「ロイヤルコート劇場×新国立劇場 劇作家ワークショップ」から生まれた新作を上演!「劇作家の劇場」と呼ばれる英国ロンドンのロイヤルコート劇場が世界中で行っている、若い劇作家たちの為の国際的ワークショップを、2019年5月より、新国立劇場とタッグを組み、日本で初めて実施いたしました。60年以上の歴史を持つこの劇場は「新作戯曲のナショナルシアター」として、数多くの若い才能を生み出してきました。
そのロイヤルコート劇場インターナショナル部門が、世界各国にアソシエイトディレクター、文芸マネージャー、劇作家を派遣し実施しているワークショップを、全4フェーズ、あしかけ2年に渡り実施、14名の若い劇作家たちが参加いたしました。それぞれのフェーズごとにワークショップ、ディスカッション、推敲を重ね、最終フェーズでは演出家、俳優も参加してのリーディングを通して成長を重ねてきた作品群より、このたび、
須貝 英による『私の一ヶ月』を上演いたします。【あらすじ】
3つの空間。2005年11月、とある地方の家の和室で日記を書いている泉。2005 年9月、両親の経営する地方のコンビニで毎日買い物をする拓馬。そして2021 年9月、都内の大学図書館の閉架書庫でアルバイトを始めた明結(あゆ)は、職員の佐東と出会う。やがて、3つの時空に存在する人たちの関係が明らかになっていく。皆それぞれが拓馬の選んだつらい選択に贖いを抱えていた......。
演出には同年代の注目の若手演出家、新国立劇場では2018年に『誤解』を演出した、文学座の
稲葉賀恵を迎えます。
作 須貝 英からのメッセージ
今までいただいた機会や幸運が繋がりに繋がって、ここへ連れて来てもらったような気がします。心からありがたく思います。
この脚本は僕一人で書いたものではありません。「ロイヤルコート劇場×新国立劇場 劇作家ワークショップ」という素晴らしい企画の中で育まれた作品です。日英両国の劇場チームと日本の若手劇作家たち、彼らと共に時間を掛けて議論を交わし、改稿を重ね、コロナ禍で延期しながらも、二年近い時間を掛けて全員で最後までやりきった思い入れの深い企画です。この経験だけでも財産ですが、さらにこの作品を選んでいただけて、しかも兼ねてよりご一緒したかった稲葉さんが演出をしてくださる。この上ない幸せです。
この作品では、あらゆることが加速度的に進んでいく現代で、そこから弾き飛ばされた人々を描こうと思いました。貧しく寒い地方都市の、ある家庭とコンビニエンスストア。都内の大学図書館の閉架書庫。その三つの場所を主軸に物語は進みます。
お客様と一緒に作品を通して、見過ごされてしまいそうになるささやかなものに目を向けること、未来に何を残していくべきかを考えることができたら、この物語が生まれ落ちた意味もあるのではないかと考えています。どうぞご期待ください!
演出 稲葉賀恵からのメッセージ
この度はこのような素晴らしい企画に呼んで頂き、本当に感謝いたします。
新国立劇場がロイヤルコート劇場と組んで劇作のワークショップを行うとお聞きした時、期待と興奮に包まれたことを覚えています。ロイヤルコート劇場が数々の劇作家を輩出し、イギリス演劇界での新人作家の登竜門的劇場であることは勿論知っていました。そして何より劇作家が時間をかけて自分の作品を創作出来る場を、国立の劇場が企画したということに感銘を受け、ここで生み出された作品を一読者として早く読んでみたいと思っていました。
まさか、その作品を自分自身が演出させて頂く機会が来るとは、人生は何が起こるか分からないものです。しかもそれが数年前に豊橋の劇場で知り合い、同年代として刺激を受けた須貝さんの作品だとお聞きした時は喜びとともに感慨深いものがありました。これまでの色々なご縁が繋がって今創作の場に立たせて頂いていることを改めて実感したのです。
この作品は一つの家族、とりわけ一人の母と娘を中心に物語が繰り広げられます。彼らの過去の傷を鋭く抉りながらも抱きしめる言葉の数々、そこに市井の人々を愛おしみ、彼らが未来に一歩進めるよう背中を押す須貝さんの厳しくも優しい眼差しがあります。私はこの眼差しを良い意味で疑ったり信じたりしながら、私たちの世代がこの世界をどう捉え、どう未来に受け渡していけるのか、この作品を通して考え抜きたいと思います。今回はなにより作家が隣にいて伴走してくださる、こんなに力強く幸せなことはありません。初日まで試行と挑戦を繰り返し、高みを目指していきたいです。どうぞご期待ください。
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました