フルオーディションで選ばれた16名の出演者が
80余役を演じ分け、三好十郎の超大作に挑む!陽月 華 伊達 暁 青山 勝 浅野令子
日本の多くの人々に愛され続ける名作をお届けする「人を思うちから」。そのシリーズの最初にお贈りするのは、三好十郎による大作『斬られの仙太』です。小川絵梨子芸術監督がその就任とともに打ち出した支柱の一つ、すべての出演者をオーディションで決定するフルオーディション企画の第三弾でもあります。演出を担うのは、『オレステイア』での壮大かつ大胆な演出の記憶も新しい演出家・上村聡史。19年11月より応募を開始、20年1月から2月にかけてオーディションを開催、総勢80にも上る役を16名の出演者で演じ分けます。
【あらすじ】
時は江戸末期から明治にかけて。常陸の国の水呑み百姓・仙太郎はあまりの凶作に年貢の減免と取立の猶予をお上に訴えるが、この地の有力者・北条の喜平はそれを許さず、彼を村から追い出してしまう。復讐を誓った仙太は江戸で剣法を学び、博徒となって故郷へと戻る道すがら、ひょんなことからとある茶屋で頼まれごとをされ、それをきっかけに水戸天狗党絡みの騒動へと巻き込まれていく。仙太の剣の腕と男気を目の当たりにした党から是非同士にと勧誘を受けた仙太は、党の斬り込み隊長として次第にその名を高めて行く......。
【演出:上村聡史さんのコメント】
小川芸術監督の第一シーズンから始まったフルオーディション企画は、役を自らが選び創作現場へと赴いていく、という表現者の根幹をとても大切にされている企画で、大変魅力的に感じていました。その企画の第3弾目のお話をいただき、私自身も非常に意欲が湧いています。題材は任せていただけるとのことだったので、敬愛してやまない三好十郎氏の、昭和九年(1934年)、氏が32歳の時に発表・初演された『斬られの仙太』を選びました。
時は江戸末期から明治にかけて、百姓一揆や「ええじゃないか」をはじめとする時代の揺れ動きを、“天狗党の乱”を軸に展開していきます。“変革”に立ち向かう熱量、その熱量から生じる善と悪、そして土と共に生きる生活の意味を丁寧に表現することで、今の時代にも通ずる“育む”ことによって日々を生きる市井の生活感と、官僚的価値観に基づき“差別化”することで社会を支配しようとする政治性との間に生ずる葛藤を、今一度、演劇の醍醐味として伝えることができればと思います。
なかなか上演されることの少ない本作は、百姓、町民、役人、武士、博徒、芸者と約80近くの人物が登場しますが、今回は出演者たちが、「物語」を仕立てていくという演出プランに基づき、出演者全員が黒子を兼ねた座組形式の演出で上演したいと思います。加えて、殺陣シーンも多々あり、方言もあり、何よりも膨大な台詞量といった重量級の作品になるかと思いますが、三好十郎が紡いだ言葉と真摯に向き合うこと、役を演じきることで生ずる醍醐味とで、演劇が大衆に語りかける圧倒的な力を、こんな時代だからこそ、創造していきたいと思います。
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました