新国立劇場バレエ団 世界初演・新作バレエ公演『竜宮』~亀の姫と季(とき)の庭~ゲネプロレポート

 御伽草子「浦島太郎」をモチーフにした新国立劇場バレエ団の新作バレエ『竜宮(りゅうぐう)』が開幕です。初日に先立って行われたゲネプロの様子をレポートいたします。

 2月末の『マノン』から公演中止が相次いだ新国立劇場。5か月ぶりの新国立劇場バレエ団公演は子どもも大人も楽しめる楽しく美しい作品です。



「むかし、むかし、浦島が~ 助けた亀に連れられて~」でおなじみの浦島太郎の物語。でも、亀は竜宮城のプリンセスだったという設定や太郎が竜宮城から戻ってきてからの展開など、御伽草子では記憶の中の「浦島太郎」とちょっと違うところもあります。


 演出・振付を手掛けるのは森山開次さん。これまでにも『サーカス』『NINJA』など家族そろって楽しめるダンス作品を生み出してきた森山さんが、新国立劇場バレエ団のダンサーのみなさんと組んで初めてバレエを手掛けることでも話題。公演チラシのデザインなど美術面での才能も豊かな森山さんは、今回、美術・衣裳デザインも担当されています。




太郎&亀の姫(Photo by Isamu Uehara)


 亀のプリンセスと心優しい浦島太郎、そして豪華絢爛な竜宮城で太郎をもてなす愉快な海の仲間たち──、魅力的なキャラクターが織りなす物語に終始ワクワクする舞台。バレエ団に素敵なレパートリーが加わりました。


 このご時世、まずは感染予防。オペラパレスでの公演の再開にあたり、来場前の体調チェックのお願いや来場者カードの記入・提出などの取組みが行われています。詳しくはこちらを。

 ホワイエの椅子も一方向を向き、間隔を広めに開けて配置され、客席も一つ飛ばしでの着席となります。いつもと違う劇場の雰囲気ではありますが、幕が上がれば、そこは『竜宮』の世界。寄せては返す波、そよぐ風、めぐる季節、そしてカチ、カチ、カチ、カチ……止まることのない時。むかしむかしから変わらぬ自然の営みがありました。

 舞台上には玉手箱、プロセニアムアーチは大きな時計の文字盤。そう、これは「時の物語」。


 みなさんご存じの浦島太郎が童にいじめられている亀を助けて…というところから話は始まりますが、そこにウサギと亀の物語が登場するなど随所にユーモアあふれる演出も。キャラクターづくりも丁寧、亀の頭をなでてあげる仕草に優しい人となりが表れる井澤駿さんの太郎、気品の中にチャーミングさのある米沢唯さんのプリンセス、薄衣をまとって舞う姿にうっとり。


 そして太郎とプリンセスは海の中にある竜宮城へ。



フグ接待魚(Photo by Isamu Uehara)



イカ(Photo by Isamu Uehara)



金魚舞妓(Photo by Isamu Uehara)


 昔話でいうところのタイやヒラメの舞い踊りは、タイ女将(寺田亜沙子さん)と金魚舞妓の踊りやタンゴのリズムで踊るイカす3兄弟(原健太さん、小柴富久修さん、趙載範さん)が登場。ワクワクします!ここは観客も竜宮城へ招かれた客になって思いっきり楽しんじゃいましょう!なかでもお気に入りは、キレキレの、いや、キレッキレのサメ用心棒(井澤諒さん、福田圭吾さん)!きっとご覧になったみなさんそれぞれのお気に入りキャラクターが見つかることでしょう。踊りのみならず、美しい旋律、ラテンのリズム、ゲーム音楽にも通じる現代的な音という多様な音楽(松本淳一さん)、美しい世界を舞台上に出現させる映像(ムーチョ村松さん)、衣裳、照明……バレエの魅力が詰まっています。




 楽しい時を過ごしながら心を通わせていく太郎とプリンセス。ゆっくりゆっくりと距離を縮める2人のパ・ド・ドゥから感じるのは控えめロマンティック。


 2幕になると太郎は竜宮城にある「季(とき)の部屋」へ足を踏み入れます。そこで目にするのは日本の四季。春の息吹を感じ、夏は祭、きらめく織姫彦星など季節を表現する踊りが続きますが、ここでのお気に入りはドングリたちの弾むようなステップに合わせて踊る太郎と緋色の着物をまとった秋を司る竜田姫(本島美和さん)の妖艶な舞。
 
 四季の美しさを見て里心がついた太郎は竜宮城を去る決意をします。そんな太郎にプリンセスがもたせるのは、もちろん玉手箱。物語の結末は劇場で味わっていただきたいのですが、よく知っている「浦島太郎」のその先に、得も言われぬ高揚感を感じました。美しい!

 家族そろって楽しめる新作の誕生です。ただし、なかなか手放しで「ぜひ劇場へ!」とは言いにくい状況でもあります。どうかご無理のない範囲でお楽しみいただければと思います。


【一方で……】
 ファンタジックな世界にワクワクドキドキうっとりなひとときを味わう一方で、太郎が時間と引き換えにしたものはなんだったのだろうか。それを思うと時の案内人(貝川鐵夫さん)の存在が大きくなります。顔は白塗り、衣裳は袴に山高帽。観客と物語をつなぐ狂言回しであり、黒衣であり、道化のようなコミカルさもある。でも、ふとした瞬間に見せる動きからメフィストフェレスのような印象も受けるのです。

 何かを得て、何かを失った太郎。そのすべてを受け入れた時、太郎はかつて夢で見た姿へと変貌します。壮大な時間を旅した太郎の再生と再会の物語。祝祭のフィナーレに込められた祈りに万雷の拍手を。「めでたし、めでたし!」

【ゲネプロキャスト】
浦島太郎:井澤駿
プリンセス 亀の姫:米沢唯
時の案内人:貝川鐵夫
フグの接待魚:奥田花純/五月女遥
サメの用心棒:井澤諒/福田圭吾
タイ女将:寺田亜沙子
イカす3兄弟:原健太/小柴富久修/趙載範
織姫と彦星:五月女遥/福田圭吾
竜田姫:本島美和


 各公演主要キャストはこちらをご参照ください。
*やむを得ない事情により出演者等が変更になる場合がございます。
世界初演・新作バレエ公演「竜宮 りゅうぐう」~亀の姫と季ときの庭~
2020年7月24日(金・祝) ~ 7月31日(金) 全8回公演
新国立劇場 オペラパレス
公演HP

写真提供:新国立劇場バレエ団
おけぴ取材班:chiaki(取材・文)監修:おけぴ管理人

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