『マンザナ、わが町』開幕! ソフィアの、オトメの、サチコの、リリアンの、そしてジョイスの人生が織りなすドラマ、舞台写真と早速ご覧になったみなさんからの感想が届きました。前回に引き続き同じ役を演じる土居裕子さん、熊谷真実さん、伊勢佳世さん、吉沢梨絵さんに、今回新たに北川理恵さんも加わり2018年の『マンザナ、わが町』。芝居のアンサンブルに魅せられる感激観劇体験♪ 東京公演は9月15日(土)まで、新宿東口・紀伊國屋ホールにて!(9/12、本記事後半に観劇レポートを追記しました。)
『マンザナ、わが町』おけぴ稽古場レポートはこちらから左から、北川理恵さん、熊谷真実さん、土居裕子さん、伊勢佳世さん、吉沢梨絵さん
-ものがたり-
一九四二年三月、カリフォルニア州マンザナ強制収容所。
そこには、収容所所長から「マンザナが決して強制収容所ではなく、集まった日系人たちの自治によって運営される一つの町なのだ」という内容の朗読劇『マンザナ、わが町』の上演を命じられた五人の日系人女性がいた。
ジャーナリスト、浪曲師、手品師、歌手、映画女優という出自も経歴もバラバラな彼女らは時に笑い、悩み、ぶつかり、時にともに歌いながらも稽古を重ねていく。
一つの‶色"に染められないように...たくさんの‶色"があるからこそ美しい。
ひとりの‶人間"としての誇りを持とうとする五人が下した決断とは。
【感想ご紹介】
「素晴らしかった。演劇とはこういうものだと思わせてくれる。
3時間と長いけれど休憩に入る時には拍手が起きていた。カーテンコールは万雷の拍手が起きていた。人間の素晴らしさとか、演劇の素晴らしさがこの作品を通して伝わってくる。
前回の上演を見られなかったのがなんとも悔やまれる。そして今回見ることができて本当に良かった」
「5人の登場人物それぞれにしどころ、見どころがあり、舞台の隅々まで目が離せません。徹底的な対話を通して、笑いと深い思索を提供してくれるのは、井上作品ならではです」
「キャスト5名で3時間近い公演ということは、観るまで知らなかったのですが、場面転換もないのに目が釘付けの3時間でした。
熊谷真実さんの演技力に脱帽です。他のキャストのみなさんも素晴らしかったです。初日でしたが、再演を楽しみにされていた方が多かったのか客席が熱く沸いていました」
「こまつ座らしい達者な役者での芝居は安心して観てられますね。
熊谷さんの浪曲師あり、歌手あり女優ありでの魅せどころで飽きずに観させてもらいました。
捕虜収容所のなかでもアメリカで生きていく日本人の苦労は力強く生きる姿はアイデンティティーを呼び起こされます」
「素晴らしい舞台です。登場人物は5人です。とても個性豊かな逞しさに、観客が元気付けられます。収容所の話ですが、めげることや悲観的にならず、前向きな持ち主らなので観客は助けられます」
「さすが井上ひさし作品です。5人の女優がひとりひとり個性がありとても楽しかった。
特に熊谷真実さん笑えます。どんな色も美しい、一つの色に染められないように沢山の色があるからこそ美しいんですね。
『マンザナ、わが町』観劇してよかった」
【おけぴ観劇レポ】
観客に支持され、数多くの賞に輝いた作品。その再演ともなれば、演出家、演者をはじめとする座組のプレッシャーは想像を絶します。しかし現在上演中の、こまつ座『マンザナ、わが町』はそのプレッシャーに屈しないどころか、それすらもエネルギーにして、さらなる高みに達していました。女優5人が集まれば、姦しいだけでなく、そりゃもう、とてつもなく?! たくましい。客席に座りながら「なんだかすごいものを観た!」という震えがキマシタ!
稽古場の様子も取材し、もともと期待値はかなり高かったのですが、劇場で見る作品は、さらにさらにさらに素敵な輝きを放っていました。今思えば、稽古場では、この作品に体当たりする女優さんたちの姿を劇中の人物たちに重ね合わせつつ、戯曲のすばらしさを再認識していたような気がします。その今日性に驚愕し、劇中で語られる「怪物」の正体に思いを巡らせていたような。
そして、劇場で観たものは……。もちろんすばらしい戯曲のもとに立ち上げられた舞台ですが、まず思ったのは「演劇って素敵だ!」。戯曲に書かれた台詞が俳優の身体を通して届けられることの力強さ!言葉の誠実さ、歌のリズムやメロディ、節回しの妙に魔法をかけられ、3時間という上演時間の間、稽古場で葛藤していた女優さんたちは姿を消し、高潔なソフィア、情に厚いオトメ、好奇心旺盛なサチコ、若さゆえの強さを持つリリアン、誇り高きジョイス、舞台上で生きていたのは5人の女性たちでした。(もちろん俳優さんがもつ個性も反映されています、そう思うとまさにナイスキャスティング!!)そこから、カーテンコールでは、もはや彼女たちなのか、素の女優さんなのかわからないまま、ただ目の前にいる5人を見て、本編とはまたなにか違った種類の涙が流れました。
5人の女性たちはぶつかり合い、ときに笑い合い、互いの境遇に涙を流しながら、朗読劇上演に向けての準備を進めます。そうしてたどり着くのは、傍から見るととてもシンプルな結論。国家と個人、憲法、人種、アイデンティティ……今もなお、長いトンネンルの中にいるような、むずかしい問題に対して、投げかけられるシンプルで明確なメッセージ。作者・井上ひさしさんの「むずかしいことをやさしく」という言葉を思い起こさずにはいられませんでした。現在、ものがたりの舞台となったアメリカ合衆国でも、人権や移民といった問題がクローズアップされています。また、アメリカだけでなく世界中で考えていくべき問題として、その重要性は高まるばかりのテーマ。テニスの全米女子オープンを巡る報道を見ていても、ふと『マンザナ、わが町』のことを思い出していました。もしかしたら書かれた当時よりも、今を生きる私たちのほうが必要としている作品なのかもしれません。
そう思うと、遅筆堂と自称していた井上ひさしさんですが、その作品は、“未来の現代人”にも響く、かなりの先取り作家先生ですね!すばらしい作品の普遍性、変わらぬ今日性を痛感しました。
東京公演は後半に突入!チケット完売の日も出てきております。チケット確保はお早めに!
わたしたち人間は、国家や民族を超えて、
人間が地球という世界を一つの共同体として、
すべての人間が平等な立場で
所属することが大事です。
―――井上ひさし
舞台写真提供:こまつ座 感想寄稿:おけぴ会員のみなさん
編集:chiaki 監修:おけぴ管理人