【本日開幕!舞台写真が届きました】
こどものためのバレエ劇場 2022『ペンギン・カフェ』、舞台写真(撮影:鹿摩隆司)が届きました。まさに新国オールスターズが躍動!たくさんの動物たちが登場する楽しくてグッとくる『ペンギン・カフェ』開幕です♪
ペンギン(オオウミガラス):広瀬碧さん
ユタのオオツノヒツジ:米沢唯さん
テキサスのカンガルーネズミ:福田圭吾さん
豚鼻スカンクにつくノミ:五月女遥さん
ケープヤマシマウマ:奥村康祐さん
熱帯雨林の家族:小野絢子さん、貝川鐵夫さん
ブラジルのウーリーモンキー:福岡雄大さん
【広瀬碧さん、池田理沙子さんインタビュー】
新国立劇場バレエ団 こどものためのバレエ劇場2022『ペンギン・カフェ』にウェイター姿で登場するペンギン(オオウミガラス)役の
広瀬碧さん、池田理沙子さんにお話を伺いました。広瀬さんは2021年の無観客ライブ配信、今年の1月の上演に続いて、池田さんは今回はじめて同役を踊ります。(ペンギン役は赤井綾乃さんも含めたトリプルキャストです)
池田理沙子さん、広瀬碧さん
『ペンギン・カフェ』は現代の環境問題に通じるメッセージが込められた、デヴィッド・ビントレーの人気作品。80年代に一大センセーションを巻き起こしたワールド・ミュージック・アンサンブル「ペンギン・カフェ・オーケストラ」の音楽に触発されて作られた本作で、陽気に踊るペンギン、ねずみ、シマウマ……彼らは絶滅あるいは絶滅危惧種の動物たちなのです。
──まずは作品の印象からお聞かせください。ペンギン
ブラジルのウーリーモンキー
広瀬さん)『ペンギン・カフェ』は環境破壊など深いテーマが根底にありながら、明るい音楽、軽快なステップで綴られる楽しいシーンの連続です。メッセージ性が強くなると重たい雰囲気になりがちですが、観客を楽しませながらも、しっかりと問題提起しているところが魅力だと思います。
池田さん)動物たちがたくさん出てくるので、お子さんから大人の方まで楽しめる作品です。動物のキャラクターに合わせてシアタージャズやフォークダンスなど、クラシック・バレエとはまた違う多彩なジャンルのダンスを見られるのも魅力のひとつ。特にカーニバルはラテンのリズムに乗せてたくさんの動物たちが踊るのでとても盛り上がります。そんな楽しい場面の後に続くのがレイン(雨)のシーン。嵐の中で動物たちが逃げ惑う場面で、動物たちの悲しみが聞こえてくるようで心にずしんと響きます。
──ペンギン役に決まったときの心境、役への思いは。 ペンギン
池田さん)DVDや2021年のライブ配信、今年の年明けの公演を見ていたので、ペンギン役に決まったときは純粋に嬉しかったです。踊りについては、横を向いたときの相手との距離感や速い動き、限られた視野でのフォーメーションの変化など、ヘッド(大きなくちばしのついた被りもの)をつけて踊るうえでいくつか大変なポイントを碧さんから伺っていたので、そこが課題になると思いました。それと同時にこの作品では“ペンギンの在り方”が作品の意味合いを左右するので、しっかりとメッセージが伝わるように舞台を作っていきたいと思っています。
広瀬さん)大好きな『ペンギン・カフェ』でペンギン役を踊ることができたら素敵だなと思い続けて10年、2021年に無観客公演でしたが、ようやくその願いが叶ったときは嬉しくて、夢のようでした。私がペンギンを踊るうえで大切にしているのは観客のみなさんにとって“他人事”にならないようにということです。先ほどの理沙子ちゃんの“ペンギンの在り方”にも通じることですが、最初のカフェのシーンでいかにペンギンを愛してもらうかが重要だと思っています。そこで身近なペットのワンちゃんネコちゃんに抱くような、愛おしいという気持ちを持っていただくことで、最後のシーンでペンギンが踊らずに立ちつくす8カウント、その瞬間にお客様の心に自然に「助けてあげたい」という思いが溢れるようになるのではと考えています。リハーサルで仕草やステップを磨いて、みなさんの心を動かすペンギンにしたいです。
──たくさんの動物たちが登場する本作、おすすめのシーンやキャラクターは。カーニバル
テキサスのカンガルーネズミ
池田さん)やはりカーニバルのシーンです。そこではペンギン以外の動物たちが全員舞台に集まり陽気な音楽に乗って盛り上がるので、見ているだけでも高揚します。できることなら参加して一緒に踊りたいくらいです。
広瀬さん)私はペンギンのキャッチーな振付、可愛い動きがイチオシです。ほかの動物ではオーバーオールを着てぴょんぴょん跳ねる、テキサスのカンガルーネズミも可愛くて好きです。
──先ほどお話に出たペンギンの動きについて伺います。全幕ものとは心持ちも変わってくるものでしょうか、リハーサルの中でどう感じますか。池田さん)この作品では、振付の一つひとつの意味を見出し深めるというよりは、俯瞰で舞台の全体像を見たときに何が浮かび上がるか、そのシーンで何を見せるかというところに重きを置いているように感じます。もちろん細かい動きやステップのノートもいただきますが、ある意味で振付は抽象的とも言えます。
広瀬さん)クラシック・バレエの基本的な型を大切にする古典作品に対して、この作品では身体的な動きをより大事にする感覚があります。先生方からノーテーション(舞踊譜)を元に振りをいただき、自分たちでニュアンスをつけてペンギンにしていきます。ニュアンス勝負なので、センス良く踊らないと可愛く、カッコよくならないんです!そこはとても重要なポイントです。
もうひとつ違うことは被りものをしているので、普段は見える表情が見えないところです。ただ、私が客席から見ていて、最初と最後で同じヘッドを被っているにもかかわらず、明るい笑顔からかわいそうな泣き顔にペンギンの表情が変わったように見えたんです。踊りやしぐさ、身体表現によって、ペンギンの表情、感情が伝わるように作っていくというのもこの作品ならではです。ですので、逆に言えばヘッドなしでも動きでしっかりとペンギンになることができる、それがビントレーさんの振付の素晴らしさです。
──振付家のビントレーさんの魅力についてもう少しお聞かせいただけますか。広瀬さん)印象的なのは、「Dance to the Future」で作品を創作したときにビントレーさんからいただいた「あなたの作品は明るく楽しい気持ちにさせるのがすごくいい」というフィードバックの言葉です。ビントレーさんは常々「ダンスというのは人を楽しませるもの、それが大切だ」と仰っていました。楽しさとメッセージ性を共存させるところが魅力だと思います。
※「Dance to the Future」新国立劇場バレエ団のダンサーがコンテンポラリー・ダンスに出会い、自らの振付作品を発表する場として設けられたシリーズ企画池田さん)魅力はたくさんありますが、その中のひとつを挙げると音の使い方が素敵だということです。音と動きの調和、カウントの一つひとつに動きがあてはめられていて、それが繋がったときにひとつのムーブメントになる。全てが緻密に計算されています。また今回の作品でも同じ空間にいる異なるキャラクターが全く違うカウントで全く違う動きをするという場面があります。そこでは、両者の対比が意味を持ち、シーンが立体的に浮きあがることで観客にメッセージを訴えかけるという効果が生まれます。そんなビントレー作品の魅力がいっぱい詰まっているのが『ペンギン・カフェ』です。
──今回「こどものためのバレエ劇場」として上演されます。お二人の子どもの頃の劇場体験で印象的だったこと、劇場デビューをするみなさんへのメッセージをいただけますか。広瀬さん)私はパリ・オペラ座の『白鳥の湖』、『ラ・バヤデール』が忘れられません。でも当時はドラマ性など奥深くまで理解していたわけではなく、ただ“白鳥さんたちがきれいだった”ことに純粋に感動したのかもしれません。『ペンギン・カフェ』でもし劇場デビューしていただけたら、純真無垢なもの同士、子どもと動物たちとで自然と心通じるものがあると思います。構えることなくただただ感じて楽しんでください!
池田さん)記憶をたどると──私も『白鳥の湖』で、たくさんの白鳥たちが出てきたときの美しさに感動したことが思い浮かびます。でも確かに、本当の意味を理解したのは大人になってからですね。『ペンギン・カフェ』も、まずはたくさんの動物が出てきて楽しいな、可愛いな、で終わってもいいと思うんです。この作品の根底にある人間による環境破壊というテーマ、それは残念ながらより深刻になっています。それに対していつか、この公演が皆さんの意識を、行動を変えるきっかけの一つになったらいいなと思っています。そうなる力のある作品ですし、だからこそビントレー作品は愛され上演され続けるのだと思います。
舞台写真撮影:鹿摩隆司
◆インタビュー中もときどき顔を見合わせながら頷き合ったり、それぞれの言葉に「そうそう!」という表情を浮かべたりととても和やかな空気を作り出すお二人。作品の中でどんなペンギンさんとして存在するのか、そして2022年の夏に、観客は何を感じるのかますます楽しみになりました。初演から時を経ても、なお、輝きを放ち、そのメッセージは深く響く『ペンギン・カフェ』の開幕はまもなくです!
さらに! 「こどものためのバレエ劇場」では、「子ども科学電話相談」の成島悦雄先生登場!トークショーでは生き物たちを取り巻く自然環境の危機的状況について親しみやすく解説。絶滅に瀕している動物の剥製(パンダのカンカン&ランランも!)を展示するなど、お楽しみいっぱいです!
【関連記事】ここが楽しみ『ペンギン・カフェ』はこちらから
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)監修:おけぴ管理人