★9/22スペシャルトークショー追加開催決定★
9月22日(日)13時公演後:鵜山仁・朝海ひかる・平埜生成・他禁忌の愛と奇跡の物語。説教聖が語る美しき日の浦姫の運命……。 井上ひさしさんが1978年に文学座と杉村春子さんに書き下ろした『日の浦姫物語』。美しき日の浦姫の少女時代から老境までを演じる大役に挑むのは透明感と美しさ、芝居の芯の強さが魅力の朝海ひかるさん。日の浦の兄と息子の二役、宿命の愛に翻弄される稲若と魚名には観る作品ごとに新しい顔を見せる平埜生成さん。ほか、辻萬長さん、毬谷友子さん、たかお鷹さんや文学座のみなさんという盤石のキャスティング。さらに演出は鵜山仁さん。井上ひさしメモリアル10の一作として蘇る『日の浦姫物語』、いよいよ開幕しました!!
説教聖が語って聞かせる平安絵巻「日の浦姫物語」
初日を前に行われたフォトコール、朝海さん、平埜さん、鵜山さんご登壇の囲み取材をレポートいたします。
【フォトコール】
説教聖と連れの三味線弾きの女
いつの間にか観客も彼らの聴衆のひとりとなる
兄と妹……禁忌の恋
日の浦姫の数奇な運命はここから始まる
二幕冒頭は三味線ロック、平安ロック!!
躍動感あふれる魚名登場シーン!
『日の浦姫物語』おけぴ通し稽古レポはこちらから【囲み取材】
~ご挨拶~ 鵜山仁さん(演出)「ひと言で言うと近親相姦の話なのですが、劣勢の遺伝子を受け継ぐなどのリスクがあるとか(本作で扱う)問題はそういうことではありません。愛し合っている兄妹とそこから生まれた子供、いろんな不都合をタブーにかまけてこの世の中から抹殺するために大人たちがいろんな忖度を働かせる。そうやって排除されていく弱い者たち。“弱い者いじめの芝居”だと僕は思っています。そうやっていろんな生き方を排除し、多様性に逆らって世の中を作っていく。結局、それが世の中の活力を弱めているのではないかという話です。
この作品は井上さんの作品ですからお客様が入って抱腹絶倒の喜劇になってくれるとありがたいと思いますが、実はそういった深遠なテーマを秘めた作品です。王朝絵巻の体裁をとり、(キャストの)みなさんもこういった扮装をされていますが舞台稽古を重ねてきた今、それだけのものをお見せできると思っています。
そしてこれは身内の宣伝のようですが、僕の所属している文学座の人たちがたくさん出演しています。こまつ座と文学座の近親婚的な関係も楽しんで観ていただければと思います(笑)」
朝海ひかるさん「この作品に参加できとても幸せです。素晴らしい役に挑戦するにあたり日々台詞との戦い、鵜山さんのリクエストとの戦い、そして生成くんとの格闘(笑)。いやいやラブシーンに挑戦して参りました。今日、初日を迎えますがその成果をみなさまにご覧いただければと思います」
平埜生成さん「僕にとって二作目の井上作品となります。今回は鵜山さんの演出ですが、非常に難易度の高い要求をされどんどん迷宮が深くなって……。難しいことはありがたいこと。日々の稽古で朝海ひかるさんと一緒に愛を育んできました。なんか夢に出てくるんですよね、朝海さんが(笑)。それくらいこの作品に入り込んでいる自分がいて。もしかしたらそれも含めて鵜山さんの演出なのかなと考えています。
文学座のみなさん、毬谷さん、辻萬長さんとともに全員野球のような熱い作品になっています。深いテーマもはらんでいますが、本当に楽しく笑って観られる作品です」
~朝海さん、平埜さんの日の浦、稲若・魚名はいかがですか~ 鵜山さん「とても救われるというか、風通しがいいお二人です。それにもかかわらず、(朝海さんは)この堂々たる風情でゆったり受け止め、(平埜さんは)若々しくやんちゃというコントラストが効いているので、なかなかいい配役だと思っています」
~朝海さん、平埜さん、互いの魅力について~ 平埜さん「朝海さんの魅力。そうですね、夢に出てくるくらいですからもはや好きなので……。魅力は顔、声、スタイル、お芝居の姿勢。完璧なパートナーをこの舞台で見つけることができたことが幸せです(笑)」
朝海さん「平埜さんは、私にないもの全て持っていらっしゃいます。何度も何度も平埜さんの不思議な感覚、感性に救われながら芝居をしています。そして、顔を合わせるたびにキレイなお顔だなぁと毎日思っています。劇中歌の歌詞そのもののお顔立ち。まるで井上さんが彼がこの役を演じることを想像して書かれたのかと思うくらいぴったりです」
~井上作品の魅力~鵜山さん「僕が最初にこまつ座さんに関わったのは井上ひさしさん後期の作品群だったので、芝居に出てくるのはいい人たちばかり。そこにちょっと不安があるというか、どうして悪い奴が出てこないのだろうかと、そんな質問をぶつけたりもしていました。すると「世の中がこんなに具合が悪いので、舞台の上だけでもいい人たちがいないと」と井上さんはおっしゃっていました。僕らがやらなければいけないことは、いい人とか悪い人という問題ではなく世の中のいろんな矛盾をどうにかして“よく生きる”方向に振り分けられるか。それを教わってきた気がします。以前はひねくれた自分がいてそれをなかなか素直に受け入れることができなかったのですが、ここのところそれをしみじみと感じています。
せめて舞台の上からは傷つけ合う殺し合うではなく、生かし合う。そういうメッセージを発信することを、はばかりながら託されているような気がしています。改めて井上さんの大きさ、深さを噛みしめています。そして、この作品にはそれが詰まっています。その意味で亡くなって10年、いよいよ(井上作品の)深みにはまっていくような気分で楽しませていただいております(笑)」
生かし合う世の中、この言葉で『日の浦姫物語』のラストシーンが思い浮かびました。
公演は9月23日(月・祝)まで紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAにて上演、その後、9月28日(木)に川西町フレンドリープラザにて上演されます。
『日の浦姫物語』開幕レポート~舞台写真と感想で綴る~はこちらから
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文) 監修:おけぴ管理人