ミュージカル『いつか one fine day』オフィシャル開幕レポートが届きました。
(レポラストに早速ご覧になった方の感想をご紹介しています)◆ ミュージカル『いつか one fine day』が、2019年4月11日、東京・シアタートラムで開幕した。
韓国映画『ワン・デイ 悲しみが消えるまで』を原作に、板垣恭一が脚本・作詞・演出を手がけ、桑原まこが全曲書き下ろした新作ミュージカル。バイオリン、チェロ、ギターのオーケストラを率い、音楽監督も務める桑原が「うつしおみ=現人」のイントロをピアノで奏でると、ステージは一気に『いつか』の世界へと引き込まれていく。
藤岡正明、皆本麻帆
ストーリーは、保険会社に勤める夏目テル(藤岡正明)に、上司のクサナギ泰人(小林タカ鹿)がある仕事を振るシーンから始まる。それは、事故で植物状態になった樋口エミ(皆本麻帆)に示談交渉をするという難案件だった。テルはエミの病室に行き話しかけるが、意識のないエミからは当然ながら反応がない。エミのソウルメイトの田亀トモヒコ(荒田至法)や代理人の長門マドカ(佃井皆美)には冷たくあしらわれるばかり。そんなある日、酔ったテルが病室で寝ているうちに、こん睡状態のはずのエミが目を覚まし、歩き、話し始める。「深く眠っている間だけ、視力を取り戻し自由に動けるようになった」というエミ。そんなエミのことが見えるのはテルだけだ。「あなたは運命の人!」と満面の笑顔のエミに、「信じたくないんだけど」とたじたじのテル。
……という場面から、「謎のヒロインが登場」というファンタジーに向かうようにも思わせる。だが、描かれるのは、至極現実の世界だ。
入来茉里、藤岡正明
例えば、テルと妻のマキ(入来茉里)の回想場面。共働きで対等の仲がいいカップルの、たわいない小さな幸せの会話。自身の不治の病を察しているマキと、妻の変化に気づいていないテルの心のバランスを藤岡と入来が歌う「美しいもの」は切なく胸に響く。
エミ役の皆本は、目が見えるようになった喜びを、全身を使って時にはじけながら表現する。中でも、限られた時間の中で知りたいこと、見てみたいことを歌った「やりたいこと」は、自由を初めて知った子どものようなのびのびとした笑顔がほほえましい。
佃井皆美
しっかりもののマドカは、養護施設育ち。妹のような存在のエミが意識をなくして寝たきりであることに心を痛める様子を、佃井がまっすぐな瞳で気丈に演じているのが印象的だ。
小林タカ鹿、藤岡正明
荒田至法、内海啓貴
一見重くなりがちなストーリーにコミカルな要素を与えているのが、クサナギ役の小林とタマキ役の内海啓貴、そしてトモヒコを演じる荒田だ。小林は長いものには巻かれろ的な中間管理職(ダンディー!)がはまり役なのはもちろん、アンサンブルとして登場するダンスシーンの笑顔は別人(キュート!)。時にすっとんきょうでアツく型破りなトモヒコと、クールで社会の枠にハマろうとする今どきの若者タマキという好対照な2人のラブシーン(!?)も見どころの一つだ。
和田清香、皆本麻帆
バラード、ロックなど様々な音楽に彩られながら、物語は後半エミを捨てた母親榎本サオリ(和田清香)の登場で、転機を迎える。娘役の皆本とは4歳しか離れていないという和田の、実年齢からは想像できない貫禄と哀切に満ちた演技が芝居をクライマックスへと導いていく。
テルやエミ、マキはもちろん、クサナギやトモヒコ、タマキの抱える「生きづらさ」も徐々に明らかに。それぞれの登場人物に用意された、隠された思いを明かす「本音ソング」。そして終盤、全員が声を重ねる表題曲「いつか」は圧巻だ。
板垣が「当て書き(演じる人に寄せて台本を書くこと)をした」という生き生きしたセリフからは、役者たちの等身大の素顔さえも透けて見える。
客席からは、前半は笑い声、そして終盤はすすり泣く声も。2時間5分のステージが幕を下ろすと、止まぬ拍手、そしてスタンディングオベーションとなった。
終演後のロビーで観客に感想を尋ねると、こんな感想が返ってきた。「昨年親しい人が亡くなったので見るのがつらいかと思ったけれど、コミカルな部分も多くてすごく楽しかった」「上司のクサナギの心の内が吐露されたときには涙が出た。私たちもいつも平気な顔をしているけれど、本当は悩みを持っていたりしますよね」
板垣は言う。「『いつか』は、あなたの過去かもしれないし、現在かもしれないし、未来かもしれない」。そう、これは登場人物8人の物語であると同時に、観客席に座る一人一人の物語でもあるのだ。
公演は4月21日まで。
~ご覧になったおけぴ会員のみなさんの感想~
「派手さはないけど、人は周りの人に助けられたり救われたり支え合いながら生きていける、大切な事を再認識し温かい気持ちになれた作品。直接だと言いにくい言葉を歌に乗せることで、音楽の力の大きさを感じられた素敵なミュージカルでした」
「夏目テル役の藤岡正明さんの歌声が本当に素晴らしかったです。
シアタートラムは、キャパ200席くらいの小いさめの劇場なので、藤岡さんの歌声に劇場が包み込まれているような、とても贅沢な時間を過ごすことができました」
「冒頭の藤岡さんの佇まい、そこからの主題曲にまず心を掴まれました。どの楽曲も素晴らしい!生演奏なのも嬉しい。キャスト全員、素晴らしい!それぞれの人生、それぞれの想いが交錯して途中から涙、涙…。ちゃんと生きよう、周りの人を大切にしようと思わせてくれました」
「どのような形であれ、こんなに自分の身近に感じられる、自分の心や頭を揺らされる作品は希だと思います。
キャストも音楽も演出も、シアタートラムという場にもマッチした作品になっていると思います。 ぜひ多くのかたに観て感じて頂きたい作品です」
「お芝居が始まる一曲目から泣けました。ピアノとストリングスの生演奏が心に響きました。
人の心を繊細に描き出していて素晴らしかったです。そしてお目当ての藤岡さんの素敵な歌声も健在でした。韓国作品の強みである号泣号泣号泣も健在でした。最後はスタンディングオベーションでお客さんみんな涙を拭きながら出て行きました。
自分と重なる内容だったので辛い部分もありましたが、結果、前を向けるメッセージをもらえました。観に行って良かったです」
この記事は公演主催者からの情報提供によりおけぴネットが作成しました