ミュージカル『ジキル&ハイド』2023、開幕! ゲネプロレポート!

石丸幹二さんと柿澤勇人さんがWキャストで主演を務めるミュージカル『ジキル&ハイド』開幕!!

2001年の日本初演以来、観る者を虜にしてきたミュージカル『ジキル&ハイド』。初代の鹿賀丈史さんから石丸幹二さんがタイトルロールを引き継いだのが2011年のこと。以来、10年以上にわたり主演を務めてきた石丸幹二さんは今回が最後と公演発表時から公言。同時に、3代目となる柿澤勇人さんの同役デビューも発表され、バトンを繋ぐ“Wキャスト体制”での上演がここに実現。これには開幕前から話題沸騰!

新キャスト多数出演のヘンリー・ジキル/エドワード・ハイド:柿澤勇人さんバージョンのゲネプロレポートをお届けします。



「人間の善と悪の両極端の性格を分離できれば、人間のあらゆる悪を制御し、最終的には消し去ることが出来る」

愛する父のため研究に取り組む青年ヘンリー・ジキルが辿る運命をフランク・ワイルドホーンさんによるドラマティックな楽曲で綴る傑作ミュージカル。

ものがたり
19世紀のロンドン。医師であり科学者であるヘンリー・ジキル(石丸幹二/柿澤勇人)は、自身の研究に対する人体実験の承諾を得ようと病院の理事会にやってくる。ジキルの婚約者エマ(Dream Ami/桜井玲香)の父親であるダンヴァース卿(栗原英雄)のとりなしもむなしく、秘書官のストライド(畠中 洋)の思惑もあり神への冒涜だと拒絶、却下される。気落ちしたジキルを親友の弁護士アターソン(石井一孝/上川一哉)はジキルを場末の売春宿「どん底」へ連れ出す。
そこで出会った娼婦ルーシー(笹本玲奈/真彩希帆)の言葉、「(私を)自分で試してみれば?」にヒントを得たジキルは自らの身体で実験することを思いつく。調合した薬品を飲み干すと……全身を貫く激しい痛み―息も絶え絶え、苦痛に悶えるジキル。腰が曲がり、声はかすれ、まるで獣 — この反応は一体何なのか!そしてとうとう現れたハイド。その頃、ロンドンの街では、謎に満ちた恐怖の連続殺人事件が発生。人々は恐怖に震えあがる。犯人は……。一方、エマや執事プール(佐藤 誓)の心配をよそに研究に没頭していくジキル。果たしてジキルの運命はいかに……。

稽古に入る前のインタビューで「この物語はジキル博士が病院の理事会で生意気な若造として提案を突っぱねられるシーンから始まる──、そこでの彼は“青二才”なんです。だったら僕の年齢やキャリアだからこそ表現できるものもあるのではないか」と語っていた柿澤さん。冒頭の「知りたい」から、若さゆえの絶対的な自信、真っ直ぐすぎる志をもつジキルの危うさを歌と芝居で見せつける、柿澤ジキルここにあり!です。

自らの実験への許可を請うジキルに立ちはだかるのが、続投組も多くベテランぞろいの俳優たちが演じる病院の理事会メンバー。若造をいたぶる態度が、より一層露悪的に映ります。エマに横恋慕するストライドを筆頭に、揃いも揃ってふてぶてしいことと言ったら!(と言いたくなるほど完成度が高いのです)



ジキルに寄り添うのは、親友のジョン・アターソン(上川一哉さん)、婚約者のエマの父親で理事会のメンバーでもあるダンヴァース・カルー卿(栗原英雄さん)、そしてエマ(桜井玲香さん)


栗原英雄さんのダンヴァース卿はジキルを本当の息子のように思って助言する温かさと娘の幸せを誰よりも願う強さを見せます。

上川一哉さんの柔らかく人間味あふれるアターソン。誠実で常識的、ただし四角四面ではない。ジキルにはない社交性と処世術に長けた魅力的な人物、そしてヘンリーのために喜び、怒り、悲しむ親友であり、ジキルの弁護士。劇団時代から切磋琢磨してきた柿澤さんと上川さん、物語の中の関係性にもお二人がともに歩んできた時間や信頼関係が自然ににじみ出ているよう。また、「嘘の仮面」では力強い歌声とともに切れのあるダンスでも目を引きます。緩急自在な動きは楽曲のスリリングさを増幅させ、また、表情にもハッとさせられます。これはほかのみなさんについて言えることで、それぞれの熱、動きと歌声がひとつになり客席にとてつもないエネルギーとして届けられる。視覚、聴覚で時代の空気を体現する、幕開きから心を掴むジキハイの魅力を改めて感じました。



周囲の反対にも決して意思を曲げないエマ
そんなエマに安らぎを感じていることのわかるジキルの柔らかな表情


ハイドに傷つけられたルーシーの背中を見てすべてを察するジキルの「本当にすまない」の言葉が悲しく響く。同情、愛情……繊細なメロディも。


二人のヒロイン、ジキルの婚約者エマには桜井玲香さん、娼婦ルーシーには真彩希帆さん。お屋敷は上流階級の社交場、娘の幸せを祈る父の愛に包まれるエマ、場末の売春宿“どん底”でオーナーに虐げられるルーシー、なにもかもが真逆の二人がジキルとの関係の中でみせる変化。桜井さんのエマは可憐さと強さ、真彩さんは儚さと弱さが印象的。ロンドンの闇に生きるルーシー、「あんなひとが」では夢見る少女のような、「新たな生活」では真っ白な希望に満ち溢れた真彩さんのルーシーの美しさ。対してすべてを受け入れるような桜井さんのエマの包容力。それに至るまでの葛藤や不安を乗り越え、引き受ける覚悟にグッときます。そして光と影のようなエマとルーシーですが、たまたま生まれてきた境遇がそうだったというだけで、本質は似ている二人にも見えてきます。




そして、今回ミュージカル『ジキル&ハイド』のタイトルロールデビューされたのが柿澤勇人さんです。ここまでのお写真でも様々な顔を見せている柿澤さん。そんな柿澤ジキルを通して見る作品もまた“新しい顔”を見せます。

等身大の柿澤ジキルは青臭く一本気。名曲「時が来た」で見せる迷いのなさ、音楽に乗りどんどん上がるボルテージ、そして恍惚感。歌い終えた瞬間の、指揮の塩田明弘さんの大きな頷きと客席から小さく聞こえたブラボーの声がその素晴らしさを物語っていました。そしてそこから生まれるハイドは……これが、地を這う凄みをきかせてくるかと思いきや、突き抜けた躍動を感じさせるのです。予想を軽く飛び越え、もはや衝撃を受ける観客をあざ笑うかのような、これまで見たことのないハイド(逆に怖さ増!)。それでいて決して奇をてらったものではなく確かにそこにある説得力。人物像への緻密な芝居的アプローチがあってこその柿澤ハイドです。 終盤のジキルvsハイドの凄まじい闘い。観客の意識のすべてが舞台にいる1人の人間ただその一点に注がれ、息を飲むような迫力は圧巻です。思い出すだけでもぞくぞくします。

また本作は芝居だけで成立するものではなく、その大きな魅力のひとつは音楽。「俳優を限界まで疲弊させる楽曲。しっかりとトレーニングしなければ」と本作楽曲への意気込みを語っていた柿澤さんですが、荒波もあれば凪もある、フランク・ワイルドホーンが生み出す音楽の大海原をいきいきと泳いでいるような。それくらいに音楽を味方につけていると感じました。確かにお疲れにはなると思いますが。



舞台上を照らす照明も物語を象徴
光と影、善と悪、本音と建て前……相反するものでありながらそれらは“一対”であり続ける。人間や社会を鋭く描く本作から届けられる“問い”はいつの世にも響きます

こうして新しく誕生した柿澤ジキル。その年齢の、そのキャリアの俳優にしか出せない魅力というものを確かに感じました。一方で、今年の公演で卒業される、10年以上にわたり同役を務めてきた石丸幹二さんにもやはり今の石丸さんだからこそという魅力がギュギュッと詰まっていることでしょう。どちらがいいというのではなく、こうしてバトンが受け継がれていくということを嬉しく思う、2023年“Wキャスト体制”で上演されるミュージカル『ジキル&ハイド』です。そして……やっぱりジキハイは素晴らしい!

最後に、開幕に際し寄せられたコメントを。

「5年前の前回のジキルは色に例えるとグレーからスタートしましたが、今回は冒頭、真っ日でいたいと思います。それが理事会で受けた衝撃やダンヴァース邸での人々とのやりとりによって、自分の中の黒いものが滲み出していく。 徐々にグレーが増したところで<時が来た〉を迎える、そんな作り方になったかな。歳を重ねたことにより、人間のさまざまな側面についてのストックも増えたはず。存分に出し切りたいと思います」(石丸さん)

「これほどまでに身体と心、そして喉を酷使するとは、思ってもいませんでした。初演の鹿賀丈史さん、2代目の石丸幹二さんがこの作品をお1人で務められていたことが、今でも信じられません。人間の二面性を体現するということが、それほど果てしない道なんだと感じています。そして、その先に見えるものが何なのか、今はまだ僕もわかっていませんが、それを楽しみに、自身の実験が成功するよう、日々頑張りたいと思います!」(柿澤さん)


ここからも俳優の心技体、“今”をすべて投入してこそ立ち上がるジキル&ハイドなのだということが伝わります。「石丸ジキル、最後の変身」「柿澤ジキル、実験開始」そのキャッチコピーに偽りなし!
【公演情報】
ミュージカル『ジキル&ハイド』
2023年3月11日(土)~3月28日(火)@東京国際フォーラム ホールC

<名古屋公演>
2023年4月8日(土)、9日(日)@愛知県芸術劇場 大ホール
<山形公演>
2023年4月15日(土)、16日(日)@やまぎん県民ホール
<大阪公演>
2023年4月20日(木)~23日(日)@梅田芸術劇場メインホール

<スタッフ>
原作:R.L.スティーヴンソン
音楽:フランク・ワイルドホーン
脚本・詞:レスリー・ブリカッス
演出:山田和也
上演台本・詞:髙平哲郎

<キャスト>
ヘンリー・ジキル/エドワード・ ハイド(Wキャスト):石丸幹二、柿澤勇人
ルーシー・ハリス(Wキャスト):笹本玲奈、真彩希帆
エマ・カルー(Wキャスト):Dream Ami、桜井玲香
ジョン・アターソン(Wキャスト)石井一孝、上川一哉
サイモン・ストライド:畠中 洋
執事 プール:佐藤 誓
ダンヴァース ・カルー 卿:栗原英雄

宮川 浩、川口竜也、伊藤俊彦、松之木天辺、塩田朋子

麻田キョウヤ、岡 施孜、上條 駿、川島大典
彩橋みゆ、真記子、町屋美咲、松永トモカ、三木麻衣子、玲実くれあ(五十音順)
スウィング:川口大地、舩山智香子

ミュージカル『ジキル&ハイド』公演HP

写真提供:東宝演劇部
おけぴ取材班:chiaki(取材・文)監修:おけぴ管理人

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