12月8日に東京芸術劇場プレイハウスにて開幕するフレンチロックミュージカル『赤と黒』の公開稽古&取材会が行われました。
本作は、フランスの文豪スタンダールが生んだフランス恋愛小説「赤と黒」を原作に、支配階級の欺瞞に憎悪を募らせる美貌の青年ジュリアン・ソレルの愛と葛藤の人生をフレンチロックで紡いだミュージカル。演出には『SIX』の共同演出家ジェイミー・アーミテージさんを迎え、主演・ジュリアンは次々に話題作に出演する三浦宏規さんという注目の作品。取材会は、お二人をはじめ、多彩な顔触れがそろうカンパニーによるご挨拶から始まりました。
【野心家で繊細な美青年・ジュリアン役:三浦宏規さん】
この段階でのシーンの披露は、初日前より緊張しますね(笑)。今日、ここでしっかりと披露して、「これは本番を生で観たい」と思っていただけるように頑張ります!
【ジュリアンと禁断の恋に落ちるルイーズ・ド・レナール役:夢咲ねねさん】
初日まで時間のある中でご覧いただくということで、緊張しておりますが、どうぞお手柔らかによろしくお願いします!
【聡明で高慢な令嬢、マチルド・ド・ラ・モール役:田村芽実さん】
この作品は古典を元にしたミュージカルですが、私がなによりも好きなのは登場人物が全員ラスボスのようなところです。今日の公開稽古だけでも本番のようなエネルギーが稽古場を満たすと思います。お楽しみに!
【ルイーズの夫、町長のムッシュー・ド・レナール役:東山光明さん】
昨日、ようやく全ナンバーに振付・演出がつき、それを今、頭から順に稽古している最中です。僕自身、どうなるのか楽しみで仕方ありません。
【マチルドの父、ジュリアンを秘書に雇うラ・モール侯爵役:川口竜也さん】

せっかくなので父娘ショットで!
僕の役は芽実ちゃん演じる娘を溺愛している父親です。今日の公開稽古でも、それが伝わる場面をご覧いただけますのでお楽しみに。
【人気歌手ジェロニモ役:東山義久さん】
狂言回し、そしてジェロニモ役の東山義久です。三浦くん、ジェイミーさんをはじめとする、このカンパニーでお届けする日本版の『赤と黒』をなにか新しい提案ができる作品にしたいと思います。
【人心操作に長けた裕福なブルジョワのムッシュー・ヴァルノ役:駒田一さん】
本日、残念なことに私のナンバー披露はございません。本番をご覧いただき……といっても本番でもほとんど歌っておりませんが(笑)。

まさかのコメントに(一同笑)
(気を取り直して)演出のジェイミーさん、振付のアレックスさんのもと、今は稽古が苦しくもあり、楽しくもあります。ここからどんどん練って、みんなでいろんなアイデアを出しながらパズルを組み合わせ、みなさまに良いものをお届けできたらと思っております。
【演出:ジェイミー・アーミテージさん】
『赤と黒』は、愛、革命そして変革をもたらすエキサイティングな物語です。そこで描かれるのは、登り詰め、そして落ちていくジュリアン・ソレルという青年と彼がその人生で出会う人々。本日は、これまでに作ってきたものをほんの少し披露させていただきます。また、振付家のアレクザンドラ・サルミエントさん、(音楽監督・ピアノコンダクターの)前嶋康明さんをはじめとする音楽班のみなさん、そしてプリンシパル、アンサンブルキャストのみなさん、本当に素晴らしいみなさんと一緒に作品を作れることに感謝申し上げます。
【場面披露】
<ここまでのストーリー>貧しい生まれならも、聖職者として身を立て、ナポレオンのような立身出世を夢見る主人公ジュリアン・ソレルは、美しく野心溢れる青年。ジュリアンは、裕福なブルジョア家庭、町長レナール氏に家庭教師として雇われ、そこで貞淑なレナール氏の妻ルイーズに好意を抱くようになる…
♪禁じられた愛の言葉
ジェイミーさん:聖職者のジュリアンと既婚者のルイーズ、ジュリアンはついにルイーズの寝室に入り勇気を出して思いを告げようとする。それを小間使いのエリザ(実はジュリアンに恋している)が目撃してしまう。『赤と黒』の最初のロマンティックなシーンです。

ルイーズに思いを告げようとするジュリアン(三浦宏規さん)

戸惑いを隠せないルイーズ(夢咲ねねさん)

いざルイーズの元を訪れるも、彼女を目の前にどぎまぎしてしまうジュリアン

エリザ(池尻香波さん)
♪赤と黒
ジェイミーさん:ルイーズとの関係が露呈したことによりジュリアンはレナール家から追放される。ルイーズの愛を失い、孤独でどうすることもできない。打ちひしがれるも自らの運命を受け入れなければならないジュリアンが愛を諦め、野望のために立ち上がる一幕ラストの楽曲です。
「黒い闇に 赤い血潮」怒りのエネルギーがこれでもかと込められた激しさと、その根底にあるどうしようもない悲しみが伝わる三浦さんの表現。アンサンブルのみなさんの歌とダンスの迫力も加わり、この場面が持つ“ハイエナジー”に圧倒されました。お客さんの立場からも「ここでしばしの休憩が必要だ」と思う取材班でした。
♪誰も彼も退屈
ところ変わって、パリ! 第二幕はラ・モール侯爵のお屋敷での舞踏会から始まります。
ジェイミーさん:ジュリアンはラ・モール侯爵のもとで秘書の職を得て、その仕事ぶりから侯爵の信頼を獲得する。一方、侯爵の娘のマチルドは社交界に飽き飽きしているという場面です。

狂言回しの人気歌手ジェロニモ(東山義久さん)がいざないます

舞踏会の華、マチルド登場

娘を身分の高い貴族と結婚させたい父に対し、マチルドは上流階級の退屈を嘆く

マチルドの心の内は

そんな舞踏会の様子を見つめるジュリアン
ここではマチルドにはパッとしない秘書と映っているが……

侯爵はジュリアンを高く評価しているが、それはあくまでも秘書として……

ジュリアンとジェロニモ

ヴァルノ夫妻(駒田一さん、遠藤瑠美子さん)
それぞれの思惑が入り乱れて、怒涛の第二幕の幕が上がる!!
【囲み取材】
──場面披露を終えて三浦さん)
3曲お届けしましたが、1公演終わったような感じがします(笑)。この緊張感の中でみんなと稽古ができていること、それをご覧いただく機会をもてたことは本番に向けてのすごく良いステップになったと思っています。
ジェイミーさん)
この作品の中でも、とてもエネルギーが高く、力強いシーンを披露いたしました。三浦さんのこの疲れた感じからもそれはおわかりいただけると思います。(チラリとのぞき込んで)袖で待機しているみなさんもぐったりされています(笑)。
──危険でスリリングと語られるジュリアン像について。三浦さん)
ジュリアンの二面性、普段は出さない内に秘めた強い思い──披露したのはその感情を爆発させる楽曲ですが、そこでしっかりとエネルギーを出すことがジュリアンの危険な魅力に繋がると思います。また、そこに導いてくれるもののひとつが本作の音楽だと感じています。

この日のシューズは日本カンパニーから贈られたものだそうです
ジェイミーさん)
(三浦さんが)自信を持って、自分の能力をギリギリまで発揮するところ、そしてなによりも全編を通してひとつのエネルギーの道筋を描けるところが素晴らしいと思います。見ている人にジュリアンを愛していただかなくてはならないですし、彼を応援し、成功を願っていただきたい。ジュリアンはそういうキャラクターです。その上で、危険でスリリグな部分が見えたとき、それをちゃんと尊重していきたいと思います。
──ここからの稽古でブラッシュアップしていきたいところ、その核となるのは何だと捉えていらっしゃいますか。三浦さん)
やはり今回の作品は小説が原作ですが、フレンチロックミュージカル仕立てなので数多くの楽曲に彩られています。そしてそのどれもが迫力のあるナンバー。それも大きな魅力ではあるのですが、ともするとショーのように見えてしまうところもあります。でも、物語を伝えるというところで、楽曲に至る過程のキャラクターの感情の流れを自分自身が咀嚼して、理解してお芝居をしていくかが非常に重要だと思っています。それをひとり一人が意識して稽古を重ねていくことで、最終的に出来上がった作品で皆様に何が伝えられるか、どう受け止めてもらえるか。それは僕たちも楽しみで、気になるところです。
──ジュリアンについてはどのあたりを突き詰めたいですか?三浦さん)
原作では、ジュリアンの思考や行動は本当にデンジャラスで欲に突き動かされるように感じたのですが、ジェイミーさんとお話する中で、その方向性ではないと。ジュリアンはピュアな人物、それは先ほどご覧いただいたルイーズとのやり取りからも垣間見えると思います。いざルイーズを前にすると言葉に詰まって「愛してます」とストレートに言ってしまうとか。その「純情さ」と彼が内に秘めている「成り上りたい」という気持ちのはざまで葛藤しながら展開していく物語。ジュリアンの気持ちの変化をしっかりと繋げ、丁寧に表現したいと思っています。
──最後にメッセージを。ジェイミーさん)
エキサイティングで素晴らしい作品、その一部をご覧いただきました。僕が愛しているように、日本のお客様にも愛していただける作品になるのではないかと思っています。素晴らしいキャストのパフォーマンスを観に、ぜひ劇場まで足をお運びください。そこでは忘れられない観劇体験をしていただけるでしょう。
三浦さん)
この作品は、様々なメッセージ、テーマが散りばめられています。フランスの古典小説を原作にし、ポスターもシリアスな感じなのでもしかしたら笑いどころも一切ないのかなとか思われる方もいらっしゃるかもしれません。でも、そこで描かれるのは、今の時代にも通じる人間ドラマ、「なるほどな、気持ちがわかるな」と思うところもたくさんあります。想像以上に、面白いシーン、クスッと笑ってしまうところもあります。ジェイミーさんの演出も、音楽もロックですごくかっこいい! いろんなお客様に楽しんでいただける作品になっていますので、劇場で『赤と黒』の世界を体感してください。
おけぴ取材班:chiaki(撮影・文)監修:おけぴ管理人