シリーズ【未来につなぐもの】Ⅲ 新国立劇場『楽園』
話題の作家・山田佳奈と注目の演出家・眞鍋卓嗣が、新国立劇場初登場!
日本のどこかの島を舞台に繰り広げられる、女たちの物語。
「様々な価値観が急速で変化していく新しい時代に、自分はどうあるべきなのか──」
「わたしは不完全を受け入れて、歴史を受け容れたい。まずは知るところから始めたいと考えています」(山田佳奈さんコメントより)
「不安や不安定とどう付き合うか。それが、これから求められる人間的強さになるのかもしれない」
「どのような化学反応が起きるか予想がつかないが、みんなで、この大きなテーマである『未来につなぐもの』を紡ぎ出したいと思っている」(眞鍋卓嗣さんコメントより)日本の劇作家の新作をお届けするシリーズ【未来につなぐもの】第三弾は、□字ック主宰、演出家、映画監督など幅広く活動する
山田佳奈の新作です。
伝統継承と変化に揺れる地方都市の姿を通して現代の日本が抱える問題が浮かび上がります。
演出は、劇団俳優座に所属し、劇団外でも幅広く活躍する注目の
眞鍋卓嗣。話題の作家と演出家が「今」をどのように表現するのか、ご期待ください。
作 山田佳奈からのメッセージ
様々な価値観が急速で変化していく新しい時代に、自分はどうあるべきなのか――。
「未来につなぐもの」というテーマで戯曲を書きおろすことが決まったとき、わたしの頭に真っ先に思い浮かんだのは、取材で訪れた離島のことでした。手付かずの大自然が残る絶景に、息を吞むほど美しい海。そこにはまさに天国のような世界が拡がっていて、かつてこの島が戦場であったという事実が信じ難いものでもありました。
いつの時代も我々は懸命に生きて、その度に変化してきました。それらは動物の進化・絶滅と同じで、生き残るために導き出した正しい選択の成果です。しかし現代では必要以上に正しい選択を重視するようになり、ときに反対の意思を示す対象を否定して攻撃するようにもなりました。果たして正しい選択とは何なのでしょう。持続可能な未来を築くためにSDGsの目標が掲げられ、環境、貧困、教育、ジェンダーギャップなど多くの問題を前に、我々は何を選んで、何を考えなければならないのか。いままでと同じやり方では上手くいかない中で、将来に対する悲観的な気持ちも湧いてきますが、これからの進化に向かって、女性として何を理想としていくのか。それら全てに結論を出すのはとても難しいことだけど、わたしは不完全を受け入れて、歴史を受け容れたい。まずは知るところから始めたいと考えています。
演出 眞鍋卓嗣からのメッセージ
不安は分断を生み出す。私たちは不安だから意見の違う相手を嫌う。不安だからレッテルを貼り知ったつもりになる。不安だから反対の立場の人間を切り落とそうとする。しかし、その分断がどれだけ意味のあることなのか。結局は敵だと思っている人間も自分と地続きの場所に立っている。相手の場所を切り崩せば、自分の足場を少なくしていることに変わりはない。不安や不安定とどう付き合うか。それが、これから求められる人間的強さになるのかもしれない。人は不安定から逃げるために決めつけたがるが、それでうまくいく世の中とは到底思えない。
山田佳奈さんと作品について打ち合わせをさせていただいているうちに、このようなことが頭に浮かんできた。山田さんは非常に熱心で、これまでのご自身のスタイルに留まらずに描こうとする強い意欲を感じる。その熱に私も存分に応えたい。出演者もスタッフも素晴らしい方々に集まっていただくことができた。はじめましての方も多く、どのような化学反応が起きるか予想がつかないが、みんなで、この大きなテーマである「未来につなぐもの」を紡ぎ出したいと思っている。
あらすじ
日本のどこかの島。年に一度の神事の日。
世話役の「おばさん」(中原三千代)は、「村長の娘」(清水直子)と「区長の嫁」(深谷美歩)の鉢合わせに気が重いと自分の「娘」(西尾まり)にこぼしている。 村民の高齢化で、「若い子」(豊原江理佳)ら移住者に頼らざるを得ない昨今、旧来の村長と革新派の区長が対立しているからだ。
そんな中、テレビ局の「東京の人」(土居志央梨)は、神事を撮影しようと隠しカメラをしのばせる。カメラに気づいた神職の「巫(カンナギ)さま」(増子倭文江)は......。
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました