新国立劇場 2020/2021シーズン バレエオープニング公演『ドン・キホーテ』開幕レポート

 新国立劇場2020/2021シーズンバレエ公演の開幕を飾る『ドン・キホーテ』、初日に先立ち、舞踊部門の新芸術監督である吉田都さんご登壇の会見が行われました。それに続いて公開されたゲネプロの様子とともにレポートいたします!



──コロナ禍で活動できないという厳しい時間を経て、いよいよ新シーズンが開幕します。

 いよいよ始まります。ダンサーたちと9月からリハーサルを重ねる中で強く感じたことは、歴代の芸術監督への感謝の気持ちです。バレエ団としての積み重ねがあるからこそ、リハーサルをしていてもダンサーたちの反応がとても良く、みんなが変化していくさまを見ることは私にとって楽しい時間でした。(新国立劇場舞踊部門初代芸術監督の)島田(廣)先生に始まり、歴代監督が20年以上の時間をかけてバレエ団をここまでに育て上げられた。私はお料理でいうと最後の味付け、いろどりを添えるような、一番いいお仕事をさせていただいているような感覚です。

──オープニングを飾るのは『ドン・キホーテ』です。

 当初予定していた『白鳥の湖』を断念しなければならなかったことは残念でしたが、今はオープニングが『ドン・キホーテ』でよかったと思っています。明るく華やかな、開幕にふさわしい作品を、大原永子前監督の思いがこもったキャスティングで上演する。ゲストを呼ぶことなくバレエ団のダンサーが日替わりで主役を務める。デビューのダンサーもおります。大原前監督の思いを引き継いでお届けします。

──ロシアのアレクセイ・ファジェーチェフ版の『ドン・キホーテ』、吉田監督ご自身も1999年3月に上演された当バレエ団初演にて客演で主役を務められています。



 当時はイギリスに住んでおりましたので、短いリハーサル期間、ハードスケジュールだったことを覚えています。実は、今回、(キトリ役の)米沢唯さんが着ている衣裳は、私が当時着ていたものです。衣裳のタグに私の名前があることを聞いたときは驚きましたが、長く上演されている作品には、そうやって受け継がれていくものがあります。ロイヤルバレエ団でも代々のバレリーナの衣裳が残っていて、私自身も古いタグを見て、「あのバレリーナがこの衣裳を着て舞台に立っていたんだ」と嬉しく思ったことを思い出しました。


──『ドン・キホーテ』のみどころは。


『ドン・キホーテ』ゲネプロより
撮影:鹿摩隆司



『ドン・キホーテ』ゲネプロより
撮影:鹿摩隆司


 ファジェーチェフ版はとてもオーソドックスな演出です。今回、指導をしながら改めて感じたことは、見れば見るほど無駄なく、わかりやすく、そしてバレエの伝統のすべてが入っているということです。

──コロナ禍の中で稽古できない時期もあり、ダンサーの身体のメンテナンスなど、ご苦労されたところもあるかと思います。

 自粛期間中はダンサーにとって厳しい時間でした。お稽古は、最初は少人数で再開し、今はマスクをしながら通常のお稽古をしています。毎日の検温、バーはその都度、リハーサルが終わるとリハーサルルーム全体を消毒というのも欠かさず行っております。いろんなことがこれまでになかったこと、それに対応していかなくてはならない状況ですが、みんな一緒に頑張ってくれてここまでたどり着くことができました。『ドン・キホーテ』上演に当たっては、振付の変更は行っていませんが、密にならないように一幕の人数を減らしたり、キューピットのこどもたちが出ないなど、一部、安全を考慮して演出を変更しております。ファジェーチェフ氏にもリハーサル映像を見ていただきましたが、とてもよくリハーサルができているという返信をいただきました。また、マスクをしてのリハーサルなど上演に向けての取り組みに「感動しました」という言葉をいただきました。

──新たな試みとして有料配信企画があります。

詳細はこちら:バレエ『ドン・キホーテ』 チコちゃんといっしょに課外授業 芸術の日 プレミアム配信

 このような機会を与えていただいた背景には、コロナ禍で劇場が困難に直面していることへのサポートの思いもあるでしょう。バレエ団としても、全国のみなさんに安全にご覧いただけることを嬉しく思います。初の試みですので、本番の収録・配信はこれからとなりますが、これまでに公開したリハーサルの生配信もご好評いただいているようです。(公開された動画は11月30日の配信期間終了(予定)まで何度でもご覧いただけます)

──吉田監督の臨場感あふれる指導を興味深く拝見しました。



 主役のリハーサルという準備段階を公開することについては、指導する立場としてもどうなのかと思うところもありましたが、私ももしほかのプリンシパルのリハーサルなどを見られるとしたら見たいと思うので(笑)。リハーサルをご覧になって、こういう準備をしているんだと関心を持っていただき、今度は劇場に足を運んでみようと思っていただければ嬉しいです。

──指導では「キャラクターを大事に」「ボディランゲージを」ということをおっしゃっていました。

 バレエ団全体について言えることですが、舞台上ではすべて役柄(キャラクター)で過ごして欲しいと強く思っています。立ち方、歩き方、会話の仕方……どのような役なのかによってそれらすべてが変わってきますので、そこを重点的に指導しています。また、リアリスティックな演技も大切ですが、やはり舞台芸術ですのでお客様に伝えるためにはオーバーすぎるくらいにやらなくてはならない部分もあります。一方では自然にという部分も。それは私自身がイギリスで苦労した部分でもあります。


──『ドン・キホーテ』以降のシーズンラインアップについて。詳細はバレエ団HPをご確認ください

 新型コロナウィルスの影響で『白鳥の湖』に続き、「ニューイヤー・バレエ」「吉田都セレクション」の演目変更を決定いたしました。再演でしたらリモートでの指導で上演することも可能だったかもしれませんが、新制作では、先生にいらしていただき、時間をかけて教えていただきたいと思ったからです。日本側の規制は緩和されつつありますが、ヨーロッパでは再び感染拡大している不安定な状況の中で、ただ時間が過ぎていくより、早めにしっかりと進む方向を決めようと、今、決断いたしました。

 つきましては1月の新制作『デュオ・コンチェルタント』に代わり、「DANCE to the Future」より『カンパネラ』(振付:貝川鐵夫)、『Contact』(振付:木下嘉人)、いずれも新国立劇場バレエ団のダンサーによる2作品を上演いたします。

 もうひと作品は深川秀夫先生の『ソワレ・ド・バレエ』を、今年9月2日にお亡くなりになった先生への追悼の意をこめて上演します。私自身は先生と面識はないのですが、60年、70年代に国際バレエコンクールで入賞され、日本のバレエ界に勇気と希望を与えてくださり、その後、ヨーロッパに渡りご活躍された日本バレエ界の先駆者です。先生の『ソワレ・ド・バレエ』、新国立劇場バレエ団のために手を加えてくださったパ・ド・ドゥを上演いたします。(『パキータ』『ペンギン・カフェ』は予定通り上演)

 2月「吉田都セレクション」、こちらも2年かけて準備し思い入れがある作品でしたが上演が難しくなりましたので、今シーズン、札幌公演での上演が予定されておりましたが、東京での上演の機会がなかった『眠れる森の美女』(振付:ウエイン・イーグリング <マリウス・プティパ原振付による> 音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)を上演します。

──また、12月の『くるみ割り人形』でもオンライン配信が予定されています。



 クリスマスと言えば『くるみ割り人形』。劇場も感染予防対策をとっておりますので、ご家族で劇場にもお越しいただきたいのですが、おうちでもお楽しみいただけると嬉しいです。


【記者からの質問】

──新芸術監督としての展望、バレエ団の強みなど。

 ダンサーを取り巻く環境の改善は時間がかかってもあきらめずに取り組んでいきたいと思います。バレエ団としては、まずは基礎の大切さを今一度見直すこと。お稽古から身体の使い方、踊り方の研究をしてほしい。あとは表現の部分です。今回もすごく──、みなさんがご覧いただいてどう思われるかはまだわかりませんが(笑)、私は最初に見た時よりずいぶん変わっていると感じます。それがもっと身につけば自然にできてくるでしょう。それらの課題にダンサーたちと一緒に取り組んでいきたいと思います。

 バレエ団の強みを象徴するのはコール・ド・バレエの美しさ。このバレエ団に合ったダンサーを選んできたこともその理由だと思いますが、個々のダンサーのレベルも高く、こちらの指導に対してすぐに改善する反応良さもあります。でも、そこからもう一歩先へ行きたいと思っています。今回、『白鳥の湖』が延期になってしまいましたが、今のダンサーたちの体幹では、あの重い衣裳で踊れなかったのではないか。ここから一年かけて、身体を強化していく必要性も感じています。


──歴史へのリスペクトとダンサーへの期待に溢れる会見。歴代監督が築かれた基礎の上に、世界の第一線でご活躍されてきた吉田都さんがどんなスパイスを加えるのか、これから始まるシーズンが非常に楽しみです。




【ゲネプロレポート】

生きる喜び、悦び、歓びにあふれた舞台!この時を待っていた!



『ドン・キホーテ』ゲネプロより
撮影:鹿摩隆司



『ドン・キホーテ』ゲネプロより
撮影:鹿摩隆司


 『ドン・キホーテ』ゲネプロはキトリ:柴山紗帆さん、バジル:中家正博さんの組み合わせ。こんな柴山さん見たことない!ちょっと強気な宿屋の看板娘キトリをイキイキと演じています。ひと回りもふた回りも大きく感じるほど、伸びやかでダイナミックな踊りで舞台を盛り上げていきます。中家さんのバジルに気のない素振りを見せたかと思うと、他の女の子と楽しげなバジルを見て焼きもちを焼いたり……駆け引きの具合も絶妙です。それでもやっぱり二人はお似合いの恋人同士、パ・ド・ドゥは息ぴったり!

 中家さんは恵まれた体躯をいかしたしなやかな踊りはもちろんのこと、抜群のコメディセンスで、お調子者で人気者のバジルを軽妙に演じます。二幕の狂言部分、周りの目を盗んでキトリにアピールするところでも自然な笑いを誘い、このバジルならこんなこともやりかねないなという説得力(笑)。パートナリングもバッチリ!飛び込むキトリをバジルがしっかりとキャッチ。気持ちがいい!

 そんな二人の恋物語の舞台となるバルセロナの街の熱気を作り上げる人々の存在感にも目を見張るものが!一人ひとりが役を生きている!その中でも、キトリに思いを寄せるお金持ちのガマーシュ(小柴富久修さん)はキトリへのLOVEアピールがスゴイ、いまいちなステップなど抜け加減が最高で一周回って愛しい。一幕、キトリを理想の女性ドゥルシネア姫だと勘違いしたドン・キホーテ(趙 載範さん)、ガマーシュ、バジルとキトリと2人の友人が踊るシーンでは、お義理で踊るバジル、熱烈アピールのガマーシュ、ひとり別世界のキホーテ、それぞれに対するキトリのあしらい、反応がとっても楽しい!

 そして、おおっ!となったのは、濃いめの仕上がり井澤駿さんの花形闘牛士エスパーダ!たっぷりとした踊りとドヤ感、もう、腰から砕けます。木村優里さんの街の踊り子とのシーンは見ていて本当に幸せ。二幕でもその存在感を見せつけ、カスタネットの踊り(朝枝尚子さん。こちらがまたスピンオフで彼女の物語が見たくなるくらい独特のドラマをまとっている!)の女とメルセデス(益田裕子さん)のにらみ合い(笑)にも納得の伊達男ぶりです。

 こうして挙げていくとキリがないほど、それぞれのキャラクターが立っているのです。さらに冨田実里さんによる指揮(管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団)もキレキレで物語に勢いをつけます。

 マスクの下では終始ニヤニヤ、それでいてラストの盛り上がりにはなぜか涙が……この高揚感を欲していた自分に気づいたひと時でした。舞台に、劇場に、生きる(=踊る)喜びがあふれる『ドン・キホーテ』に心が満たされました。


【おまけ】
 ゲネプロに続き、キトリ:米沢唯さん、バジル:井澤駿さんによる初日も鑑賞しましたが、こちらも圧巻!米沢キトリここにありでございます。また、前日に強烈なエスパーダを見せた井澤さんのバジルもイイ!なにか突き抜けた感じです。情熱的な踊りに加えて、なんでもない時の、ただ見つめ合うとか語り合う二人の姿から伝わる関係性に至るまでキトリとバジルです。奥村康祐さんの投げキッス連発のガマーシュも福田圭吾さんのサンチョ・パンサの上手さも、木下嘉人さんのちょっと大人風味のエスパーダも……またしても書ききれない!

 でも、これだけは。吉田都新芸術監督のファーストシーズン開幕!舞台上も客席もこの日を迎えたことへの喜び、そしてエネルギーに満ち溢れていました。今後の公演にも期待膨らむシーズンの幕開けです!!

【公演情報】
新国立劇場『ドン・キホーテ』@オペラパレス
2020年10月23日(金)19:00
2020年10月24日(土)13:30
2020年10月24日(土)19:00
2020年10月25日(日)14:00
※終了しました
2020年10月31日(土)13:00 
2020年10月31日(土)18:30 
2020年11月1日(日)14:00

音楽:レオン・ミンクス
振付:マリウス・プティパ/アレクサンドル・ゴルスキー
改訂振付:アレクセイ・ファジェーチェフ
指揮:冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

キャストはこちらのページにてご確認ください

ご来場に際してはこちら(新国立劇場からのお知らせ)をご一読ください。

舞台写真提供:新国立劇場
おけぴ取材班:chiaki(取材・文、会見写真撮影)監修:おけぴ管理人

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