作・演出マキノノゾミ『東京原子核クラブ』開幕レポート



 昭和七年、風変わりな住人が集う下宿屋「平和館」を舞台に繰り広げられる青春群像劇。東京国際フォーラムのこけら落としとして初演され、読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞したマキノノゾミさんの代表作『東京原子核クラブ』。マキノさんご自身の演出で本多劇場にて開幕!(一部公演の中止、開演時間の変更、及び昼公演の追加(14日14時)を行っております)





 実在の人物をモデルにした本作、理化学研究所に勤務する若き原子物理学者の友田(モデルはノーベル賞物理学者の朝永振一郎博士)を演じるのは水田航生さん。マキノさん曰く「水田さんの品があって明るく、太陽の光にむかっていくイメージが友田にぴったり」とのこと! ほかにも登場人物同様に個性豊かな俳優が集いました。神出鬼没で飛び抜けて風変わりな箕面富佐子には霧矢大夢さん、平和館大家の親子は小須田康人さん&平体まひろさん、ピアノ弾き早坂に加藤虎ノ介さん、海軍中尉・狩野に久保田秀敏さん、理化学研究所の西田には浅野雅博さん!

 公演を観劇されたおけぴ会員のみなさんから熱い感想が届いております! 舞台写真とあわせてご紹介いたします。





◆群像劇の神髄とも言うべき舞台に引きこまれた3時間だった。
 登場人物一人一人が全て舞台上できらめくシーンがあり、その人物の人生を更に想像してしまうような、そんな群像劇の醍醐味を味わい、劇場に足を運ぶ価値を実感した。舞台装置も実に機能的で美しく、衣装も、さぞやバックステージのスタッフは神経ピリピリの大忙しであったろうと推測できるほどとっかえひっかえの、役とシーンにフィットしたものばかり。久しぶりに実に(気持ち)前のめりの観劇体験となった。

◆マキノノゾミの代表作だが、実は観るのは初めての作品。
 優れた丁寧な戯曲を、しっかりした役者陣がしっかり演じていて、気持ちよく帰れる作品だった。朝永振一郎(劇中は友田)が理化学研究所の仁科芳雄(劇中は西田)の研究室に入る昭和7年から、戦争を経た21年までの、友田が住んだ下宿「平和館」での出来事を描く群像劇。中心は友田だが、それぞれの役にそれなりの物語があり、丁寧に描かれているのが観ていて楽しい。

◆初演を観ています。開演前から舞台上の下宿のセットを見て、そうだこういう世界観だった…と一気に懐かしくなりました。マキノさんの脚本が素晴らしく、登場人物が魅力的に描かれています。戦争という決して明るくない時代に、悲しい出来事も少なからず起こるにもかかわらず、ほんのりあたたかな気持ちで劇場をあとに出来ました。新年初の観劇がこの作品で良かったです。

◆演技・音響・照明・舞台美術と、演出の手法が使い尽くされた、脚本家と演出家が同一であるが故の一体感と一貫性が感じられる、年に数本しかない素晴らしい芝居でした。さすがはベテランのマキノノゾミ氏。

◆戦争を新しい視点で観られる舞台です。何が正しくて何が悪いかはすべてが終わってからしか分からない、でも悪いことが悪かったわけではない、矛盾というか真理。人間が生きるってこういうこと、すごく涙が出ました。




◆第1幕ではバカらしい出来事ばかり描いているが、時折出てくる戦争の色が、第2幕では軸となるというあたり、マキノの筆が冴える。役者陣は若い人が多いが、それぞれしっかりしたものを持っていて、しっかり演じているのも好感。古くから観ている小須田のアンカー的ポジションや宝塚出身の霧矢の華やかさなど、観るべきところはいっぱいある気がする。

◆音楽も、ピアノ弾きの下宿人のおかげで、ショパンの美しい調べが扉の向こうで奏でられ、爆撃の後は、鍵盤がやられて出ない音がある「別れの曲」。それを弾くのが博打中毒の破天荒なおっちゃんというのもキャラクター造形とセリフの達者なマキノ氏の作品ならでは。観ない手は無い!という舞台。緊急事態宣言で、上演日・開演時刻の変更があるので、事前チェックをして、劇場に足を運ばれたし。

◆個性豊かな下宿人たちの掛け合いが楽しく、何気ないやりとりからも関係性が読み取れて、たった2時間半の上演時間なのに大河ドラマのようなボリューム感があります。使い込まれた色合いの調度品など舞台装置も美しく、その場が皆にとっての楽園だったのだなと感じました。

◆重いテーマを含んだ作品ですが、ホームドラマのような穏やかな明るい雰囲気があり、存分に楽しめました。才能に恵まれた特異な男の話としても、群集劇としても魅力のある舞台です。





◆とてもすばらしい舞台でした。一幕は昭和初期の下宿屋での楽しく明るい場面の数々、二幕は一転、戦争の足音が近づく不穏な雰囲気。音楽も素敵で役者さんたちもみなすばらしかったです。30年以上前に書かれた戯曲とは思えません、ぜひ観てください。

◆戦時下における科学と倫理のせめぎ合い、研究することで大切なものを守ること、人の弱さや強さなど、答えの出ない重いテーマをユーモアたっぷりの作品でした。霧矢さん演じる富佐子さんの七変化が、男装の麗人含め宝塚時代のきりやんファンには是非観ていただきたいです。お歌もダンスもほんの少しでさすがと感じることが出来ます。そしてそれがあらゆる場面で軽みや救いを提供していました。

◆個性豊かな下宿人たち。昭和初期はみんながキラキラしていたのに、戦争に入りそれぞれが生きること、自分がすべきことを模索して生きる様子は見ていて苦しかったけれど、力強さも感じられました。平和館のセットがとっても素敵で、階段の昇り降りを見るだけでもウキウキしました。

◆どこか懐かしさを感じます。賄い付きのアパート、友達でもなんでもない他人ですが、そこの部屋に住んでいる人の様子をなんとなく知っているような関係、大家さんがいて、気を遣っていないようで、でも、それなりに距離感もわきまえていて、いろいろな職業の人たちの生活感、あたたかみがあるんです。平和な時には各々で構わないことなのに悲惨なことに巻き込まれてしまった時には、それぞれの立場からどうなんだという結果が大きく変わってしまう。残酷だったり苦しい場面なしに穏やかに、それでいてしっかりと戦争に対するメッセージを伝えてくれる舞台です。

◆出演者の皆さん実力派で、脚本や演出もしっかりしていて、とても良い作品でした。笑いどころもたくさんありつつ、そういった和やかな日常の風景との対比から、戦争の無情さが伝わってくる構成の流れも見事で、原子爆弾研究へ向かう研究者たちの使命や葛藤も描かれていて、見て良かったと心から思います。このご時世で観劇を迷われている方がいたら、千穐楽のライブ配信を是非見ていただきたいです。





◆登場人物が皆個性的で、かつ愛すべきキャラ。最初頼りなくみえた主人公も時と共に成長して行くのがリアル。戦争に向かう時代なので、怒りや悲しみもありますが、間の良い笑いに満ちたお芝居でした。観劇して本当に良かったです。観劇に迷っている方にはぜひオススメします。

◆3時間近くの見応えあるステージ。ガンガン笑いをとっていくシーンもあると思いきや、科学者の苦悩や心の闇に関する深い考察も。

◆題名を見て、何やら重い話かなと思いましたが全然そんなことなくてめっちゃコメディでした。とはいえ考えさせられるシーンもたくさんあってホロリとするシーンも。とにかく会話が面白くてさすがマキノノゾミ! 霧矢大夢さんのスーツ姿は必見です。

◆東京昭和・戦前の本郷が舞台。心温まるコメディーです。ですが、戦争が人を変えてしまう一方、周りの人を守る為に、やるしかないとジレンマに陥る人、戦争の時代でも力強く生き抜く人、色々な物語が観られて面白かったです。主演・友田役の水田さんが爽やかで、狩野役の久保田さんがイケメン過ぎて良かったです。






公演に関するご案内・注意事項はこちらから
【公演情報】
『東京原子核クラブ』
2021年1月10日(日)~17日(日)@本多劇場
作・演出:マキノノゾミ

<出演>
水田航生/霧矢大夢
久保田秀敏/加藤虎ノ介/石田佳央/上川路啓志
荻野祐輔/平体まひろ/大村わたる/石川湖太朗
小須田康人/浅野雅博

<あらすじ(チラシより)>
昭和七年、風変わりな住人が集う下宿屋「平和館」。
理化学研究所で働く若き物理学者の友田は
周囲のレベルの高さに自信を失くし故郷に帰ろうとしていた。
そこに、同僚の武山が朗報を持ってくる。
海軍中尉・狩野は理研の研究で
新型爆弾がつくれるのではないかと思いつき・・・。
大家と娘、ピアノ弾きや新劇青年、
謎の女に野球に熱中する東大生・・・・・・
平和館に集う愚かしくも愛おしい人々を描いた青春群像劇です。

公演HPはこちら

舞台写真 撮影:交泰、林亮太
感想寄稿:おけぴ会員のみなさん

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