ミュージカル『アリージャンス ~忠誠~』日本版初演開幕!



実体験をもとにした、ある日系アメリカ人家族の物語。
ミュージカル『アリージャンス ~忠誠~』』、日本版初演の幕が上がりました!






2001年12月7日、退役軍人サム・キムラのもとに一人の女性が訪ねてくる。

遺言執行人と名乗る彼女は、サムの姉ケイが亡くなり、サムに封筒を遺したことを告げる。
50年間会うことのなかった姉、そして過去の記憶が蘇る──。




1941年、キムラ家の長男サム(サミー)が帰郷し、姉のケイや父のタツオ、おじいちゃんとの再会を喜ぶ。この日は、日系人コミュニティでの七夕のお祭り、舞台はオリエンタルなダンスシーンへ。

しかし時代は、12月7日(ハワイ時間)の真珠湾攻撃の勃発、米国の宣戦布告により第二次世界大戦に突入。翌年8月、一家は日系人であるというだけで自宅を追われ強制収容所へ、海を渡りやってきたアメリカの地で、必死の思いで築いてきた財産も二束三文で買いたたかれる。人々が口にするのは「なぜ?どうして?」。そうして送られた強制収容所で多くの理不尽な出来事が彼らを襲う。それでもなんとか前向きに生きようとする人々。



日系人は敵性外国人のレッテルを貼られ、ある日、アメリカへの忠誠を問う忠誠登録質問票(Loyalty Questionnaire)への回答を求められる。それを機に、家族の中で考え方の違いが浮き彫りになる。それぞれがなにに忠誠を誓うか。どう行動するか。


【役を生き、物語を届ける】

濱田めぐみさん、海宝直人さんがインタビュー(稽古開始前)でお話されていた通り、日本で、日本語で上演することに、独特の難しさのある本作。確かに作る側だけでなく、見る方にとっても距離感が難しそうだという印象がありました。それぞれに感じ方があるでしょうが、個人的には、その心配は杞憂だったとお伝えしたいです。

一部、英語を交えながら会話が進むのですが、必要なところはさり気なく補足されるような上演台本(上演台本・訳詞:高橋知伽江さん)、そして高い技術を持った俳優たちの芝居・歌でしっかりと物語が伝わります。



物語の軸となるキムラ家の姉弟、ケイとサミーを演じるのは濱田めぐみさんと海宝直人さん。初日前会見で父タツオ役の渡辺徹さんもおっしゃっていた通り、ミュージカルの第一線で活躍されているお二人にはキャスト発表当初から期待していましたが、軽く超えてくる!! 濱田さんの心にしみてくる歌声、ケイの一人の人間としての目覚め、立ち上がる力強さ、愛する喜び、別れの辛さ…その一つひとつが濱田さんの肉体を通して表現される。歌が上手いとか、そんな単純なことだけではない、ケイというキャラクターを生き抜きます!



海宝さんも見るたびに驚かされる完成度を見せつけてくるのですが、今回はその身体づくりが印象的でした。役柄によって絞ったり、大きくしたりされているのは以前から伺っていましたが、それで言うと今回は腕を組んだ時の上腕のたくましさ、胸板の厚さなどかなり筋肉を大きくしています。それは見た目をそれらしくするという表層的なところにとどまらず、大きな肉体がサミーの自尊心と繋がるのです。男とは、サミーのアイデンティティを体現するひとつとして──、そんな役作りへの妥協のない姿勢をうかがい知ることができます。歌や芝居については、もう、はい、とくに申し上げるまでもなくイイです! 看護師のハナにぐいぐい積極的にアプローチするところもサミーのキャラクターを象徴していますね。



これもまた父と息子のシーン
一瞬にして涙があふれてきました

キムラ家の父タツオは渡辺徹さん。今回、初ミュージカルということですが、トップアイドル時代に培った歌唱力を久々に大舞台で披露!(←囲み取材でのご本人談) というのは冗談で、しっかりと芝居歌を響かせます。異国の地で、一代で成した財を取り上げられる理不尽、家族の分断、2つの国への思いなど複雑な心の内を、多くを語らず行動で見せる。おじいちゃんとともに市民権も与えられない日系一世の置かれていた立場。どうか子の世代には少しでも苦労のないように、そんな深い愛情がときに子には重荷になることもあったのか。



上條恒彦さんが演じるカイトおじいちゃんは、もうそこにいるだけで愛おしく尊い存在。英語もわからず、アメリカで暮らすなかでどんな苦労があったのか、日本とアメリカが戦争をすることへの思い、笑顔のおじいちゃんが歩んできた人生。また、上條さんは現代パート(2001年)のサミーも演じます。こちらは若き日の頑ななところが引き継がれる、サミーおじいちゃんです。でも、やはりその奥には。




キムラ家が強制収容所で出会う人々。ケイに新しい世界を見せるのは中河内雅貴さん演じるフランキー・スズキ。日本語学校を経営していたために逮捕された両親のこともあり、強制収容と徴兵の不当性を訴え、日系人の人権を求める運動するフランキー。都会派のカッコよさとサミーとはまた違う方向に向かって突き進む“熱さ”も中河内さんにピッタリ。ダンスパーティーでは、思いっきり“華”を見せつける!!




サミーと互いに惹かれ合う白人看護師ハナには小南満佑子さん。いわゆる禁じられた恋なのですが、それを若さでひょいと超えるような二人(それでもなお、障壁はあるのですが)。気になる存在と自覚しつつも素直にならずに駆け引きするポップさ、それでもやっぱり隠せない恋心。小南さんが表情豊かに演じます。キュートな笑顔から、たくましさまで、ハナが見せる変化にもご注目ください。





この方が作品をギュギュっと締める!日系人の代表、日系アメリカ人市民同盟(JACL)事務局長マイク・マサオカ、今井朋彦さんです。日系人の社会的地位向上のためアメリカ軍と交渉するも、その結果は必ずしも思うようなものではなく。自らの評価は「歴史が証明する」という人物を説得力十分に演じます。そして、マサオカ兄弟の存在も印象的でした。




オリジナルの演出も手掛けたスタフォード・アリマさんと豊田めぐみさんの共同演出で誕生した日本版初演。おじいちゃん役でご出演もされたジョージ・タケイさんの実体験がもとになったことなど、「思い」が詰まり、それが魅力となったオリジナル版。そこに、豊田さんをはじめとした日本スタッフによる客観性が加わることで「作品」として育てられ、届けられた日本版。ミュージカル『アリージャンス』、完成度高いですよ!!



安心・安全な上演にむけたホリプロの取り組み 及びお客様へのご協力のお願い
【公演情報】
ミュージカル『アリージャンス~忠誠~』
2021年3月12日(金)~3月28日(日)@東京国際フォーラム ホールC
2021年4月17日(土)~18日(日)@愛知県芸術劇場大ホール
2021年4月23日(金)~25日(日)@梅田芸術劇場メインホール

<スタッフ>
脚本:マーク・アサイト、ジェイ・クオ、ロレンゾ・シオン
作詞・作曲:ジェイ・クオ

演出:スタフォード・アリマ
共同演出:豊田めぐみ
上演台本・訳詞:高橋知伽江
翻訳:渋谷真紀子
音楽監督:江草啓太 振付:前田清実 藤山すみれ
美術:松井るみ 衣裳:前田文子 照明:中川隆一

<キャスト>
濱田めぐみ 海宝直人
中河内雅貴 小南満佑子
上條恒彦 今井朋彦
渡辺 徹

照井裕隆 西野 誠 松原剛志 俵 和也 村井成仁 大音智海 常川藍里
河合篤子 彩橋みゆ 小島亜莉沙 石井亜早実 髙橋莉瑚
スウィング:高木裕和

公演HPはこちらから

おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人

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