このミュージカル、ストーリーは比較的シンプルである分、キャラクターがいかに魅力的であるかが重要になる。しかしこのカンパニーはその点はどうやら問題なさそう。ダニーを演じる三浦は、映画版のトラボルタよりはずいぶん端正で可愛らしい雰囲気ではあるが、だからこそイキがって虚勢を張っている男の子の可愛らしさ、実はピュアな本心が見てとれる。そしてとにかくダンスのキレの素晴らしさ! 若手ミュージカル俳優屈指のダンス力がこの作品で弾けている。屋比久のサンディはとにかく可愛く、その生真面目さ、ひたむきさは観る者が思わず応援したくなるに違いない。オリビアが歌った名バラード『Hopelessly Devoted to You』の歌唱も圧巻である。そして本来の屋比久は三浦同様、バレエの下地がある人なのだが、真面目な女の子らしくぎこちないダンスをしてみせる屋比久サンディの姿もまた可愛らしい。
それにしてもとにかく運動量の多いミュージカルだ。稽古場は常時震度3くらいの振動。常にダンス、ダンス、ダンス! 特にダンスコンテストのナンバー『Born to Hand Jive』はアクロバティックなペアダンスがそこらじゅうで展開されていて圧巻のひと言。アグレッシブに踊る彼らに、問答無用にこちらの心も踊る。恥ずかしさも甘酸っぱさも歯がゆさも、青春のすべてが詰め込まれたようなミュージカルだが、彼らにとってはこの現場こそが青春なのでは? と思える、汗と笑いとキラキラした輝きが溢れている。ティーンエイジの頃って、毎日が濃かったし、一生懸命だったよね……。そんな青春を体現している彼らがとっても愛おしい。コロナ疲れの人も、気分が発散すること間違いないミュージカルだ。