10月5日(金)新国立劇場にて11月公演『誰もいない国』に出演する柄本明、石倉三郎、翻訳を担当した喜志哲雄、そして演出の寺十吾が出席し一般のオーディエンス向けの公開トークイベントが開催された。その中で、ノーベル文学賞も受賞した劇作家ハロルド・ピンターの作品についてや、今回の出演に対する意気込みを伺った。
■新国立劇場・初登場の柄本明「作品を探る旅に出るような気持ち」
登壇した
柄本明は、台本を読んだ感想について聞かれると
「ピンターに限らないのですが、よその人が書いたものなんかわからないですよ。自分の言葉じゃないですからね。だからそれを探しに行くんです。作品を探る旅に出るような気持ちです。そういう意味では、(よく難しいと言われる)ピンターはやはり好きな作家ですね。」と答えると、今回舞台では初めて柄本明と共演する
石倉三郎は
「同じく、さっぱり分からないですね。でも、演じるうえで、分からないからこそ楽しいですよね。柄本さんからお話を頂いて出演を決めたのですが、この歳でこういう作品が来るということは運命かな。そう言ったら、柄本さんが全くその通りですって(笑)。柄本さんとの共演は、単純に楽しみですね。胸を借りるつもりです」と仲の良い二人らしく、初共演の舞台に対する期待を語った。
■寺十吾「分からないなりに、このカンパニーでの方向性が見えてきた」
さらに、ピンターの作品について問われると翻訳を担当した
喜志哲雄(京都大学名誉教授)は
「ピンターの作品はよく分からないとか、難しいとおっしゃる方が多いのですが、近代のリアリズム演劇によくある行動の動機が全て明確な劇というのは、かえってリアルではない気がします。誰かがある行動をとるという場合でも、時によっては、その当事者自身がなぜそれをやったかわからない。むしろこれが普通であるように思います」と語る。
新国立劇場の芸術監督に就任した小川絵梨子たっての希望で本作の演出を担う
寺十吾は
「わからないなりですが、少しずつディスカッションで話し合う中でこのカンパニーにおいて方向性が見えてきました。もちろん必ずしも定まった正解というものはないのですが。分からないとおっしゃいつつも、柄本さんが声を発するとやはり心に入ってくるものがある。分かった気かもしれませんが、こういう手ごたえが数日の稽古でも手に入りましたね。」と稽古中の様子を交えて日々完成度が上がる稽古場への期待を語った。
今回のトークイベントでは柄本明をはじめ、飄々と作品に対する感触や意気込みを語ったが、お互いの信頼が垣間見える内容で、あらためてハロルド・ピンターの『誰もいない国』に挑むベテラン俳優たちの汗かく姿が楽しみになる内容だった。
公演は11月8日(木)~25日(日)まで。東京・初台の新国立劇場にて。
チケットは好評発売中。
【イベント概要】
新国立劇場「誰もいない国」公開トークイベント
登壇者:喜志哲雄・寺十吾・柄本明・石倉三郎・大堀久美子(進行・演劇ライター)
この記事は公演主催者からの提供により、おけぴネットが製作しました