KAAT神奈川芸術劇場2020年度ラインアップ発表!

 KAAT神奈川芸術劇場の2020年度ラインアップ発表会が開催され、芸術監督として任期最終年度を迎えた白井晃さん、2019年から芸術参与をつとめる長塚圭史さんのほか、2020年度公演の数々を手がけるクリエイターたちが登壇。公演概要の発表とともに、自作への意気込みを語りました。

2020年度 KAAT神奈川芸術劇場ラインアップ詳細(劇場公式サイト)



アーティスティック・スーパーバイザー(2014年~)、芸術監督(2016年~)として計7年間、同劇場と関わってきた白井晃さん
「この7年で劇場を取り巻く環境も変わってきた」と語る白井晃さん。芸術監督としてのラストイヤーとなる2020年度は「否が応でもオリンピックイヤーとして熱狂的な雰囲気が取り巻く。そのなかで見逃しがちなことを意識してプログラムを作りました」と、“時代の空気”に抗う覚悟を静かに、けれども熱く、宣言。その思いを反映して、社会的テーマも多く取り上げられた演劇公演は、白井さん自身が演出する「アーリントン」〔ラブストーリー〕(4月・大スタジオ)からスタート。詳細はレポ後半でご紹介します。

 


KAAT神奈川芸術劇場2020年度ラインアップ発表の登壇者たち。
写真後列左から:白井晃さん、森山開次さん、小野寺修二さん、多田淳之介さん、長塚圭史さん
前列左から:清水恒輔さん、桐山知也さん、冨安由真さん、松原俊太郎さん、谷賢一さん




【美術、ダンス作品】

 発表会前半は、美術、ダンス作品の概要発表から。6月から7月にかけて中スタジオで大型個展「冨安由真展 漂泊する幻影」を開催する現代美術家の冨安由真さん、11月のダンス公演「星の王子さま ─サン=テグジュペリからの手紙─」振付・演出・出演を担う森山開次さん、同じく11月に新作ダンス公演の演出・振付を手がける小野寺修二さんが登壇しました。



KAAT EXHIBITION 2020
冨安由真展 漂泊する幻影
6月1日(月)~7月5日(日) 11:00~18:00(木曜休場)<中スタジオ>



「科学で解明されていない、心霊現象、超常現象と呼ばれるようなものに関心がある」と語る現代美術家の冨安由真さん。

 KAAT中スタジオの空間で「現実と非現実の境目が曖昧になる体験ができるようなインスタレーション」が登場。現代美術家として注目される冨安由真さんは「本来、劇場には演者がいますが、私の作品に演者はいません。人形(ひとがた)、シルエットすらない。あるのは人の痕跡。不在性が大事な要素です」と語り、「劇場という特殊な空間」での創作に意欲を見せました。



KAAT DANCE SERIES 2020
星の王子さま
一サン=テグジュペリからの手紙一
11月中旬 KAAT神奈川芸術劇場<ホール>



ダンサー、振付家として大活躍する森山開次さん。大ホール上演作品のモチーフに選んだのは「星の王子さま」です。

 大ホールで上演する大型ダンス作品のモチーフに「星の王子さま」を自ら提案したという森山開次さん。「大切なものは目には見えない、このメッセージを身体で観客に見せるのが課題」と語ります。副題に「サン=テグジュペリからの手紙」とあるように、「サン=テグジュペリから妻への手紙も大切な要素。小説家であり飛行士でもあったサン=テグジュペリの生涯、その思いも重ねて再構築したい。原作の前書きにあるように、子どもだけでなく、かつて子どもだった大人たちにも届けられれば。大ホールが子どもと大人で賑わい、さまざま思いをめぐらせてくれれば嬉しい」と意気込みました。出演はダンサーの垣根を超えていく新鋭・アオイヤマダさん、小㞍健太さん、酒井はなさん、島地保武さんのほか、歌手・俳優として活躍する坂本美雨さんのお名前も。



KAAT DANCE SERIES 2020
小野寺修二新作
11月<大スタジオ>



パントマイムをベースにしたパフォーマンスが特徴的なカンパニーデラシネラを主催する小野寺修二さん。

 文化庁文化交流使として滞在したベトナムやタイで「出会ったおもしろいこと」も取り入れ、「アジアに向けて自分に何ができるか。よくわからないもの、わからないけれど魅力的なもの、そこに好奇心の“め”を向けたい」「白井さんからは、何でもいいから小野寺のやりたいことを思い切りやれといわれている」と飄々と明かした小野寺修二さん。タイトルその他は未定ですが、改めてパントマイムと向き合い「言葉は使わない」ことだけは決めたと語りました。



佐藤卓さんデザインの10周年記念ロゴも発表されました

 このほかキッズ・プログラムとして、2019年8月に上演された「二分間の冒険」の全国7劇場公演を含む再演と、白井佳代子さんを主演に迎えた松井周さんの新作「さいごの1つ前」の上演も発表されました。

 「さいごの1つ前」は白石さん演じる認知症の老婆が、天国行きの飛行機に乗る前に子どもたちと記憶探しをする物語。「いつもは地球滅亡、人類全滅みたいな作品が多いですが、今作では楽しいもの、楽しい場を作りたい気分です」(松井周さん映像コメントより)



【演劇作品】


 刺激的な作品が集まった演劇作品。登壇者は、演出家として新作、再演作、オペラまで4作を手がける白井晃さんに加え、フリッツ・ラングの傑作サイレント映画「メトロポリス」の伴奏付き上映会で作編曲・生演奏を担当する mama!milk の清水恒輔さん、ロンドンで起きたテロ事件に着想を得た戯曲のリーディング公演を演出する桐山知也さん、「地点」公演に新作を書き下ろす松原俊太郎さん、人類の起源から発展を描いたベストセラー書籍「サピエンス全史」の演劇化に挑む谷賢一さん、日韓共同製作でチェーホフ『三人姉妹』を1930年代朝鮮半島に置き換えて描く多田淳之介さん、そして「セールスマンの死」再演の演出を手がける長塚圭史さんです。



アーリントン」〔ラブ・ストーリー
4月11日(土)~5月3日(日)  大スタジオ

 『バリーターク』に次ぐ、エンダ・ウォルシュ戯曲を「この作家に惚れた」と語る白井晃さん演出で日本初演。出演は南沢奈央さん、平埜生成さん、入手杏奈さん。
 「どこかわからない部屋で、一人の女性がオペレーションルームからの声を会話する物語。声の主もまた別の存在から声をかけられるという不思議なラブストーリーです。その意味は見ていただければわかります」(白井さん)



メトロポリス 伴奏付上映会 ver.2020
4月18日(土)・4月19日(日)  中スタジオ


 高度に発展した資本主義社会で二分化した支配者階級と労働者たちを描く傑作サイレント映画の16mmフィルム上映にあわせて、オリジナルの音楽を生演奏する上映会。関東では初めての開催です。
 「映写機の駆動音も含め、当時の映画上映の雰囲気も体験できる。生演奏とともに熱量のある上映を楽しんでほしい」という清水恒輔さんは、上映会で使用する衣装を身に着けての登壇でした。巽勇太さんの自作楽器(装置)とのコラボレーションも楽しみです。



リーディング公演「ポルノグラフィ
4月25日(土)・26日(日)・29日(水・祝)   中スタジオ


 リーディング公演「ポルノグラフィ」を演出する桐山知也さんはKAAT初登場。7つの場面からなるオムニバス作品で、どの場面から演じても、何人の役者で演じても良いとただし書きがある自由度の高い戯曲をリーディング公演として立ち上げます。
 「不思議な作品。白井さんは本当はご自身で演出したいはず。その思いを受けて作りたい。劇場という場所について、人はどう繋がり、どう断絶していくのかについて考えさせられる作品。東京オリンピック前のこの時期だからこそ(上演の意味がある作品)」(桐山さん)



未練の幽霊と怪物
6月3日(水)~24日(水)  大スタジオ

 岡田利規さんの新作は、建築家ザハ・ハディドをシテにする「挫波(ざは)」と、高速増殖炉もんじゅをめぐる「敦賀(もんじゅ)」、そこに狂言をはさむ能の上演形式を用いた「社会的な演劇」。森山未來さん、片桐はいりさんらに加え、七尾旅人さんが謡手として出演。音楽監督・演奏は内橋和久さん。
 「オリンピック開幕直前のベストなタイミングでの上演に興奮しています。みなさんも興奮してください!」(岡田さん映像コメントより)



鼓童×ロベール・ルパージュ  
〈NOVA〉
9月3日(木)~6日(日)   ホール

 日本文化と最先端ビジュアルテクノロジーが融合する新・視覚体感劇術。KAAT技術協力のもと共同制作。



音楽劇「銀河鉄道の夜」
9月~10月  ホール

 白井晃さん演出。青山劇場の10周年記念として上演された音楽劇を、KAAT10周年記念プログラムのキックオフとして上演。歌のさねよしいさ子さんほか、当時のスタッフ再結集にも注目です。



「君の庭」
10月  大スタジオ


「山山」で岸田國士戯曲賞を受賞した松原俊太郎さんが書き下ろす地点の新作公演。チェーホフやドストエフスキー作品も上演する地点ですが、白井晃さんが特に好きなのが「松原作品を上演するときの成果」。その松原さんが今回挑むのは法廷劇の形式で描く、“日本一有名な家族”の物語。
 発表会にあわせ早々にタイトルが決定。「響きが似ているので「君の名は」と関係があるのかと聞かれるが、2文字もちがう。全くちがう作品になります。もしかしたら関係ある作品になるかもしれませんが」(松原さん)



「谷賢一 新作『人類史(仮)』」
10月   ホール


 ベストセラー「サピエンス全史」を谷賢一さんの台本・演出で舞台化! 数万年単位で時間を跳躍し「人類が二足歩行や言語を獲得する過程、火で闇を振り払う瞬間などを演劇として描きます。音楽の誕生の瞬間も描きたい。人類の起源から、技術革命、大航海時代、科学が宗教に変わって世界を塗り替えていくところまで、演劇でみせます。無理だと思っている方こそ、劇場にいらしていただきたい」(谷さん)
 「谷さんのとんでもない提案に乗りました(笑)! どうなるのか全くわからず不安ですが、だからこそおもしろい。結果がわかっているものをやっても意味がない。その勇気をかっていただきたい」(白井さん)
 音楽はドレスコーズの志磨遼平さん。



日韓共同製作
「外地の三人姉妹(仮)」
12月   大スタジオ


 チェーホフ『三人姉妹』を下敷きに、 1930年代の朝鮮半島に住む日本人家族と周囲の人々を描く日韓共同作。「가모메 カルメギ」の翻案・脚本ソン・ギウンさんと再タッグを組むのは東京デスロックの多田淳之介さん(演出)。
 「日韓関係が悪い今だからこそ作る意味がある。同時にチェーホフの再発見でもあるので、チェーホフファンの方にも楽しみにしていてほしい」(多田さん)



「杉原邦生 新作」
12月  ホール

「オイディプスREXXX」「グリークス」と話題作を手掛けてきた杉原邦生さん(演出)が瀬戸山美咲さん(作)とタッグを組み、ギリシャ悲劇をもとにした新作現代劇を上演。
 「ホールの大きな空間をどのように使うかも含め、おもしろいものを作りたい」(杉原さんコメント映像より)



「セールスマンの死」
2021年1月  ホール

 長塚圭史さん演出、風間杜夫さん主演で2018年に上演されたアーサー・ミラーの傑作を再演。「再演が大好き」という長塚さん。ロングランがない日本では作品が消費、消耗されてしまうと語り「戯曲の構成が素晴らしい」アーサー・ミラー作品に改めて向き合う再演で「深みが増すのでは」と自信を見せます。
 「時代がものすごい勢いで進んでいる。オリンピックもいいけれど、ちゃんと物事を分析、解析しながら進めているのだろうかと気にかかります。この作品ではそういう時代に取り残された男、家族の深い業が描かれている。初演当時40代後半だった山内圭哉と菅原永二が今回も若い息子ふたりを演じます。少年時代の場面になるとなんともいえない空気になりますが、これが演劇のすごいところ。役者のプロフィールにも実年齢ではなく、演じられる年齢を書くといいのではと思います」(長塚さん)
 出演はこのほか、片平なぎささん 、加藤啓さん、智順(ちすん)さん、 大谷亮介さん、村田雄浩さんほか



「コーカサスの白墨の輪」
2021年1月  大スタジオ、中スタジオ、アトリウム

 芸術監督就任時に「1年に1度はブレヒト作品を上演する」と目標をかかげた白井晃さんが、自身の演出で挑むブレヒト作品の集大成。大・中スタジオと劇場アトリウムを使用しての上演は「まだどうなるかわからないけれど楽しみ」(白井さん)



「子午線の祀り」
2021年2月  ホール

 世田谷パブリックシアターとの共同制作。2017年に野村萬斎さん演出で上演された木下順二の歴史絵巻をKAATで再構築。全国公演も予定。



オペラ「モモ」全3幕
2021年3月9日(火)・11日(木)・13日(土)・14日(日) | ホール

一柳慧さん(神奈川県民ホール)と白井晃さん。神奈川芸術文化財団の両芸術監督の共同創作プロジェクトの集大成。
「KAATで純粋なオペラを上演します。とはいえオペラの演出から逸脱した形を模索中。オペラの常識破りなことができないかと考えています」(白井さん)





【「やっちまった劇場」「通りゆく人がつい入ってしまう劇場に」】


 最後に、芸術監督任期最後のシーズンとなる白井晃さん、次年度からの監督就任を見据える芸術参与の長塚圭史さんから、劇場のこれまでとこれからについて発言が。

白井さん:
 就任当時はどうしても東京との距離感を意識せざるを得なかった。遠くもないけれど近くもない。その距離感が課題でもありました。“つくる劇場”を標榜しているKAATですので、東京ではできない作品をやってやろうと、意識的に事件を起こしてきたつもり。認知度も少しは高まったかなと自負しています。(任期)最後の1年も、前のめりな表現でやっていきたい。これからこの場でどんな事件が起こせるか、やらかしていけるか。「やっちまった劇場」と判を押してもらえるよう(笑)がんばりたいと思います。

長塚さん:
 1年弱、この劇場を見つめてきて、さまざまなアーティストが行き交う、活気がある場所だと感じています。いろいろな形で劇場を使うことに道が開けている。そのなかでもうひとつ、劇場前の通りゆく人たちが、つい入ってしまうような場所、劇場で働く人と訪れる人たちが声をかけあえる場所にしていきたい思いがあります。すぐには無理でも、そうしていこうとする思いが個々のスタッフにあるので、先は明るいのでは。全体を見つめながら進めていきたいと思います。



 このほか、提携公演詳細など劇場公式サイトも併せてご確認ください。
2020年度 KAAT神奈川芸術劇場ラインアップ詳細(劇場公式サイト)

KAAT神奈川芸術劇場公式サイトトップページ

※この記事に掲載の情報は、2月時点でのものとなります。

おけぴ取材班:mamiko(文、撮影)  監修:おけぴ管理人

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