2015年の初演、17年の再演に続き三演目を迎えた
『デスノート THE MUSICAL』。キャストを一新したまさに“新世代のデスミュ”、池袋に誕生した東京建物 Brillia Hallのこけら落としシリーズ作品として上演中です。初日に先立って行われたフォトコールの様子を囲み取材のコメントを交えてレポートいたします。
(文中の緑の箇所はおけぴ会員のみなさんから寄せらた感想です)【すべてはここから始まった】
♪哀れな人間(死神レム:パク・ヘナ、死神リューク:横田栄司) 死神たちが人間界を見下ろしてあざ笑う。死神リュークが退屈しのぎに人間界へ一冊のノートを落としたことからすべてが始まる。そのノートこそ“デスノート”なのです。圧倒的な存在感を示す横田栄司さんのリュークが物語を支配します。
レムを演じるのは本作の韓国版初演(2015年)より同役を演じるパク・ヘナさん。
「デスノートに関しては一番の先輩なのですが壁なく僕らとも接してくださる、とてもチャーミングな人柄」(村井さん)
「そこから一転、レムになるとがらりと空気感が変わるんです!」(髙橋さん)
「まさに能ある鷹は爪を隠す!楽屋では爪を隠して(笑)」(甲斐さん) リュークとレムの掛け合い……人間の生き様を歌う歌詞にも伏線が!ちょっとした思いつき、ちょっとした退屈しのぎでリュークが──
「冒頭の教室の場面、死神リュークの登場など、全て重要なキーワードがあるので見逃さないで聞き逃さないで欲しいです。リュークがデスノートを落とさなければ夜神月は優等生のままだったのだろうか?リュークは明るいキャラクターかと思いきや、最後はやっぱりゾッとしました」 リュークが落としたそのノートには「このノートに名前を書かれた人間は死ぬ」とあった。それを手にしたのが高校生の夜神月(やがみライト)。犯罪者を裁ききれない法律に対する限界を感じ(♪正義はどこに)、本当の正義とは、そしてそれはどこにあるのかと疑問を抱いていたライトは犯罪者を裁くために誘拐犯の名前をデスノートに書いてみる。すると犯人は心臓発作で息絶えた。
「自分こそが犯罪者のいない世界を作る“新世界の神”だ」、ライトはデスノートで犯罪者の粛清を始める。それに対して世間は姿を見せない“新世紀の神”を「キラ」と呼び称賛する。(♪正義はどこに(リプライズ))
♪正義はどこに も披露された『デスノートTHE MUSICAL』稽古場レポートはこちら【キラ崇拝者の一人はトップアイドル】
♪恋する覚悟(弥海砂役:吉柳咲良さん、女性アンサンブル、リューク役:横田栄司さん) そんなキラの崇拝者の一人はアイドル歌手ミサミサこと弥海砂(あまねみさ)。両親を強盗に殺され、その犯人をキラが裁いて以来、キラを崇拝。
「ライトとエルのバチバチの心理戦を、いつもミサとしてライト側について見ています。ミサは味方、応援することしかできない。そんなミサという存在が、二人の心理戦とはまた別のところで輝いていればいいなと思います」(吉柳さん)【名探偵L(エル)登場】
♪ゲームのはじまり(エル役:髙橋颯さん) キラ捜査の切り札として警察がコンタクトを取ったのはこれまでにいくつもの難事件を解決してきた謎の名探偵L(エル)。事件解決のためには手段を選ばないエルのキャラクターを象徴するナンバー。
リング状の盆が回り登場するエル
この舞台セットも非常に演劇的な効果を生み出します。
謎の名探偵は──キラ逮捕を誓う
キラを見つけ出し逮捕する、正義感に燃えてというよりはまるでゲームを楽しむかのようなエル。
【ライト、エル、総一郎……交錯する思い】
♪秘密と嘘(夜神月役:村井良大さん、エル役:髙橋颯さん、夜神総一郎役:今井清隆さん、リューク役:横田栄司さん、刑事役男性アンサンブルキャスト) キラ対策本部で指揮を執るのはライトの父・夜神総一郎。総一郎はエルの強引な捜査手法に異を唱えながらも彼の手助け無しでは捜査は難航を極め、やむを得ず捜査本部へ迎え入れる。一方、ライトはエルの存在を煙たく思いエルの正体を突き止め排除しようと試みるようになる。ライト、エル、総一郎それぞれの思いの交錯が音楽、芝居で舞台上に立ち上がる。演劇ならではの緊張感のあるシーンに。
捜査本部、捜査員のそれぞれにも家族があり正義がある
「川口さん、湊さんはじめ、アンサンブルのみなさん、素晴らしいです。アンサンブルの安定感が、新生DEATH NOTEを支えているようにみえました。更なる進化を楽しみにしています! 」
「刑事さんが、捜査から抜けても構わないと言われた時、命を掛けても、職務を全うしようとする姿に感動して、泣きそうになりました」 「死神は人間の顔を見ただけで名前がわかるって言ったよね」(ライト)
「人間がすることに死神が手助けしてはいけない。でも──」(リューク)
エルの本名を教える代償とは。
互いに追い求めるという奇妙な関係となるエルとライト。異なる空間にいる二人が舞台上で肩が触れそうになるほど接近する。思考のなかでニアミスするさまがこうして見えるのも舞台ならでは!
「ライトとエルが直接言葉を交わすことなしに心の奥で戦いを挑んでいる。互いの闘志を目の奥で感じ合う、その緊迫感をお見せできればと思います」(髙橋さん) 「テレビドラマや映画で見ているのでストーリーは知っているのに、展開にハラハラドキドキしました。最初の村井くんの心のこもった歌に心掴まれました。当たり前だけど、皆さん歌が上手くて、やっぱり生歌は迫力があって感動します」
「ライト役の村井さんはどんどん崩れていくライトの二面性を凄く上手に演じ切っていました。リュークの横田さんは雰囲気も歌も素晴らしかったです」【バチバチ】
♪死のゲーム(夜神月役:甲斐翔真、エル役:髙橋颯、弥海砂役:吉柳咲良、死神レム役:パク・ヘナ、死神リューク役:横田栄司) 原作コミックでも人気の場面。「私はエルです」と名乗るエル、初めてライトとエルが対峙するシーンです。ここから二人の心理戦がより一層白熱する。
「漫画の登場人物を生身の人間がそこで演じるのが舞台化の魅力。人のなかに渦巻く感情を空気で感じることができるので、それによってデスノートの本質的なところが浮かび上がってきます。感情のバチバチ、ヒリヒリが楽曲の素晴らしさでも表現されています」(甲斐さん)「甲斐ライト初日を観劇しました。初めてのミュージカルで、座長、オリジナルキャストからの再演でとプレッシャーが凄かったと思いますが、それを感じさせない堂々としたお芝居と歌で素晴らしかったです。横田さんのリューク、最高でした。やっぱりデスノートミュージカルは面白かったし、歌が素敵で世界に引き込まれました」海砂を見つめる死神レム
「ヘナさんとのシーンではヘナさんの凄さを肌で感じます。対等な立場でお芝居をしなくてはならないのに、どうしても引っ張ってもらっている。私も負けずにヘナさん演じるレムに『この子を守りたい、助けたい』という感情が自然に沸くようなミサにならなくてはとお稽古してきました。それができるようになったと、今は自信をもって言えます」(吉柳さん)「レム役のパク・ヘナさんのミサミサへの想いが詰まった歌ごとが切なくて、その上色っぽく号泣ものでした。原作の雰囲気を壊さず、スピーディな展開。エルとライトのテニス対決の迫力はすごい!」 ライトとリューク、ミサとレム、人間と死神の関係もドラマの大きな見どころです。
「舞台でやることでより残酷に映る。最後にリュークが言う言葉の意味を考えるとワーッとなります。この作品は答えを提示するのではなく、お客様に感じ、考えてもらう作品です。僕らがどれだけ引き出しを開けるかにかかっていると思います」(甲斐さん)「新しくもそこにはデスノートの世界がありました。ぜひ、体験して欲しい」 果たしてライトとエルの頭脳戦・心理戦が迎える結末はいかに。
そしてその時、リューク、レム、海砂、総一郎……周囲の人々はなにを思うのでしょうか。続きは劇場で!
【二人のライトと横田塾仕込みのフレッシュな才能】
フォトコール後に囲み取材がありました。
吉柳咲良さん、甲斐翔真さん、村井良大さん、髙橋颯さん
──作品の見どころは。村井さん) たくさんありすぎて(笑)。とにかく『デスノート』という作品をミュージカル化したというのが最大の見どころです。この『デスノート THE MUSICAL』は音楽、物語の魅力すべてが詰まったエンターテイメントになっています。
──夜神月をダブルキャストで演じる二人の互いの印象。村井さん) 甲斐くんは22歳。31歳の、ブレザー(制服)姿に若干不安を感じる僕にはフレッシュで勉強になることばかりでした(笑)。彼からは栗山民也さんが目指す2020年の現代劇たるデスノートというのがリアルに出ているんです。今の高校生がデスノートを拾ったらどうなるかというところでのリアリティは圧巻です。ああ、夜神月ってこうなんだろうなと勉強になりました。
甲斐さん) 村井さんは稽古の段階から“やっぱり違うな”ということの連続でした。頭で芝居を組み立ててそれを体現できる方、それは今の僕にはできないこと。僕のほうこそ近くて見ていてとても勉強になりました。めちゃくちゃ相談しましたし。
村井さん) 二人で作った夜神月です。ダブルキャストでよかったと思っています。
──本番を前に意気込みは。吉柳さん) これまでやってきた役とは正反対の役なので悩み、壁にぶつかりもしました。でも今は、それを乗り越えられたと思っています。『デスノート』という作品の“正解のない正義”をみなさんに感じて楽しんでいただけたらうれしいです。
──初舞台の甲斐さんと髙橋さん、ベテランキャストの存在は。甲斐さん) 横田塾という名のもと、リューク役の横田栄司さんから舞台に立つこと、しゃべることを教えていただきました。一緒に台本の読み合わせをしていただいたり、横田さんの存在はでかいです。
髙橋さん) 本当にみっちりやってもらいました。たとえば「見事だ、キラ」という台詞、僕らはそう言っているつもりでも。
(髙橋さんが再現)
横田:いや、“み”が聞こえない。ここではしっかり相手の首を捕まえて
髙橋:みごとだキラ
横田:今度はキラが聞こえない。「見事だ、キラ」その微妙な間が──。
甲斐さん) まさにこの通りです。
村井さん) これはすごい!お金払っていいレベルだよ。
──最後に一言ずつ。甲斐さん)稽古序盤はまさか自分が本番が楽しみだと感じるとは思ってもみなかったので、こんなに楽しみにしている自分にびっくりしています!今は『デスノート』の魅力を早くみなさんに伝えたいという気持ち100パーセントです。
髙橋さん)僕も初舞台、稽古初めのころは全然なにもできなくて。たくさんの先輩方、スタッフさんにお世話になりここまで成長することができました。これまでやってきたことを精一杯初日、本番にぶつけたいと思います。
吉柳さん)稽古初日は不安が大きかったのですが、稽古を重ねていくうちにいろんなことを吸収し自分に自信を持てるようになってきました。本番が楽しみです!
村井さん)『デスノート THE MUSICAL』2020、この作品に携われたことを本当に幸せに思います。最後まで、カンパニー一同、怪我無きように頑張ります。
キャスト一新、ニュージェネレーションで挑む『デスノート THE MUSICAL』!劇場を出るとそこには都会の喧騒が広がります。池袋の新劇場のこけら落としシリーズには多彩な作品が名を連ねますが、こうして現代日本を舞台にしたミュージカルが上演されることの意味も感じます。劇場にこの作品のエネルギーが宿り、同時に新しい世代へ『デスノート THE MUSICAL』が受け継がれていく。キャストは一新されても、上演が重ねられることで作品そのものの強度は一層増している2020年の新生『デスノート』をお見逃しなく!
一部写真提供:ホリプロ
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人