6月9日、帝国劇場で開幕した
ミュージカル『ガイズ&ドールズ』。
天才ギャンブラーのスカイには
井上芳雄さん、お堅い救世軍軍曹サラに
明日海りおさん、ギャンブラーたちの仕切り役ネイサンに
浦井健治さん、ネイサンの婚約者である人気ショーダンサーのアデレイドに
望海風斗さんという超豪華布陣で臨む公演。さらにブロードウェイで大活躍中の
マイケル・アーデンさんによる新演出!
話題沸騰の新生『ガイズ&ドールズ』初日前会見をレポートいたします。
望海風斗さん、浦井健治さん、井上芳雄さん、明日海りおさん、マイケル・アーデンさん
──初日を前にした現在の心境は。井上さん)この時期にアメリカからマイケル・アーデンという素晴らしい演出家を迎えて新しい『ガイズ&ドールズ』を作るということ、それは本当に貴重な経験でした。この公演に関わることができたことが嬉しい、その思いでいっぱいです。
浦井さん)2022年版の『ガイズ&ドールズ』がようやく船出の時を迎え、今は幸せな気持ちでいっぱいです。僕はギャンブラーの枠組みなのですが……
井上さん)僕もだけど(笑)。なんで手袋?殺し屋?寒いの?
(ツッコミの手を緩めない!!)浦井さん)いやいや違いますっ!!
(気を取り直して)演出のマイケルさんの手腕で家族のような温かさのあるギャンブラーチームになりました。そしてなによりスカイ!井上芳雄さんのスカイがその名の通り空まで届くほどかっこいいので、ぜひそこに注目していただきたい!
井上さん)そういう台詞があるだけですからね(笑)。
浦井さん)はい、台詞の復唱でした(笑)。
(なんだかんだ息ぴったり!久しぶりなこの感じ!)明日海さん)ゲネプロで自分の出ていないシーンを見ていた時に、「華やかでワクワクするナンバーがぎゅっと詰め込まれている、この作品世界を自分も生きられる」と思うと魔法にかけられたような、とても幸せな気持ちになりました。マイケルさんを中心にカンパニーのみなさんと何度も何度も作って壊してを繰り返しながら積み上げてきた作品が、ついに今日放たれます。自分にできるすべてを発揮しようと思うと、力が入りそうなので……
井上さん)発揮しないんですか?!
明日海さん)ちがうんです(笑)!(必要以上に力まずに)「そこに生きること」を楽しみたいと思っています。
井上さん)素晴らしい!
(素晴らしい!)望海さん)この数年、我慢することや心を痛めるニュースが多い中で、こんなにも明るい作品をマイケルさんとともに作って、いよいよお客さんを迎えられること、このカンパニーの一員であることを幸せに感じています。自分はさておき、本当に素敵な作品に仕上がりました。早くお客様にご覧いただきたいと思っています。
──マイケルさんに伺います。新演出のポイントは。マイケルさん)アメリカ史上、最も優れていると言っても過言ではない『ガイズ&ドールズ』をこの美しい日本に持ってこられたことを嬉しく思います。この作品を通してお伝えしたいことは、1950年に初演された本作で描かれる人間模様、人の在り方が70年の時を経ても変わっていないということ。ここにいる4人が演じるキャラクターをはじめとした登場人物たちが本編を通してどう変わっていくか。お互いが譲り合いながら寄り添っていくドラマをご覧いただきたいと思います。そうやってお互いに譲り合うことは、今の社会においても学ぶべきことです。
そしてなにより素晴らしいパフォーマーのみなさんを見て、お客様に楽しんでいただきたいと思っています。
──主演クラスの俳優が4人そろうというところも話題の作品です。みなさんの関係性は?井上さん)関係性を自分たちで言うというのも難しいですが(笑)、初共演が多いです。
僕も明日海さん、望海さんと作品でご一緒するのは初めてですが、妹がお二人と宝塚の同期なので気持ち的には妹たちといった感じです。それが仕事仲間となり、素晴らしい女優さんになられたなという、兄なのか親なのかわからない気持ちです。浦井くんのことはあまり知らないですね(笑)
(←出た!)。カンパニー全体として、馴れあうこともなく、かといって刺々しいわけでもない。ひたすらにやるべきことを一生懸命やるという稽古場でした。僕はそう感じましたが、どうですか?
明日海さん)その通りだと思います。お稽古場で芳雄さんや浦井さんのお芝居を作っていく段階での「フラットだけどグワッとスイッチが入る感じ」を目の当たりにし、この方々について行こうという気持ちでご一緒させていただきました。
望海さん)宝塚を卒業した俳優との共演に慣れていらっしゃるお二人なので、こちらが自然にいられるような空気を作ってくださいました。
井上さん)ひとつ付け加えますと、うちの妹からは、同期の中でもものすごく真面目で努力家な二人と聞いています。
──明日海さん、望海さんは稽古中、これまでとの違い、変化を感じることはありましたか。明日海さん)自分の中では常に大丈夫だろうかと。
井上さん)明日海さんはそういうタイプ、自分に問いかける方なんです。
明日海さん)自分らしくいることとの兼ね合いが難しかったですが、望海と一緒にいる場面は意識しすぎることなく自然体で、かつ女性らしくいられる……気がしています(笑)。
望海さん)(明日海さんとの共演は)音楽学校時代に戻ったような感覚です。懐かしい気持ちで一緒にお稽古していましたし、どちらかというと芳雄さんと明日海、スカイとサラがお芝居しているのを見て、すごくドキドキしました。明日海りおが!って(笑)。
──井上さんと浦井さんの共演も久しぶりですよね。浦井さん)改めて、芳雄さんの座長っぷりはすごいです。例えば演出のマイケルさんが考えあぐねる様子を察すると、バナナをすっと置きにいくというケアをされていました。
井上さん)それ全然記憶にない!本当に僕?
明日海さん)それ、私も見たことあります!
浦井さん)そうやってカンパニー全員に愛を向けているんです。
井上さん)ありがとう。浦井君は変わらず一生懸命、その一生懸命の度合いが増しているというか。みなさんそれぞれに俳優としての立場というものがありますが、(責任ある立場を)たくさん経験してきたんだなと感じます。だからこそみんなのワイワイした輪から離れてみるとか、その感覚はお互い分かるところがあるんです。やっぱり同志だなって。
──マイケルさんに『ガイズ&ドールズ』日本カンパニーはどう映りましたか。マイケルさん)国に関わらず「良い俳優は良い俳優」。この4人が本当に良い俳優だということはすぐにわかりました。それぞれの仕事への美学、哲学を感じます。カンパニー全体からも仕事に対する誠実さが感じられました。
また日本のミュージカル全般に対してのイメージは、お客様へ見せる成果物への敬意、真心を尽くす度合いが高いということです。それはミュージカルのみならず日本の文化に宿る精神であり、アメリカも学ぶべきことだと感じました。
その上で、私の願いは完璧を目指すことも素晴らしいことですが、もっと自分らしさを出して舞台に立つことにチャレンジして欲しいということです。なぜなら私にとって、完璧は面白味がないんです。人々は作品を通して欠点やもがく姿も含めた「人間」を見るために劇場に足を運ぶのですから。
稽古期間中、彼・彼女らの芸術に対して誠心誠意取り組む姿を見られて幸せでした
井上さん)マイケルが求める方向性は「ただ役として生きる」こと。僕はコメディとなるととにかく笑いをとりにいくタイプですが、「アドリブはいらない、お互いを見ながら、ただ役として生きることが大切だ」と。もちろんそれはわかってはいたのですが、どうしても正面を切って芝居しがち。改めて原点に帰って芝居をし、「いろんな人間が生きている」というドラマになっています。結果としてそれがコメディになるのです。
──最後にメッセージを。明日海さん)こうして初日を迎えられることを嬉しく思います。ここからさらに進化しどんどん深まっていく過程を、千穐楽まで全員で楽しんでいきたいと思います。
望海さん)マイケルさんからいただいたお言葉を忘れずに、お客様との思いっきり素敵な空間・時間にできたらいいなと思います。千穐楽までカンパニーの全員が健康でいられるように願いながら、毎日公演を重ねていきたいです。
浦井さん)このご時世にたくさんの方にご覧いただけるということ、それがどんなにありがたいことなのかを痛感しています。この作品はスカイとサラのラブストーリーを軸に展開します。純愛です。きっかけは賭けですが、それが真実の愛になっていくという過程での普遍的なメッセージを届けながら、個人的にはアデレイド役の望海風斗さんとどれだけふざけられるか。物語のスパイスとして存在できるように楽しんで演じられたらと思っています。
井上さん)(感慨深げに)ちゃんとしたことを言うようになったなと。
浦井さん)必死なんです!(笑)
井上さん)マイケルだけでなく、アメリカから振付のエイマン・フォーリーさん、装置のデイン・ラフリーさんが来てくださり、日本人側のスタッフやキャストとともに全力で取り組んできました。出来上がった作品を(自分が出ていない場面を)客席で見ると、そのクオリティは本当にブロードウェイで見ているみたいだなと感じます。自分はミュージカルがやりたくて舞台を続けていますが、もしこれが最後の舞台になっても満足だ、いや引退しませんけど(笑)! 本当にここに居られることが幸せ、そう思える作品をいよいよお届けできます。今は無事に最後までみんな元気に上演できることを願いながら、お客様をお迎えしたいと思います。
7月9日まで帝国劇場にて、その後、7月16日~29日に博多座で上演されます! 公演レポートも近日公開予定!!
Story
1930年代のニューヨーク。スカイ(井上芳雄)と呼ばれる超大物ギャンブラーがいた。彼の仲間のネイサン(浦井健治)は自分の婚約者アデレイド(望海風斗)へのプレゼント代と賭場代を得ようとスカイに賭けを申し込む。「指名した女を落とせ」というものだ。「どんな女でも落とせる」と自信たっぷりのスカイだが、ネイサンが指名した女性は、清純で超堅物な救世軍(※)の軍曹・サラ(明日海りお)だった。サラの伝道所が閑古鳥で困窮しているところに、自分と一緒にハバナへ食事に出かければ、罪深い連中を伝道所に連れて行くと持ち掛けるスカイ。教団を救うため、サラはその誘いを受ける。ハバナで過ごすうちに、スカイとサラは次第に惹かれ合っていく。だが、高揚した気分で伝道所へ戻ると、サラの留守をいいことにネイサンが賭博を開催していた。ネイサンがスカイの仲間だと知ったサラは、スカイが自分を連れ出して仲間に賭博場を提供していたと誤解。彼に裏切られたと思い込み…。正反対のスカイとサラ、14年間も婚約中のネイサンとアデレイド。2組のカップルの恋の行方は?
(※)救世軍…世界各国で宗教活動、社会福祉活動、医療事業などを推進するキリスト教の団体で、軍隊組織、制服を採用している。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人