「TOHO MUSICAL LAB.」第2弾は東宝ミュージカルに初登場となるクリエイター、高羽 彩さん(タカハ劇団)と池田 亮さん(ゆうめい)が脚本・演出を担当する、出来たてほやほやのミュージカル2作品『わたしを、褒めて』と『DESK』の同時上演! 一粒で二度おいしいどころか、その美味しさが二倍にも三倍にもなりそうな素敵な2作品同時上演への期待が高まる取材会の様子をレポートいたします。
お集まりいただいたのは『わたしを、褒めて』脚本・演出の高羽 彩さん(タカハ劇団)、主演の有澤樟太郎さん、『DESK』作詞・脚本・演出の池田亮さん(ゆうめい)、主演の東 啓介さんです。
──まずは「TOHO MUSICAL LAB.」参加の意気込みからお聞かせください。高羽 彩さん)まず、私自身の大きな野望として、ミュージカル作りたいという思いはずっと抱いていました。今までに書いた作品でも、これがミュージカルになったら面白いだろうなとも考えていて。ただ、今の日本の演劇界で国産のオリジナルミュージカルの創作にチャレンジできる環境はなかなかありません。とくに私のように小劇場をメインに活動しているユニットでは尚更です。今回のお話をいただき、これはチャンスだと思いました! 自分にとっても勉強の場になるだけでなく、日本の演劇界、ミュージカル界にとってすごく意義のあることだと思うので、みんなオリジナルを作ろうぜ!と心の底から思っています。
今回の作品では“初日直前の舞台裏”を描きます。最もバタバタしている様子を、ドタバタコメディで描くバックステージもの。裏方のスタッフのプロフェッショナルなお仕事があってはじめて作品がお客様の元へ届くということを知っていただくことでお芝居を見るのがもっと楽しく、好きになっていただきたいということ加えて、日々、悔しさを飲み込んだり、悲しみを乗り越えたりしながら暮らす現代人、客席にいらっしゃるお一人お一人へのエールを届けたいという思いもあります。
有澤樟太郎さん)まず、「TOHO MUSICAL LAB.」という素敵な企画に参加できることを楽しみにしています。高羽さんとご一緒するのは2度目、今回の脚本にも大いに“高羽さんらしさ”を感じました。「高羽さんの本だな」と!こうしてまた高羽さんと、そして共演経験のある美弥(るりか)さん、屋比久(知奈)ちゃん、そしてはじめましてのエリアンナさんという“すごい方々”とご一緒できることが楽しみです。僕は“実験”というワードも大好きなので、おそらく稽古は短い期間になりますが、いろんなことにチャレンジして高羽さんの作品に込めた思いに自分の思いも乗せてお客様にお届けしたいと思います。
池田 亮さん)“ミュージカル”に“ラボ”が付いている「TOHO MUSICAL LAB.」については、実験、開発、研究をするところだと思っています。そこでは、やっぱり今までにないミュージカルを作りたいと思いました。ちょうど同じころ、アニメーション会社で働いている方や、ほかにもいろんな自分の周りの人から仕事についての話を聞く機会があり、いわゆる“お仕事もの”、現代の働く人の声を歌にしたら、そのパワーはすさまじいものがある! それを新作ミュージカルとして舞台に乗せたら それこそ新しいミュージカルになるのではないかと思い『DESK』を執筆いたしました。このように素晴らしいキャスト、スタッフが揃う「TOHO MUSICAL LAB.」は、自分にとって、本当に贅沢な時間、貴重な機会となります。そして僕らだけでなく、観客のみなさんも含めたみんなで新しいものを見つけられたらいいなと思っています。
東 啓介さん)「TOHO MUSICAL LAB.」、“実験”というところが本当に面白いと思っています。こうして日本発のオリジナルミュージカルを作るという実験をたくさんしようという試みは素敵ですし、そこに参加できることを嬉しく、誇りに思います。このような実験を繰り返すことで、ミュージカルを好きになる方が増えて、次はこっちの作品を観てみたいなと繋がっていく。ミュージカル界、オリジナル作品の創作への活気が生まれる、そのきっかけとなりうる企画だと思っています。今回の作品は、お仕事ものの短編で登場人物たちも等身大です。ミュージカルって全然重苦しいものではなく、それでいて勇気づけられたり、そこで描かれる職業への興味がわいたり、自分に置き換えて共感したり……舞台を観ることで人生が少し豊かになる。そんな作品になればいいなと思います。
──今回の上演において、ミュージカルだからできることはどの辺りにあると感じていらっしゃいますか。有澤さん)今回のようなオリジナルもあれば海外作品もある、いろんなミュージカルがありますが、僕自身も、周りの反応を見ていてもみんなミュージカルが大好きなんです。今回は、ファンタジーというより、日常を描いたお仕事ものなので、歌詞のひと言ひと言が刺さり、それによって前向きになれるようなところがあります。こうして心にダイレクトに届けられるというミュージカルの魅力を感じられる作品になると思います。
高羽さん)今回、ともに“お仕事ものの短編2作品同時上演”になります。これはまったくの偶然です(笑)。
ストレートプレイがコンコンと心の扉をノックするとしたら、ミュージカルは、音楽の力で、ある種、「おりゃー!」という感じに(笑)、強制的にお客様の心の扉を開き、心に直接触れることができる。もっと言えば、心に触れて、さらにグイッと掴める(笑)。それがミュージカルの強みだと思います。
そんなミュージカルという非日常空間で日常を描くことによって、みなさんの毎日にも歌が溢れ、通勤電車に乗る時にテーマソングが流れるような──お客様の日常に非日常を届けるという素敵なことができるのではないかと考えています。
池田さん)はじめて観た市民ミュージカルで、登場人物が歌い出した瞬間にとても感動したことを覚えています。心の底からグツグツグツグツわき上がる、言葉にできないものを感じました。これは何だろうと考えた時、それが歌の力なのだと。ミュージカルの登場人物が歌う歌は、観客の心に働きかけるリアリティをもっているからこそ感情が動かされる。僕にとってミュージカルは、そんな風に非日常かつリアリティを持つもの。そこが今回のバックステージものに繋がり、その思いで歌(詞)を書きました。
東さん)仕事や学校へ行く時に音楽を聴いて元気を出したり、その曲を作ったアーティストの気持ちに重ねて歌うことで気持ちが晴れたり、思いを歌うことってすごく素敵ですよね。ミュージカルもそれと一緒だと思っています。だからミュージカルでの歌は思っていることを打ち明けるための一つツールだと捉えています。言いたいことを溜めるのは結構ストレス、今回の作品でも心情を歌にすることでポップになったり、新しい色が見えてくる。そこがミュージカルのスゴイところだと思います。だからみんなにも、たくさん歌って欲しい! 恥ずかしいかもしれないけど(笑)。
──(クリエイターのお二人に)シアタークリエでの創作について。池田さん)シアタークリエという空間を、短編だからと縮こまらずに大きく使っていきたいと思います。そこを意識しています。そしてネタバレになっちゃうのですがシアタークリエならではとなると、やっぱり“盆”です。
東さん)あるものは使った方がいいです!
有澤さん)(シアタークリエで上演中のミュージカル)『のだめカンタービレ』でも回してます!
東さん)そう、回るなら回した方がいい!
池田さん)『のだめ~』も拝見させていただいて、めちゃくちゃ参考にさせていただいております(笑)!
高羽さん)私も図面を見て、盆があるなぁ……と思ったんです。でも回さないです(笑)。誰かが回しそうって思って!
池田さん)誰かがって、僕しかいないじゃないですか(笑)!
高羽さん)(笑)! 舞台機構的なところでシアタークリエならではというのはそこまで意識していませんが、名だたるミュージカル作品が上演されているこの空間に集う人は、お客様もスタッフもみんなミュージカル好きだと私は決めつけています(笑)。このミュージカル愛にあふれた空間、その愛を信じて、お客様と愛情を交換するような感覚で臨むのがなにより大切なことだと思っています。
──音楽の使い方について。池田さん)音楽は、“意外に”明るいです!
東さん)確かに意外(笑)、超楽しみなんですけど!
池田さん)自分の中では、大変な時こそ明るく元気に叫んだ方がいい!と思っています。そこで開放感が生まれるというか。たとえばすごく疲れた時に妙にテンションが上がるというような(笑)、そういうものになりそうです。
東さん)裏腹な感じですね!
高羽さん)私は自分がミュージカルを観る時、なるべく長い時間音楽が流れていてほしいと思うんです。なるべく長い時間歌っていてほしい(笑)。ですので、基本的には常に音があることを目指します。バックステージものなので、バンドのメンバーさんも含め音を出してもらおうかと。あとは短編ですが、ちゃんと起承転結を感じる音楽の流れを作りたいと思っています。テーマソングがあり、激しい感じ、バラード、最後はフィナーレで再びテーマソングというような、ミニマムだけど王道のミュージカルを目指します! ポップでパワフル、作品にぴったりな編成の生バンドでお届けします。
──生演奏は嬉しいです!池田さん)僕もめちゃくちゃ好きなんです。生演奏ってだけで、いいもの観たなと思ってしまうくらいの人間です(笑)。今回、生演奏だとお聞きして、本当にありがとうございますって感じです!
有澤さん)生演奏はいいですよね! 僕も、今、ヴァイオリンを弾いているんですけど~。
みなさん)ガチで弾いてるの?
有澤さん)それは~(笑)。 弾いているように見せるんです!
池田さん)また『のだめ~』の話になってしまいますが(笑)、あの作品こそ、まさに生演奏の素晴らしさを感じました! 演者の方も本当に弾いているみたいで。有澤さんも素晴らしかったです!
有澤さん)今はヴァイオリンを褒められるのが一番嬉しいです!!
──クリエイターのお二人から見た有澤さん、東さんの印象は。高羽さん)有澤さんは数年前にストレートプレイでご一緒しましたが、ここ数年のご活躍はすさまじいものがあり、最近はいろんなところで「有澤さんは歌も素晴らしい」という声を耳にしています。数年越しにご一緒できることが楽しみでなりませんし、この座組のメインを張る俳優さんだと信頼しています。ほかのキャストのみなさんは、はじめましてですが、とても達者な方々だということは十分承知しておりますので、安心してキャラクターや作品を委ねられます。普段ストレートプレイを演出している私との共同作業を楽しんでいただければと、稽古が始まるのを楽しみにしています。
池田さん)僕が東さんをはじめて拝見したのは舞台『弱虫ペダル』でした。原作ファンとしても楽しみましたが、それ以上に舞台としてとても面白かった。その中で、東さんが演じられていたのは葦木場拓斗という熱い男の熱い場面。キャラクターとしてはもちろん、次第に東さんという俳優ご本人に惹かれていきました。こういう経験はなかなかないので、とても印象的でした。客席から観ていた東さんに、ご出演していただけることはとても嬉しいです。
──(キャストのお二人に)共演者の印象をお聞かせください。東さん)豊原さんは事務所の後輩ですし、『5DAYS 辺境のロミオとジュリエット』という彼女がはじめてヒロインを演じた作品や、今年も『ザ・ビューティフル・ゲーム』で共演した仲間です。壮さんとも『TRUMP』シリーズでご一緒し、それ以来になります。時間をおいてとか、作品を変えてご一緒することで、お芝居が変わったなとか発見があるので、お二人と、また新しい作品でお芝居できることが楽しみです。実はもうお一方いらっしゃいますが、それはお楽しみに。
(※本日、山崎大輝さんのご出演が発表されました)有澤さん)また屋比久ちゃんの生歌を聴けるんだ!という喜び、完全にそちら側の!?気持ちです(笑)。エリアンナさんもそうなると思います。美弥さんからは「有澤くんと真剣なお芝居ができるかな」と言われました(笑)。僕も、相手役だったら……と思いましたが、そういう間柄ではないようなのでよかったなと(笑)。あと、前回に続いて高羽さんの現場は女性が多いのですが、変にかしこまることなくのびのびとできたらいいなと思います。
──高羽さんもご出演されるとか。高羽さん)出演と申しますか……バックステージものなので、ある種の入れ子構造にするために高羽役としてナビゲーターのような位置づけになります。
──ここで東さんから質問が!東さん)気になっていることがあります! 2作品同時上演というのは互いを意識するものですか?
池田さん)対バン系ですかね(笑)。オムニバスだと、ほかより面白くしたいという感じはありますが、不思議と今回に関してはそういうのがないんです。お互いに新しい発見があるだろう、それによってともに盛り上がるだろうというイメージです。こんな作品も、あんな作品もある、そのバラエティ豊かなところを楽しんでいただければと思います。その上で、お客様がどちらが面白かったとか比べてもらうのは、全然ありです。
高羽さん)私も、互いにバトンを渡すような感じになればいいなと思っています。どちらが先に上演されるかはまだわかりませんが、私の方の“舞台の初日直前の舞台裏描いた作品”と池田さんの『DESK』を続けて観ることで、『DESK』の背後に『わたしを、褒めて』で描かれるスタッフさんの姿が浮かび上がるような関係-現代日本を舞台にし、同じテーマ性を持った“一つの作品”-になったら素敵だと思っています。
◆ミュージカル愛を信じ突き進む高羽さんの強い思い、これまでにご覧になった舞台を熱く語る池田さんの情熱! 信頼のおける二人のクリエイターによる2つの新作ミュージカルの誕生というだけでなく、2作品同時上演によるさらなる化学反応という新たな魅力を感じ、すでに実験は始まっていることを実感する取材会でした。また、記事中にも記しましたが、『DESK』追加キャストの山崎大輝さん、音楽クリエイター『わたしを、褒めて』作詞・作曲:ポップしなないで/『DESK』作曲:深澤恵梨香さんも発表されました。11月22日、23日、シアタークリエにて産声を上げる両作品をお楽しみに!
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人