ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』(以下、JB)大阪公演中に開催されたKANATA LTD.主催
『伊礼彼方の部屋 vol.2』@新歌舞伎座。 伊礼さんが、今、語り合いたい人ととことん語り合う、そんなお部屋の様子をレポートいたします。
はじめに本イベント『伊礼彼方の部屋』についてご紹介いたします。 2017年、
ミュージカル『王家の紋章』大阪公演にて初開催(ゲストは平方元基さん)、今回は第2回となります。
「公演のアフタートークのもっとくだけた感じのイベントがしたいな。共演者と楽屋でおしゃべりするような感じで役のことや芝居のことを話せたら……という思いつきで始めたんですよ」(伊礼さん談) なんて素敵な思いつきでしょう!今回も、くだけた雰囲気の中で、核心をつくコメントも飛び出す楽しいイベントとなりました。
【登場までに、ひと騒動?!】
まず登場したのは、もちろんこの方、伊礼彼方さんです!
「この日を楽しみにしていたんですよ!たくさんの質問をお寄せいただきありがとうございます」
伊礼:では、早速、この男に登場してもらいましょうspi!
spiさん登場!
spi:どうもどうも、spiです!みなさん、JBはご覧になりましたか?
今日ご覧になった方?との質問に、一斉に手が挙がる一方で、
未見の方がいらっしゃることが判明!!
(つい先ほど、大阪公演初日を終えたところですからね)
伊礼:それはそれはご挨拶が遅くなりましたが、JBトミー役の伊礼彼方と申します。
spi:ニック役をやっているspiです。
伊礼:JBは、4人組のボーカルグループ“ザ・フォーシーズンズ”の話ですが、まぁ、一筋縄にはいかなくてね。僕が演じるトミーは、半分マフィアの世界に足を突っ込んでいるような男で、イタリア人でね。半分は自分の中に内在しているので苦労はしていないのですが。
spi:彼方さん、半分マフィアなの?
伊礼:そういうことにしておけば、なにかあってもみんな受け入れてくれるかなと(笑)。
spi:でも、本当にすごいんだから、本当に面倒くさくて大変!
伊礼:なにがそんなに大変なの?
spi:なんていうか、“感じ”?
伊礼:感じ?相変わらず、中身のない話をしやがって(笑)。
spi:いや、もうほ~んとに“感じ”が大変。これ、わかる人にはわかると思いますよ。
(客席で頷いている人、多数・笑)
伊礼:いや、もう話にならないわ。3人目を呼びましょう。えーと、アイツ、ボブ……なんだっけ?
spi:スコーピオン!
客席:笑!!
伊礼:あ、これはJBを観ていない人はわからないかもしれませんが、面白いところなんですよ(笑)。矢崎広~!
矢崎広さん登場!
矢崎:こんにちは~。ちょっと、場が荒れ過ぎですよ。トークの荒れ地!!場をならしてくれていると思っていたら……。改めまして、ボブ・ゴーディオ役の矢崎広です!
(なんだかちゃんとしてる!!)
伊礼:今回、お二人をお迎えしてしゃべりたいと思ったのは、実は、spiくんとは稽古場でもバカ話、中身のない話ばかりでしたが、逆に矢崎とは面白い話ができなかったんですよ。お芝居のこととか、中身のある話しかしていないよね。
矢崎:え?会話って、そういう中身があるものでしょ。
伊礼:仕事だけの付き合いか、俺たちは!!
矢崎:いやいや(笑)。でも、冗談を言い合う感じではなかったですね。
伊礼:今日は彼らの素顔を見たいというのもあるんです、僕、個人的に。そもそも、「矢崎」、「ぴろし」、「広」……なんて呼べばいいんだよ。まず、俺が定まらないんだよ(笑)。
矢崎:それは好きにしてくださいよ(笑)。
spi:まぁ、“ぴ”つながりで、「ぴろし」でいいんじゃないですか。
伊礼:じゃあ、それでいく。
リラックスした雰囲気の中、ここからはみなさんから寄せられた質問に答えていくことに。
伊礼:質問は「自分が演じている役は、自分の中でどんな存在」。
矢崎:僕は2年前の初演からこの役をやっていますが、ボブ・ゴーディオという大きな存在をずっと追いかけている感じです。でも、すごすぎて未だに追いつけない。ずっと追いかけ続けるんだろうな。
伊礼:初演(RED)と今回(BLUE)の違いは。
※矢崎さんは初演ではチームRED、再演ではチームBLUEにてボブ・ゴーディオ役を演じられています。矢崎:僕自身の変化としては、この2年の経験を糧に役の作り方は変わりました。初演のREDでは、夏を中心に「僕(ボブ)はこういう人間です」というアプローチ。BLUEは他人から見たボブはどうだったのかという視点、秋を中心に作りました。秋のボブを丁寧に作ることで夏が輝き、そこを突き詰めていくと、ニックにもトミーにもストレスを与えられると思って。チームとしての違いは、よくわからないです(笑)。ただ、よく言っていたのは、
REDのときはオオカミ3人の中に豆芝がいる感じで、BLUEは……、外国犬の中に日本犬が居る感じ(笑)?spi:HUBに迷い込んだ感じ?
矢崎:そうそう、居酒屋かな~と思ったら(笑)。でも、本当にBLUE、楽しいです。僕はREDへの思い入れも強かったですが、今は、どちらも大切で天秤にかけて選ぶようなことはできません。
伊礼:忘れられないBLUEにしてやるよ。
矢崎:抱かれるんですか、僕(笑)。
伊礼:一瞬脱線していいですか!はっきり言わせてもらいますが、
おれ、コイツ(矢崎さん)の顔、すごいタイプ。「お前、いい顔してんなー」と会うたびに言っています。
矢崎:確かに会うたびに言ってくれるんですけど、そのたびにどうしていいのか……。
伊礼:別にいいんだ。俺が自分の中に留めておけないだけだから。
矢崎:そんなの……、すごい重いじゃないですか(笑)。
伊礼:気にすんな!続いてspiは?
spi:ニックねー。最初は超苦手だった。映画を観たときも何コイツ、超ダセーって。それに加えて役としては、(吉原)光夫さんや福井(晶一)さんという大ベテランのポストでしょう。でも、今となってはニック、カワイイと思いますよ。面白いヤツって(笑)。
伊礼:最初は、タオルのくだりもわからないって言っていたよね。俺は神経質だから、他人が使ったタオルを使う、それを10年間耐えるなんてありえない。俺だったらすぐに言うというような感覚を話したよね。
spi:そうそう、俺、結構大丈夫なんで。他人が使ったタオルとかも平気。
客席:どよめき
伊礼:信じられない。あそこで俺はトミーとして「はぁ~」って聞いているけど、伊礼彼方としては「絶対いや、俺のタオル使わないで!!」ってタイプ。
spi:中身は真逆なんですよね(笑)。伊礼:ぴろしが秋から作っていると話していたけど、俺もニックがいなければトミーはいないと捉えている。だから、春からニック(=spi)にいろいろと芝居を仕掛けている。でね、spiがそれを上手く拾ってくれるんだ。そうすると秋まで多くを語らずとも、ニックがそこに存在する。さらにそれによってトミーの孤独、もがいている姿が浮き立つ。そしてニックの秋を経て、すべてがアッキーに受け渡される。
矢崎:最終的にアッキーに渡すまでの連携をすごく感じます。各シーズンで個性を出すより、彼方さんは夏のために、僕は秋のために作って、spiは冬のためにああいう去り方をしてくれるから、BLUE、すごく素敵だなと。
伊礼:spiは一時期、秋での怒りのレベルが上がり切らなかったよね。それでもいいお芝居なんだけど、原因は何なのって思わず聞いちゃった。
spi:なんか怒れなくて。実生活でもいいことが続いて(笑)。いろいろと考えて、結局、電車で横入りする人が嫌いなんですよ。それでイラつこうと頑張ったりして。
矢崎:spiは芝居で嘘つかないんだよね。その場を生きるから。
伊礼:俺、spiの芝居大好き、自然体で素晴らしいと思う。でも、ちょっと作ろう。最後、俺、椅子を蹴らないといけないんだから。
spi:芝居で嘘つくのって大変。でも、渡そうとはしているんです。
伊礼:そうそう、あんまり言いたくないんだけど、そこがすごいんだよ。ある日の公演で、俺が椅子を蹴るところまで気持ちが上がらないことがあったんだけど、それを察知して、その瞬間に指を出してきたんだよ。俺はそれを叩いて、それでテンションが上がった。そうしたら、ぴろしが「トミ~」ってすごい泣きべそかいたような顔して(笑)。
「トミ~」(伊礼さんによる顔マネ)
「いまのダメでしょう。ぴろしがかわいそう」(spiさん)
「僕は作ってやっているのにっ(笑)!!」(矢崎さん)
突然とてもトミーっぽくなる伊礼さん!
伊礼:こんな風に、BLUEはお互いに感じたことを、その場で拾ってやるから日々違う。いろんな事故もあるけど……。
spi:トミーが蹴った椅子が闇に消えたり。
矢崎:それを取りに行くフランキーも闇に消えるという。
すると、舞台袖から
「とんだもらい事故だよ~(笑)」と現れたのは……。
【なんと!フランキー登場】
「なにこれ?公開ダメ出し?」
フランキー・ヴァリ役の中川晃教さん
中川さんも加わり「秋」の話の続きを。
伊礼:トミーは責められれば責められるほど虚勢を張る。なんてかわいそうな男なんだと。
中川:「ここまで俺がやってきたこと」ってトミーが話すのを、フランキーとしてはプンとして聞いているけど、実際は泣きそうになるよ。
伊礼:あそこの俺ら3人(フランキー、トミー、ニック)の別れは家族の訣別に近いものがある。コイツ(ボブ)は後から入ってきて、家族ではない。コイツが入れる理由は才能だけ。でも、その才能にやられるんだよな。だから許せない。力や経験でねじ伏せてきたトミーがさ。それで、フランキーも一緒にどんどん才能を発揮して……。
天才って無意識に人を傷つけるんですよ。あっという間に置いていかれる。フランキーをソロにしようとするところの会話でフランキーは「どうしてみんな離れていくんだろう」って言うんですよね。気づいていないんだ……。この天才たちには、わからないんですよ。
矢崎:僕、ボブ・ゴーディオは天才だけど、天才という役作りはないと思っています。
天才のなかの人間を探すのが好きなんです。ボブを演じていて面白いのは、「僕は昔馴染みの土地に思い入れはない」と言いながら、ずっとヴァリと組んでいる。そこに人間を見るんです。あなたも昔馴染みの土地に惹かれているよ、思い出がたくさんあるんでしょって。
伊礼:いい話だな。
楽しい時間はアッという間に過ぎていき……ついにこのときが。
伊礼:では、最後の質問!「もし違う役をやるとしたら」。
spi:メアリーやりたい。大ファン!「5セント玉もってる?」「せっけん」(再現)。
伊礼:メアリー、デカっ!
「で、こうなる」(プロポーズの再現)
中川:2つあるんだけど。1つはトミー、もう1つはボブ・クルー。スコーピオンやりたい!!
ひょんなことから「スコーピオン」大会が始まりました。戸惑いながら矢崎さんがトライすると。
「スコーピオン」(矢崎さん)
「顔と合わない。今のきれいな顔の人が言うスコーピオンやって」(中川さん)
まさかのダメ出し?!
「スコーピオン」(矢崎さん、2度目)
「そっちのほうが好き」(中川さん)
「わからない!」(矢崎さん)
思わず立ち上がる矢崎さん(笑)
ほかにやってみたい役……、スコーピオン大会で終わってしまいました(笑)。そして楽しい時間はあっという間に過ぎ、締めのコメントへ!
矢崎:始まる前はどうなるのかドキドキしていましたが、楽しかったです。伊礼彼方の部屋の一部になれて幸せでした。ありがとうございました。
spi:僕、『伊礼彼方の部屋』で彼方さんにアレを教えなければいけなかった!今、いいですか。ファンサを教えます!まずは、お手本を。
決め顔で「また会いに来てくれよな」
「また会いに来てくれよな」(伊礼さん)
メチャメチャ照れてる!!
客席:ヒューヒュー!!
中川:なるほどね~。
(とファンサに妙に感心されていました)急きょ、乱入しましたが、『伊礼彼方の部屋』はお客様が温かいですね。そして、2階にいるみんなもありがとう!
2階客席には、JBご出演の大音智海さん、白石拓也さん、山野靖博さん、石川新太さんが!!
ソロになったフランキーとハーモニーを奏でる4人ですね♪
伊礼:みなさんありがとうございました。また、お会いしましょう!!
とここで終わりかと思いきや……
作品や役についてだけでなく、演劇界について深く切り込むのも『伊礼彼方の部屋』。ここからはディープな話題をお届け。
【『伊礼彼方の部屋』 奥の間】
中川:彼方くんはテニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)に出ていたでしょう。
「佐伯虎次郎という役をやっていました」(伊礼さん)
伊礼:ぴろしもだよね。
矢崎:僕は山吹中学の南健太郎、地味's(じみーず)という、キャプテンなのだけど他が目立ち過ぎてあまり目立たない役でした。
中川:かわいそう。
(でも、そこがまた人気あるみたいですよ!)
中川:テニミュに代表されるような2.5次元ミュージカルで頑張っているところから、マルチに活躍するという意味で抜け出ることも大切だけど、
自分の出自を大切にすることも大事だよなと思うことがあってね。その辺、どうなの?
矢崎: 2.5をやっている人も全力で、熱い魂を持ってやっているからこそ2.5というジャンルにまでなったと思うんです。技術的に求められるものも違うので、2.5とJBのようなミュージカルの間にはやっぱり垣根があるように思われます。でも、僕や、spiもそうだと思うけど、やることの根っこは同じなんじゃないかな。
伊礼:spiは、今も『刀剣乱舞』をやっているよね。こういう人が増えればいいと思うんです。2.5もほかもできる。それぞれのジャンルから学ぶことはあるから。実際はミュージカルって言っても劇団四季、宝塚、こういう東宝ミュージカルとかあるわけでしょう。それぞれに様式がある。2.5も、そのひとつの形ということ。
ただ、2.5の人気作品をやっていると、キャーキャー言われるんですよ。それが自分のお客さんだと勘違いするのは危険。それは作品のファンだから。その役を離れたら、そこからは実力勝負。だから実力がつくまでは、俺は2度と戻らないって決めたの。
中川:自分への戒めでもあるんだ。
伊礼:そう。なぜかというと、俺はずっと路上ライブをやっていたんだけど、ワンマンライブの1,500円のチケットを100枚売るのにどれだけ時間とお金がかかったか。そういう経験をしていると、なにもしなくても2000人集まる会場、その舞台に立たせてもらっているというのがどういうことなのか。そこに感謝の気持ちが芽生える。
中川:その通りだね。それを知っているかどうかが大きい。
伊礼:それによってたどり着く場所が変わると思う。作品を批判するとかじゃなくて、
どういうモチベーションでやっているのかをしっかりと問う必要がある。それは制作側も。ただお金のためだけに軽々しくやってほしくはない。もちろんショービジネスではあるんだけど。
中川:俳優として思うのは、2.5は再現性が重要だったりするでしょう。その場合、自分を出したいという欲求はどうなの。もちろん自分を出すというのが俳優にとって必要不可欠ではないと思うけど。お客様のイメージに応えるという意識っていうのかな。『銀河鉄道999』をやって、星野鉄郎という完全に出来上がったキャラクターを演じたときにいろいろと思ったんだよね。
spi:役を越えていきたい、広げていきたいというのはあるけれど、実は、俺、
自分全殺しの全応え、結構好きなんです。俺がやりたいことはゼロ、とにかく求められることをやるの好き。
伊礼:俺も結構好き。だって、俺が王子様やるって全殺しだから(笑)。
“自分全殺し”興味深い!名言ですね。
【spiさんの念願~新歌舞伎座に愛を込めて~】
ここからはご想像にお任せします。spiさん念願のJB○○○バージョンの再現、意外にも?!中川さんがノリノリでみんな焦り、最終的に無法地帯に……。
若干引き気味だった中川さんですが……
中川さんのスイッチオン
フリーダム!
ロングレポートをお読みいただきありがとうございました。しかしながら、これもほんの一部!『伊礼彼方の部屋』、次はどこで開催されるのか、お楽しみに~!!
覚書:今回のイベントでは、ライブの構想も発表されました♪伊礼さんはベースorギターorドラム、中川さんはピアノ、spiさんタンバリン、矢崎さんカスタネットで参戦予定とか(笑)。果たして、有言実行?瓢箪から駒?となるか。今後も注視していきたいと思います。
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special thanks 新歌舞伎座様 関西テレビ様 すべてのジャージー・ボーイズ関係者の皆様
主催 KANATA LTD.
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人