ミュージカル『ジキル&ハイド』新キャスト 柿澤勇人さん・上川一哉さんインタビュー



23年3月に上演されるミュージカル『ジキル&ハイド』。2001年の日本初演から上演を重ねる本作で、今回Wキャストで主演を務めるのは、10年以上にわたって主演を務めてきた石丸幹二さんと新キャストの柿澤勇人さんです。キャッチコピーに「石丸ジキル、最後の変身/柿澤ジキル、実験開始」とあるように、今回の公演で二代目から三代目の“ジキル&ハイド”にバトンが渡されることでも話題の公演。



柿澤さんと、ともに新キャストとしてカンパニーに参加されるジキル博士の親友でもある弁護士アターソン役の上川一哉さんの対談が実現。同じ時期に劇団四季に在籍し切磋琢磨してきたお二人。13年ぶりの再会、共演についてお話を伺いました。※アターソン役は石井一孝さんとのWキャストとなります


【こうして13年という時を経て会えたことが嬉しい】

──まずは『ジキル&ハイド』への出演が決まった時のお気持ちからお聞かせください。

上川さん)
驚きのひと言でした。この作品に出演させていただけるとは思ってもいませんでしたし、さらにカッキー(柿澤さん)と一緒だということにも驚きました。もちろんいつかまた共演したいという思いはありましたが、こんなにすぐに実現するとは! こうして久しぶりにカッキーに会って、驚きに楽しみという気持ちが加わりました。稽古ではおんぶに抱っこでお世話になると思いますが、よろしくお願いします(笑)。

柿澤さん)
鹿賀丈史さん、石丸幹二さん主演でこの作品を観ているので、僕の中では大スターが主演する作品だという認識でした。お二人の存在があまりに大きすぎて! それが、まさか自分がやることになるとは! 僕もはじめは驚きましたし、同時にプレッシャーも感じました。ただ、改めて作品に向き合ってみると、この物語はジキル博士が病院の理事会で生意気な若造として提案を突っぱねられるシーンから始まる──、そこでの彼は“青二才”なんです。だったら僕の年齢やキャリアだからこそ表現できるものもあるのではないかと思えるようになりました。上川くんは劇団の2期先輩で、同じ役もやってきました。こうして13年という時を経て会えたことが嬉しいですし、すごく心強いです。

──ミュージカル『ジキル&ハイド』が、これほどまでに人を惹きつける理由は。

柿澤さん)
舞台芸術、演劇という表現形態との相性がいいのだと思います。象徴的なのは善と悪/ジキルとハイドに人格が変わるということを、舞台上、お客様の目の前で生身の人間が表現すること。特殊メイクも映像編集もない、当然声の加工もない、一切ごまかしがきかない状況は、実は舞台芸術にもってこいでもある。そこにフランク・ワイルドホーンのキャッチーで力強い楽曲が加わることでさらに魅力が増す。大変だけど俳優としてやりがいのある作品だと思っています。

──公式サイトのコメント動画では、かつて客席でメモを取りながら観劇されたというエピソードを披露されていますね。

柿澤さん)
まだ学生だった時に日生劇場の二階で観たんです。あの頃は舞台を見るたびにメモを取っていました。とにかくルーシーを演じていたマルシアさんの声が凄くて、「どうやったらあんな声が出るのだろう」とか書いていました。

──そのメモは今も残っていますか?

柿澤さん)
どこかにあるとは思いますが……何も知らないくせにもっとこうすればいいんじゃないかとか、ど素人が生意気なことを書いていたと思います(笑)。でも結局は、「すげーな、すげーな」ばかり書いていたように思います。

──上川さんはいかがですか。

上川さん)
カッキーの話にあった人格の変化やワイルドホーンさんの楽曲はもちろん、この作品で描かれる人間ドラマも魅力だと思います。登場人物それぞれの激しくも繊細な心の動き。この人間模様をライブでやることの面白さが人を惹きつけるのではないでしょうか。まだ稽古前ですので漠然としていますが、演じる上ではそういった人間臭さを出していければと思っています。とにかく新キャストとして参加させていただくので基本的にはまっさらな状態で臨みたいと思います。

柿澤さん)
今回、主要キャストはほとんどがWキャスト。最初はチーム制で固定になるのかと思ったらシャッフルするじゃないですか! カズさん(石井一孝さん)のアターソンと上川くんのアターソンは違うだろうし、それによって僕も変わると思う。上川くんにとっても、対峙するのが僕と石丸さんでは変わるよね。

上川さん)
当然、変わるよね。そこも楽しんでいただけるポイントになるね。


【ワイルドホーン楽曲は役者泣かせ⁉】



──これまでにもワイルドホーン作品へのご出演経験のあるお二人、実際に楽曲を歌ってどう感じられたのかをお聞かせください。

上川さん)
僕は『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』でジュウザ役を演じましたが、Wキャストの伊礼(彼方)さんが歌っていらっしゃるのを聴くとすごく心地よく楽しいんです。でも、いざ歌うとなると難しくて。奥が深いと感じました。そして作品全体を通して、音楽の中に「北斗の拳」の物語がしっかりと息づいているところがワイルドホーン作品の魅力だと実感しました。

柿澤さん)
僕は『アリス・イン・ワンダーランド』と『デスノート THE MUSICAL』に出演しました。『デスノート』の時に特に感じたのはキーが高い! さらにフランクは「もっと上に」とか「上でハモって」とか容赦がない。当然、芝居でも歌唱でも非常に疲弊するんです。全部通すとくたくたで、思わずフランクに「キーが高すぎて、もう声が出ないよ……」と言ったら、「それが正解だ! 僕の楽曲はexhaust(使い果たす、疲れさせる)するんだ。そうさせるために書いているからね」と。つまりギリギリ、限界に達することで伝わることがある、それを計算した楽曲。それは、この作品にも言えること。精神的に追い詰められたり、人格が変わったり……その瞬間やキャラクターの張り詰めたテンションを表現するための楽曲は役者泣かせです。もちろん達成感もありますが、やっぱり疲れるでしょうね(笑)。

今、稽古をしている(取材時)『東京ラブストーリー』の音楽を手掛けるジェイソン(・ハウランド)は長年ワイルドホーンと仕事をしてきました。『ジキル&ハイド』にもコンダクターとして初演から携わっているので、本作品を知り尽くしています。そのジェイソンも「あれはキーが高いし、しんどいよね。ちゃんとトレーニングをしないとね」と言っていました。

──感情の高ぶりと楽曲の親和性、観客としては心地よく拝見しております。楽曲が導いてくれる境地、今回も楽しみにしています!


【カッキーの素晴らしさを広めています/上川一哉は“なんでもできる人”】



──続いてはお二人について伺います。お互いに役者としてここがスゴイ!と思う点は。

上川さん)
カッキーはまず声が素敵、そしてこのルックスです。カッキーが劇団を離れてからも、この役、カッキーがいたらやっていただろうなとか、カッキーだったらどうやったかなと考えることもありました。

柿澤さん)
本当に?

上川さん)
本当に。劇団時代よりさらにたくさんの経験を積んだカッキーが演じる『ジキル&ハイド』では、カッキーの歌が聴けるということが本当に楽しみだよ。自分も出るんだけど(笑)。

──退団後の舞台などは。

上川さん)
『デスノート』を映像で見ました。似合うよね、あの感じ。あと『東京ラブストーリー』の歌唱動画もよく聴いています。今、共演している四季時代の同期にも「あれ見た?」と言って一緒に見るなど、その素晴らしさを広めています(笑)。

柿澤さん)
笑!!
僕が覚えているのは、劇団四季の入団オーディションのダンス審査で上川くんがお手本として前で踊っていたこと。もちろんその時は上川くんという認識はなかったけど、「なんだ、このカッコイイ人は!」って。その時から僕にとっては上川一哉は“なんでもできる人”です。

上川さん)
本当に僕だった?

柿澤さん)
間違いない! お手本だから本気では踊らないんですよ。軽く踊っているんだけど、それが様(さま)になっていて、「劇団四季、やばいな。これ絶対落ちたな」と思った(笑)。

そして入団して最初の作品『人間になりたがった猫』では上川くんは主役のライオネル、僕はアンサンブルでした。その時になぜか浅利(慶太)先生から「ライオネルを勉強しておくように」と言われ、その後、ライオネル役で出演することになりました。その時も踊れない僕にたくさんのことを教えてくれました。でも、バレエなどの素養が違うので彼のようには踊れなくてシンプルな技に変えて踊っていました。

上川さん)
そんなこともあったね。でもカッキーもしっかりと踊っていたよ。今思い出したのはカッキーのライオネル、猫としての歩き方がかわいくて!



柿澤さん)
それはかわいいんじゃなくて、上手くできていなかっただけ (笑)。その後も『春のめざめ』でメルヒオール役を一緒に勉強したね。あれもキーが高めだったけど、上川くんはスコーンと抜ける声が出ていたよね。

上川さん)
『春のめざめ』は大変だったという印象が強くて。僕は踊りながら歌うほうが安心なんだよね。いまだに止まって歌えない(笑)。『ジキル&ハイド』では二人で歌って踊って……は残念ながらないね。ちなみに最近は踊ってる?

柿澤さん)
全然。たまにレッスンには行くけど、まったくダメ(笑)。
それにしても上川くんと僕が、今またこうして一緒にいるって不思議だよね。これもご縁なんだろうな。

上川さん)
本当に。


【新しい風になる/僕がやる意義】



──稽古に向けて楽しみにされていることは。

柿澤さん)
今回のカンパニーには顔なじみの方もたくさんいますし、実は『東京ラブストーリー』で“初”共演中の(笹本)玲奈ちゃんとも連続共演となります。玲奈ちゃんとは一緒にこの2作品に挑むことで、「一生の戦友になるね」と話しています。すでに『ジキル&ハイド』を経験している玲奈ちゃんの存在は心強いですし、いろいろと教えてもらうことになると思います。ほかのみなさんも、当然のことなのかもしれませんが、まず全員歌が上手い。そこが楽しみです。石丸さんとのWキャストというのもプレッシャーもありますが、石丸さんは舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』のロングラン公演に出演しながらって……、すごいですよね。誰よりも大変なマルさんの前で、僕が「疲れた」「大変だ」なんて絶対に言えません(笑)。

──上川さんはいかがですか。

上川さん)
この作品に限らず、劇団を辞めてからのこの一年は、どの現場も初めましての方ばかりです。劇団という家族的な仲間たちとの作品作りとはまた違う刺激をいただく毎日。いろんな経験をされた方が集まって作るという面白さも感じますし、たくさんの学びもいただいています。今回は、そこにカッキーがいる安心感もある。稽古場での再会も楽しみです。

──柿澤さんは劇団を退団後、数多くのプロデュース公演にも参加されてきました。

柿澤さん)
当然ながら、最初の頃は一緒に仕事をする人たちが初めての方ばかりという環境。そこでの経験は僕の財産、糧になっていますし、振り返ってみると楽しかったと言えるかな。本当にいろんな人がいらっしゃるので。ミュージカルの現場の常識と、芝居だけ、たとえば蜷川(幸雄)さんの現場の常識はまったく違いますし、そこで面を食らうことも多々ありました。それは今でも変わりません。もちろん楽しいことばかりではないけれど、それでも僕は新しい出会いを求めてしまう。今回の『ジキル&ハイド』でも、初めての方との出会いはもちろん、知っている方でもその人の初めての顔、姿が見られることは楽しみですし、それに刺激を受けて自分を奮い立たせることができる。これからもそれがずっと続いていくんだろうなと思います。

──最後にひと言。

上川さん)
僕にとって大きな挑戦になると思っています。カッキーや共演者のみなさんからたくさんの刺激をいただいて、新しい風になれるように頑張りたいと思います。

柿澤さん)
名作、王道と言われている『ジキル&ハイド』で主演、生半可な気持ちではできないと覚悟しています。その上で、初参加だからこそできる新しい『ジキル&ハイド』を作る、それが“僕がやる意義”だと思っています。この作品を既に観たことのある方も、はじめての方も、新鮮な気持ちでご覧いただけるように、お稽古を頑張りたいと思います。



終始リラックスした雰囲気で進むインタビューからも、お二人のいい関係が伝わってまいりました! お二人がヘンリー・ジキルとジョン・アターソンとして、物語の中でどんな関係性を見せるのかますます楽しみです。公演は3月11日、東京国際フォーラムホールCにて開幕、その後、名古屋、山形、大阪のツアー公演が予定されています。お見逃しなく!


【公演情報】
ミュージカル『ジキル&ハイド』
2023年3月11日(土)~3月28日(火)@東京国際フォーラム ホールC

<名古屋公演>
2023年4月8日(土)、9日(日)@愛知県芸術劇場 大ホール
<山形公演>
2023年4月15日(土)、16日(日)@やまぎん県民ホール
<大阪公演>
2023年4月20日(木)~23日(日)@梅田芸術劇場メインホール

<スタッフ>
原作:R.L.スティーヴンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎

<キャスト>
ヘンリー・ジキル/エドワード・ ハイド(Wキャスト):石丸幹二、柿澤勇人
ルーシー・ハリス(Wキャスト):笹本玲奈、真彩希帆
エマ・カルー(Wキャスト):Dream Ami、桜井玲香
ジョン・アターソン(Wキャスト)石井一孝、上川一哉
サイモン・ストライド:畠中 洋
執事 プール:佐藤 誓
ダンヴァース ・カルー 卿:栗原英雄

宮川 浩、川口竜也、伊藤俊彦、松之木天辺、塩田朋子

麻田キョウヤ、岡 施孜、上條 駿、川島大典
彩橋みゆ、真記子、町屋美咲、松永トモカ、三木麻衣子、玲実くれあ(五十音順)
スウィング:川口大地、舩山智香子

公演HP:https://horipro-stage.jp/stage/jekyllandhyde2023/

おけぴ取材班:chiaki(インタビュー・文)撮影:おけぴ管理人

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