通じる生命力の強さを感じます。エネルギーがスゴイ。それは、こうして劇団を率いてきたことに裏付けされたエネルギーなのかなと思います。
【目指すものがクリアになってきた】
──本作はタエの骨となった五人の男の物語。相葉さんの骨となってきたものは。 それはこれまでの経験以外に無いですね。やってきたことも、サボってきたことも含めて(笑)、その積み重ねが今の僕になっています。役者をやってきて、たくさんの人に出会い、役に出会い、その中で多くのことを学んできました。
──その経験が積み重なり、とてもいい時期を迎えられている。充実されている様子が伝わります。 ありがとうございます。迷っていた時期もありましたが、今は、目指すものが以前よりクリアになってきたような気がしています。ここから先も、『タイタニック』『オン・ユア・フィート』『レ・ミゼラブル』とミュージカル作品が続きますが、こうしてその前のタイミングでエンターテインメント要素の強い“ストロングスタイル歌劇”に挑戦できたこともとても嬉しくて。チャンスがあればまたストレートプレイもやりたいです。これからもひとつのところに留まらずに、常に挑戦をしていきたいと思っています。
──これからも目が離せませんね。では、最後にメッセージを。 大阪のビジネスパーク円形ホールと東京のサンシャイン劇場、短い期間ではありますが、『俺の骨をあげる』、パワフルでストロングなお芝居をお届けします!観て、楽しんで、パワーをもらいに来てください!劇場でお待ちしています。
──ありがとうございました。本番ではどんな“秀二”として舞台上に立っているのか、新しい相葉さんに出会えることが、ますます楽しみになりました。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人