最先端のデジタル技術と歌舞伎が融合する
「超歌舞伎」が、歌舞伎発祥の地、京都 南座に!
2016年から「
ニコニコ超会議」で上演が重ねられてきた「
超歌舞伎」。その第一回目から、バーチャルシンガー
初音ミクさんとともに主演をつとめる
中村獅童さんと、同じく第一回目から出演を続け、今回の南座公演の「リミテッドバージョン(別配役)」ではミクさんとともに主演をつとめる
澤村國矢さんが、「
八月南座超歌舞伎」に向けてそれぞれ取材会を開催。公演への意気込みを語りました。
レポ前半では中村獅童さん、レポ後半では澤村國矢さん取材会の模様を、國矢さんおけぴ単独インタビューも併せてお届けいたします。
超歌舞伎とは?(公演公式サイト)告知PVも公開されました♪◆ 歌舞伎の伝統と、NTTが開発した超高臨場感通信技術「Kirari!」などの最新テクノロジーが融合した“全く新しい歌舞伎”として、注目されてきた「超歌舞伎」。
今回南座で上演されるのは、「超歌舞伎」がはじめてという方にもわかりやすい「超歌舞伎のみかた」、中村獅童さんと初音ミクさんがお国、山三に扮する新作舞踊「當世流歌舞伎踊(いまようかぶきおどり)」、そして「超歌舞伎」第一回公演と第四回公演で上演された『今昔饗宴千本桜(はなくらべせんぼんざくら)』の南座バージョンの三本立て。さらに別配役となる「リミテッドバージョン」では、第一回公演から出演してきた澤村國矢さんが、初音ミクさんとともに主演をつとめます(期間中一部日程/上演は『今昔饗宴千本桜』のみ)。
古典歌舞伎でもおなじみの狐忠信(佐藤忠信)と、千本桜を守護する美玖姫が、時空を超えて、邪悪な青龍と大立廻りを繰り広げる『今昔饗宴千本桜』のクライマックスでは、光るサイリウムを振ってまるでライブ会場のように盛り上がる客席参加型の演出がお約束。誰でも自由に大向う(かけ声)をかけられる雰囲気も「超歌舞伎」ならではです。
絵本を歌舞伎化した新作歌舞伎『あらしのよるに』、倉庫を会場に上演された「オフシアター歌舞伎」と挑戦を続ける中村獅童さん。初の歌舞伎劇場での上演となる「超歌舞伎」への思いとは──?
◆【伝統を守りつつ、革新を追求する。それが“中村獅童”らしい生き方】
「初音ミクさんのことは、「千本桜」という曲がとても流行(はや)っていたので知っていましたが、まさか共演することになるとは」という中村獅童さん。
獅童さん:
歌舞伎俳優としては「千本桜」と聞くとどうしても『義経千本桜』と結びつけてしまいます。ですから、最先端技術とコラボレーションする超歌舞伎でも、基本は歌舞伎の古典にこだわったものづくりを目指しました。幕張(「ニコニコ超会議」会場の幕張メッセ)の5000人規模のホールでも、歌舞伎独特の見せ方、衣裳や隈取(くまどり)の色彩などは、とても映えるんです。先人がつくりあげた伝統美が、デジタル技術との融合のなかでも見劣りしない。歌舞伎の底力を、あらためて再確認させられます。
歌舞伎座で上演された三谷幸喜さんの「風雲児たち」(『月光露針路日本 風雲児たち』)、「ワンピース」(スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』)、年末には「ナウシカ」(新作歌舞伎『風の谷のナウシカ』)もある。まさに新作歌舞伎ラッシュです。これまでの歴史を振り返ってみても、常に切磋琢磨しながら新しいものを取り入れ、時代の最先端をいく芸能が歌舞伎でした。100年後に歌舞伎がどのような形で残っているのかはわかりませんが、僕がこの世を去った後も歌舞伎は栄えていてほしい。もしかしたらデジタルとの融合も当たり前のことになっているかもしれません。そのためにも「伝統を守りつつ、革新を追求する」。それが“中村獅童”らしい生き方だと思っています。僕という存在は破天荒に見えるかもしれないけれど、いつも意識しているのは古典歌舞伎を現代に融合させるということ。今回の超歌舞伎でも古典にこだわったものづくりとデジタルとの融合で、どんなものが生まれるのか。大いに盛り上げていきたいと思います。
【超歌舞伎のお客様とデジタル技術チーム、そして歌舞伎との“友情”】
獅童さん:
ミクさんはとても優秀で、僕らが子供の頃から修行していることがたった一ヶ月くらいでできてしまう。ものすごい才能です(笑)。とはいえ最初は芝居の呼吸を合わせるのに苦労しました。はじめは舞台の上からだとミクさんの声がよく聞こえず、何度かセリフがかぶってしまい「ミクさん、ごめんね」と(笑)。それが回を重ねるごとにどんどん息が合うようになっていき、デジタルチームとアナログチームの連携がうまくいくとそれが客席にも伝わるのか、幕が降りた後はお客さまも涙、涙。「スタッフさん、ありがとう!!」と声がかかったことも。歌舞伎とデジタルの融合なんてうまくいくはずがないと思われる方もいるかもしれませんが、それが成功したときにお客さまも感動するし、僕らも感動する。あの達成感は何にも代えがたい、やったものにしかわからないものだと思いますね。歌舞伎とサブカルチャー、それぞれを愛する気持ちが通い合ったときの感動。ミクさんが歌舞伎の舞台に立つ、それもある種の夢。その夢と感動のために全身全霊で取り組むからこそ、観てくださる方のハートにも届くのではと自負しています。
「超歌舞伎といえばみなさんに自由にかけていただく「かけ声」「大向う」ですが、これも年々うまくなっている。(中村)勘九郎くんが観にきたときも客席の熱狂に感動したと言っていました」
獅童さん:
ニコニコ動画の配信では、歌舞伎ファンの方が「ここはこういう場面」と説明をすると、「ありがとう!」とコメントがつくなど、サブカルチャー好きの方と歌舞伎ファンの間に友情が生まれていました。僕が病気で入院したときにも超歌舞伎ファン有志の方から、桜に見立てたカードにメッセージをいただいた。「数多(あまた)の人の、言の葉(ことのは)」からエネルギーをもらいクライマックスへ向かう超歌舞伎と同じように、僕もみなさんから力をもらい、“中村獅童”をよみがえらせることができたと思っています。
南座では、歌舞伎ファンのみなさんも遠慮なくサイリウムを振ってほしいですね。あの光がひとつの演出効果になっていて、とても美しい景色になるんです。普段の歌舞伎公演でサイリウムを振ることはないと思いますが、今回に限っては少し頭を柔らかくして、いつもよりカジュアルな気持ちでライブのように楽しんでいただければ。うちの息子も幕張で一緒に振っていたらしいですよ(笑)。──そういえば今年の幕張でのオープニング映像に、僕の母が息子を抱っこした絵をデジタルチームのみなさんが差し込んでくれたんです。生前に孫を抱っこすることが叶わなかった母のための粋な計らいです。初日前に急遽決めて、徹夜作業をしてくれたそうで…言われなければわからないくらいの短い映像ですが、やはり涙が出ましたね。そうやって友情を育んだデジタルチームとの融合、そしてこれからの新しい歌舞伎のためにも、南座という歌舞伎劇場での超歌舞伎をなんとしてでも成功させたいですね。
「超歌舞伎で國矢くんがブレイクして、今回主役を演じる回を作ることができてすごく嬉しい。実力と情熱がある人はどんどん前に出ていけばいいと思います。
僕は幕張でお客さんをすごく煽(あお)ったりしていたんですが、國矢くんが南座でどんな煽りをみせてくれるのかが楽しみですね(笑)」(獅童さん)
◆ 獅童さんの宙乗りも楽しみな「
八月南座超歌舞伎」は、8月2日から26日まで、京都 南座にて上演されます。
「リミテッドバージョン」で主演・忠信役をつとめる
澤村國矢さん取材会レポ&インタビュー掲載の【後半】はこちら!
おけぴ取材班:mamiko 監修:おけぴ管理人