ミュージカル『笑う男 The Eternal Love -永遠の愛-』日本初演の幕が上がりました!
2018年夏に韓国で世界初演を果たした話題作が早くも日本初上陸。『レ・ミゼラブル』『ノートルダム・ド・パリ』でもおなじみのヴィクトル・ユゴー作「The Man Who Laughs」を原作にした本作。フランク・ワイルドホーン(作曲)とジャック・マーフィー(作詞)、ロバート・ヨハンソン(脚本)、上田一豪(演出)で届けられる日本初演には、開幕前から大きな期待が寄せられていました。
初日前に行われた公開ゲネプロ(デア:衛藤美彩さん)の舞台写真とおけぴ観劇会(デア:夢咲ねねさん)の感想を交え、公演の様子をレポートいたします。
グウィンプレン役:浦井健治さん
「本当に美しいものとは何か?愛とは何か?普段生活している上で、あまり考えませんが、改めてそれを考えさせてくれる舞台でした。ワイルドホーンの感情を揺さぶる楽曲、個性ある出演者によって、観客に大いに問題提起してくる作品です」リトル・グウィンプレン
(大前優樹くん、下之園嵐史くん、豊島青空くんのトリプルキャスト)
舞台は17世紀イングランド。通称“子供買い”、人身売買集団コンプラチコによってさらわれ、見世物として口を裂かれ醜悪な笑みを刻まれた少年グウィンプレン。雪の中を一人あてもなくさまようグウィンプレンは、すでに息絶えた母親に抱かれた赤ん坊を見つけ、“デア”と名付ける。二人は、偶然出会ったウルシュスに助けられ生活を共にすることとなる。
【貴族の世界】
シーンはガラリと変わり、貴族たちの宴へ。ジョシアナ公爵のガーデンパーティーには異母姉でもあるアン女王も登場、華やかな見た目とは裏腹の貴族たちの醜い思惑が交錯する。
公爵ジョシアナ(朝夏まなとさん)、アン女王(内田智子さん)、フェドロ(石川禅さん)
生まれながらにしてすべてを手にした女性、同時に決して満たされることのない女性ジョシアナ。虚無感漂う退廃美……思わずうっとり
「ジョシアナ役朝夏さんの自分の人生に対する苛立ちの表現が見事でした。
ムーア卿役の宮原さん初めて意識させられました、これからが楽しみな役者さんです」デヴィット・ディリー・ムーア卿(宮原浩暢さん)
こちらも悪の色気が……。ジョシアナとデヴィットのデュエットは大人の色香漂うナンバー♪
「宮原さんを初めて見たのですが、歌声が素敵!どうしようないダメ男なのにどこか品があって、他の作品でも見てみたいです」物語のキーパーソンとも言えるフェドロ。
石川禅さんの、佇まい、視線にゾクゾクします。中でも台詞の間合いがタマラナイ!!
【ウルシュス一座】
青年となったグウィンプレンらは。
後ろ)一座を率いるウルシュス(山口祐一郎さん)
前列)ヴィーナス(清水彩花さん)、フィービー(宇月颯さん)
興行師ウルシュスのフリークショー。青年となったグウィンプレンはその見た目で“笑う男”として有名となり、盲目のデアと共に自らの生い立ちをもとにしたストーリーを演じる興行が人気を博す。
「レミゼとは違うアプローチで弱者の悲哀を描いています。世の中で一番小さい集合体・家族、その強さと脆さ、喜びと哀しさを浦井さん・夢咲さん・山口さんの3人の家族が体現して魅せてくれました。心に突き刺さります」
「とにかく皆さんの歌が素晴らしいです。ソロもアンサンブルも、聴き応えたっぷり。山口祐一郎さんと浦井健治くんの「親子感」に胸が熱くなりました。また、前田文子さんの衣裳が絶品!キラキラの衣裳を見るだけでも価値があります」
「これぞ、ミュージカル。久しぶりにミュージカルらしいミュージカルを観た感じです。曲が素晴らしい。浦井くんの優しさ溢れる歌声と山口さんの慈愛に満ちた歌声に、涙がとまりませんでした」 デア(衛藤美彩さん/夢咲ねねさんとのダブルキャスト)
盲目のデアは心の目で世界を見つめる。世界を見せてくれるのはグウィンプレン。どちらのデアも魅力的で、守ってあげたくなる少女です。
一座の仲間たちもデアを励まします!
「ウルシュスのあたたかな表情、歌声に泣けました。ヴィーナスたちの大人の女性の励ましも、若くて傷つきやすい娘への応援のようで、素敵でした」
「宝塚ご卒業以来はじめて拝見した宇月さんが本当にかわいらしかったです。
あんなにかっこよかったひとがあんなにかわいく…!でもダンスはバッキバキで、そこはお変わりなくて嬉しかったです」ショーを見たジョシアナはグウィンプレンに心惹かれ……
そして、物語は思わぬ展開へと……
「主演の浦井さんがとにかくすごいです。“芝居歌”がさらに進化していました。タイトル曲でもある「笑う男」では鳥肌が立ちました。山口さんとの親子のぶつかり合いを歌うデュエットはすごい迫力でした。ねねさんのデアはまさに天使です!歌声もお芝居も完璧でうっとりしてしまいました。朝夏さんの歌は切なさが伝わってきて胸が締め付けられる感覚でした」
「素晴らしい楽曲と舞台セットにお衣裳。耳から目から楽しめました。キャスト皆さんにぴったりの配役で、他には考えられないほどでした。特に浦井さんの歌唱は曲によって声色が全く違い、演技では表情豊かでグッときました。グウィンプレン役は、浦井さんにぴったりですね」◆ 浦井さん演じるグウィンプレンは裂けた口をもつ男。しかしながら、ただの弱者ではなく、幸せになる権利を追い求め、自ら道を切り開こうとする強さも持っています。そしてとても魅力的。その強さは彼が本来持っていたものでもあり、また、自らを受け入れ慈しみ育ててくれた養父ウルシュスという男によってもたらされたものでもあるように感じました。そんな優しさと強さ、反骨精神、野心、皮肉っぽさといった奥行きのある人物像が、ミュージカルナンバーで表現されます。浦井さんの多彩な表現をお楽しみに!芝居面も、劇中最も多くのキャラクターと交わり、まさに物語を通して変化し人生を歩んでいく主人公を演じきります!
同時に、世を憂い、人を拒絶するかのように生きてきた“泣かない男”ウルシュスはグウィンプレンとデアによって豊かな“人間性”を取り戻す。彼が笑い、泣くとき、観客も大きく心を動かされます。山口さんの存在の大きさ、魅力が作品を支えます。
「この子を守らなければ」、そんな二人の光となったのは、光を失った盲目のデアというのも象徴的です。そして、見えない彼女は見た目の美醜に囚われず、繊細で壊れやすい心の目で物事を見る。衛藤さんのあどけなさ、夢咲さんの儚さ、どちらも放っておけない!
そんな、血縁のない3人が家族となり、一座の仲間たちと互いを認め合いながら暮らすコミュニティの温かさたるや。
一方で、貴族の家に生まれた、王家に生まれた特権階級の人々は常に腹の探り合い。非嫡出子であることで虐げられ、歪んだ心。満たされることのない欲望。それもまた人間の姿です。ただ彼らもまた、「そこに生まれた」ことがすべてだった。朝夏さん演じるジョシアナからは、何を所有しようとも、どんなに美しかろうとも、いかなる努力をしようとも決して埋まることのない異母姉との格差。彼女の悲しみと虚しさがひしひしと伝わってきました。
「美醜とは」「しあわせとは」「愛とは」……、寓話のように届けられる本作。美しさと共に、世の不条理に対する憤りと虚しさといった批評性をも併せ持つ、独特の余韻を持った作品です。
"The paradise of the rich is made out of the hell of the poor"
─金持ちの楽園は貧乏人の地獄によって造られる─(小説:「The Man Who Laughs」より)
2019年4月14日(日)12:30@日生劇場
ミュージカル「笑う男」おけぴ観劇会でお配りした幕間マップ
(上野哲也さん 栗山絵美さん 清水彩花さん 堀江慎也さん 石田佳名子さんのトリビアと人物相関図)
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おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人