新国立劇場 演劇『キネマの天地』開幕!感想と舞台写真で綴る観劇レポート



小川絵梨子、井上ひさし戯曲初演出!井上流推理喜劇で極上の笑いを。

 日本で親しまれ続けてきた名作をお届けするシリーズ「人を思うちから」第三弾は、映画人を描いた傑作喜劇『キネマの天地』をおおくりします。

 本作は映画『キネマの天地』(1986年公開、監督山田洋次、井上ひさしも作者の一人として参加)の続編として、井上ひさし自身の書き下ろし・演出で同年、日生劇場にて初演されました。

 映画出演のために集められた四人の女優達が巻き込まれる、殺人事件をめぐる井上流推理喜劇。どこまでが真実でどこからが虚構なのか...。笑いをあちこちに散りばめながら、人間を魅了してやまない「舞台」の世界を描きます。7名の実力派俳優たちによる演劇賛歌の物語。小川絵梨子が井上ひさし作品に初めて挑みます



右から) 鈴木 杏、那須佐代子、高橋惠子、趣里 (撮影:細野晋司)

★演出・小川絵梨子よりコメント到着★

 井上ひさしさんは新国立劇場の財産というべき戯曲をいくつも残してくださった、劇場にとって大切な作家のおひとり。演出家としてはまだまだ未熟な私ですが、今回は満を持しての挑戦になります。

 井上戯曲初演出作品として選んだ、この『キネマの天地』は、井上さんの自由で軽妙、かつちょっとシニカルな視点が生きた戯曲だと思っています。中学時代に所属していた演劇部で上演したということもあり、特別に愛着を感じている作品で、井上さん流の「演劇賛歌」が込められた戯曲だと思い続けてきました。

 今回の出演者の皆さんは、自ら喜んで未知の領域へと飛び込み、存分にお力を貸してくださる方々ばかり。振り返れば、芝居づくりに集中し、純粋にそのことが楽しめる稽古場でした。

 最後まで楽しんでいただけましたら幸いです。


★おけぴ会員のみなさんからの感想をご紹介★

◆まず新国立劇場の小劇場という狭い空間がいい。
そして、チラシや看板、パンフに描かれているイラストがいい。そして開演前(1部、2部ともに)の犬の鳴き声がいい。舞台セットがいい。当たり前ですが高橋惠子を始めとする女優陣がいい。コロナ禍でやや緊張しながらの劇場スタッフと観客がいい。
このような状況で映画や演劇を楽しめる私たちがうれしい。

◆ 演劇賛歌を込められた素敵な作品でした。 演劇が好きでよかった。 劇場で舞台と客席が共に作り上げる贅沢な時間はかけがえのないものだと改めて気づかされました。 演劇を愛する人達へのエールのような台詞がたくさんあり、心に響きました。 お話は騙され、騙され、また騙されて!の推理劇にもまんまとハマり、ラストに向けての売れない役者の花道には涙がホロリ。 笑って泣かせる贅沢な喜劇でした。 華やかな世界の裏側を覗き見した気分で楽しい。 女優たちの軽妙でシニカルな台詞の応酬が圧巻で特にベテラン女優の狭間で新人スター小春さんの表情がくるくると変わる演技が印象的でした。 女優たちの衣装がそれぞれの個性を活かして素敵。 新しい映画の台本を大切に受け取りページをめくる女優たちの姿には芝居への愛が満ちていて愛おしかったです。

◆演劇愛にあふれた物語でした。自分も演劇をやっていたので、自分が演じられなかった役の数々や舞台への決別の言葉に思わず涙がこぼれました。「4大女優」による攻防も、おかしみの中に人生の悲喜こもごもを感じさせ、演劇賛歌でもあり、夢を追い一所懸命生きる人々への普遍的な人生賛歌でもあると思いました。

◆ 笑いの連続に加えて推理劇仕立てという、娯楽作品としてのサービスが十二分。 誇張した表現の中にこそ実相を顕現させる、喜劇の王道を行く堂々たる作品です。 さすが! 分けても見ものは尾上竹之助役・佐藤誓さんの演技。 感服です。

◆女優たちのリズミカルなやり取りに心地よさがありました。
どんでん返しにまたどんでん返しと予想を裏切られるのですが、ドキドキ感が継続しながらとても面白く観られました。

◆4人の女優登場から「うんうん」とうなずき笑う場面多し。
一般社会でもよくあるマウント合戦。1幕と2幕で全く違うお芝居のよう。
それぞれのプロの矜持をひしひしと感じるお芝居でした。



右から) 高橋惠子、趣里、鈴木 杏、那須佐代子 (撮影:細野晋司)

◆笑いあり、ビックリありの素敵な舞台でした。女優を演じる女優さん達がとても楽しそう。すべての芸術はみな人間への賛歌、という台詞通り井上ひさしさんの演劇愛が込められた作品でした。

◆趣里さんが素晴らしい存在感を発揮、ファンになった。女優四人が大作の打ち合わせに呼び出される。全員一癖も二癖もあり清濁併せ持つ魔性の女優陣、ギスギスとした空気感。
しかしこの打ち合わせには裏があり、昨年不慮の死を遂げたことになっている女優殺しの真犯人を暴く為のトラップなのであった。
女優の一人を演じる那須佐代子さんが一際素晴らしい。清水邦夫氏の『楽屋』と対になるような、井上ひさしの悪意に満ちた逆説的な女優讃歌である。お勧め。

◆非常におもしろかったです。4女優の共演が見ているだけでも華やかで目の保養になります。とはいっても、実力のある女優さんばかりなので、お互いを罵り合う台詞のなかでも、どこかユーモアを感じさせてくれます。そして超がつく実力派の千葉哲也さんの演技も見ものです。しっかりした作品を実力派の俳優さんで見せてくれる見ごたえのある舞台で、時間があっという間でした。

【ものがたり】
昭和10年、築地東京劇場。

舞台上で準備をしている松竹キネマ蒲田撮影所の助監督・島田健二郎(章平)の前に、娘役で人気沸騰の準幹部女優・田中小春(趣里)、続いてヴァンプ役で人気の幹部女優・滝沢菊江(鈴木杏)、お母さん物で有名な大幹部待遇の徳川駒子(那須佐代子)、最後に大幹部女優のトップスター立花かず子(高橋惠子)が登場する。いずれも蒲田撮影所所属の、日本映画界を代表する大スター。

超大作の松竹蒲田特作豪華版・映画『諏訪峠』の打合せに呼ばれてきた四人は、自らを誇示し、鞘当てし合いながら、上演中に突然死した女優の松井チエ子のことを思い出す。そこへ、松井の夫でもある映画監督小倉虎吉郎(千葉哲也)が、『諏訪峠』の代わりに、松井の一周忌記念興行として『豚草物語』の再演を持ち出した。松井殺しの犯人探しが目的の監督は、万年下積み役者の尾上竹之助(佐藤誓)を刑事役として雇い、稽古中の4人を見張らせる。

果たして、この4人の中に犯人はいるのか......。



『キネマの天地』おけぴ稽古場レポートはこちらから

俳優・趣里さん&新国立劇場バレエ団プリンシパル米沢唯さん対談はこちらから(キネマ~のみどころも!)
【公演情報】
新国立劇場『キネマの天地』
2021年6月10日(木)~27日(日)@新国立劇場 小劇場
(6月5日[土]・6日[日]プレビュー公演)

<スタッフ>
作 井上ひさし
演出 小川絵梨子

<キャスト>
高橋惠子 鈴木杏 趣里 那須佐代子
佐藤誓 章平 千葉哲也

☆6月のギャラリープロジェクト☆
トークセッション演劇噺Vol.6「『キネマの天地』とその時代」

濱田雄一郎氏(映像ディレクター)に『キネマの天地』の時代の映画や演劇の世界を、編集者・大堀久美子氏が聞き手となって、深く語っていただきます。
※動画でお届けします。(近日公開)
詳細はこちら

おうちでバックステージツアー 6月『キネマの天地』
舞台美術や開幕に至るまでの足跡等について、公演担当プロデューサーが解説する動画をお届けします。(近日公開)
詳細はこちら

公演HP:https://www.nntt.jac.go.jp/play/kinema/

☆本公演は新型コロナウイルス感染予防、拡散防止対策をとって上演いたします。
https://www.nntt.jac.go.jp/release/detail/23_017576.html


おけぴ取材班:chiaki(編集)監修:おけぴ管理人

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