あの二人がついにタッグを組む!混ぜるな危険!混ぜなくても危険!な爆裂トークライブ『ニイロカナタの"毒"宴会』オフィシャルレポート




 2018年12月9日、口外禁止!SNS禁止!の戒厳令が敷かれるなか、会場となったDDD青山クロスシアターに集った勇者たち。そんなみなさまを迎え撃つ(?!)のは新納慎也さんと伊礼彼方さん!



伊礼彼方さん、新納慎也さん


「SNS禁ですからね!」(伊礼さん)「200人くらいの顔は覚えられますからね。
口外したら、家まで押しかけますよ!!」(新納さん)


【毒宴会って?】


~早速、毒宴会のスタートです。まずは本イベント開催のいきさつから~

伊礼さん)
 今回、新納さんをお誘いして、このイベントをやろうと思った理由からお話します。僕ら、楽屋でよくしゃべっているんですよ。それで本当に面白い人だなぁと。

新納さん)
 ミュージカル界にもいろんな人がいるんだけど、芝居に対する考え、そのベースが一緒だとお互いに感じたんだろうね。だって、価値観の違う人とは長くしゃべれないから。

伊礼さん)
 つまり、ひと言で言うと「類は友を呼ぶ」。実は作品で共演したのは1回だけですが、そのときも、打ち合わせなしで、自然に芝居のコミュニケーションがとれたんですよ。

新納さん)
 タイプの違う人だと、なんでこの台詞でそっち向くかな……。そのすり合わせから始まる。非常に時間とストレスがかかるんだけど、それがなかった。

伊礼さん)
 わかるわかる(笑)。今日ここで話そうと思っていることは、そんな僕らが楽屋でしてきたようなミュージカル界、演劇界の話。実は、みなさんから寄せられた質問も、それに近いものがメチャメチャ多いんです。


~ここで早速、集まったみなさんに緊急アンケート、圧倒的に多くの方が「ちゃんとお芝居しているミュージカルが好き!」という結果が~



伊礼さん)
 でしょう。お客さんもそう思っているんですよ。では、なぜ、この現状なのか?

新納さん)
 そもそもミュージカルのオーディションがね。圧倒的に歌の比重が大きく、芝居のオーディションがないんですよ、そんなことってあり?



「僕はこっちにいますよー」

伊礼さん)
 だから、すごい歌えるけど、お芝居は「なんでそっち向いて台詞しゃべるの?僕はこっちにいますよー」ってことが起こる。

新納さん)
 もちろん、それが要求される作品では、俺たちもやるけど(笑)。



こんな感じ?(笑)


これもできる(笑)

伊礼さん)
 そうそう!ちなみに、今、初めての和モノ(音楽活劇『SHIRANAMI』)の稽古をしているんだけど、「見得を切る」ということを要求されるんです。それはそれで快感(笑)。

新納さん)
 歌舞伎的な“型”だよね。そして、帝劇は、ある種それに近いことが必要だと思う。あの2000人という空間、一番後ろの席まで何かを伝えようとすると、大きな芝居も必要。でも、それを小さな劇場でもやるというのは……。

(場内拍手)

伊礼さん)
 そういうこと!!どこを見ていらっしゃるの?ってなるんですよ(笑)。それだけならまだしも、そこで「おかしくないですか」と自分の意見を言うと、稽古場の空気がものすごく悪くなるんですよね。それでも言いますけどね。



新納さん)
 演劇って、アーティストが集まって作品を作る場。そこでは、演出家、スタッフ、役者は対等であり、それぞれの仕事を全うする責任がある。でも、今は、演出家に絶対的権力が集まりがち。もちろん最終的にかじ取りをするのは演出家だけど、作品をいいものにするために話し合いをすることは当たり前のことでしょ。それが、役者はなにも言わないもの。言うと「演出家に意見する役者登場~」みたいな空気に……。

伊礼さん)
 演出家に対しても、役者同士でも、先輩・後輩関係なく自分の考えを言って、それが結果として却下されたとしても、そこで納得できればそれでいいんです。その過程が作品のクオリティを上げることに繋がる。

新納さん)
 だって、一か月以上稽古をしていたら、役者は演出家以上に自分の役の生理がわかるようになりますよ。「ここでこれを持て」と言われても、持てないこともある。その感覚は伝えたいし、そこは汲み取ってほしい。それでも持たなくてはいけないなら、別のアプローチを考える。その話し合いがしたいだけ。それが「はい、演出家に文句言った。二度と使わん」、その風潮がメッチャいや!

伊礼さん)
 そして、そういう空気を作るのが、芝居作りの只中にいる人でないことが多い。いやいや僕らは楽しんでクリエイトしているだけですからって。これ、きっと演劇界だけじゃないでしょ。(頷く会場)みなさんも仕事をする上で感じていることなんじゃないかな。


【役者が育つ環境】


新納さん)
 彼方の優しいところは、後輩を叱るところだよね。

伊礼さん)
 僕、2.5次元ミュージカル……



新納さん)
 ちょっといい?お前、ちょいちょいそれ出してくるけど、彼方のときの2.5次元と今は様子が違うから!2.5次元出身とか言わんといてくれるっ!

伊礼さん)
 まぁまぁ……そうなんだけど(笑)。いいじゃないですか。ラケット振っていたんですから!2.5次元の舞台って公演数がすごく多くて、稽古時間が短いんですよ。それは役者のせいじゃないんだけど、そのままのスタンスで来られると、それは違うかなとなる。

新納さん)
 俺らはどんなに頑張っても1年に4作品くらい。彼らは10作品近くやる。もはや職業が違う。で、爆発的に売れるから(待遇で)恵まれているところもある。ただし、外の世界でやっていくなら、それは違うってこと。
 言っておくと、2.5次元というのは、1つのジャンルとして確立されているしありだと思っていますよ。テニミュを見たときは、本当によくできているなと思ったからね。何もないところで照明を使ってね。

伊礼さん)
 そうなんですよ。演出やさまざまな創意工夫が詰まっていますよね。
 ただ、僕らがやっている世界では、何かを覚えて身体に落とすには時間がかかる。いきなりそこへ入ってきて、それを知らないままでいることはかわいそうだと思うんです。中途半端な状態で出て恥をかくのは役者だから。だから僕は、ついつい教育係みたいなことを買って出てしまうんです。



新納さん)
 そうなんやけど。もう、(役者として)育ってきた環境が違うから。もうちょっと年齢が近かったら、嫉妬も含めてイラッとすることもあったと思うんだけど、俺は、もはやおじいちゃんみたいな心境。

 だってな、よく若い子らに「新納さんが10代、20代のころって、どうでしたか?」と聞かれるんやけど、状況が違いすぎる。当時は、ミュージカルで役がもらえるなんてアイドルか芸能人。ミュージカルをやりたいと思ったら、アンサンブルのオーディションを受けるしか入口はなかった。そこから始まって、たった1小節のソロをもらうのに何年もかかったからね。そのためには、カンパニーの中で誰よりも歌が上手くないともらえない。だから自分でレッスンにも行った。ダンスも芝居もそう。誰よりも上手くなきゃ上がれなかった。だから初めてマイクをつけてもらったとき、泣いて喜んだ。

 今の2.5次元の子たちの環境とは全く違うでしょ。どちらかというと「上手くなっていく過程」にファンがつくようなところもある。それである程度の年齢になると、こっちに来る。そこで、俺の価値観で、あっている、間違っていると言ってもわからないだろうし、そもそも俺が育ってきた道のりが正解とも限らないし。放っておいても、ちゃんと出てくる子は出てくるし。そう考えちゃうんだよね。最低限のことは言うけど。
 そこできっちり叱る彼方は愛があるなと思う。


【『スリル・ミー』の「彼」あるある】


伊礼さん)
 続いて『スリル・ミー』の話いきましょう。みなさん、聞いてくださいよ。この毒宴会が決まったとき、(田代)万里生くんが律儀にグループラインを作って、メッセージを送ってくれたんです。それに対して、僕は返したけど、この人は何も返さないんですよ。

※お二人は同じ「彼」役で、新納さんは2011年(初演)、2012年3月/7月-8月に、伊礼さんは2014年にご出演。相手役となる「私」はいずれも田代万里生さん



新納さん)
 彼方が返していたから、ええかなと思って(笑)。

伊礼さん)
 彼の気持ちを汲んであげてくださいよ。今日だって、来たい来たいって言ってくれていたんです。「稽古が遅くなってどうしても行けないけれど、(毒宴会が)始まる時間には、僕が稽古場からパワーを送ります!」ってメッセージをくれて。さすがにそれには返していたね。スタンプだけど(笑)。

新納さん)
 「それはさておき、好きだ」ってスタンプね(笑)。ほら、公演中だから!

伊礼さん)
 作品についてはどう?

新納さん)
 素晴らしい作品、大好きだけど……。物語自体が「私」を通して描かれているから、あくまでも私の中の「彼」なんだよね。「彼」の真実は描かれていない。ラストも「私」はちゃんと着地するけど、彼は着地しない。だから、「私」役の人は、終わったときにさっぱりしているんだけど、「彼」役はすっきりしないまま、毎回首を傾げたくなるような感じだったの。それを、かっきー(同じく「彼」を演じた柿澤勇人さん)に話したら同じことを感じていて、その後、韓国キャストの方にも聞いたんですよ。そうしたら「そうなんですよ!「彼」役はお飾りに過ぎないから、ものすごくストレス!」と言っていて。みんなそうなんやなと。だから「私」やってみたい(笑)。

伊礼さん)
 それ、わかるわーー!すっきりしないのよ、「彼」は!で、「私」やりたいの?

新納さん)
 もう、ええ歳やけどな(笑)。



~客席から質問を募る一幕も。寄せられたのは「観客に期待することは」~

新納さん)
 お客様は自由だと思う。お金を払っているんだし。

伊礼さん)
 つまらなかったら途中で帰ってもいいんです。そうなったら、僕らは反省し、次はもっとよくしようと思う。なにを言ってもいいと思いますよ。ほら、よくあるトークショーの後付けとかにも!本当に、ああいうのが嫌だ!

(場内拍手)

伊礼さん)
 だから僕はなるべく断るようにしています。抗えないときもあるんだけど(笑)。

新納さん)
 だってね、ファンクラブ先行とかやるでしょう。そこで買ってくれた人、本当に観たくて観たくて何か月も前にチケットを買ってくれた人より得をする人がいるって、間違ってない?

伊礼さん)
 そう、先に買ってくれた人に優しくない!それはこれからも声を大にして制作サイドに訴えていきたいと思っています。



新納さん)
 俺らって、若い頃からこういうタイプ。口うるさい役者だけど、その割に生き残ってるよな(笑)。
 そうは言っても、やっぱり言うことで傷つくというのが俺の面倒くさいところなんだけど。

伊礼さん)
 確かにネガティブなことを言うのはシンドイですよ。でも、言っていかないと変わらない。

新納さん)
 たとえばプリンシパルとアンサンブルの壁にしても、理不尽なことが多い。待ち時間はしょうがないところもあるんやけど、長い時間稽古場で待たされて、突然踊れなんて、それは怪我をする。自分がアンサンブル出身ということもあって、彼らのことも考えてあげてほしいと言うと、よくぞ言ってくれた!という人もいるけど、稽古場の雰囲気は「新納さんがキレた」と悪くなる。俺はそのことに3日くらい落ち込むわけ。

伊礼さん)
 俺はそうは思わない、だって正論だもん。

新納さん)
 正論やで。でも、人は正論を言われると怒るの。どうすればいい?

伊礼さん)
 でも、少しずつだけど変わってきてはいると思う。各セクションで変えていこうという人が現れているし。
 こうして終演後のトークショーとかではなく、もう少しオープンな場で語る、このような機会を設けたのは、文句が言いたかったわけでも、悪口を言いたかったわけでもないんです。

新納さん)
 実はこんなことを日々考えている人間がいるということをわかってもらえれば、それでいいんです。

伊礼さん)
 今日集まってくださったみなさんは、リアクションや事前に寄せられた質問を見ていても、それを理解してくれていると感じられてうれしいです。

(場内拍手)

新納さん)
 そして、演劇やミュージカルのチケット代って高いですよね。それでもいつも見に来てくれる。それはすごいと思う。改めて、本当にありがとうございます。

伊礼さん)
 こういう会を来年もやろうと思っていますので、よろしければ、またいらしてください。

お二人)
 本日はありがとうございました!



 こうして毒宴会はあっという間に終わりました(とはいえ2時間超)。お二人の毒は、舞台への愛に裏付けされていて、毒であり、現状を突破するクスリにもなりうるものでした。毒にも薬にもならないまろやかなものが溢れている昨今、お二人のお話、そして存在は刺激的で、舞台好きの「これからも楽しみ」というワクワクを増幅させるカンフル剤ですね!本来、SNS禁、口外禁ということで、本レポはだいぶまろやか仕上げになっておりますが、お二人の心意気の一端でも伝われば幸いです。


【おまけ】

~お二人の“初めまして”~

 伊礼さんの観劇コラムの取材対象が、新納さんご出演の『TALK LIKE SINGING』(2010年、脚本・演出 三谷幸喜さん)であったことから、取材の一環で伊礼さんが新納さんの楽屋を訪ねたのが“初めまして”とのこと。

 お写真発見

 そして新納さんから、写真には写っていないけれど確かにそこにいた第三の男についてのお話が……。



新納さん)
 彼方が楽屋に来たとき、なぜか松下洸平を一緒に連れてきたの。当時は洸平という名前で活動していて。「洸平です!ミュージシャンです!」って。取材に友達を連れてくるというのもびっくりしたけど(笑)、とにかく「洸平です!ミュージカルをやりたいんです!」って言っていた洸平のことを強烈に覚えてる。そこから約10年、松下洸平は出世したね。

伊礼さん)
 で、俺は……(笑)。

新納さん)
 彼方も出世した!ジャベールおめでとう!!『レ・ミゼラブル』メッチャ好き!見に行くわ!


おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人

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