新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』柴山紗帆さん・速水渉悟さんインタビュー



ホリデーシーズンに極上のエンターテインメントを!
昨シーズンに引き続き、クリスマスシーズンから年末年始にかけて上演される新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』(12月23日開幕)。数あるバージョンの中でも、ウエイン・イーグリング版は古典名作の新境地を開いたと評価される人気作。新国立劇場バレエ団でも2017年の初演以来、繰り返し上演されています。



速水渉悟さん、柴山紗帆さん
撮影:阿部章仁


本公演にて、少女クララ/こんぺい糖の精を踊る柴山紗帆さん、クララが淡い恋心を抱くドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子を踊る速水渉悟さんにお話を伺いました。

──新制作『ジゼル』も大好評を博す公演となり、お二人にとってもバレエ団にとっても素晴らしいシーズンのスタートとなりました。まずは『ジゼル』公演を振り返っていかがでしょうか。

柴山さん)
新制作でしたので、作品が一から作られていく過程にカンパニーの一員として参加できたことはとても貴重な経験となりました。踊りだけでなく、劇場入りして初めて舞台装置を目にした時の感動も心に残っています。また、来日したスタッフの方々から演技面でも細かくご指導いただき、新しいシーズンの一作目から多くの学びを得ました。

速水さん)
『ジゼル』では、公演日によってアルブレヒトとペザント パ・ド・ドゥを踊りました。どちらもハードな役なので身体が心配でしたが、大きなけがなく無事に務めることができてよかったなというのが率直な気持ちです。

──充実感と安堵ですね。では、ここからは本日の本題『くるみ割り人形』について伺います。世界中で様々なバージョンが上演されていますが、『くるみ割り人形』(くるみ)とはどんな作品ですか。



新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より
第1幕 クリスマス・パーティーのシーン
撮影:長谷川清徳


速水さん)
誰もが認めるクリスマスの定番バレエ作品です。とくに海外では、普段はそんなにバレエを観ない方も、クリスマスはバレエを、くるみを観に行くという文化が根付いています。
僕自身、アメリカのバレエ団に在籍していたころは毎年40公演近くくるみを踊っていました。くるみのリハーサルが始まると、いよいよ12月だなと思うくらい(笑)。

──まさに風物詩なのですね。そこで印象的だった出来事はありますか。

速水さん)
在籍していたバレエ団では、クリスマス当日、12月25日の公演だけ1幕のパーティーのシーンにサンタクロースが登場するというちょっとしたお楽しみを用意していました。

柴山さん)
素敵ですね! 私も留学中にくるみの舞台稽古などを見学していて、作品が持つ華やかさに加えて、マジックなどを取り入れてエンターテインメント性を高めるなど、そのバレエ団ならではの見どころがある作品だという印象を持ちました。また、ねずみの王様との戦いの描き方にもバレエ団やバージョンの特徴がよく表れていると思います。



新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』
2021年公演より
第1幕 ねずみの王様(小柴富久修)
撮影:長谷川清徳


──新国立劇場バレエ団で上演しているイーグリング版の特徴のひとつでもあります。

柴山さん)
はい。ねずみの王様が2幕にも登場するバージョンはあまりないと思うので、ほかのくるみとのテイストの違いをお楽しみいただけると思います。

──ほかのバージョンも踊られている速水さんはイーグリング版の特徴をどのように捉えていらっしゃいますか。

速水さん)
いわゆる“一般的なくるみ”に比べるとイーグリング版は振りが複雑です。1つのカウントに1のテクニックではなく、そこに3つのテクニックが入るような……それくらい細かく振りが決まっています。



新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』
2021年公演より
第2幕 こんぺい糖の精(柴山紗帆)
撮影:長谷川清徳


──お二人とも、これまでにも新国のくるみでいくつもの役を踊っていますが、これまでの公演で感じたことは。

柴山さん)
本当にいろいろと踊っています。どれも独特な振りなので振りを入れるまでは難しいのですが、身体が慣れてくると徐々に踊りやすくなります。そこから初めて自分なりに表現する面白さを味わえるようになります。
昨シーズンから踊っているクララとこんぺい糖の精がその最たるもので、複雑な振りをしっかりと踊りつつ表現もすることの難しさを痛感しました。今シーズンは、振りについては前回よりも多少余裕があるのでプラスアルファの表現もしっかりと準備をしたいと思っています。

速水さん)
僕が新国立劇場バレエ団に入団したのが2018年、新国のくるみの初演が2017年なのでバレエ団として2回目のくるみでした。18年は「スペインの踊り」と「花のワルツ」を踊りましたが、周りはすでに振りが入っている状態でしたし、先ほどお話したような複雑な振付ということで大変だった印象です(笑)。そこから、紗帆さんも言うように回を重ねるごとに少しずつ余裕は生まれてきました。

──そして今シーズンは主役を踊られます。

速水さん)
本来は昨シーズンから踊る予定だったのですが、けがで出られなくなってしまったので、まずはけがをせず、舞台を務められるようにという覚悟をもってリハーサルに取り組んでいます。



第2幕冒頭のシーンのリハーサル
撮影:阿部章仁



清水裕三郎さん(ドロッセルマイヤー役)、柴山さん、速水さん
撮影:阿部章仁


──お二人でのリハーサルの手応えは。

柴山さん)
渉悟くんは振りの覚えがとても早いんです。難しいテクニックもアドバイスをすぐに吸収して踊りこなしていますし。頼れるパートナーです。

速水さん)
紗帆さんとはこれまでも『竜宮 りゅうぐう』の主役や『眠れる森の美女』の青い鳥、それこそ入団したての『くるみ割り人形』の「スペインの踊り」などで組んで踊っています。とてもテクニックも強く、どこに立ちたいのかをご自身でわかっている方なので、後ろでサポートしていても踊りやすいです。

──お二人のグラン・パ・ド・ドゥがますます楽しみになりました。クララがこんぺい糖の精となり、王子になったドロッセルマイヤーの甥と踊る美しいシーンです。

柴山さん)
グラン・パ・ド・ドゥは、当然、作品の大きな見せ場となります。そこでは音楽の流れに乗ってポーズとポーズの間、つなぎの部分もいかに美しく表現するかというところも大切に踊りたいと思っています。

──男性ダンサーは王子としての在り方とパートナリングの技術の両方が求められます。王子としてどうありたいと思いますか。

速水さん)
僕自身、三大バレエと呼ばれる『白鳥の湖』『くるみ割り人形』『眠りの森の美女』のようにみなさんが一定のイメージをもっている作品について、そのイメージを崩さないようにという考えもありますが、それだけでは面白くありません。そこに自分の味も出せればという気持ちはいつも頭の中にあります。



撮影:阿部章仁


──自分なりの王子像、王子のモデルはなかなか実生活では出会えないので大変では。

速水さん)
僕らの日常には王子も、先日の『ジゼル』のアルブレヒトもいません。だからこそ演じやすいというのもあります。ほかにもバレエには舞台上、物語の中だからこそ生きることのできるキャラクターが多いので、僕はそこに面白さを感じています。

──なるほど! ロマンがありますね。
また、お二人は12月25日と1月1日に主役を踊ることが発表されています。クリスマスはもちろんお正月を新国立劇場でのバレエ鑑賞で過ごすことを楽しみにされている方も多いと思います。


柴山さん)
元旦のようなお休みの日に、特別なイベントとしてバレエを観に来てくださるお客様がいらっしゃることにとても嬉しく感じています。新しい一年のスタートに楽しい時間を過ごしていただけるようにしっかりと準備をしたいと思います。

速水さん)
元旦から劇場に来てくださることは僕らも嬉しいですし、同時にその期待に応えなくてはならないと思っています。バレエで始まる一年、きっと最高の一年になります。
そして見どころ満載、いろんな楽しみ方のできる作品です。12月23日から始まる公演を一度と言わず二度三度とご覧いただければと思います。その中で、物語の舞台となる12月25日、最高の一年を迎えるには1月1日はおすすめです(笑)。


【おまけ】

──馴染みのある楽曲もたくさんある作品ですが、お二人の好きな曲は。

速水さん)
僕は「グラン・パ・ド・ドゥ」です。静かにはじまり徐々に盛り上がっていく楽曲は客席で聴いていても感動します。

柴山さん)
私は、クララがくるみ割り人形から姿を変えたドロッセルマイヤーの甥(思い人)と踊るパ・ド・ドゥの音楽は、何度聴いても、なんてきれいな曲なんだろうと思います。



劇場にクリスマスツリーと門松が並ぶという情景もレアな、お正月にくるみ! 年末の気忙しさから解放された元旦、ゆったりした気持ちで『くるみ割り人形』を楽しんで最高の一年を過ごす! これおススメです!




新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より
第2幕 冒頭のシーン
撮影:長谷川清徳



新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』2021年公演より
第2幕 花のワルツ
撮影:長谷川清徳


【作品おすすめポイント】

★小さなお子様から大人まで、全ての方におすすめ!幸せいっぱいの舞台
今やホリデーシーズンの定番となったバレエ『くるみ割り人形』。
幸せで温かな気持ちになる作品で、バレエ初心者の方も、バレエ・ファンの方も劇場で至福の時をお過ごしいただけます。雪の場面や花のワルツでは新国立劇場バレエ団が誇る美しいコール・ド・バレエ、2幕でのディヴェルティスマンなどではソリスト陣の多彩な踊りを堪能できます。

★チャイコフスキーのお馴染みの美しい音楽
「花のワルツ」をはじめ「行進曲」「こんぺい糖の精の踊り」など、有名な曲が次々と登場。チャイコフスキー三大バレエのなかでもひときわ美しく親しみやすい音楽で、どなたにも楽しんでいただけます。

★ホリデーシーズンならではのスペシャルプレゼント企画
クリスマス・年越し・お正月に皆様をお迎えできることを記念して、ご来場のお客様全員へのスペシャルプレゼント企画を実施します。ツリーなどが飾られた劇場空間と合わせて、ホリデーシーズンの特別な雰囲気をお楽しみください。

 プレゼント企画
 オリジナルクリスマスカード:12月23日~25日
 オリジナルノート:12月28日~31日
 オリジナル年賀状:1月1日~3日
【公演情報】
新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』
2022年12月23日~1月3日 新国立劇場 オペラパレス
予定上演時間:約2時間15分(休憩含む)

芸術監督 吉田 都
振付 ウエイン・イーグリング
音楽 ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
美術 川口直次
衣裳 前田文子
照明 沢田祐二
指揮 アレクセイ・バクラン/冨田実里
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合唱 東京少年少女合唱隊
出演 新国立劇場バレエ団
キャストスケジュールなどは公演HPをご確認ください

写真提供:新国立劇場バレエ団
おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)監修:おけぴ管理人

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