世田谷パブリックシアター芸術監督企画・現代能楽集シリーズの記念すべき第10弾、長田育恵さん・瀬戸山美咲さんを作/演出に迎えた「現代能楽集X『幸福論』~能「道成寺」「隅田川」より」がシアタートラムにて開幕!
撮影:細野晋司
左から:明星真由美 相葉裕樹 高橋和也
撮影:細野晋司
左から:瀬奈じゅん 鷲尾真知子 清水くるみ
初日を終えた作家・演出家・出演者のコメント、早速ご観劇されたおけぴ会員のみなさんからお寄せいただいた感想を舞台写真と共にご紹介いたします。
本シリーズは野村萬斎芸術監督が企画・監修を務め、芸術監督方針である「地域性、同時代性、普遍性」「伝統演劇と現代演劇の融合」「レパートリーの創造」という三つの柱にもとづき、古典の知恵と洗練を現代に還元し、現在の舞台創造に活かしていきたいという考えから、生まれたシリーズです。今回は、「道成寺」「隅田川」を題材に、現代に生きる人々の幸福とは何なのか──ずばり『幸福論』を展開します。
【初日を終えた心境~作家・演出家編~】
撮影:細野晋司
左から:明星真由美 相葉裕樹 高橋和也
撮影:細野晋司
左から:清水くるみ 瀬奈じゅん
<長田育恵:作(弐「隅田川」)>開幕いたしました。
炎のごとく、内からたぎるような「道成寺」。
水のごとく、深度を増していく「隅田川」。
能の物語を借りて描き出す 2020 年の現在地は、生々しくも、どこか目に見えないものを信じられるような不思議な力に満ちています。
この企画だからこその劇空間、ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。
今、ご自身を慈しみ、ここから次の一歩を踏み出すための静かな力となりましたら幸いです。
<瀬戸山美咲:作(壱「道成寺」)・演出>初日を終えて、さまざまな時代、さまざまな局面で人の想いを鎮めてきた能の持つ力を改めて感じています。今年の終わりにふさわしい作品になっていると思います。たいへんな困難の中、劇場に足をお運びいただく皆様に本当に感謝します。 何もない空間に世界を立ち上げていく6人の俳優たちの姿を是非観にいらしてください。
【感想ご紹介】
~公演をご覧になったみなさんの感想です~
撮影:細野晋司
相葉裕樹
撮影:細野晋司
清水くるみ
◆炎と水というモチーフがしっかりと効いていて、シンプルなセットと繊細な照明に彩られていて、本当に美しい舞台でした。テーマはずしんと重いけれど、後味は悪くない。お友達に勧めたくなる作品。
◆題名とあらすじから難しい話になるのかと思いましたがとてもわかりやすい演劇になっていました。第一部は笑いも多くその滑稽さからあらためて幸福とは?と考えさせられるものでした。第二部では話が進むにつれてそのリアルさが怖くて哀しかったですが、息を詰めて見入ってしまいました。
◆なんといっても舞台と客席が近く、どの席からも観やすいです。目の前で繰り広げられる人間心理に切り込んだ2作品、贅沢なひとときでした。
◆現代社会の問題をグサグサ突き刺され、生きるとは、愛とは、幸せとは……とても考えさせられる作品でした。正直、辛いところも多いですが、いま上演されることに意味を感じますし、敬意を表します。点と点が繋がる瞬間が面白い物語でした。
撮影:細野晋司
左から:鷲尾真知子 明星真由美
撮影:細野晋司
左から:瀬奈じゅん 清水くるみ
◆良い脚本、良い役者、美しくシンプルな演出。劇場に足を運ぶ価値があると思いました。現代能楽集は気になっていたのになぜか見る機会がなかったのですが、今回は見に行けて良かったです。
◆衝撃的な場面から演劇が始まる。その意味は次第に明らかにされていくが、その進行の中で徐々に幸福の意味を投げかけてくる。能の現代的解釈といえる古典をベースにした前衛的な演劇です。謎解き的な進行は、まるで考察のレーザービームのような煌めきを放ち、そのスリルがたまらなく心地良いです。幸福を突き詰め不幸に辿り着き、不幸を除去して幸福に辿り着く。とても巧妙な幸福論は奥の深い演劇でした。
◆普段はミュージカル観劇が多いですが、こういう芝居を見るとストレートプレイもたくさん見たくなります。
【初日を終えた心境~6人の俳優編~】
撮影:細野晋司
左から:瀬奈じゅん 高橋和也
撮影:細野晋司
上:相葉裕樹 下:清水くるみ
<瀬奈じゅんさん>本日、初日を迎えました。
舞台は、芝居は、お客様と共に作り上げていくものだと、改めて実感した初日です…。
足をお運びいただき、誠にありがとうございました。
千秋楽までもっともっと深めて参ります。
シアタートラムでお待ちしています!!
<相葉裕樹さん>無事に幸福論の初日が開きホッとしています。
約半年ぶりにお客様と同じ空間、同じ時間を共有する事ができとても幸せでした。
演じていく中で日ごとに感情の揺れ方や感覚が変化していくと思います。
千秋楽まで「幸せとは何か?」「生きるとは何か?」「愛情とは何か?」
あらゆる感情を探し続けたいと思います。
是非また劇場にお越し下さい。
<清水くるみ>もうすでに色々な意見をいただいていて、改めて演劇ってナマモノだなと感じています。
千秋楽まで変わり続ける舞台でありたいし、その中でたくさん吸収していきたいです。正解があるのか分からない、人生みたいな道のりを、3 週間、もがき進んでいきたいと思っています。
感染対策ばっちりの劇場で、お待ちしております!
撮影:細野晋司
左から:鷲尾真知子 明星真由美
撮影:細野晋司
左から:高橋和也 瀬奈じゅん
<明星真由美さん>どこか皆である目指したゴールに到達できたような達成感のある良い初日だったように思います。でも特に『道成寺』は旅の入り口に過ぎないと。最初この台本を読んだ時、作品の世界観を表現する方法がいく通りもある気がしました。それはお客様が「どんな視点で我々登場人物を見るか」によってストーリーが変化する可能性があるなと。とてもチャレンジングですが、お客さんの呼吸を感じながら演じられたらと思っています。
『隅田川』は、誰かの傷と、誰かの傷が出会うことによって、浄化が始まる物語だと私は解釈しています。それって、全ての出会いにも言える事で、この世界が回り続けている理由みたいなものですよね。今日の1ステージと、来てくださったお客様との『交換』は1度きりのもので、映像配信では成されないものだと私は信じています。最後まで奇跡が起きますように。
<高橋和也さん>稽古期間も劇場入りしてからも常に緊張を強いられる状況の中、奇跡のように幕が開いた。いつもなら皆で乾杯し、喜びを分かち合う時だが今はそれも無い。芝居をする為だけに僕等は集まり、そしてそれぞれうちに帰る。
それでも、この作品に出演できて本当に良かったと心から思います。尊い経験をさせて頂きました。ありがとう!
<鷲尾真知子さん>今年の二月に世田谷パブリックシアターにて出演した「メアリ・スチュアート」の後、世の中が一変しました。今日シアタートラムの舞台に立てた事を幸せに感じています。
行動の不自由を感じている中、劇場に足を運んでくださったお客様に感謝申し上げます。
スタッフキャストそしてお客様と一体になり幕があきました初日の高揚感は一入(ひとしお)でした。
明日から「すべての事に」甘える事なく、緊張感をもって、千秋楽まで舞台を務めます。
◆シンプルな舞台だからこそ、人間がはっきりと浮かび上がる。
光に映し出されるのは、人間が歩んできた過去から伸びているような気さえする長く大きく伸びた影。古より続く人間の業、燃えたぎる情念、それを浄化し、鎮魂の祈りのような後味を残す、2作上演の魅力も強く感じました。
公演は12月20日まで、シアタートラムにて!