ミュージカル『モダン・ミリー』中河内雅貴さんインタビュー



 1967年のミュージカル映画『モダン・ミリー』を原作に、楽曲をほぼ一新し舞台化、ブロードウェイ版『モダン・ミリー』が誕生したのは2000年のこと。モダンガールに憧れてニューヨークへやって来た女性ミリー・ディルモントが自らの人生を切り開く姿は時代を超えて多くの共感を得て、トニー賞作品賞ほか5部門を受賞し大ヒット。2020年、そんな勇気と元気を届けるハッピーミュージカル『モダン・ミリー』がシアタークリエを皮切りに上演されます!

 舞台は1920年代のニューヨーク。朝夏まなとさん演じる、恋に仕事に大奮闘する主人公・ミリーと偶然の出会いを繰り返す青年ジミー・スミス役でご出演される中河内雅貴さんにお話を伺いました。



【時代の持つ華やかさにも注目】


──この日は『モダン・ミリー』取材デー、そのせいか中河内さんからハッピーオーラが溢れています!

 ひさびさのハッピーミュージカル、自然とテンションが上がっているのかもしれません(笑)。ミリー役の朝夏まなとさんとは今日が“はじめまして”でしたが、すごくチャーミングで素敵な方。楽しい作品になる予感がしています。ほかの出演者のみなさんの顔ぶれを見ても、この作品にふさわしいメンバーが揃っているんじゃないでしょうか!

──作品の印象は。



 『モダン・ミリー』は1920年代、狂騒の時代と言われるアメリカが社会や経済、文化もノリに乗っていた時代が舞台になっています。僕はこの年代のヘア・スタイルやファッションがとても好きなんです。

──以前ご出演されたミュージカル『スコット&ゼルダ』と同じ時代ですね。

 そうなんです!あの作品では時代の象徴として複数の役を演じ、踊るというとても貴重な経験をさせていただきました。ジャズをベースとしたオールドスタイルのダンスもとても楽しかったですね。独特の華やかさがあります。

──“ジャズ・エイジ”の香り漂うダンスやファッションは『モダン・ミリー』でも楽しみにされている方も多いと思います。

(チラシを見て)衣裳も素敵ですよね。流行は巡ると言うか、あの時代のファッションには今に通じるセンスがあると思います。現代の僕らが見てもおしゃれ!ぜひ、そのあたりもお楽しみいただきたいです!ダンスに関しても、特に女性陣はタップダンスなどの見せ場がたくさんあると思います。僕の役がどのくらい踊るのかはまだわかりませんが(笑)、ダンスナンバーもあったらうれしいです。


【稽古場ではいろんな芝居を試していきたい】


──改めて朝夏まなとさんの印象は。

 まずミリーというキャラクターにピッタリ!朝夏さんのポジティブなエネルギーに周りの人は惹きつけられるんだろうなと感じました。明るく、とてもチャーミングでときにセクシーな魅力のある方です。そんな朝夏さんがミリーをどう演じるのか楽しみです。そのままでも行けそうなくらいですけど(笑)。

──モダンガールに憧れて田舎町から出てきたミリーという女性については。



 僕自身もそうですが、それぞれに事情は違ったとしても地方から出てきた人は特有の覚悟と責任を背負っているところがあります。あと野山で育まれたバイタリティも(笑)。ミリーにもそういう輝きがあったからこそ、僕が演じるジミーの目にもほかの女性とは違う輝きをもつ唯一無二の星に見えて、そこに惹かれていったのかな?とも思えます。

──明確な“何か”があってではなく、偶然の出会いを繰り返すなかで恋が始まるという展開です。

 最初の出会いからして(お互いに)「なんだよ!」という感じで始まる二人です。でも、言葉では言い表せないところで、感情の波長が合ったのではないかと思います。

──ジミーはどんな人物だととらえていますか。公演HPの意気込み動画では「ピッタリ」とのことですが。

 一途で真面目というところとか(笑)。ジミーについて語るのはちょっと難しいところもあって……、作品をご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、ジミーだけでなく物語全体を通していろんな仕掛けのある作品なので。

──お話しできることが限られている役ではありますよね。だからこそ演じる上ではやりがいがあるというか。



 いろんな加減ができる役だと思うんです。最終的には演出家の(小林)香さんのジャッジメントを仰ぐことになりますが、そのために稽古場で僕がいろいろな提案をしていかなくてはならない。それは僕が芝居をどう作るかだけなく、ジミーに関わる人物との関係性の見せ方においても変わってくるので、稽古場で共演者の方としっかりとコミュニケーションをとり、いろんな芝居を試していきたいと思います。それができれば、そこからは香さんがお客様が最大限に楽しめるような選択をして、僕らを導いてくださると思うので。


【東京、ニューヨークという街】


──中河内さんは広島県出身、15歳のときにダンスのために単身長野に移住。その後、ニューヨークへダンス留学され、現在は東京で活動されています。“上京物語”という側面のある本作、中河内さんにとって東京という街はどんな場所ですか。



 東京での生活も今年で15年、長くなりました。でも僕にとって東京は仕事をする場所という認識です。住むなら広島や長野、海や山のある空気がきれいなところのほうが……と思ってしまうんです。子供のころ、森で仕掛けを作ってターザンごっこをやったり、泥団子を作ったり、虫捕りしたり、なにもないから自分で遊びを考案したり、物を作ったりしました。その楽しさや喜びが原体験としてあるので、将来子供ができたら自然豊かな土地で暮らしたいなとか。もちろん都会には都会の良さ、面白さもたくさんありますが、ちょっとモノが溢れすぎているような気もします。

──続いては、この物語の舞台となるニューヨークという街は。



 18歳のときにダンス留学で訪れたニューヨーク。「ここが世界の頂点だ」という印象を受けました。街を歩いていても建物もすれ違う人々もさまざまで、なんて言うか極端にピンキリな感じ。上も果てしなく、下も果てしないような。それでもみんなが自信をもってそこにいる、その姿が印象的で刺激的でした。電車に乗っていると乾電池を売っている人もいれば、歌を歌っている人もいる。日本人はどうしても恥ずかしいとか、人様の前では……と遠慮してしまうけれど、実はそんなのはどうでもいい。「自分がやりたいならやればいい」という精神はすごく素敵だなと思いましたし、そのときの自分を後押ししてくれました。ダンスを勉強しに行ったのですが、そこで一番に学んだことは「人はそれぞれ」ということ。自分らしくていいとニューヨークの街に言われたような留学経験でした。

 実はそれ以来ニューヨークへ行っていないんです。こうして『ウエスト・サイド・ストーリー』と『モダン・ミリー』というニューヨークを舞台にした作品が続いているので、落ち着いたらニューヨークに“ありがとう”を言いに行けたらいいなと思っています。あの頃とは変わっていると思いますが、今の自分が今のニューヨークから受ける刺激もあると思うので。行きたいなぁ~(笑)。

──今、お話にも出た『ウエスト・サイド・ストーリー』について少し伺います。公演を振り返っていかがですか。

 夢のような時間でした。ミュージカル作品のなかで一番やりたかった作品と役が『ウエスト・サイド・ストーリー』のベルナルドだったので。“アメリカ”のシーンで女性陣と一緒に踊れなかったことはちょっと残念でしたが、その分の芝居の掛け合いがしっかりとできました。シャークスはダンスの見せ場はダンスパーティーの“マンボ”がメインで、ジェッツのメンバーのほうが“プロローグ”や“クール”など大変そうでしたね。僕はそんなジェッツを頑張っているなと思って見ていました(笑)。

──仲間への愛が深く、とても色気のあるベルナルドでした。



 そうでしたか?ありがとうございます。色気……だってそういう役だったんですもん(笑)。


【これから】

──この先にはどのような景色を思い描いていらっしゃいますか。

 本当は海外に行きたいのですが、英語を話せないので(笑)。海外作品、とくに海外からきた演出家やクリエイティブチームとの現場では英語ができたらなと感じます。もちろん通訳の方がいらっしゃるので、最終的な表現というところでは言葉の壁を超えることはできます。でも、その過程での意思疎通において自分の思いをストレートに伝えることができればと思うんです。それが今の課題です。でも今から英語を勉強するといっても……、僕は目の前にやるべきことがあるとそれにしか集中できないタイプ、あれもこれも器用にというのは性格的に無理なんです。そうやって生きてきたし、これからもそのままなんだろうな(笑)。



 あと、唐突かもしれませんが人種の壁がなくなるといいなと思っています。海外クリエイターの話を聞いても、まだまだショービジネスの世界でもアジア人は不利だったり、差別が残っている。そこでどう戦っていくかということを考えると、みんながひれ伏すくらいの才能、力をつけないと話にならない。それでも壁は無くならないのが現状です。そしてそれはショービジネスの世界だけでなく、どんな世界でも共通のこと。これって『ウエスト・サイド・ストーリー』の時代、いやもっと以前から変わらない僕らの生涯の課題ですね。だからこそあの作品が現代にも響く。そんな作品との出会いが、こういった感情を芽生えさせるのかもしれません。次の『モダン・ミリー』という作品を通じた出会い、そこから感じることも大切にしたいと思っています。

──作品との出会いを大切にし、その一つひとつに真摯に向き合ってきた中河内さんの人柄が感じられるお話でした。ありがとうございました!


【ちょっと脱線】


──最近、ファンクラブのツアーで台湾へ行かれたということですが。

 すっかりリフレッシュさせていただきました。参加者のなかには10数年来応援してくださっている方も多く、気心の知れた和気あいあいとした雰囲気でした。参加者同士がお互いを気に掛けて、困っている人がいたら助け合うような。ですので、とてもリラックスした状態でいつも応援してくださることへの感謝を伝えつつ、僕自身もプライベートな感覚も持ちながらみんなと一緒に旅ができました。

──ファンのみなさんと素敵な関係が築けているのは、中河内さんが俳優として充実しているからこそですね。とくにここ数年、ミュージカルのみならずストレートプレイでも確かな存在感を示されています。

 ありがとうございます。本当に振り返ってみると大切な、素敵な作品ばかりで、さらにそこで素晴らしい役をいただいていることに心から感謝しています。それは応援してくれるみなさんや事務所のスタッフの支えがあったからです。またプライベートでは結婚もしましたが、悩んだときに相談に乗ってくれ、的確なアドバイスをくれる妻の存在も大きいです。選択するセンスがいいので(笑)。歩んできた道は間違っていないんじゃないかな。素直にそう思えます。

──これからのご活躍も楽しみにしています!まずは『モダン・ミリー』で劇場を思いっきりハッピーにしてください!

ヘアメイク:前田美沙子


【公演情報】
ミュージカル『モダン・ミリー』
2020年4月7日(火)~26日(日)@日比谷・シアタークリエ

<全国ツアースケジュール>
4月29日(水祝)~5月1日(金)@愛知・御園座
5月4日(月祝)~6日(水祝)@大阪・新歌舞伎座
5月13日(水)@大分・iichiko総合文化センター iichikoグランシアタ
5月16日(土)・17日(日)@佐賀・佐賀市文化会館

<スタッフ>
脚本:リチャード・モリス ディック・スキャンラン
新音楽:ジニーン・テソーリ
新歌詞:ディック・スキャンラン
原作/ユニバーサル・ピクチャーズ同名映画脚本:リチャード・モリス
演出/翻訳:小林香

<出演>
ミリー・ディルモント:朝夏まなと
ジミー・スミス:中河内雅貴
ミス・ドロシー・ブラウン:実咲凜音
トレヴァー・グレイドン:廣瀬友祐
マジー・ヴァン・ホスミア:保坂知寿
ミセス・ミアーズ:一路真輝

ミス・フラナリー:入絵加奈子
バン・フー:安倍康律
チン・ホー:小野健斗

千田真司/当銀大輔/楢原じゅんや/堀部佑介/丸山泰右/りんたろう/
小林由佳/島田彩/髙橋千佳/中村百花/花岡麻里名/吉田萌美

<ストーリー>
 1920年代のニューヨーク。「大切なのはロマンスよりも理性!」をモットーに、モダンガールに憧れて田舎町から出てきたミリーは、下宿先で知り合ったドロシーや偶然の出会いを繰り返すジミーと仲良くなったり、玉の輿を狙って就職した会社の社長・グレイドンに猛アプローチをかけたり、世界的歌手マジーのパーティーに参加したりと新しい生活を楽しむ。

 そんな時、ドロシーが行方不明に!下宿先の女主人ミセス・ミアーズが、下宿にきた身寄りのない女性たちを誘拐していると知ったミリーたちは、ドロシー救出作戦を決行!果たしてミリーたちの運命は!?そして、ミリーが見つけた本当に大切なものとは――。

コメント映像も公開されました!

公演HP

おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)監修:おけぴ管理人

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