2021年12月、ミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』再演!幼馴染のトーマスとアルヴィンの追憶の旅を珠玉のナンバーで綴る二人ミュージカル。田代万里生さんと平方元基さんによる役替わり相互上演でも話題を呼んだ日本初演から2年、待望のクリスマスシーズンに帰ってきた本作。今年の上演は、初演ペアはアルヴィンを田代万里生さん、トーマスを平方元基さんという固定キャストで、また新たにアルヴィン太田基裕さん、トーマス牧島輝さんという新ペアも誕生!
初演、再演と人気チケットとなった本作。初演時の虎の子の一枚はアルヴィンが平方元基さん、トーマスが田代万里生さんという組み合わせでした。その時に抱いた、「すごく合っている!でも、逆も観たい!」の願いが、2年の時を経て実現。初演ペアの観劇レポートをお届けします。
チャリンチャリン、ベルが鳴る。
幼き日の約束、「どちらかが死んだら、残された方が弔辞を読む」。
ベストセラー作家のトーマスは幼馴染アルヴィンの突然の死に際し、故郷へ帰ってくる。葬儀の席で読む弔辞を綴ろうとするのだが──。
ベストセラー作家、成功者としてのプライドをまとうトーマスだが、その筆は一向に進まない
トーマスの目の前に現れる本棚、そしてアルヴィン。
本棚に収められた本や原稿を手にするアルヴィン
二人の物語を選び、トーマスが弔辞を書く手助けを始めるアルヴィン。トーマスの戸惑いはどこ吹く風、アルヴィンはぐいぐいいきます!このぐいぐい感が憎めない。
二人の出会いは幼き日のハロウィーンパーティー。
トーマスは映画『素晴らしき哉、人生!』の天使クラレンスに扮した。それをわかったのは、クラスで一人、アルヴィンだけだった。その日から、二人は親友になった!
ある日、アルヴィンは書店を営む父がそうしているように、トーマスに合った本を選ぶ。
アルヴィンが選んだのは……
マーク・トウェインの「トムソーヤの冒険」
この一冊がトーマスを小説家へと導く──
月日は流れ、都会の大学へ進学するトーマス、父の書店を手伝うために故郷に残るアルヴィン。二人の最初のサヨナラ。
故郷に帰ると、そこにはアルヴィンがいた
故郷に残るしか選択肢のないアルヴィン、都会へと旅立ち、成功への階段を上っていくトーマス。日々の生活の楽しさの中で、過去をないがしろにしてしまう。いつの間にか疎遠になってしまう。そんな溝が浮き彫りになる物語中盤は苦しさも感じます。アルヴィンは次第に孤独を感じるように。
アルヴィンの父は亡くなり、クリスマスイブに営まれた葬儀で弔辞を読むことになったトーマス。彼が用意したのは詩の引用。「君の言葉で書くんだ」というアルヴィンの言葉がトーマスの心に突き刺さる。
トーマスもまた、ベストセラー作家としての重圧、スランプに苦しんでいた。
ようやくトーマスは大切な真実に気づく。
いつもインスピレーションを与えてくれていたのは──
空っぽだった舞台上が、原稿やメッセージ、雪で覆われていく。それは空虚だったトーマスの心がアルヴィンとの数々のストーリー、思い出で満たされていく様と重なり合います。
田舎町の古い本屋。都会でベストセラー作家となったトーマスの世界からみると小さな世界だったかも知れない。でも、たくさんの物語を通して旅をし、ただ一人の親友との思い出を大切に生きたアルヴィンの人生は豊かなものだった。ちょっぴり寂しいけど。それは満たされていたと信じたい。
アルヴィンの物語を語り始めるトーマス
田代さんの歌声の柔らかさの中にある強さ、平方さんの歌声のどっしりとした響きの合間に見え隠れする儚さ。お二人が歌声の表現を自在に変える、そのバランスが心地よく見事なハーモニーを奏でます。それは歌声だけでなく、芝居でも、どちらかが立つ、どちらかが引く、ともに出る……。相乗効果とはこのことかと改めて思わせるオリジナルペアです。
そして、そのたたずまいが、田代さんはこれでもかというほど天使だし(それだけに時折見せる虚しい表情が雄弁……)、平方さんがめちゃめちゃカッコイイ(ほかの表現も考えましたが、問答無用で男前なんですよ!!)。つまり「すごく合っている!」のです。ただ、人間とは欲深いものです。それに続くのは「でも、逆も観たい!」。この欲望は無限ループ!
友を失った悲しみは、決して消えることはないけれど、こうしてトーマスはアルヴィンによって生かされ、アルヴィンもまたトーマスと共に生き続ける。悲しみから一歩踏み出す力をくれるミュージカル『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』。
あなたの過去の、現在のストーリーは、そしてこの先、どんなストーリーが待っているのか。大切な人を思いながら、クリスマスイルミネーションがきらめく街へ一歩を踏み出す帰り道でした。
また会えますように♪
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人