KANATA LTD.主催『伊礼彼方の部屋』第4弾が博多座にて開催されました。サブタイトルは「あの頃は一緒にラケットを振ってたね・・・それがまさか、バリケードで再会するなんて・・・」、初共演から10年以上の時を経て“伊礼彼方の部屋”を訪れた相葉裕樹さんを待ち受けていたのは──。
【ご挨拶】
伊礼さん) 本日は『伊礼彼方の部屋』へお越しいただきありがとうございます。このトークイベントは、その時に共演しているキャストと稽古場でのエピソードや役作りについてじっくりとお話したいという思いから始めました。大阪で2回、東京で1回開催し、4回目となる今回、ついに博多で開催することができました。そんな『伊礼彼方の部屋 in 博多』のゲストは、サブタイトルにもなっている昔は一緒にラケットを振っていた……相葉裕樹さんです。
相葉さん登場!
伊礼さん)眩しい!
【テニミュからレミゼへ】
伊礼さん) 改めまして、相葉裕樹さんです!今日、僕たちは休演日でしたが、どう過ごされましたか。
相葉さん) 14時ごろまでしっかりと睡眠をとり……みなさんおはようございます!
伊礼さん) まじ?僕は12時から『レ・ミゼラブル』の昼公演を観ていましたよ。今日は上原理生くんのジャベールでしたね。
相葉さん) どうでしたか、久しぶりに観て。
伊礼さん) 「まだまだだね」
(ネタです※)相葉さん) 出たっ、越前リョーマ!!
伊礼さん) (笑)!これテニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)を知らない方には「?」なやり取りじゃない?いや、すごく新鮮でした。
伊礼さん)理生くん「うわぁ」って。
相葉さん)ちょっと待って、それ、大丈夫?!乗っかっていろいろ言うと後で大変なことになりそうだ。
伊礼さん)それが『伊礼彼方の部屋』です。改めまして、ようこそ『伊礼彼方の部屋』へ!みなさんも今日のことはSNSにバンバン書いてくださいね!
──ミュージカル『テニスの王子様』では幼馴染役、『レ・ミゼラブル』ではアンジョルラスとジャベールとして共演中のお二人。まずはテニミュの思い出から。伊礼さん) 僕らの初共演はミュージカル『テニスの王子様』、あの時、相葉さんは僕の先輩として……。
相葉さん)
やめてくださいよ、先輩なんて(笑)。作品に参加したのが僕のほうが先だったというだけで。
伊礼さん) あの頃、僕は20代前半、24歳くらいだったかな。相葉くんは。
相葉さん) じゅう……
伊礼さん) じゅう!?
相葉さん) はい、19歳でしたね。
伊礼さん) 僕とあなた、そんなに(歳が)離れています?ちょっとびっくりしました(笑)。それも30過ぎの5歳差と、19歳と24歳って違うよね。うわぁ……。
(ショックが隠せない様子の伊礼さん)──気を取り直して、当時の印象について。相葉さん) 彼方くんが佐伯虎次郎、僕が不二周助という役で、学校は違ったのですが幼馴染という設定でした。
伊礼さん) 佐伯は「やぁ、不二!」って登場するんだよね。
相葉さん)
とても爽やかに(笑)。第一印象は、稽古初日に「相葉さん、よろしくお願いします。お芝居は初めてなのでいろいろと教えてください」って、この彼方くんがですよ(笑)。
伊礼さん) 僕はいつでも低姿勢ですよ(笑)。
相葉さん) でも年上だし、どう接したらいいのかと思っていました。あと、親友同士、二人で歩くシーンもあったんです。そこでの彼方くんの登場が「やぁ、不二」でしたが、その芝居に対して演出家から「なんだかちょっと夜の匂いがするな」と言われていて。
伊礼さん) 「やぁ、不二」のニュアンスに実生活が出たのかな。あの頃、夜にボーイの仕事をしていたから(笑)。
相葉さん) 19歳の僕は「夜の匂いってなんだろう」と思いながら聞いていました。
伊礼さん) 19歳はそうだよね(笑)。相葉くんの第一印象は、新人は過去の公演の映像を見てから稽古に臨むので、初めて稽古場に行った時は「わぁ、テレビ画面で見ていた人だ!」と、とてもミーハーな気持ちでした。しかも相葉くん演じる不二の青学(青春学園)のメンバーは2代目から3代目に代替わりをしたにも関わらず、相葉くんは残っていたでしょう。あれって、留年?!
相葉さん) だいたいみんな1年半で卒業したんですけど、僕は丸3年やりました。留年と言えば留年かな(笑)。
伊礼さん) 留年というのは冗談で(笑)。そうやって続投しているということは、年齢関係なく、実力が買われている人なんだろうと思ったよ。
そんな僕らですが、そこから10年以上共演することもなく、今年、バリケードで再会するという。その間、何をしていたか聞いていい?
相葉さん) テニミュを卒業してからは、「侍戦隊シンケンジャー」という特撮ヒーローものを1年間やりました。
伊礼さん) ヒーローものをやる時は、禁止事項とか契約書作ったりするの?
相葉さん) 契約書というより、子供たちのお手本になるような日常生活を過ごしてくださいと常々言われていました。それ以降も映像や舞台の仕事をやってきて、2015年、27歳の時に出演したミュージカル『ラ・カージュ・オ・フォール』をきっかけに改めてミュージカルやお芝居の面白さを感じ、帝国劇場の舞台に立つことを目指すようになりました。
伊礼さん) テニミュの時は楽しくなかったの?
相葉さん) 恐ろしいことをおっしゃいますね(笑)。僕はテニミュのあの世界観が本当に大好きなんです。でもあの頃は、ミュージカルというものを観たことがなく初めて観たのがテニミュで、初めての舞台出演がテニミュだったので。
伊礼さん) 一緒だ!
相葉さん) ミュージカルではあるけれど、やっぱりテニミュは特殊じゃないですか。
伊礼さん) わかるわかる、違うジャンル、違う面白さですね。でも、そこから帝劇を目指して、実際に「嵐の日まで~」ってセンターに立っているってすごいよね。実際に帝劇の舞台に立ってどうだった?
相葉さん) 舞台の上から客席を見ると目の前に真っ暗な大きな海が広がっているようで、そこに吸い込まれそうな感じがして怖かったです。初めて立った2017年のレミゼの時はずっと緊張していました。そこにはアンジョルラスという大役を務めるという緊張もあったと思うんですけど。
伊礼さん) 僕がやりたかったアンジョルラス……。2度目となる今年は変わった?
相葉さん) 2017年の地方公演を経て、また帝劇に戻ってきて見える景色が変わりました。視野が広くなり、自分でも芝居の選択肢が増えてきていることを実感できて楽しいと思うようになりました。
伊礼さん) 日本版の演出家が変わったことによる変化は?
相葉さん) 2017年に、当時の演出のエイドリアン(・サープル)から言われたことはパッション、エナジー、美しい立ち姿という基本的なところ。それは今ほど声も出ていなかっただろうし、稽古場でリーダーとしての求心力というものが足りていないように見えたからだと思っています。
伊礼さん) 立ち姿きれいだよね。華があるなと見ているけど。
相葉さん) それはエイドリアンの教え。アンジョルラスがもつ人を惹きつける力を、言葉だけでなく姿でも見せてほしいと言われたから。もちろんそれは今も活きていて、クリス(クリストファー・キー)になっても基本軸は一緒で細かなところでチョイスが違う感じです。例えばあるシーンで立っているか座っているかの違い。そうやって2回目にして細かいところを丁寧に作っていけたから自分の中でも芝居を作りやすかったですね。あとはこの間、博多にクリスが来て、改めてじっくりと見てくれたのもありがたかったです。東京での稽古序盤を思い起こさせるアドバイス、コメントをくれて初心に立ち返ることができました。
伊礼さん) 長期公演だとどうしてもブレが生じるんです。稽古場で作ってきたものが、帝劇の間は保たれるけれど2か月、3か月とやっていると人は無意識のうちに新鮮さを求め、新しいことをし始める。そうすると少しずつズレて、やがて大きくズレになる。公演を重ねることで生まれる新しいアイデア・アプローチを試すことも演出家がいないところでチャレンジするのはちょっと危険。演出家がいればその都度ジャッジをしてもらえるけどね。今回もこのタイミングでクリスが来てくれたから仕切り直しというか、僕もバルジャンと対決する上で必要な要素を再確認できました。カンパニー全体も引き締まったよね。
【稽古場でのコミュニケーションについて】
伊礼さん) あのさ、キスシーンって稽古のどの段階でします?
相葉さん) え!えーと、ケースバイケースです。いずれにしても、まずは相手と話をすることから。自然とできる場合もあるんですけど……。
伊礼さん) それはお互いに役を掴んでいる時だよね。まだ役より素が残っているとちょっとぎくしゃくというか。あと日本の演出家さんは通しからやってくれれば、海外の方は最初からやってという人のほうが多かったり。いずれにしてもコミュニケーションが大事だよね。
相葉さん) それが一番大事ですね。芝居はコミュニケーションなので。キスシーンはちょっと特殊ではありますが、ほかの関係性でも結局ベースになるのはコミュニケーション。稽古場で僕は相手のタイミングを見計らい過ぎて、稽古の合間とかに個人的に芝居の話を詰めるのをためらってしまうことがあるんです。
伊礼さん) 僕はこう見えて普段はそんなに自分からガンガン行くタイプじゃないんだけど(笑)、芝居になるとモードが変わるというか。相手役とか、関係性が深い役の方とは何が何でも距離感を詰めていかなければという使命感みたいなものが湧いてくるんだよね。役としてお客様の前に出る以上はそこで嘘がないように作っていきたい。相葉くんは気を使いすぎるんじゃないかな。優しすぎるんだよ。
相葉さん) 頑張ります。しかしすごい話をするんですね、彼方の部屋は(笑)。
伊礼さん) みんなどうしているかを聞いてみたくなって(笑)。まぁ、30代前半に比べるとラブシーン自体減っているんだけど(笑)。
【イケメンズとベテランズ?!】
伊礼さん) そんな相葉くんですが、レミゼの舞台袖での「ポンポンポーン」をぜひここで披露してほしいんだよね。
「ポンポンポーン!」
相葉さん) 誤解を招かないようにお伝えしますが、アンジョルラスの時はやりませんよ。警官役として出る前に、その日の相棒(マリウス役)が三浦宏規だと彼方くんが「イケメンズだね」と嬉しそうで。
伊礼さん) そう!相葉裕樹と三浦宏規が揃った日はすごくテンションが上がるの。「イケメンズだ!」って(笑)。各々のタイミングで舞台袖に来るんですけど、相葉くんはスタンバイが早くて、彼を見つけるとリーチ!ほかにも警官役のみんなが来て、そこに三浦宏規が来ると「お!イケメンズだ、イエーイ!」ってなるんです。それに相葉くんが返してくれるのが「ポンポンポーン」。不思議なんだけどテンション上がるんだよね。
相葉さん) 僕だけじゃダメなんですね(笑)。二人そろって初めてテンション上がるという。
伊礼さん) 実はもうひとつ好きなチームがあって、マリウス海宝直人とアンジョルラス小野田龍之介。その時は(低音で)「よ!ベテランズ、どうぞよろしくお願いします」。思わずこちらも村井國夫さん風になっちゃう。全然違うの、「ポンポンポーン」と。
相葉さん) おそらくそっちのテンションが正解ですからね。
伊礼さん) だって相葉くんがチャラいから(笑)。
相葉さん) いやいや、こんな真面目な人いないですよ!!。なんでしょうね、遊び心というかバランスをとっているところはあると思います。重厚感、緊張感のある舞台の中でホッとするというか。そこから覚悟をもってアンジョルラスへ入っていくという感じです。
伊礼さん) バランスで思い出しましたが、バルジャンとジャベール以外のプリンシパルがほかの役もやるのはなぜか。しんどい役もあるので、心のバランスを保つために複数の役をやるということを聞いたことがあります。でもさ、それが一番必要なのはジャベールだと思うんですよね。あと相葉くんの給仕のシーンを見た時、「相葉、何をやっているんだ!!」と思った。自由に踊りすぎじゃない?
相葉さん) そこはフリー演技、日によって動きが変わったりします。
伊礼さん) やっぱり三浦宏規の日だと激しく動いちゃうとか?ちなみに、どのマリウスが好き?
相葉さん) その訊き方、どうなんだろう(笑)。宏規の時は、お兄ちゃん的になりますね。でも、本当に三者三様ですよ。
伊礼さん) 出た!三者三様で逃げるパターン(笑)。でも、バルジャンもそうだからわかるけどね。しいて言えばどう?
相葉さん) 芝居においては誰がマリウスだからということは本当にありませんが、やっぱり2017年に同期で入った内藤大希くんは稽古場から一緒に戦ってきた戦友。初参加でなにもわからない中で一緒に食らいついていった仲間です。彼もテニミュで氷帝の芥川慈郎役をやっていましたし、そういう意味でも同期感が強いです。
【ルーティーン】
伊礼さん) これはみなさんから寄せられた質問です。「お二人はルーティーンはありますか?」とのことですが。
相葉さん) 毎日の流れはあります。稽古場でアップして、発声練習に参加、そこから身体をほぐしたり、気になるところを鍵盤叩いてチェックしているとだいたい時間になります。楽屋にはほとんどいないんです。本番が近づいてくると稽古場にはほとんど誰もいなくなるので、広いスペースに一人、大の字になってリラックスしたり。
伊礼さん) なんかゆったりしているね。(同じアンジョルラス役の上山)竜治くんと大違い!この間、稽古場を覗いたらアップの後に竜治くんがバーレッスンをしていて。「竜治に何が起きたんだ!」と思って聞いたら、「伊礼さん、僕、次、『ウエスト・サイド・ストーリー』なんです!」と。毎日、本番前にメチャメチャ練習しているんだよ。足もカッコよく上がるし。みなさん、ぜひ観に行ってくださいね。そういう努力、大好き!!片や相葉くんは大の字になってうわぁでしょ。
相葉さん) ちょっと待ってください。僕も遊んでいるわけじゃないですから!。緊張と緩和です。警官をやった後に一度楽屋へ戻って、メイクをして、衣裳を着て……、舞台に行くまでの時間でアンジョルラスに入る。そうやっているうちに自分でもわかるんですけど、顔つき、表情が変わるんです。
伊礼さん) それ、あるよね。僕、普段は笑顔が素敵じゃない?(会場笑)ジャベールの支度をして出て行こうとすると無意識のうちに口角が下がっているんだよね。ジャベールの感情がそうさせるんだと思う。
相葉さん) 彼方くんのルーティーンは?
伊礼さん) ルーティーンは、毎回プロローグを見て、その日のバルジャンのエネルギーをもらうこと。バルジャンとジャベールは対になる存在なので、その日の相手のエネルギーを確認したいんだよね。光夫さんは毎回絶好調で、今日も手強いぞと気を引き締める(笑)。博多の舞台稽古で久しぶりに組んだ時、対決のところで投げ飛ばされて。投げられて壁にぶつかっても食い下がるというのが演出なんですけど、一度舞台袖まで飛ばされたんです。僕は3秒ほどいなくなり、スタッフさんに押し戻されたという。そうしたら「ごめんごめん、楽しくなっちゃって」と。お願いだから自分の腕力を知って……光夫さん。
伊礼さん) あとは僕がスターズを歌い終えて早替え小屋に戻る時の相葉くんとのグータッチが嬉しいんだよ。
相葉さん) あそこはバトンタッチ感がありますよね。
伊礼さん) 頑張れ、行って来い!って。あの時はもうチャラくない、地に足が着いている感じ(笑)。
相葉さん) あの時はアンジョルラスに入っているので。
伊礼さん) でも……、昨日いなかったよね。「あれ、相葉くんがいない」、そして小屋に入ろうとしたら出てきて、「あ、相葉くん、こぶし……」って。
相葉さん) 待っていてくれたんですね。ウィッグの調整をしていてちょっと遅くなってしまって。
伊礼さん) 思っていた以上に習慣になっていたみたい(笑)。
相葉さん) 失礼しました。でも、僕にとってもあのタイミングでのグータッチ、バトンタッチは大きいです。あの後に続くシーンは僕らが作りあげるので。
伊礼さん) 最初にレミゼを観た時、「ジャベール、カッコイイな」とも思ったけれど、途中でアンジョルラスが出てきた時は「これはアンジョルラスの話だ」を感じたことを記憶しているんです。
相葉さん) 確かにグータッチの後のABCカフェから一幕ラストのワン・デイ・モア、二幕頭もアンジョルラスから始まりますからね。作品の中盤を任されている感覚はあります。
伊礼さん) 声にもパワーがあって華もある。この役をやりたかった僕もこんなアンジョルラスがいるなら納得と思うアンジョルラス。そんな相葉くんですが次は『ダンス オブ ヴァンパイア』のアルフレート役!これもすごく合うと思う!!今のところ僕の中では浦井健治が最強なんですけど、相葉くんならそれに迫るか、越えるか。それは相葉くん次第!みなさんも楽しみにしていてくださいね。
(会場拍手)
相葉さん) ありがとうございます。2020年のお正月に『ダンス オブ ヴァンパイア』で、ここ博多座へ戻ってまいります!まずは『レ・ミゼラブル』も最後まで出し惜しみせず、自分自身どこまで行けるのかに挑戦し、その次のアルフレートもみなさんや伊礼くん(笑)の期待に応えられるように頑張ります。
伊礼さん) 僕にとっては11年ぶりの博多座出演、初めてロビーにも出ましたがお店がスゴイですね。みなさんがあんなに楽しい休憩時間を過ごされていたとは!博多座が大好きになりました。また戻ってこられるようにこれからも頑張ります。今日はお集まりいただきありがとうございました。ご協力いただいた博多座さんにも御礼申し上げます!
◆※「まだまだだね」は「テニスの王子様」の主人公、越前リョーマの口癖です。
※『ミス・サイゴン』博多座公演も発表になりましたね。
※博多座はお正月からミュージカル三昧
『レ・ミゼラブル』『ダンス オブ ヴァンパイア』に続き、『キレイ』『天使にラブソングを』『デスノート』そして『ミス・サイゴン』と今後もミュージカル公演いっぱいの博多座さんです!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人