4/7(日) 13時、14(日) 13時、21(日) 13時公演は
☆アフタートークショー開催☆ロンドンの精神病院での、ある24時間を描いた
舞台『BLUE/ORANGE』が開幕。
精神病患者のアフリカ系の青年クリストファー(クリス)は、研修医ブルース・フラハーティによる治療を終え、退院しようとしている。ブルースは、退院させることは危険だと主張。上司のロバート・スミス医師は、それに強く反対する。
ブルースはクリスへの査定を続け、器に盛られたオレンジの色を問う。
クリスの答えは、「ブルー」。
クリス:章平さん、ブルース:成河さん、ロバート:千葉哲也さん(演出も)
2010年の初演から、9年。クリスに章平さん、ブルースに成河さん、ロバートに千葉哲也さんという配役、小川絵梨子さんによる新訳、千葉さんの演出で届けられる2019年の『BLUE/ORANGE』。(初演では、成河さんがクリス、千葉さんがブルース、ロバートは中嶋しゅうさんでした)。開幕を前に、フォトコールと囲み取材が行われました。
冒頭シーンのみの公開だったので、この日見たのは、それぞれのキャラクターがまだたっぷりと“含み”を持っている状態でした。ここからどうなっていくの?興味をそそられまくりです。
オールキャスト&演出家、総勢3名!による会見は、まるで濃密なシアタートークの様相。会見では、充実の稽古が重ねられたのだろうということ、芝居の構造の面白さ……、作品への関心はピークに。みなさんのコメントを舞台写真、会見写真とともにレポート!
【初日を前に】
千葉:稽古を重ねてきて、あとはどうなることやら。当たって砕けろという感じです。
成河:ね。今日、初日なんですね。あまり実感がなくて。装飾を施したショーアップしたステージではありません。だから、(本番も)ずっと稽古をしている感じなんだろうな。これはたぶん、千穐楽までそう。そして、見に来てくださった方のお知恵を貸してもらうような。それに僕らは助けられる。
章平:成河さんの「ずっと稽古をしている感じ」、それ、ありますね。(「初日」に対する)不安がない不安。これは初めての感覚です。
成河:わかる、わかる(笑)。
【演出家:千葉哲也/稽古場での様子】
成河:基本、何でも(こちらのアイデアを)聞いてくれます。もちろんそれはちょっと……ということもありますが。これまでもそうやって時間をかけて話し合ってきました。これからもその時間は持ち続けるでしょう。その意味では、作業はずっと続いていく。
章平:僕らが考え、投げかけ、それを互いに共有する時間を常に大切する稽古でした。
千葉:演出家の言うことを聞くのが俳優ではなく、俳優から出てくるものを整理するのが演出家。だいたいこういう方向性でと提示して、そこにアイデアをもらって、試行錯誤した感じだね。
成河:かじ取りをするキャプテンのようなもの。
章平:千葉さん、成河さんは絶大な信頼を寄せる、何をやっても成立させてくださるお二人です。「何をやってもイイよ」と言われて稽古を積んできたので、安心感しかない状態です。
成河:僕が、クリスをやったときも、そう言われ、そうさせてもらった。今回、稽古を見ていてわかったことは、クリスという役には、それが一番なんだということ。自由なほどいい。何をしても成立する。なんなら劇中、5分くらい黙っても成立するという特別枠。それを成立させるか否かは、こっち(ブルースとロバート)次第ということ。
【登場人物/パワーバランス】
千葉:ロバートはちゃらんぽらんな男。でも、悪い人ではない。これは三人とも同じ。基本的には三人とも、自分に正直であるという点においては間違っていない。誰かが正義で誰かが悪ではない。ただ、意見の食い違いがずーっと続く。今回は、観終ったときに嫌な感じは残らなくなった。これは翻訳が変わり、ロジックがより明確になったことの効果もあると思う。
成河:正義感にあふれた医師。そういう張り紙がしてあるブルース。三者三様の人物、共感の仕方はさまざまでしょう。2時間50分かけて、それがどうなるか。でも、完全に誰かに肩入れして見ることになると思います。
章平:クリスは寂しがり屋。ずっと理解してほしい、認めてほしいと思っているような人間。
千葉:まぁ、社会で生きるってことは大変だということですよ(笑)。
──パワーバランスの変化も魅力。その日によって、微妙な変化もありそうですね。
千葉:多少、色が薄めだったり、濃いめだったりがあるでしょうね。でも、その結論は、1つのところに行き着くと思う。余白を楽しむ、そんな作りになっています。
成河:三つ巴の合戦、パワーゲームが、目に見えてくるような作品。お客様が、今、誰に肩入れしているのか、その旗色が見えるというか。劇場の空気が変わりそう。それが僕らの力にもなる気がします。
【対面舞台】
千葉:なんて言うか「覗き見の芝居」なので(笑)、稽古場でもあまり気にしなかったですね。
成河:僕らにとっては、最後列までの距離が近くなるので、空気を密にしやすい、むだに声を張り上げたりしなくていい空間であることはありがたいのだけど。おそらく、対面舞台であることを一番楽しめるのは、お客さんかな。
千葉:向こう側に嫌な奴がいたりして(笑)。
成河:「何だ、この芝居」と見ている人が見えたり、熱中して見ている自分が他人に見られたり、そういうことが起こるのが面白い。「観察の芝居」、そんな「マウントの取り合い」を楽しんでください。
章平:どこを向いていても、そこにクリスとして存在していなくてはいけない。僕はこの劇場に入って、客席から、そうあり続けるための力をもらえた。ほかの芝居もそうなんですけど。
千葉:(正面もなければ背もない環境)あるのは3人のやり取りだけ、(演じる側も)芝居に集中できます。
【戯曲の印象 ~初演はクリストファーとブルースだったお二人~】
千葉:まず、成河との役の上での関係性は180度違う。その意味では、(役を変えてというのは)面白かった。ただ、今回は翻訳も変わったし、俳優によって役へのアプローチは全然違うからね。
成河:そうですね。違う役をやることで戯曲の理解が深まった……そんな気もするけど、全然関係ない気もします。結局、戯曲のことは、どの角度から見てもすべてをわかるなんてことはないから。関係性で作っていくしかない、そして僕はそこに夢中になる。今回の、章平くん、僕、千葉さんで向き合ったときに、その関係性から、この戯曲はどう見えてくるのか。今の僕には、それ以外の選択肢はなく、そうやって限定されるものを1か月楽しみたいと思うんです。
千葉:ただ、成河の中には、今、自分がクリスをやったらこうなってしまうんじゃないかというのはあると思う。9年って短いようで、長いから。僕は……、無理。9年前だってブルースをやるにはギリギリだった。今じゃ、正義感の欠片もないから(笑)。で、成河、次はロバートでしょ。
成河:じゃあ、千葉さんは、まさかのクリス?!章平がブルースで!
一同:笑!
成河:でも、本当に人生1周目、2周目、3周目の役なんですよ。そういう「世代」も描かれている物語です。そこで3人が等身大でやれている心地よさは感じています。
【会話劇、言葉】
章平:(戯曲の中で気になる言葉は)僕はやっぱり「ブルー/オレンジ」じゃないですかね。
成河:タイトル?いや、いいと思うよ、いいよ!
千葉:基本的に、自分の台詞で好きな台詞を作らないようにしているんだよね。作ると、そこを目指しそうな気がして。その上で、この言葉は面白いなというのは、すごく単純なところで、「勇気を持て」とか。そう言うのが好きだったりするんです。
成河:なるほどね~。(気になる言葉)それを探すのは僕たちの仕事じゃないかもしれない。この戯曲で拾われるべき言葉って絶対あると思うんですよ。でも、ちょっと、僕らはそうじゃない言葉を選ぶので……。
千葉:(いつもこの調子だから)稽古場がいかに大変だったか、わかりますでしょ(笑)。
成河:(笑)。言葉で紡いでいくお芝居なので、言葉が力と意味を持っている。時に、力を持ち過ぎてしまうことがある。
千葉:確かに言葉の量がとても多い。精神医学用語や聞き慣れない言葉もある。でも、そこにあまり気を取られないほうがいいと思うんです。そういう時に、二人がとてもいい表情をしたりするんだよね。それって、英語がわからないのに、イギリスで芝居を見て面白かったなと感じる、あの感覚に近い。言葉を追うと、引っかかりそうになるところを悩まずに、すっ飛ばす。「ゲーム・オブ・スローンズ」方式で(笑)。
※人気海外ドラマ一同:(笑)!
【メッセージ】
千葉:これから長い旅が始まります。こういう小さな劇場での芝居、(出演者も)3人だけ。この作品を「体験」してもらえればと思います。大きな劇場とは違う、生々しさを楽しんでください。
成河:エンターテイメントは考えることをやめるためのものではなく、考える力を育むためにあるもの。この作品は、エンターテイメントど真ん中をいく会話劇です。「一緒に面白く考える」経験をしにいらしてください。
章平:精神病院が舞台ですが、精神病とか病院とかのカテゴライズを取っ払って、人と人との関係性を楽しんでください。この3人の関係性は、どこにでもあるもの。それをもとに議論するのもいいし、自分でかみ砕いて考えてもいい。それぞれの楽しみ方をしていただければ。
◆舞台のセットはシンプル。
真っ白なテーブルの上には器に入ったオレンジ。
見下ろしたり、見上げたり、寄り添ったり、離れたり。3人の俳優が作りだす絶妙な構図の変化も印象的な会話劇。
『BLUE/ORANGE』……
「これは何色?」単純な問いかけ。「疑う余地」がないと思っていたものが、揺らぐとき、そこに何が見えるのか。そこに身を置いて、体感する面白さのある作品を、ぜひ劇場でお楽しみください。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人