新国立劇場 シェイクスピア、ダークコメディ交互上演『尺には尺を』『終わりよければすべてよし』制作発表会見のオフィシャルレポートが届きました!

演出を担う鵜山 仁と総勢19名のキャストが出席
岡本健一、浦井健治、中嶋朋子、ソニンらがメインキャストを演じる『尺には尺を』と『終わりよければすべてよし』の制作発表会見が8月31日、新国立劇場で行われた。
この企画はシェイクスピアの戯曲の中でも“ダークコメディ”と呼ばれる2作を、同時に交互上演するという前代未聞の試み。会見には「新国立劇場シェイクスピア歴史劇シリーズ」に続き、演出を担う鵜山 仁と総勢19名のキャストが出席。それぞれが2作品で別の役を演じることから、『尺には尺を』で主にメインの役を演じる=黒、『終わりよければすべてよし』で主にメインの役=白という衣裳で登壇した。
まず今回の企画意図について、演出の鵜山は「それを説明するのは結構大変。1分で喋らなきゃいけないと言われているので」と笑いを誘いつつ、次のように語った。
「2作とも“ベッド・トリック”(期待していたのとは別の相手とベッドを共にさせるという仕掛け)が入っている芝居です。人間は必ず過ちを犯すけれど、それを愛で救済できるのかという大きなテーマを描いていると同時に、演劇は世界を救済できるのか、演じることによって物の見方や感じ方が変わるのか、宇宙のシステムやさまざまな過ちを浄化できるのか、ということまでを考えさせる2作品だと思います。それを歴史劇シリーズの1作目『ヘンリー六世』から一緒にやってきた俳優の皆さん、新しく入ってこられた方達と、裏からも表からも重層的にやってみようという気持ちです」続くキャストのコメントは以下の通り。
岡本
「この企画を聞いた時、一番惹かれたのはこのカンパニーでもう一度できることとタイトルですね。『尺には尺を』というのは何の尺なのか。自分にとっての尺なのか、それぞれの尺についての話になるんですかね。『終わりよければ〜』で僕は死にかけているフランス王を演じるんですけれども、これもタイトルに惹かれました。今いろんな世の中の流れがありますが、何とか“終わりよければすべてよし”の方向で進んでいけばいいなと思います。芝居の中に国を動かす権力者や市井の人たちが出てきたりするので、ぜひ劇場に足を運んでいただいて、いろいろな発見をしていたければいいなと。何が生きる上で大切なのかがいっぱい詰まった作品なので、新国立劇場という国の劇場で、演劇の楽しさを若い人から年配の方、演劇を初めて観る方たちにも楽しんでいただけるように、みんなで頑張っています」浦井
「『ヘンリー六世』でこの座組に初めて参加させていただいた時のことを今思い出していました。(今は亡くなられた)中嶋しゅうさん、金内喜久夫さん、渡辺 徹さんをはじめ諸先輩方と一緒にこのように会見に並ばせていただいて、「浦井健治って誰だ?」という感じで何もできずにいたんですけれども。歴史劇シリーズから続く、何か演劇の血筋のようなもの感じながら、2作品交互上演という過酷なトライに飛び込めることを幸せに思っています」中嶋
「『ヘンリー六世』という3部作、9時間のお芝居でシェイクスピアの歴史劇シリーズを始めてから、このチームでずっと幸せな時間を過ごしてきました。最初に3部をいっぺんにやったので、2本はできるかなと思ったんですけれど。蓋を開けてみたら、全然違うお話2つというのはかなりハードルが高いなと感じています。でもこの2本を同時にやるという決定がなされたことはすごく素敵なことであって。それぞれ単体で読むよりも2本一緒に読むと印象が全然違ってくるんです。これはマジックだなと思って、それらを自らの肉体を使って演じられるのは本当に楽しみでしかありません」ソニン
「鵜山さん演出の新国立劇場のシェイクスピア作品に戻って来られたことが嬉しくて、お話をいただいた時は二つ返事でお受けしました。どちらも男女の愛を中心にしている作品、女性が活躍する話であり、問題作と言われています。読めば読むほどシェイクスピアが描く女性は難しいなと思いながら悶々としている日々ですが、シェイクスピアならではの何重にも重なる比喩や皮肉があるので。それをリアリティを持って、2役とも魅力的に演じられるようにお稽古に励んでまいります」『尺には尺を』では岡本とソニンが、『終わりよければ~』では浦井と中嶋が、男女の愛を描いた劇中、いずれも相思相愛とは思えない(!?)カップルを演じる。
ソニン
「私が演じる2役は、いずれも処女で貞淑であるっていうのが共通点としてあるんです。何も知らない純粋な女の子が秘めている何か、そして人間臭さが見えてくるように作っていきたいです」中嶋
「『終わりよければ〜』はシェイクスピア作品の中では唯一女性のセリフでスタートする作品。どちらの作品にも女性の体感みたいなものが含まれていて、人間臭いところが魅力であり、生き物としての人間をすごく感じながら演じさせていただいている気がします」深く関わる男女を演じるお互いの印象について、岡本は
「ソニンは芯が強くて妙に色っぽいんです。『尺には尺を』で演じるアンジェロという役は堅物で冷血で、ソニンが演じるイザベラに出会って自分の価値観が崩れていく。なんとか処女を奪いたい想いに駆られてしまう役ですが、本読みをしているだけでそれが信じられる、引き込まれるところがいっぱいあります」。岡本のこの発言を受けて、ソニンは
「恥ずかしいですね(笑)。以前別の劇場のシェイクスピア劇でも、岡本さんに口説かれる役でしたが、その時から変わらず、年齢を重ねても色気がある方なので、そういう関係性になるのは何も心配ないなと。今回は自覚なく相手を魅了してしまう役なので、試行錯誤していますが、岡本さんはいろんな可能性を探ってくださるので、ワクワクが止まらないです」と語った。
また、浦井は
「『終わりよければ〜』で演じるバートラムという役が最初、中嶋さんが演じるヘレナに対してあまりにもひどいと思った」とのこと。
「でも本を読んでいくうちに実はヘレナの方が強いなと感じてきて。物語の終盤に向かって、バートラムは“塩をかけられたナメクジみたいになっていけば”と鵜山さんに言われています」。中嶋は、浦井のコメントを受け
「ナメクジって、浦井君、そういうの好きでしょう?(笑)」と笑いを誘いつつ、
「浦井君は王子様だな、キラキラしているなっていう時と、こういうところでずっこけるんだねっていう、何が出てくるかわからないところが楽しくて。急に化けるので。浦井君のことが大好きなので、今回『大好き!』と大っぴらに言える役で、嬉しいです」と茶目っ気たっぷりに語った。
その他、ベテランから若手まで実力派揃いのキャストたちも意気込みを熱く語った。公演後に行われる「シアタートーク」に加え、シェイクスピア歴史劇シリーズ皆勤賞の岡本・浦井をはじめとする俳優たちによるトークなども予定されている公演は、10月18日〜11月19日まで東京・新国立劇場 中劇場で行われる。
取材・文:宇田夏苗
撮影:阿部章仁
この記事は公演主催者の情報提供によりおけぴネットが作成しました